C05犬種・猫種別ケア

ワイヤーダックスフンドと暮らすなら知っておきたい、毛のもつれの話

公開日 2021年10月26日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の床で、剛毛の被毛をもつ胴の長い小型犬が落ち着いて立っている
表面の硬い毛は、下で何が起きていても手ざわりを変えません。探す場所は、指が止まった深さで決まります。写真:TheOtherKev/Pixabay

背中をなでた手ざわりは、先週とまったく同じでした。それなのに毛の間へ指を立てて根元まで下ろすと、1センチほどで止まります。ワイヤーダックスフンドと暮らしていると、この食い違いに何度も出会います。上から見ても、なでても、変わったところは見つかりません。表面の硬い毛はいつもどおりに立っていて、その下にある柔らかい毛のほうが絡んでいます。ワイヤーダックスフンドのもつれは、見える層と起きている層がずれているのです。この記事では、表面の層と下の層を並べて比べながら、いま自分がどちらの層を触っているのかを確かめる手を書きます。

硬い毛の下に、もう1枚ある|ワイヤーダックスフンドの被毛が二層になっている理由

指先で背中の毛をつまむと、細い針金のような手ごたえがあります。1本1本が太く、まっすぐで、押し返してくる張りがある。ワイヤーダックスフンドの表面の毛は、そういう作りをしています。この毛だけを見ていると、絡むという想像がしにくい。実際、表面の毛どうしは、そう簡単には組み合いません。太くてまっすぐな毛は、隣の毛に巻きついていく形をしていないからです。

けれど被毛は1枚ではありません。硬い毛をかき分けて根元へ近づくと、その下に細くて柔らかい毛が生えています。手ざわりも、太さも、うねり方も、表面とは別ものです。同じ体の同じ場所に、性質の違う毛が上下に重なっている。これがワイヤーダックスフンドの被毛の作りです。

二層になっているのには理由があります。ダックスフンドは、もともと地面の下の巣穴に入って獲物を追う仕事をしていた犬です。狭いところを進めば、土も、根も、折れた枝も体をこすります。表面の硬い毛は、それを受け止めて外側で止める役です。下の柔らかい毛は、地面から伝わってくる冷たさを、含んだ空気でさえぎる役です。役目が違うので、毛の作りも違います。

この作りから、ひとつの困ったことが出てきます。表面の毛がしっかりしているので、下で何が起きていても、上から見た姿がほとんど変わらないのです。毛並みは整っている。なでた感じも変わらない。それでも指を入れると止まる。ワイヤーダックスフンドのもつれが見つけにくいのは、毛が絡みやすいからというより、絡んだところが硬い毛に覆われて見えないからです。

Note表面が整っていることは、下が整っている証明になりません

毛並みがきれいに見える日は、手を入れなくていい日だと思ってしまいます。けれど表面の毛は、下の毛の状態を映しません。硬い毛は自分の張りで形を保っているので、下がどうなっていても同じ向きに並びます。見た目で決めず、週に何度かは指を入れて確かめる、と決めてしまうほうが確実です。

表面の毛と、下の毛|ワイヤーダックスフンドのもつれを層で比較する

同じ日の、同じ体の、同じ場所です。それでも上の層と下の層では、起きていることが違います。まず何がどう違うのかを並べて比較してみます。どちらの層の話をしているのかが決まると、次に持つ道具まで決まります。

表面の層と下の層で、もつれの起き方を比較する
表面(硬い毛)下(柔らかい毛)
毛の性質太く、まっすぐで、張りがある細く、やわらかく、わずかにうねる
絡み方隣の毛に巻きつきにくい抜けた毛が根元に残り、束になる
換毛期の動き抜け替わりの山がはっきりしない季節の変わり目にまとまってゆるむ
静電気の出方毛先が広がって立つ根元の側で寄って、束が締まる
手ざわりの変化上からなでて分かる上からなでても届かない
気づくきっかけ毛の向きが乱れて見える指を入れて、途中で止まる
手を入れる道具毛の流れにそったブラシ毛を分ける指と、目の粗いコーム
表面の硬い毛と、下の柔らかい毛 同じ体の同じ場所でも、上の層と下の層では毛の性質が違います。表面は絡みにくく、下は抜けた毛が残って束になります。見るべき層が違うということです。 同じ体の中で、条件が2つに分かれます 表面(硬い毛) 太くまっすぐで、張りがある 隣の毛に巻きつきにくい 静電気では毛先が広がる 見て、なでて分かる 下(柔らかい毛) 細くやわらかく、うねる 抜けた毛が根元に残る 静電気では根元で寄る 指を入れないと分からない 同じ日でも、層によって起きていることが違います
探す層は、手ざわりではなく指の入り方で決まります。

