C12Q&A・豆知識
犬用シャンプーを猫に使ってもいい?
犬用シャンプーのボトルの裏面には、たいてい「犬用」とだけ書かれていて、それ以外の動物についての記載はありません。犬用シャンプーは、猫には使いません。理由は成分が強いからではなく、体についたものを口に入れる量を、犬用シャンプーが想定していないからです。猫は起きている時間の3割ほどを毛づくろいに使うとされていて、洗い上がった被毛は、そのまま口を通ります。犬用シャンプーが決めているのは、犬がなめる量を前提にした残り方のほうです。この記事では、犬用シャンプーと猫のあいだにある前提の違いを、8つの問答に分けて書きます。
犬用シャンプーを猫に使ってもいいですか|その線を引いているもの
答えから書きます。犬用シャンプーは、猫には使いません。ただ、その線を引いているのは製品の側ではなく、猫の側の習性です。猫は自分の体をなめて手入れをします。洗って乾かした被毛は、そのあと何度も口を通ります。犬用シャンプーが想定しているのは、犬がなめる量です。猫がなめる量は、その想定の中に入っていません。
製品に「犬用」と書かれているのは、対象動物を決めたという意味です。対象動物を決めるというのは、その動物の皮膚と被毛、体格、洗ったあとの行動を前提に、洗浄成分の種類と濃度、1回あたりの使用量、すすぎやすさを組み立てたということです。前提が決まっているから、使い方も決まります。前提の外で使うと、使い方の側だけが手元に残って、根拠になっていた条件が外れます。
- 洗浄成分の種類と濃度:どのくらいの濃さで、どのくらいの時間置くか
- 1回あたりの使用量:どの体格に対して、どれだけ使うか
- すすぎ:その動物の被毛の密度で、どれだけ流れ落ちるか
- 乾かすまでの時間:乾かす手順まで含めて、どのくらいで終わるか
- 洗ったあとの行動:体を振るのか、こすりつけるのか、全身をなめて回るのか
この5つのうち、いちばん下だけが動物によって大きく入れ替わります。だから「犬用シャンプーは猫にとって害がある」という言い方より、「猫での使い方は、その製品が確かめている範囲の外にある」という言い方のほうが正確です。危ないかどうかを断定する話ではなく、確かめられている範囲がどこまでか、という話です。
犬用シャンプーとは、何を前提にして作られた製品ですか
犬用シャンプーとは、犬の皮膚と被毛に合わせて、洗浄成分の種類と濃度、pH、すすぎやすさ、1回の使用量を決めた製品のことです。ここで決めているのは中身だけではありません。「どう使われるか」まで含めて1セットになっています。使い方が変われば、決めたときの条件も一緒に変わります。
| 決めていること | 犬用シャンプーの前提 | 猫では変わるところ |
|---|---|---|
| 対象動物 | 犬の皮膚と被毛 | 毛づくろいの量が大きく違う |
| 1回の使用量 | 犬の体格に対する量 | 体重あたりの量が変わる |
| すすぎ | 犬の被毛の密度で流れ落ちる量 | 被毛の密度と長さが違う |
| 乾かす手順 | ドライヤーとタオルで乾かす前提 | 音を嫌がって、乾く前に離れることがある |
| 洗ったあとの行動 | 体を振る、床にこすりつける | 全身を順番になめて回る |
表の右の列は、犬用シャンプーの設計に入っていない条件です。いちばん下の行が、この記事でいちばん重い1行になります。体を振ってこすりつける動物と、全身をなめて回る動物では、洗ったあとに製品が「どこへ行くか」が変わります。前者では床と空気へ、後者では口の中へ向かいます。同じ残り方でも、行き先が違えば、想定すべき量が変わります。
対象動物の記載は、製品を選ぶときに先に見るところです。ただ、この記事で書きたいのは表示の読み方そのものではありません。「猫用」と書かれた製品が、何を前提に量を決めているのか。その前提の中身が、犬用シャンプーとどこで分かれているのか。そこが分かると、表示の1行が何を引き受けているのかも読めるようになります。
猫の毛づくろいは、洗ったあとの被毛をどう扱っているのですか
猫が体をなめている時間は、起きている時間のうち3割ほどにのぼるとされています。これは幅のある目安で、個体差も、年齢による差も、季節による差もあります。それでも桁として言えるのは、猫にとって毛づくろいが「ときどきする行動」ではなく、一日の中の主要な行動のひとつだということです。
猫の舌の表面には、後ろ向きの細かい突起が並んでいるとされています。この突起が櫛のように働いて、抜けかけた毛や表面についたものをすくい取ります。すくい取ったものは、そのまま口の中へ入ります。ブラシと違って、集めたものを捨てる工程がありません。ここが、犬と猫でいちばん違うところです。
- 届く範囲が広い:前足をなめてから顔をぬぐうので、直接口が届かない場所にも回ります
- 回数が多い:一度で終わらず、休んでは再開する形で一日じゅう続きます
- 乾く前から始まる:濡れている状態でも毛づくろいは始まります
