C09シーン別・暮らし

シニア犬と暮らす人が散歩から帰ったあとで困ること、その手当て

公開日 2021年9月18日|文=mofuwa編集部

明るい光の入る部屋で、淡い色の毛の年をとった犬が床に静かに横になっている
散歩の距離が短くなっても、体が地面のすぐ上にあった時間は、そのぶんだけ短くはなっていません。写真:K/Pexels

散歩後に玄関で使う布の枚数が、去年から1枚も減っていません。コースは30分から10分になり、行く先も家のまわりだけになりました。距離にすれば3分の1です。それなのに拭き終わるまでの時間は変わらず、途中でその子のほうが座り込んでしまう。老犬と暮らしていると、この食い違いに毎日ぶつかります。短くなったのは距離だけで、体が地面のすぐ上にあった時間は、ほとんど変わっていません。この記事は、老犬の散歩後のケアについて飼い主が実際に口にする問いを7つ並べ、順に答えていく形にしました。なぜ減らないのか、どこを見るのか、そして毎回やらなくていいのはどこか。最後に、玄関から寝床までをひと続きに並べ直します。

コースを半分にしたのに、散歩後のケアが減らないのはなぜですか

距離で見れば、老犬の散歩は確かに短くなっています。ところが散歩後に手を入れる場所のほうは、若い頃より増えています。この食い違いは、歩く速度と、体の高さと、立ち止まっている時間の3つで説明がつきます。距離を3分の1にしても、その3分の1を歩くあいだに起きていることが、若い頃と別ものになっているからです。

まず速度です。歩幅が狭くなり、一歩ごとの間隔が長くなると、同じ1メートルを進むのに前より長い時間がかかります。体のどこかが地面のすぐ上にある時間は、距離ほどには短くなっていません。老犬の散歩後のケアが減らない理由の半分は、この一点にあります。距離は数字で減りますが、地面の近くで過ごした時間は数字に出ません。

次に高さです。年齢とともに頭と首の位置が下がり、胸が地面に近づきます。若い頃は地面から30センチほどにあった胸元が、いまは20センチを切っていることがあります。持ち上がっていた面が、下りてきているということです。歩くたびに跳ね上がる砂や草の粉は、その高さまでしか届きません。届く高さに体の面があれば、そこにつきます。

3つめは、立ち止まっている時間です。老犬の散歩では、においを嗅いでいる時間の割合が増えます。歩いている時間が減り、一か所にとどまっている時間が増える。同じ地面の上に長くいれば、鼻先と口のまわりにも土がつきます。若い頃なら通り過ぎていた場所で、いまは1分近く止まっている。散歩後には、その1分ぶんが体に残っています。

同じ「散歩」でも、若い頃といまでは中身が入れ替わっています
若い頃いま
1回の距離2キロ前後600メートル前後
1回の時間30分ほど10〜15分
歩く速度速い。地面の上を通り過ぎる遅い。同じ場所に長くとどまる
胸の高さ地面から離れている下がり、跳ね返りの届く高さに入る
立ち止まる回数数回十数回。嗅いでいる時間が長い
歩幅広く、脚が前へ出る狭く、脚が体の真下に入る
Note減らしたのは距離で、減っていないのは時間です

「短いコースにしたのだから、散歩後のケアも軽くなるはずだ」という見込みが外れるのは、距離と時間を同じものとして数えているからです。老犬の散歩で減ったのは移動した距離のほうで、地面のすぐ上に体があった時間は、思っているほど減っていません。ここを分けて考えると、帰宅後に手が止まる理由が説明できるようになります。

そもそも老犬にとっての散歩後のケアとは、どこまでを指すのですか

言葉の範囲をはっきりさせておきます。散歩後のケアとは、外から持ち帰ったものを、玄関から先へ運ばせないための手当てのことです。きれいにすることが目的ではありません。運ばれる先は室内の床であり、ソファであり、最後はその子が一日の大半を過ごす寝床です。老犬は寝ている時間が長いぶん、持ち帰ったものが一か所に集まりやすくなります。

この定義から外れるものもあります。洗うことは含みません。ブラッシングも、散歩後のケアには入れないほうが回ります。どちらも立たせておく時間が要るからです。老犬の散歩後にできるのは、地面に触れた面から、乾ききる前に外へ移すところまでです。それ以上をここに詰め込むと、その日のうちに終わらなくなります。

