C05犬種・猫種別ケア

ボーダーテリアのワイヤーコート|抜け毛を毎日のケアで防ぐ

公開日 2021年11月30日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、硬い毛の小型のテリアが薄い色の毛布の上に伏せている
床に落ちていない毛は、体の上に残っています。ブラッシングは、その毛を外へ運び出す作業です。写真:Erwin Bosman/Pexels

ソファの座面にも、掃除機の中にも、毛がほとんど残っていません。それなのに、背中の毛に指を差し込んで根元のあたりで少し動かすと、指の間に毛が何本も出てきます。ボーダーテリアと暮らしていると、この2つが同じ日に起こります。抜け毛の少ない犬種と言われることがありますが、実際には、役目を終えた毛が落ちずに体の上へ留まっているだけ、ということがあります。残った毛の下から、新しい毛が押し上げてくる。床はきれいなまま、体の上には溜まっていきます。この記事は、ワイヤーコートという被毛の作りと、毎日のブラッシングで何をしているのかという話です。

床に毛が落ちないのに、指を入れると毛が出てくる

うちに来て最初の年、掃除機の中身がいつまでも軽いことが不思議でした。前に暮らしていた犬は、春になると部屋の隅に毛が集まって、黒い服を着るのをあきらめる時期がありました。ボーダーテリアでは、それが起きません。ソファの座面をなでても手に何もつかず、寝床の布にも毛はほとんど残っていない。抜け毛の少ない犬なのだと、しばらく思っていました。

考えが変わったのは、ある日の夕方です。膝に乗せて背中をなでていて、なんとなく毛の間へ指を立てました。硬い毛が指を押し返してきますが、そのまま根元まで下ろして、指を少し前後に動かしました。指を抜くと、間に毛が何本も挟まっていました。1本や2本ではありません。もう一度入れると、また同じくらい出てきます。

その日は背中の3か所で同じことをして、そのたびに毛が出ました。床には落ちていない毛です。掃除機の中にも入っていません。ではその毛は、それまでどこにあったのか。答えは単純で、その子の体の上にありました。抜けたあとも、そこに留まっていたということです。

ボーダーテリアの抜け毛について書かれたものを読むと、少ない、あまり落ちない、という表現をよく見かけます。実際、床に落ちる量は少ないと思います。ただ、落ちる量と抜ける量は同じではありません。落ちていないことは、抜けていないことの証明にはなりません。この差が、この犬種の毎日のケアの中身を決めています。

Note掃除の手間が少ないことと、体の上の状態は別の話です

床に毛が落ちない被毛は、暮らしのうえでは助かります。黒い服も着られますし、車の座席も汚れません。そのかわり、抜けた毛はその子の体の上に残っています。目に入る場所に出てこないので、溜まっていることに気づくきっかけが少ない。ボーダーテリアのブラッシングは、汚れを落とす作業というより、留まっている毛を外へ運び出す作業です。

役目を終えた毛が、自然には抜け落ちない理由

ボーダーテリアは、イングランドとスコットランドの境の丘陵で、馬とハウンドについて走り、そのまま地面の下へ入っていく仕事をしていた犬種です。走る距離が長く、天気の悪い日も外にいます。だから被毛には、雨を弾き、藪をかき分け、寒さを通さないことが求められました。その結果が、外側の硬い毛と、その下の密な下毛という二重の作りです。

外側の毛は、太くて、まっすぐで、先へいくほど固くなります。指ではさむと、しなるというより、折れそうな手ごたえがあります。この硬さは、毛そのものが密に詰まっていることから来ています。そして、詰まっているということは、根元の側でもしっかり保持されているということでもあります。

柔らかい毛の犬種では、役目を終えた毛は根元での留まりがゆるみ、動いたときの摩擦や、風、寝返りだけで抜け落ちます。だから床に落ちます。硬い毛は、役目を終えてもその場に残ります。ゆるんではいるのですが、隣の毛が密に詰まっているので、抜けても外へ出ていく道がありません。留まったまま、被毛の一部としてそこにあり続けます。

