C12Q&A・豆知識

涙は1日にどれくらい作られるか

公開日 2021年9月17日|文=mofuwa編集部

明るく清潔な部屋の窓辺で、やわらかな日ざしを受けながら落ち着いて伏せている淡い色の犬
涙は目にとどまっているものではなく、作られては流れていくものだとされています。写真:Jessika Arraes/Pexels

犬の目のふちには、まばたきのたびに新しい涙が広げられていて、その涙は起きているあいだじゅう少しずつ作られ続けています。1日にどれくらいの量が作られるかは、一つの数字では言えません。個体差が大きく、測り方や測った時間帯によっても変わるからです。そのうえで、この記事でいちばん書きたいのは量のほうではありません。涙は「出る」ものではなく「流れている」ものだ、という点です。作られる量と、流れていく量。この2つは、ふだんつり合っています。つり合いが崩れて目の下が濡れて見えるとき、多くの場合そこで起きているのは、作られる量が増えたことではなく、あふれたということです。この記事では、犬の涙の量をめぐる疑問を8つの問答に分けて書きます。量が一つの数字で言えない理由、涙が通っていく道筋、家で見られるのは量ではないということ、そして毎日のケアでできることとできないことまで含めます。

犬の涙は1日にどれくらいの量が作られるのですか

答えから書きます。犬について「1日◯ミリリットル」と言い切れる、広く共有された数字はありません。体の大きさ、年齢、その日の環境、測った時間帯で動きます。数字を1つに決めて書くほうが読みやすいのですが、それは精度を偽ることになります。

比べる相手として、人の数字を置いておきます。人では、泣いていないときに作られる涙が1日およそ1〜2ミリリットル程度と言われることが多くあります。ティースプーン1杯がおよそ5ミリリットルなので、1日ぶんを集めてもスプーン半分に届きません。これは「思ったより少ない」と感じる数字だと思います。犬で同じ数字が当てはまるわけではありませんが、桁の感覚をつかむ相手としては使えます。

そして、この記事の中心はここからです。1日あたりの量という数え方そのものが、涙にはあまり向いていません。涙は、コップにためて日が暮れたら量る、というものではないからです。作られたそばから広げられ、流れていく。1日ぶんという量は、通り過ぎていったものの合計です。涙は「出る」ものではなく「流れている」ものだ、というのが、この記事でいちばん伝えたいことです。

Noteこの記事が扱うのは、涙という水の動き方です

涙やけの原因や、その手当てについては扱いません。目のまわりの色や湿りには、いくつもの背景がありえて、家で見ただけで決められるものではないからです。この記事で書けるのは、涙がどこで作られ、どこへ流れていくのかという道筋と、量という数字の読み方までです。目そのものの状態については、§8のとおり動物病院にご相談ください。

涙の量とは、何を数えた数字ですか|たまる量ではなく、通り過ぎる量

涙の量という言葉には、実は2つの意味が混ざっています。1つは、いま目の表面にどれだけ乗っているかという量。もう1つは、ある時間のあいだにどれだけ作られたかという量です。前者はコップの中身、後者は蛇口から出た合計にあたります。同じ「量」という言葉ですが、数えているものが違います。

「涙の量」という言葉が指している2つのもの
いま乗っている量作られた量
たとえるならコップの中身蛇口から出た合計
数え方ある瞬間の状態ある時間のあいだの合計
変わりやすさまばたきのたびに動くその日の条件で動く
家で分かるか分からない分からない
1日◯ミリリットルはどちらかこちらではないこちら

犬の目の表面に乗っている涙は、ごく薄い膜です。まばたきのたびに、まぶたがワイパーのように涙を全体へ広げているとされています。広げられた涙は、目の表面を覆いながら、目頭のほうへ移っていきます。つまり、いま乗っている量というのは、常に入れ替わっている途中の量です。ためた水ではありません。

だから、量を問うなら「通り過ぎる速さ」を問うほうが実態に近くなります。作られる量と、流れていく量。犬の目では、この2つがふだんつり合っています。つり合っているあいだは、目のふちに何も見えません。見えないというのは、涙が少ないという意味ではなく、通り過ぎているという意味です。

この見方に切り替えると、1つのことがはっきりします。目の下が濡れていない犬でも、涙は絶えず作られています。濡れているかどうかは、作られている量の多い少ないを表していません。表しているのは、つり合いが取れているかどうかです。

なぜ涙の量を一つの数字で言えないのですか|個体差と、測り方の条件

理由は2つあります。1つは個体差そのものが大きいこと。もう1つは、測り方によって出てくる数字が変わることです。この2つは別々の話で、どちらか片方を解決しても、一つの数字にはなりません。

最後の項目について書き足します。動物病院では、目のふちに細い紙を当てて、決まった時間に濡れた長さを測る検査が行われることがあります。これは量を直接ミリリットルで量っているのではなく、決まった条件のもとで比べられる形に置き換えている検査です。数字の読み方も、その場で見ている人が決めることになります。家で真似できるものではありませんし、家で出した数字には比べる相手がありません。

