C05犬種・猫種別ケア
チベタンスパニエルと暮らすなら知っておきたい、毛のもつれの話
チベタンスパニエルの首の毛を根元からつまんで、そのまま肩へ指を滑らせてみてください。肩の手前で、毛の長さが急に変わる線があります。もつれが集まるのは、その線の上です。首から胸にかけての長い毛はマネと呼ばれ、体の毛よりはっきり長く、厚くなっている子が多い。いちばん絡むのは、長さの違う毛が隣り合っているところです。長い毛が短い毛の上に倒れ込み、動くたびに噛み合います。この記事では、マネの中と境目という2か所を比べながら、どちらにどう手を入れるかを書いていきます。
チベタンスパニエルの首まわりにある、マネという長い毛
チベタンスパニエルを正面から見ると、顔のまわりの毛が丸く広がって見えます。首から胸にかけて生えている長い毛で、マネ、あるいはたてがみと呼ばれます。この毛は、背中やわき腹の毛とは長さが違います。同じ1匹の体の上に、長さの違う被毛が2種類ある。まずここから始めてください。
チベタンスパニエルは、チベットの高地で人の暮らしのそばにいた犬種です。標高が高く、朝晩の冷え込みが厳しい土地でした。首から胸に厚い毛があれば、体の前面から入ってくる冷たい風を受け止められます。マネは、寒い土地で前を守るためについている毛です。飾りとしてついているわけではありません。
マネの量には個体差があります。胸まで豊かに広がる子もいれば、首のまわりだけの子もいる。年齢や季節でも変わります。それでも、首まわりが体より長いという並びは、多くの子に共通しています。
- マネ(首から胸):長く、厚い。1本ずつが重なって面をつくります
- 体の毛(背中・わき腹):マネより短く、体に沿って寝ています
- 耳の後ろ、脚の裏、しっぽ:飾り毛が下へ垂れています
- 換毛期:春と秋に下毛がまとまって抜け、量の多いマネの中にいちばん残ります
毛が2種類あるということは、その2つが出会う場所が、体の上に必ずあるということです。あごの下から胸へ、耳の下から肩へ、首の後ろから背中へ。長い毛が終わって短い毛が始まる線が、首のまわりをぐるりと1周しています。チベタンスパニエルのもつれを考えるときは、この線をまず思い浮かべてください。
マネが豊かな子ほど手がかかる、という話ではありません。もつれに効いてくるのは、マネと体の毛の長さの差がどれくらいあるかです。差が大きいほど、境目の線ははっきりします。ブラッシングのときに、その差を指で確かめる習慣をつけてください。量ではなく段差を見る、と覚えると分かりやすくなります。
マネの中と、長さが変わる境目|もつれの起き方の違い
マネの中でも、もつれは起きます。長い毛どうしが重なっているので、抜けた毛が下まで落ちきらずに残るからです。ただ、マネの中のもつれはふわりと大きく、指が入ることが多い。毛の長さがそろっているぶん、絡んでも同じ向きに寄るだけで済みます。
境目は違います。長い毛が、短い毛の上に倒れ込んでいます。犬が首をかしげる、振り返る、伏せる。そのたびに、上に乗った長い毛と、下で寝ている短い毛が互いにこすれて噛み合っていきます。長さの違う毛が隣り合っているところが、いちばん絡みます。同じ長さの毛どうしなら並んで動けますが、長さが違うと片方だけが動くからです。
| マネの中 | 体の毛との境目 | |
|---|---|---|
| 毛の並び | 長い毛どうしがそろっている | 長い毛が短い毛に乗っている |
| もつれの形 | ふわりと大きい。指が入る | 平たく、根元で硬く締まる |
| 起きるきっかけ | 抜けた毛が下へ落ちきらない | 動くたびに長短が噛み合う |
| 見つけ方 | 上から見て、毛が寄っている | 指を滑らせて、止まる場所で分かる |
| ほどく向き | 毛先から、外へ広げる | 線に沿って、横へ |
| 換毛期の変わり方 | 抜けた下毛が中に溜まる | 溜まった下毛が線まで下りて詰まる |
もうひとつ、境目には静電気が集まりやすいという事情があります。空気が乾く季節、長い毛と短い毛が違う速さで動くと、毛先どうしが引き合います。マネの中で静電気が起きても、毛先は同じ方向を向いたまま広がります。境目では、長い毛の毛先が短い毛の間へ潜り込みます。乾いた日に急に境目が硬くなるのは、これが理由です。
だから、チベタンスパニエルのブラッシングで「今日は全体をやったから大丈夫」と思っていても、境目だけが取り残されることが起こります。マネの中は毛が長いので手ごたえがあり、とかしていて気持ちがいい。境目は毛の下に隠れていて、上からブラシを当てても表面をなでているだけになります。やった感じと、実際に手が届いた場所は別です。
長さが切り替わる線をたどる|チベタンスパニエルのもつれの見分け方