- 集めたものを捨てない:ブラッシングと違って、取ったものは口に入ります
- 同居の相手もなめる:多頭の家では、ほかの子の体をなめて回ることがあります
犬も自分の体をなめます。ただ、口が届く範囲と回数が違います。犬用シャンプーは、この「犬がなめる量」を前提にした残り方で設計されています。猫に使うと、同じ残り方に対して、なめる量のほうが何倍かに増えます。製品の中身は1ミリも変わっていないのに、口に入る量だけが変わる。前提が違うというのは、こういう形の違いです。
成分が強いから使わない、という説明ではないのですか
違います。ここがこの記事の中心です。犬用シャンプーを猫に使わない理由は、成分の強さではなく、想定している摂取量の前提が違うことにあります。成分の強さだけで説明しようとすると、「低刺激と書いてあるものなら猫に使える」という結論になりますが、そうはなりません。低刺激かどうかは濃度と成分の話であって、なめる量の話ではないからです。
口に入る量は、掛け算で決まります。濃度 × 洗い上がりに残る量 × なめる回数 × 続ける期間。このうち製品が決めているのは、いちばん左の1つだけです。真ん中の2つは動物によって変わり、いちばん右は飼い主の使い方で変わります。犬用シャンプーが「犬用」であるというのは、この4つを犬の側で組み合わせた結果として、量が収まっているという意味です。
- 濃度:製品が決めている。表示から読める
- 残る量:被毛の密度と、すすぎの条件で変わる。家では測れない
- なめる回数:動物種で大きく変わる。猫はここが多い
- 続ける期間:使う頻度で変わる。1回と毎週では別の話になる
だから この成分は強いので猫には危険です という言い方は、4つあった条件を1つに減らしてしまっています。実際には、弱い成分でも量が増えれば前提から外れますし、条件がそろっていれば同じ成分でも収まります。強い・弱いという1本の物差しでは、この掛け算を表せません。
犬用シャンプーは、犬のために条件を組んで作られた製品です。その条件の中で使うぶんには、想定どおりに設計されています。ここで書いているのは、猫に使うと前提の組み合わせが崩れる、という物の条件だけです。製品の良し悪しの話ではありません。同じことは逆向きにも言えて、猫用として量を組んだ製品を犬に使う場合も、前提はそのままでは移りません。
よくすすげば、犬用シャンプーを猫に使えることになりますか
なりません。すすぎで減らせるのは残る量だけで、なめる回数のほうは変わらないからです。そして、どれだけ残っているかを家で確かめる方法がありません。被毛の内側は見えず、指ざわりで分かるのは表面だけです。「よくすすいだ」というのは、量の話ではなく、手ごたえの話になります。
- どれだけ残ったか:見た目でも指ざわりでも測れません
- どこに残ったか:わきや内股など、すすぎ湯が回りにくい場所があります
- 乾くまでの時間:長いほど、乾く前の毛づくろいが増えます
- 1回あたりの量:体格に対する量を、家で量ることはほとんどありません
もうひとつ、猫を洗う工程そのものに時間の制約があります。水の音とドライヤーの音を嫌がる子では、すすぎと乾かす時間を長くとること自体が難しくなります。タオルで水気を取ってから乾かすまでの手順を短くしたい、という力が働くので、いちばん時間のかかるすすぎが削られやすくなります。前提を埋めるためにすすぎを増やしたいのに、現場では逆向きの力がかかります。
まとめると、答えはこうなります。すすぎの量では、犬用シャンプーと猫のあいだにある前提の違いを埋められません。埋まったかどうかを確かめる手段が家にない以上、埋まったことにはできない、というのが正確な言い方です。
犬と猫が同じ家にいるとき、洗った日はどこを分けますか
同居の家では、もうひとつ経路があります。犬を犬用シャンプーで洗った日に、猫がその犬をなめる、という経路です。多頭の家では、同居の相手の体をなめる行動がよく見られます。この場合、猫に犬用シャンプーを使っていなくても、猫の口には入りえます。分けるべきなのは製品だけでなく、洗った日の時間と場所のほうです。
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洗う日を決めて、洗う側と洗わない側を分ける
犬を洗う日に、猫も一緒に手入れをしようとすると、乾かす時間がどちらも足りなくなります。洗うのは1日1頭までにして、もう1頭はブラッシングだけにすると、乾かす手順のほうに時間を回せます。
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タオルで水気を取るところまでを、その場で終わらせる
濡れたまま部屋に戻すと、乾く前の毛づくろいと、同居の相手がなめる行動が同時に始まります。タオルで水気を取る工程は、洗う場所から出る前に終わらせてください。ここが短いほど、あとの時間が短くなります。
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乾くまでのあいだだけ、部屋を分ける