測り方が変われば数字が変わる、というのは、涙にかぎった話ではありません。生きものの数値には、必ず個体差と測定条件が乗ります。だからこの記事では、犬の涙について「1日◯ミリリットルです」という書き方をしません。特定の論文名や機関名を出典として挙げることもしません。持っていない出典を装うほうが、数字そのものより読み手を誤らせます。

Note数字は「およそ」と「とされる」で受け取ってください

この記事に出てくる数字は、一般に目安として言われている幅を紹介したものです。その子について正確な数値が必要になる場面なら、それは家で調べる話ではなく、動物病院で相談する話になります。犬の涙は1日◯ミリリットルですと1つの数字で書かれているものを見かけたら、何を測ったのか、誰が測ったのか、どんな条件だったのかを確かめてください。

作られた涙は、そのあとどこへ行くのですか|流れ道という通り道

涙の行き先は、大きく2つに分かれるとされています。1つは、目の表面から空気中へ蒸発していく分。もう1つは、目頭にある小さな穴から流れ出ていく分です。この穴から先の通り道を、まとめて涙の流れ道と呼びます。鼻のほうへつながっているとされていて、通ったものは最終的に鼻へ抜けます。

涙が通っていく道筋 涙は目のまわりで作られ、まばたきで目の表面へ広げられ、目頭の小さな穴から流れ出ていきます。この流れが細くなると、目のふちからあふれます。 涙腺 作る 目の表面 広がる 涙点 流れ出る まばたきで全体へ広げられる 目頭の小さな穴へ入る つり合っているとき 作られる量と流れる量が近い 目のふちには何も見えない 流れ出る側が追いつかないとき 行き場のない涙が残る 目のふちを越えて下へ落ちる
作られる量ではなく、流れ出る側が追いつくかどうかで、目の下が濡れるかが決まります。

この図で見てほしいのは、真ん中ではなく右端です。涙の量が話題になるとき、たいてい見られているのは左端の「作る」ところですが、目の下が濡れるかどうかを決めているのは右端の「流れ出る」ほうです。作られる量が変わらなくても、流れ出る側が細くなれば、行き場のない涙が残ります。

水道とシンクにたとえると分かりやすくなります。蛇口の勢いが同じでも、排水口の通りが悪ければ水はあふれます。あふれた水を見て「蛇口が強すぎる」と考えるのが、涙の量に注目したときの見方です。実際には、確かめる先が2つあります。作る側と、流れる側です。

ただし、どちらが起きているかを家で見分けることはできません。流れ道が通っているかどうかは、外から見て分かる場所にないからです。この記事が「原因はこれです」と書かないのは、そのためです。書けるのは、確かめる先が2つあるという構造までです。

目の下が濡れているのは、犬の涙の量が多いということですか

そうとは限りません。目の下が濡れているというのは、涙があふれた、ということを表しています。あふれる理由は、作られる量が増えたときにも起きますし、流れ出る側が追いつかないときにも起きます。見えている結果は同じなので、そこから量の多い少ないは読み取れません。

同じ「濡れている」という見え方から、読み取れることと読み取れないこと
見えていること読み取れること読み取れないこと
目の下の毛が湿っている涙が目のふちを越えている作られた量が多いのかどうか
片側だけ濡れている左右で条件が違っているどちらが「正常」なのか
日によって濡れ方が違う条件が日ごとに動いている何がその条件なのか
拭いてもすぐ戻る流れ続けている流れ道の状態
濡れていないつり合いが取れている涙が少ないということ

表のいちばん下の行が、この記事の要点です。濡れていないことは、涙が作られていないことを意味しません。つり合いが取れているだけです。逆に、濡れていることも、量が多いことを意味しません。「濡れている/濡れていない」という見え方は、量の話ではなく、つり合いの話です。

犬の顔は、目のまわりの毛の長さも、目の位置も、鼻筋の形も、1頭ずつ違います。同じだけあふれていても、毛が長ければ湿った範囲が広く見えますし、毛が短ければ見えにくくなります。だから、他の子と比べて濡れ方が多いか少ないかを見ても、その子の涙の量については何も分かりません。比べる相手にできるのは、同じ子の先週です。

家で書き留めておくとしたら、量ではなくこの3つです。いつから濡れているか、片側か両側か、拭いてから戻るまでにどれくらいかかるか。どれも量を測っていませんが、動物病院で話すときに使える情報になります。ミリリットルの数字より、この3つのほうが役に立ちます。

犬の涙の量は、家で測れますか|家で見られるのは量ではないもの

測れません。そして、測れないことは困ったことではありません。量が分かっても、そこから決められることがほとんどないからです。多いか少ないかより、変わったかどうかのほうが、家では使える情報になります。