表の中で、いちばん見落とされやすいのが換毛期の行です。ワイヤーダックスフンドは、床に毛が散る量が少ない子が多く、季節の抜け替わりがはっきりしません。それで換毛期という言葉と結びつきにくいのですが、下の柔らかい毛のほうは、春と秋の変わり目にちゃんとゆるみます。ゆるんだ毛は硬い毛に押さえられて外へ出られず、根元に残ります。残った毛が芯になって、束ができます。

静電気の行も、上下で向きが逆になります。空気が乾く時期、表面の硬い毛は毛先が広がって外へ立ちます。見た目には毛が膨らんだように見えるだけです。ところが下の細い毛は、同じ乾燥で互いに寄っていきます。広がる層と、寄る層が、同時にある。だから乾いた季節にとかすときは、表面をならすだけでは下が変わりません。

もうひとつ、うるおいの話をしておきます。地肌のうるおいが減ると、下の柔らかい毛は根元の滑りを失って寄りやすくなります。ここで洗う回数を増やすと、地肌の側がさらに乾きます。もつれたから洗う、という順番は、下の層にとっては逆向きの手です。ほどいてから洗う、が順番になります。

どっちの層で止まったか|指を立てて、深さで見分ける

見分ける手は、目で探すことではありません。手を入れて、どこで止まるかを覚えることです。ワイヤーダックスフンドの表面の毛は、下を隠したままだからです。次の順で確かめてください。犬を立たせて、片手で体を支え、もう片方の手だけを使います。

  1. 背中の毛に指を立てて、根元まで下ろす

    人差し指と中指をそろえて、毛の流れに逆らわない向きで差し入れます。地肌まですっと届けば、その場所は下の層まで通っています。途中で止まったら、そこが今日の起点です。力を入れて押し込まないでください。

  2. 止まった深さを、指で覚える

    毛の先のほうで止まったのか、地肌の手前で止まったのかを区別します。毛先の側で止まるのは、表面の毛の向きが乱れているだけのことが多い。地肌の手前で止まるなら、下の層に束ができています。同じ日に何か所か触って、深さの違いを比べると分かりやすくなります。

  3. 毛を左右に分けて、根元の線を見る

    指の腹で毛を分けて、地肌の見える線をつくります。下の毛が寄っているところは、根元の細い毛が数本ずつ束になって立ち上がって見えます。表面の硬い毛を無理に寝かせようとせず、分けた状態のまま見てください。

  4. 脇、耳の後ろ、胸、後ろ足のつけねを、同じやり方で

    この4か所は、皮膚と皮膚が近づく場所です。下の柔らかい毛が押しつぶされて、束が締まりやすくなります。4か所を1日で回そうとしないほうが続きます。1日1か所で十分です。

Point見るのは毛先、確かめるのは根元

表面の毛先は目でも分かります。下の層は、指の第一関節が入るかどうかで測ります。入る場所と入らない場所を、体の左右で比べてください。片側だけ止まるときは、寝るときの向きや、いつも当たっているものが片寄っていることがあります。ハーネスや首輪の当たる線は、真っ先に確かめる場所です。

確かめた結果は、その日のうちにひとことだけ残しておくと役に立ちます。「右の脇、地肌の手前で止まる」で十分です。次に同じ場所を触ったとき、深さが戻ったのか、同じままなのかが分かります。ワイヤーダックスフンドの下の層は見えないので、書いたものが目のかわりになります。

上をとかすか、下を分けるか|層で変わる道具と手の動かし方

ブラッシングという言葉はひとつですが、どちらの層に手を入れるかで中身が変わります。表面をならす日と、下を分ける日を、分けて考えてください。表面用の道具で下を触ろうとすると、硬い毛を押し込むだけになり、下の束はそのまま残ります。

層ごとの、道具と手の動かし方
表面に手を入れる日下に手を入れる日
先に使うもの毛の流れにそったブラシ指の腹。毛を分けるところから
動かす向き毛先から、流れにそって根元を支えて、毛先の側から上へ
1回の時間全身で3分ほど1か所30秒。日ごとに場所を変える
季節で足すこと乾いた日は先に毛先の広がりを落とす換毛期はゆるんだ下毛を運び出す
やらないこと硬い毛を逆立てて何度もとかす束の根元からコームを差し込む
  1. 乾いた季節は、とかす前に毛の表面をならす

    静電気が出ている日は、とかすほど毛先が広がって寄ります。mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませ、背中から腰へ一度なでてからブラシを入れてください。静電気の起きにくい状態にしてから梳かすと、表面の毛先も下の細い毛も同じ向きにそろいます。毛が湿ったと分かる程度で足ります。