手を入れる場所を決めるには、線がどこを通っているかを知る必要があります。境目は、犬種の絵に描けるほどきれいな円ではありません。子によって首の高い位置を通ることも、肩の後ろまで下りていることもあります。自分の子の線は、指でたどって覚えるのがいちばん早い方法です。
犬を立たせたまま、片手で胸を支えて、もう片方の手だけを使います。座っていてもかまいませんが、首をすくめていると線が隠れるので、顔を上げてくれる位置に立ってください。爪を立てず、指の腹だけを使います。
-
あごの下から、胸へ向かって指を下ろす
毛の中に指を差し込んで、根元をなぞりながら下ろします。途中で毛の長さが短くなったところが、正面側の境目です。チベタンスパニエルは正面から見ると毛が豊かなので、上からでは分かりません。目ではなく、指で確かめてください。
-
耳の下から、肩へ向かって横になぞる
耳のつけねの下に指を入れて、そのまま肩のほうへ滑らせます。すっと進んでいた指が、途中でわずかに引っかかる場所があります。そこが横側の境目です。左右で高さが違うこともあります。寝る向きがいつも同じ子は、片側だけ低く出ることがあります。
-
首の後ろを、背中側へなぞる
後ろ側の境目は、いちばん見つけにくい場所です。ここは首輪の下と重なるので、金具やリードのつけねが当たり続けている子もいます。首輪をいったん外して、外した状態で指を通してください。つけたままでは、線と首輪の跡の区別がつきません。
-
見つけた線の上を、もう一度ゆっくり戻る
今度は反対向きにたどります。指が止まる場所、毛が硬くなっている場所を覚えておきます。もつれは線の全部にできるのではなく、そのうちの2〜3か所に集まります。毎日その2〜3か所だけを見れば足ります。
マネの中の見分け方は、もっと簡単です。毛の束を手のひらですくって持ち上げ、そのまま指を広げます。指の間から毛が落ちてこない場所があれば、そこが寄っています。境目のように硬く締まってはいないので、この段階で気づけば数十秒でほどけます。
境目は毛の下に隠れているので、写真に撮っても写りません。手ざわりの違いは、続けていれば数日で覚えられます。抱き上げたときに、あごの下へ指を1本入れると決めてしまうと、思い出さなくても回るようになります。1日1回、10秒で終わる作業です。
マネと境目で変わる、ブラシの選び方と手の入れ方
マネの中と境目では、持つ道具も、手を動かす向きも変わります。マネの中に細かい目のブラシを入れると、長い毛を途中で引きちぎります。境目に大きなブラシを当てても、噛み合ったところまで届きません。チベタンスパニエルのブラッシングは、この2か所を分けて考えると急に楽になります。
| マネの中 | 境目 | |
|---|---|---|
| 先に使うもの | 目の粗いコーム | 指の腹 |
| 動かす向き | 毛先から、外へ向かって | 線に沿って、横へ |
| 手の支え方 | 根元は押さえず、毛束を持ち上げる | 根元を指ではさんで固定する |
| 1回の時間 | 3分ほど、全体をひと通り | 1か所30秒、2〜3か所だけ |
| 換毛期に足すこと | 下毛を外へ運び出す回数を増やす | 下りてきた下毛を線の上から抜く |
| やらないこと | 細い目のブラシを根元から入れる | 噛み合った毛を上へ引き上げる |
-
マネの中は、毛先から外へ広げる
毛の束を手のひらで持ち上げて、毛先の側からコームを入れます。少しずつ根元へ移していきますが、一度に根元まで通そうとしないでください。マネの毛は長いので、途中で止まったら、そこから先は次の一回に回します。その日のうちに終わらせることを目標にしないでください。
-
境目は、線に沿って横へ動かす
上から下へとかすのではありません。長い毛が短い毛に乗っているので、上から入れると、乗っている毛を短い毛の間へ押し込むことになります。根元を指ではさんで支えたまま、線に沿って横へ動かします。横へ動かすと、噛み合った毛が上下に分かれてほどけます。
-
乾いた日は、毛先の滑りをそろえてから
静電気が起きている日は、とかすほど毛先が広がって寄ります。境目のもつれは、空気が乾いた日に一気に増えます。とかす前に毛の表面を一度なでて、うるおいを足しておくと、毛先が短い毛の間へ潜り込みにくくなります。濡らす必要はありません。
-
換毛期は、境目を先に見る
春と秋、マネの中に残った下毛は、重みで少しずつ下へ移動します。行き着く先が境目です。換毛期は、マネの中をとかす前に、まず境目へ指を通してください。順番を逆にすると、抜けた毛を境目へ送り込むことになります。