では、どこが対象になるのか。若い頃なら足の裏4か所で足りていた範囲が、いまは下側の面全体に広がっています。老犬の散歩後のケアを組み立てるときは、次の場所を頭に置いてください。上から順ではなく、地面からの高さの順に並べてあります。

Point帰宅後の15分だけを、この記事の範囲にします

散歩後のケアを「帰宅後にやる家事」として大きく捉えると、洗う・乾かす・ブラッシングまで入ってきて、老犬の体力のほうが先に尽きます。ここでは帰宅後15分でできることだけを扱います。それ以外の手入れは、その子が寝て起きたあと、別の時間帯に置いてください。同じ日にやるかどうかも、決めなくて構いません。

老犬の散歩後に、いちばん汚れているのはどこですか

場所を覚えるより、地面からの高さで区切ると、その日どこに手を入れるかが自分で決められるようになります。老犬の体は、若い頃より低い位置にあります。同じコースを歩いても、汚れが集まる帯が下から順に体を上がってくる、と考えてください。

地面からの高さで区切ると、散歩後に手を入れる順番が決まります
高さつくもの老犬で変わったこと
0〜5センチ土、砂、細かい草、路面の水変わりません。ここは若い頃と同じ
5〜15センチ跳ね返った砂と水、草の粉歩幅が狭くなり、脚の内側に集まるようになった
15〜30センチ同上が、面として広く付く胸と腹が下りてきて、新しく入ってきた帯
鼻先の高さ土、他の子のにおい嗅いでいる時間が増え、口のまわりにも付く
背中から上空から落ちてくるものだけ短いコースでは、ほとんど変わらない

この表の下から3行が、老犬の散歩後のケアで増えた部分です。とくに15〜30センチの帯は、若い頃はほぼ空だった場所です。胸元と腹の下側に手のひらを当てて、指の腹をゆっくり滑らせてみてください。ざらつきが返ってくるなら、その帯にはもう汚れが届いています。見た目では分かりません。毛の色が淡い子でも、乾いた砂は毛の中に入ると見えなくなります。

口のまわりについても書いておきます。若い頃より嗅ぐ時間が長くなると、鼻先が地面に触れる回数が増えます。ここは食べるための場所でもあるので、室内へ持ち込むという意味では、脚の先と同じくらい上流にあります。ただし力を入れてこすらないでください。触られるのを嫌がるなら、湿らせた布を当てて数秒置き、押さえて離すだけで十分です。

Note同じコースを毎日通ると、同じものが毎日入ってきます

短いコースにすると、行き先は家のまわりに固定されます。つまり持ち帰るものの種類が、毎日ほとんど同じになります。季節が変われば内容も変わりますが、ひと月単位で見れば同じものが繰り返し入ってくる。だからこそ、その帯にだけ手を入れる形にしておくと、短い時間でも追いつきます。全身に薄く手を広げるほど、追いつかなくなります。

帰宅後、何分以内に終わらせれば大丈夫ですか

時計で決めるより、状態で決めるほうが確実です。基準は「乾ききる前かどうか」の一つだけです。土や砂は濡れているうちなら面のまま外へ移せますが、乾いて細かくなると毛の中に入り込み、そこから先は拭いても出てきません。目安として、帰宅後15分は濡れている、30分を過ぎると乾きはじめる、と考えてください。

ただし老犬では、その15分のあいだ立たせておけません。ここが若い頃といちばん違うところです。玄関で全部を終わらせるという前提を、まず捨ててください。玄関でやるのは、立っているあいだにしか届かない場所だけです。残りは、その子が伏せてから、横になってから、と場所を移して続けます。時間を区切るのではなく、姿勢で区切ります。

  1. 玄関で、立っている10〜20秒のあいだに前脚の先

    リードを外す前に、前脚の先と指のあいだだけ。ここは立っていないと届きません。立っている時間を、いちばん届きにくい場所に使いきるという考え方です。声をかけて待たせるのではなく、外した流れのまま手を動かします。

  2. 上がってすぐ伏せたら、こちら側の後ろ脚の内側と腹の側面

    伏せた姿勢では、下になった側は触れません。上を向いている面だけをやります。老犬にとって、伏せは自分で選んだ楽な姿勢です。その姿勢を崩さないことが、散歩後のケアを最後まで続ける条件になります。

  3. 横になったら、上になっている側を上から下へ一度だけ

    胸の前から腹の下側まで、手のひらの面で一度通します。往復させません。往復すると同じ場所を2回こすることになり、老犬の皮膚には負担が増えます。ここまでで、帰宅後15分に入ります。