つまり、ボーダーテリアの抜け毛が床で見えないのは、抜ける量が少ないからではなく、抜けたあとの行き先が体の上だからです。この犬種の被毛は、抜けた毛を自分では捨てません。専門のサロンでは、この留まった毛を手で抜いていく手入れが行われることがあります。硬い毛の犬種で昔から続いてきた方法で、家庭でやるものではありません。家でできるのは、留まっている毛のうち、すでにゆるんでいるものを毎日少しずつ外へ運び出すことです。

Caution家で毛を引き抜こうとしないでください

指に挟まって出てきた毛は、すでに根元から離れていた毛です。まだ離れていない毛を引くと、地肌ごと持ち上げることになります。手ごたえがある毛は、その日は出る毛ではありません。抜けるものだけが抜けるように、ブラシと指を通すところまでにしてください。留まったまま固まってしまったところは、サロンに場所を伝えて任せるほうが安全です。

新しい毛が下から押し上げてくる|溜まった抜け毛が変えていくもの

役目を終えた毛がその場に残っているあいだにも、皮膚の側では次の毛が伸びはじめています。新しい毛は、古い毛のすぐ隣、あるいは同じ根元の近くから出てきて、上へ伸びていきます。だから体の上には、役目を終えた毛と、これからの毛が同時にあります。下から押し上げられた古い毛は、少しずつ浮いてきて、被毛の表面の側へ移動していきます。

指を入れたときに出てきたのは、この浮いてきた毛です。もう根元から離れていて、隣の毛に引っかかっているだけの状態でした。だから指が触れただけで動きました。ゆるんだ毛は、指が入る深さのところに溜まっています。手のひらでなでるだけでは、表面をなでているだけなので、いつまでも出てきません。

溜まった毛をそのままにしておくと、被毛の中で起きることが少しずつ変わっていきます。抜け毛は、ただの落とし物ではありません。

換毛期についても、ここで書いておきます。多くの犬種では、春と秋に下毛がまとまって抜けて、床に落ちる量が増えます。それが季節の区切りになります。ボーダーテリアでは、換毛期が床では分かりません。抜けた毛が落ちてこないので、掃除機の中身は一年を通してあまり変わりません。区切りが見えるのは、体の上のほうです。指を入れたときに出てくる量が増える、ブラシの通りが悪くなる、といった形で現れます。

だからこの犬種では、カレンダーで換毛期を見るより、指で確かめるほうが早い。毎日同じ場所に指を入れていれば、その量の変化はすぐ分かります。先週は2〜3本だったところが、今週は片手で握れるくらい出る。そういう変わり方をします。

取り除くのではなく、毎日少しずつ外へ運び出す|ボーダーテリアの抜け毛の考え方

毎日のケアの目的をどう置くかで、やることが変わります。溜まった抜け毛をその日に取りきろうとすると、必ず力が入ります。硬い毛を強く引くことになり、地肌が持ち上がります。そうではなく、今日ゆるんでいる毛だけを外へ出す。明日はまた明日ゆるんだ毛が出てくる。この考え方に切り替えると、1回が短くなって、続くようになります。

毎日のケアで防ぐのは、抜けること自体ではありません。抜けるのは体の入れ替わりなので、止めるものではありませんし、止める必要もありません。防ぎたいのは、外へ出ていかない毛が溜まりきってしまうことのほうです。溜まりきってから手を入れると、量も力も要ります。毎日少しずつ運び出していれば、そもそも溜まりきりません。

  1. 手のひらではなく、指を毛の中に立てる

    背中に手のひらを当てて滑らせても、硬い毛の表面をなでているだけです。指を4本、毛の中に立てて、根元の手前まで下ろします。そこで前後に小さく動かすと、ゆるんだ毛が指の間へ出てきます。力は要りません。抵抗がある毛は、まだその日の毛ではありません。