  1. 同じ時刻に、同じ明るさで見る

    朝の窓辺と決めてしまうのがいちばん簡単です。夜の照明の下では、湿り方も色も分かりません。時刻と明るさをそろえるだけで、先週との比較ができるようになります。

  2. 左右を別々に見る

    犬の目のまわりは、左右で条件が違うことがあります。まとめて「濡れている」と記録すると、片側だけの変化を見落とします。左と右で1行ずつ書きます。

  3. 濡れている範囲を、指の幅で数える

    定規は要りません。目の下から、指1本ぶんか、2本ぶんか。その子の顔に対する相対的な大きさなので、体格が違っても自分の記録の中では比べられます。

  4. 拭いてから、戻るまでの時間を見る

    やわらかい布を当てて湿りを取り、そのあと何時間で同じところが湿るか。時間そのものより、先週と比べて短くなっているか長くなっているかを見ます。

この4つは、どれも量を測っていません。測っているのは、その子の中での変化です。個体差が大きいものは、他の子と比べても意味が出ません。比べる相手を同じ子の過去に置けば、個体差はまるごと消えます。犬の涙のように幅の大きい数値では、この置き換えがそのまま解決になります。

記録は、手帳の隅で足ります。日付、左右、指何本ぶん、戻るまでの時間。4項目だけを、毎日でなくてかまわないので週に2回ほど。毎日つけようとすると続かず、続かない記録は比べる相手になりません。週2回でも、1か月で8点の記録がたまります。

涙のまわりで、毎日のケアとしてできることとできないこと

できることとできないことを、先に分けておきます。涙が作られる量にも、流れ道の通りにも、家から手は届きません。手が届くのは、あふれたあとの外側だけです。目のまわりの毛と、その下の皮膚。つまり、涙そのものではなく、涙が乗っている場所のほうです。

涙のまわりで、家からできることとできないこと
内容
できる目の下の毛が湿っている時間を短くする
できる毛が目に当たり続けないように、長さを整えてもらう
できる濡れている範囲と、戻るまでの時間を記録する
できない作られる涙の量を変えること
できない流れ道の通りを確かめること
できない見えている色や湿りから、原因を決めること

できることの1行目について、具体的に書きます。やわらかい布を目の下に当てて、湿りを移す。こするのではなく、押し当てて吸わせます。毛の流れに逆らってこすると、毛の中に湿りを押し込むことになります。当てて、離す。それだけで、湿っている時間が短くなります。

その子が自分の目のまわりにできるのは、前足でこすることと、床に顔をつけることです。どちらも、湿りを毛の外へ出すのではなく、毛の中へ押し込む向きの動きになります。湿っている時間を短くする側に回れるのは、人のほうだけです。布に含ませるものとして置いているのは mofuwa スキンケアミスト です。中身が電解水だけなので、目のまわりや口のまわりのように、ほかのものを置きにくい場所にも使えます。顔まわりに使うときは、必ず布に取ってから当ててください。直接吹きかけない、というのがいちばん大事な決めごとです。目そのものに入れるものではありませんし、目に入れる用途で作られたものでもありません。使うのは、目の下の毛と、その先の頬まで。当てて、離す。こすらない。

できないことの3行目を、もう一度書いておきます。見えている色や湿りから、原因を決めることはできません。目のまわりの変化には、いくつもの背景がありえます。毎日のケアでできるのは、湿っている時間を短くすることと、記録を残すことまでです。ここから先は、次のセクションに渡します。

涙の量をめぐる疑問

最後に、8つの答えを1つの表に並べます。この記事で扱えたのは、涙という水の動き方と、量という数字の読み方までです。その子の目で何が起きているかは、家では決められません。

8つの疑問と、その答え
疑問答え
犬の涙は1日にどれくらいの量か一つの数字では言えない。個体差と測り方で動く
比べる相手になる数字はあるか人でおよそ1〜2ミリリットル程度と言われる。犬にそのまま当てはめない
涙の量とは何を数えたものかたまる量ではなく、通り過ぎていく量
なぜ一つの数字にならないのか体格・年齢・環境・時間帯・測り方で変わるため
作られた涙はどこへ行くのか蒸発する分と、目頭の穴から流れ出る分に分かれる
目の下が濡れているのは量が多いからかそうとは限らない。あふれた、ということしか分からない
家で量を測れるか測れない。見るのは量ではなく、その子の中での変化
毎日のケアでできることは湿っている時間を短くすることと、記録を残すこと

表の6行目が、この記事の核です。涙は「出る」ものではなく「流れている」ものです。だから、目の下が濡れているのを見たときに考えるべきなのは、蛇口の勢いだけではありません。流れ出る側が追いついているかどうかも、同じだけ関わっています。この2つのうち、家から見えるのはどちらでもありません。

できることは、記録を持って相談することです。いつから、片側か両側か、指何本ぶんの範囲か、拭いてから戻るまでどれくらいか。この4つを書いた紙が1枚あるだけで、話が早く進みます。犬の涙の量を数字で言えなくても、変化の向きは伝えられます。

Caution目のまわりの変化は、動物病院にご相談ください

急に濡れる範囲が広がった、片側だけ濡れるようになった、目を気にしてこすっている、まばたきの回数が増えた、目やにの量や色が変わった、目のふちが赤い、まぶたが腫れている、明るい場所をいやがる、元気や食欲が落ちている。こうした変化があるときは、拭き取りの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。目は、家での様子見が長くなるほど判断が難しくなる場所です。いつから、どちら側で、どんな変化があったかを書き出して持っていくと、その場で切り分けてもらえます。涙の量を家で数えることはできませんが、変わったという事実を伝えることはできます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。