  4. 反対側は、この散歩ではやらない

    起こして向きを変えさせないでください。下になっていた側は、次の散歩のあとか、寝る前に回します。一度に両側を終わらせようとすると、その子が立ち上がってしまい、結局どちらも中途半端になります。

この形にすると、1回あたりの帰宅後の作業は5分前後で終わります。そのかわり、体の片側は次の回に持ち越されます。持ち越すことを失敗と考えないでください。老犬の散歩後のケアは、1回で完結させる仕事ではなく、朝と夜で1周する仕事です。1日2回の散歩があるなら、両側で1日1周になります。

長く立たせておけません。どこから手をつける形に組み替えればいいですか

順番を決める軸を、場所から姿勢に入れ替えます。若い頃は「脚から順に上へ」で回っていました。老犬では、その子がいまとっている姿勢で届く場所が、その時点でやれる場所のすべてです。やりたい場所から始めるのではなく、届く場所から始める。これが立たせておけない家での組み替え方になります。

姿勢ごとに、その時点で届く場所は決まっています
その子の姿勢そこで届く場所やらない場所
立っている前脚の先、指のあいだ、口のまわり腹の下側。のぞき込むと嫌がります
座っている胸の前、前脚の付け根後ろ脚の内側。座ると閉じます
伏せている上になった側の後ろ脚の内側、脇腹下になった側の全部
横になっている上になった側を、胸から腹まで通しで尻のまわり。持ち上げる必要が出ます
寝てしまった何もしない全部。起こさないでください

表の最終行は冗談ではありません。老犬が自分で寝入ったなら、その日の散歩後のケアはそこで終わりです。起こしてやり直すと、次から玄関で足を止めるようになります。散歩後に体を触られることが「起こされること」と結びついてしまうと、翌週から手が入らなくなります。今日できなかった面は、明日の同じ姿勢のときに回してください。

もう一つ、手のほうの動かし方も変わります。若い頃は毛の流れに逆らって起こしてから戻す、という手が使えました。老犬では、毛の流れに沿って一方向へ、面で押さえて離すだけにします。関節に負担をかけないためでもあり、皮膚が薄くなっているためでもあります。力の強さではなく、当てている面積で運ぶ、と考えてください。

Caution向きを変えさせるために、体を持ち上げないでください

反対側に手を入れたくなっても、老犬の体を回して向きを変えさせるのは避けてください。後ろ脚と腰に、そこまでの散歩でかかったぶんの負担が残っています。どうしても両側に手を入れる必要があるときは、その子が自分で寝返りを打つのを待つか、翌日に回します。待つほうが、結果として早く一周します。

毎回やらなくていいことがあれば知りたいのですが

これが、この記事でいちばんお伝えしたい問いです。散歩後のケアの手が足りないとき、増やす前に減らします。老犬の帰宅後にやめてよいことが、少なくとも3つあります。やめる理由もあわせて書きます。理由を知っておかないと、数日で元に戻るからです。

  1. やらなくてよい1:背中と腰の上側を、毎回拭くこと

    地面からいちばん遠い面です。短いコースの晴れた日に、ここに新しく付くものはほとんどありません。先ほどの高さの表で、いちばん上の行だけは老犬になっても変わっていません。雨の日と、草むらに体を入れた日だけにしてください。毎回やっていたぶんの時間が、そのまま下側に回せます。

  2. やらなくてよい2:帰宅直後のブラッシング

    毛の流れを整えるのは、散歩後のケアの仕事ではありません。ブラッシングには立たせておく時間が要り、老犬にとってはそこが負担になります。寝て起きたあと、その子が自分から近くに来た時間帯に移してください。同じ日でなくても構いません。散歩後の15分から、まるごと外していい作業です。

  3. やらなくてよい3:足先を、毎回水で洗うこと

    指のあいだは、老犬になるほど乾きにくくなります。歩く時間が短く、床に接している時間が長いからです。濡らした場所が乾ききらないまま寝床に入るほうが、条件としては良くありません。湿らせた布で押さえて、乾いた面で水を移す。この2手で足ります。泥がまとまってついた日だけ、水を使ってください。

3つやめると、帰宅後の作業は半分ほどになります。その空いたぶんを、片側ずつ回すための余裕にしてください。減らした時間で新しいことを足さないことが、この項目の意味です。老犬と暮らす日々では、手数を増やせる週と増やせない週が交互に来ます。増やせない週でも同じ形が回ることを、先に確かめておくほうが続きます。