境目のもつれは根元で締まっているので、下の皮膚が引っぱられて持ち上がっています。毛だけを切っているつもりでも、ハサミの先が皮膚に届きます。ほどけないものは無理をせず、次のトリミングまで待つか、場所を伝えて任せてください。硬いところは根元から一気に引き抜くという進め方も避けてください。
毛の表面をなでるときに使えるのが、mofuwaグルーミングスプレーです。中身は還元水100%で、香りもアルコールも入っていません。布に含ませて境目の線に沿って一度なでると、長い毛の毛先が落ち着いて、短い毛の間へ潜り込みにくくなります。マネの中は毛が長いので、ひと吹きしてからコームを入れると、毛先から根元へ移っていくあいだに引っかかる回数が減ります。チベタンスパニエルのマネは毎日とかせますが、毎日洗うことはできません。マネの下は乾きにくいので、シャンプーの回数を増やす側へは伸ばしにくい場所です。毎日きれいにしておきたい側は、スプレーとコームの2つで持たせます。
量を控える必要はありません。グルーミングスプレーは飲みものに使う水と同じ規格基準で検査されていて、舐めても差し支えない中身です。マネに顔をうずめてくる子でも、根元まで湿らせてかまいません。ただし、噛み合っている場所へ直接吹きかけて、そのまま置かないでください。湿ったまま置くと、締まる方向に働きます。布に取って、線に沿って横へ。使ったら乾いた面でもう一度なでて、水気を残さないところまでを一続きにしてください。
境目の下の地肌が見えたら、ほどく手を止める
ここまでは、毛の長さの違いで説明のつくもつれの話でした。線の上ではない場所に、繰り返し同じもつれが戻るときは、別の見方をしてください。やり方を変えても届かない種類の話が混じっていることがあります。
- 境目ではなく、いつも同じ一か所だけ:首輪、ハーネス、寝床の縁など、毎日当たっているものを思い出してください
- ほどいたのに、翌日には同じ硬さに戻る:ほどけていない芯が根元に残っていることがあります
- その場所を気にしている:かく、床にこすりつける。もつれより先に、地肌のほうを見てください
- ほどいたあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、ほどく手をその場で止めてください
もつれの下の地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。このうちひとつでも見えたら、自分でほどこうとせず、動物病院で地肌のほうを見てもらってください。マネの下は外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。ほどける場所は、そのあいだもマネの中だけ続けてかまいません。
相談やトリミングの前には、もつれの場所が線の上かどうか、いつから気づいたか、その週に何日ブラッシングできたかをメモしてください。この3つがあると、長さの差で説明のつくもつれなのかどうかが、その場で切り分けられます。ほどけなかったもつれは、無理に触らずそのまま連れて行ってください。ほどこうとした跡があると、もとの形が分からなくなります。
チベタンスパニエルと暮らすうえで、もつれはゼロにはなりません。長さの違う毛が同じ体の上に並んでいる作りだからです。全身を毎日とかすのではなく、線の上の2〜3か所を見る。マネの中は毛先から外へ、境目は線に沿って横へ。手を入れる場所と向きが決まれば、1日3分で足ります。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- チベタンスパニエルは、全身を毎日ブラッシングしたほうがいいですか?
- 全身を同じようにとかす必要はありません。もつれが集まるのは、マネと体の毛が出会う境目のうち2〜3か所です。そこに毎日指を通して、マネの中は3分ほど全体をひと通りとかせば足ります。換毛期だけは、抜けた下毛が境目まで下りてくるので、境目を見る回数を増やしてください。
- マネの毛が絡んだとき、上から下へとかしてもいいですか?
- マネの中だけなら、毛先から外へ向かって広げるようにとかしてください。境目では向きが変わります。長い毛が短い毛に乗っているので、上から下へ入れると、乗っている毛を短い毛の間へ押し込むことになります。境目は根元を指で支えて、線に沿って横へ動かしてください。
- もつれた場所の毛だけ、短く切ってもいいですか?
- おすすめしません。境目のもつれは根元で締まっていて、下の皮膚が引っぱられて持ち上がっています。毛だけを切っているつもりでも、ハサミの先が皮膚に届きます。ほどけないものは次のトリミングまで待つか、場所を伝えてサロンに任せてください。地肌が赤い、痛がるといったときは、先に動物病院にご相談ください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