  2. 表面は、流れにそって毛先から

    ワイヤーダックスフンドの硬い毛は、逆立てて何度もとかす必要がありません。毛先の乱れをそろえるだけで、表面の役目は足ります。ここで時間をかけても、下の層は1ミリも動きません。

  3. 下は、分けてから根元を支え、毛先の側からほどく

    束の見つかった場所は、まず毛を左右に分けます。次に束の根元を指ではさんで固定し、毛先の側から目の粗いコームを少しずつ入れます。根元から差し込むと、皮膚ごと引っぱることになります。1回でほどききらなくてかまいません。

  4. 換毛期は、運び出す係を人が代わる

    下毛がゆるむ時期は、抜けた毛が硬い毛に押さえられて外へ出られません。ゆるんだ毛を外へ運び出すのが、この時期のブラッシングの目的です。汚れを落とす作業ではなく、留まっている毛を出す作業だと考えてください。

  5. 洗う回数は、もつれに合わせて増やさない

    束が残ったまま水を含むと、乾くときにさらに締まります。洗う回数そのものを増やすと、地肌のうるおいも一緒に減ります。ほどいてから洗う。順番はこれだけです。

Caution硬い毛の下では、ハサミの先が見えません

束を早く取ろうとして、引き抜く・ハサミを入れる、はどちらも避けてください。束の下には、引っぱられて持ち上がった皮膚があります。表面の硬い毛に隠れて、ハサミの先が何に触れているか見えません。ほどけないものは、次のトリミングまで待つか、場所を伝えてサロンに任せてください。

ワイヤーダックスフンドは表面に硬い毛がある分だけ、下の層へ手が届く回数が少なくなります。だから毎日の側で届けておきます。mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませ、脇や後ろ足のつけねのように皮膚どうしが近づく場所を、毛の流れにそってなでてください。根元の滑りが残っている毛は、寄っても束になる前にほどけます。舐めても問題のない基準でつくられているので、量を気にせず根元までなじませられます。束が見つかっている場所は、なじませてから毛を左右に分け、根元を支えて毛先の側からほどいてください。

同じ深さに何度も戻るときは、層の話では終わりません

ここまでは、層で説明のつくもつれの話でした。ほどいた翌日に同じ深さで指が止まる、同じ一か所だけが繰り返し戻る。そういうときは、別の見方に切り替えてください。下の毛が寄る理由が、毛の側ではなく皮膚の側にあることがあります。

Caution束ではなく、地肌の側に理由があるとき

束の下の地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、自己判断でほどこうとせず、動物病院にご相談ください。硬い毛に覆われているぶん、変化が進んでから気づくことがあります。同じ深さで指が止まる日が3日続くなら、その時点で相談の材料になります。

相談やトリミングの前には、最後に手を入れた日、指が止まる場所、止まる深さ、いつから気づいたかをメモしてください。この4つがあると、層で説明のつくものかどうかが、その場で切り分けられます。ほどけなかった束は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。ほどこうとした跡があると、もとの状態が分からなくなります。

ワイヤーダックスフンドと暮らすうえで、下の層のもつれをゼロにすることはできません。硬い毛が上にある以上、ゆるんだ下毛の出口はふさがれたままだからです。起きないようにするのではなく、どこで指が止まるかを先に知っておく。表面の見た目で決めず、深さで決める。それだけで、次のトリミングまでの数週間はずいぶん違ってきます。

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よくある質問

ワイヤーダックスフンドは剛毛だから、もつれにくいのではありませんか?
表面の硬い毛どうしは、たしかに絡みにくい作りをしています。もつれが進むのは、その下にある柔らかい毛のほうです。抜けた下毛が硬い毛に押さえられて外へ出られず、根元に残って束になります。表面の手ざわりが変わらないので、上からは気づけません。
毛並みが整って見える日も、手を入れたほうがいいですか?
表面の毛は自分の張りで形を保つので、下の層がどうなっていても同じ向きに並びます。見た目は下の状態を教えてくれません。週に何度か、指を立てて根元まで下ろし、途中で止まらないかだけ確かめてください。止まらなければ、その日はそれで終わりで大丈夫です。
ワイヤーダックスフンドは床に毛が落ちませんが、換毛期はありますか?
床に散る量が少ないので気づきにくいのですが、下の柔らかい毛は季節の変わり目にゆるみます。ゆるんだ毛は上の硬い毛に押さえられて外へ出られないため、体の上に残ります。この時期のブラッシングは、残っている毛を外へ運び出すつもりで行ってください。地肌が赤い、においがあるといったときは、動物病院にご相談ください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。