Pointやめてよいことを、家族と共有しておく

同居している家族が散歩に出た日に、背中まで拭いて足を洗って戻ってくると、その子にとっては帰宅後の手順が日によって変わることになります。やることより先に、やらないことを共有してください。玄関に「前脚の先と、伏せたら上の側だけ」と書いた紙を貼っておくくらいで足ります。習慣は、そろえた人数のぶんだけ安定します。

室内のにおいが前より気になります。散歩後のケアで変わりますか

変わる部分と、変わらない部分があります。散歩後のケアで動かせるのは、外から持ち込む量のほうです。室内でにおいが強くなったと感じるとき、その多くは持ち込む量ではなく、持ち込んだものが同じ場所に集まる時間が延びたことで起きています。老犬は一日の大半を寝床で過ごします。若い頃なら家じゅうに散っていたものが、いまは一か所に集中します。

毎日同じ短いコースを歩くことも、ここでは効いています。持ち帰るものの種類が固定されるので、同じにおいが少しずつ積み上がる。量が増えたのではなく、同じものが同じ場所にたまり続けている状態です。だから、室内で変えるところは寝床の側になります。

体の側でできることも書いておきます。毎日きれいにしておきたい、という側から組み立てると、老犬の家で使う道具は1本に絞れます。mofuwa グルーミングスプレーは、吹きかけてそのまま梳かせる無香料のケアスプレーです。布に含ませて、脚の付け根と腹の下側を毛の流れに沿って一方向になでる。すすぎも拭き取りも要らないので、伏せた姿勢のまま終わります。シニアの子には、湯を使うこと自体がその日いちばんの負担になる日があります。立たせずに、地面に近かった面だけを寝床に入る前へ通しておく。グルーミングスプレーは、その一手のための道具です。体に直接吹きかけず、布に含ませてから当てます。

回数に上限はありません。舐めても差し支えない基準でつくられているので、雨の日に多めに使っても、毎日続けても構いません。老犬の散歩後のケアで効いてくるのは回数より、手を入れる場所が毎回同じであることです。同じ場所を同じ手順で通っていると、いつもと違う手ざわりに気づけるようになります。次の項目は、その「いつもと違う」の話です。

短い散歩の日を、玄関から寝床までひと続きに並べ直す

ここまでの7つを、一日の流れに戻します。老犬の散歩後のケアは、帰宅後の作業の集まりではなく、玄関から寝床までの移動そのものです。その経路のどこで何をやるかが決まっていれば、時間を計る必要はありません。次の並びが、この記事の答えです。

帰宅後の経路と、そこでやること
場所その子の姿勢やること
玄関のたたき立っている前脚の先と指のあいだ。口のまわりを一度押さえる
上がってすぐの床伏せる上になった側の後ろ脚の内側と脇腹
いつも落ち着く場所横になる上になった側を、胸から腹まで一方向に一度
寝床寝てしまう何もしない。下になった側は次の回へ
寝床のまわり—週1回、その1畳ぶんの床を拭く

この並びには、背中を拭く工程も、ブラッシングも、足を水で洗う工程も入っていません。散歩後の15分から外したものです。やることを減らしたぶん、体の片側を毎回きちんと通せるようになります。薄く全身に手を広げるより、狭い範囲を確実に通すほうが、持ち帰ったものは室内に残りません。

Caution左右で違う歩き方が2日続いたときは、動物病院へ

散歩後に同じ場所をなめ続けている、指のあいだが赤い、触ると痛がって脚を引く、においが急に強くなった、拭いたあとに毛が抜けて地肌が見える、歩き方が左右で違う、水を飲む量や食欲が変わった。いずれかに当てはまるときは、散歩後のケアの手を増やす前に動物病院へご相談ください。老犬では、年齢のせいだと思っていた変化に別の理由があることがあります。同じ場所を2日続けてなめているなら、その2日を数えた時点でご相談ください。

相談に行くときは、いつからか、散歩のあとだけか、どちらの脚かの3つをメモしていくと話が早く進みます。毎日同じ場所に同じ手順で触れていると、この3つが自然に分かるようになります。散歩後のケアを毎日の習慣として続ける価値は、きれいになることよりも、むしろこちら側にあります。

距離が短くなっていくことは、これから先も止まりません。それでも、地面のすぐ上にある時間はしばらく変わらないので、散歩後に手を入れる場所も当分は変わりません。変えるのは頻度でも道具でもなく、届く姿勢で届く場所だけをやる、という順番のほうです。10分の散歩と5分の手当て。老犬とのその往復が、毎日いちばん長く続く時間になります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。