完全に乾くまで、同居の相手と同じ部屋に置かないようにします。分けるのは「洗った子」ではなく「乾いていない時間」です。乾いたら戻して構いません。何時間も隔離しておく必要はありません。
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ボトルの置き場所を、その子が届かない場所にする
犬用シャンプーのボトルは、猫が乗る棚やカウンターの上に置かない。キャップの口についた残りをなめる、という経路をひとつ減らせます。置き場所は、使い方より先に決められる条件です。
この4つに共通しているのは、製品を選び直すのではなく、時間と場所を分けているだけという点です。同居の家でいちばん動かしやすいのはここで、いちばん見落とされやすいのもここです。犬用シャンプーの話は、猫に直接使うかどうかだけでは終わりません。
すでに猫に使ってしまいました|そのあと48時間で見ておくこと
まず、1回使ったことを取り返そうとして、洗い直しを重ねないでください。洗う回数が増えるほど、濡れている時間と乾かす時間が延びます。すでに使ってしまったときは、そのあとの様子を見るほうへ切り替えます。そして、次に挙げる変化があるときは、様子を見る前に動物病院にご相談ください。
- よだれが増えた/口をくちゃくちゃさせる:口の中の違和感として出ることがあります
- 食欲が落ちた・水を飲まない:いつもの量と比べて分かる変化です
- 同じ場所をなめ続ける:洗ったあと数時間から半日で出ることがあります
- 地肌の赤み・かさぶた・脱毛:毛をかき分けて、地肌の色を見てください
- 元気がない・隠れて出てこない:行動の変化は、体の変化より先に出ることがあります
- 嘔吐が続く:回数と、いつからかを記録しておくと相談が早く進みます
上のどれかが出ているとき、あるいは何も出ていなくても心配なときは、使った製品のボトルを持って動物病院にご相談ください。成分表示をその場で見てもらえると、話が早く進みます。いつ・どのくらい・何回使ったかも、分かる範囲でメモしておいてください。ここから先は家庭で判断する領域ではありません。この記事に書けるのは、製品がどういう前提で作られているかまでです。
何も変化がないときは、それ以上さかのぼって心配しなくて構いません。やることは、次に同じ経路をつくらないように、置き場所と使う日の組み立てを変えることだけです。犬用シャンプーを猫に使ってしまったという1回は、これから先の条件を決め直す材料として使えます。
犬用シャンプーと猫の問いを、通しで整理する|口に入る量を減らす側の手入れ
ここまでの答えを、短くつなぎ直します。
- 犬用シャンプーを猫に使うか:使いません
- 理由は成分の強さか:違います。想定している摂取量の前提が違うからです
- 低刺激と書いてあれば使えるか:濃度の話であって、なめる量の話ではありません
- よくすすげば足りるか:残った量を家で確かめる方法がありません
- 同居の家で気をつけること:乾いていない時間だけ、場所を分けます
- 使ってしまったら:洗い直さず、48時間の様子を見て、心配なら受診します
そして、この問いの手前にあるのは「猫をどのくらい洗うか」という別の問いです。猫は自分で毛づくろいをする動物なので、洗う回数を増やすことが手入れの充実にはなりません。水を使わずにできる手入れのほうが、猫の一日の過ごし方には合っています。ブラッシングで抜け毛を先に減らしておくと、毛づくろいで口に入る量そのものが減ります。
毎日の手入れに置く1本としては、mofuwa グルーミングスプレーがあります。この記事で分けた掛け算のうち、左の2つを最初から小さくしてある道具です。中身は還元水100%で、すすいで落とさなければならない洗浄成分が入っていません。だから「どれだけ残ったか」を家で測れないという問題が、そのまま口に入る量の問題にはなりません。清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、起きている時間の3割を毛づくろいに使う猫でも、なめる回数の側を気にしながら使う道具になりません。布に含ませてから毛の流れに沿って拭く形で、散歩から戻った犬の足まわりにも、ブラッシングの前にも使えます。グルーミングスプレーは犬と猫の両方を対象にしていて、なめる量の前提が最初から両方に置かれています。対象動物の記載を読むというのは、こういう形で確かめることです。
最後に一度だけ繰り返します。犬用シャンプーと猫のあいだにあるのは、良し悪しの差ではなく、前提の差です。その前提は、なめる量という、製品の外側にある条件で決まっています。選ぶときに見るのは中身の強さではなく、その中身が誰の暮らし方に合わせて量を決めたか、です。地肌の赤みや、なめ続ける行動が続くときは、使うものを選び直す前に動物病院にご相談ください。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