  2. ブラシは、毛の流れに沿って一方向に通す

    首から腰へ、背中から体の横へ。硬い毛は向きが決まっているので、逆に入れると先が地肌に当たります。往復させず、一方向に。根元まで届いてから毛先へ抜ける、という一筆を意識してください。通り道の途中で止まるところがあれば、そこに溜まっています。

  3. 溜まりやすい場所を、先に決めておく

    首の後ろ、肩の上、腰、しっぽのつけね、脇。この5か所は、動きが少ないか、外から手が入りにくいところです。全身を回そうとせず、1日2か所と決めるほうが続きます。ボーダーテリアの体は大きくないので、2か所なら3分もかかりません。

  4. 乾いた季節は、とかす前に毛先の滑りをそろえる

    空気が乾くと静電気が起きて、浮いた毛先が隣の毛に絡みます。この状態でブラシを入れると、外へ出るはずの毛が途中で引っかかります。とかす前に mofuwa グルーミングスプレーを硬い毛の表面へ吹きかけ、毛の流れに沿って一度なでてください。抜け毛を減らすためではなく、外へ出る道をつくるための一手です。濡らしきらなくてかまいません。毛先の浮きがおさまる程度で、ブラシの一筆が根元まで届くようになります。

  5. 洗う回数は、抜け毛の量に合わせて増やさない

    洗えばその日は毛が流れていくので、たくさん抜けたように見えます。ところが密な被毛は乾くのに時間がかかり、半乾きのまま置くと根元に湿りが残ります。洗う間隔は、汚れとにおいで決めてください。洗った日は、地肌まで乾かしきるところまでを1セットにします。回数を増やすと、地肌のうるおいも一緒に減っていきます。

この手順で mofuwa グルーミングスプレーを使っているのは、硬い毛の表面に吹きかけて、そのまま一筆に入れられるからです。犬は体から脂を出すので、毎日きれいにしてあげたくなります。けれど毎日シャンプーはできず、サロンにも毎日は通えません。その毎日を3分で成立させるためにつくられた1本なので、吹きかけてブラシを通すだけで終わります。中身は還元水100%で、香料もアルコールも足されていません。ボーダーテリアの被毛は密なので、根元まで届かせようとすると量が要りますが、その量を数えずに使えます。

こうして毎日運び出していると、指を入れたときに出てくる量が、その子の平常値として分かってきます。数を数える必要はありません。手ごたえで覚えられます。いつもより多い日、少ない日、まったく出ない日。この変化が、あとで書く相談のきっかけになります。

Point1回を短くするほど、根元まで届きます

10分やろうとすると、たいてい表面をなでる時間が長くなります。3分と決めて、その3分を全部、指を立てるほうに使ってください。ボーダーテリアの抜け毛は根元の近くに溜まっているので、届いた深さがそのまま結果になります。時間の長さではありません。

指に出てくる量ではなく、出方が変わった日に線を引く

ここまでは、被毛の作りと毎日の手入れで説明のつく範囲の話でした。指を入れたときの出方が、いつもと違う形に変わったときは、被毛の話として扱わないでください。次のような変化があれば、様子を見る前に相談してください。

Caution硬い毛を分けて、地肌のほうに出ているサイン

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。ひとつでも見えたら、ケアのやり方を変えて様子を見る前に動物病院へ連れていってください。密な被毛の中の変化は、外から見て分かるものばかりではありません。硬い毛は分ければ地肌が見えるので、まだ迷っている段階でも伝えられる材料が手元にあります。

相談に行くときは、いつから変わったか、どの場所か、指を入れたときの出方がどう変わったか、洗う間隔をどうしているかをメモしてください。ボーダーテリアの場合、床に落ちた毛の量では説明できません。「掃除機の中身は変わっていませんが、背中に指を入れると先月の倍くらい出ます」という言い方のほうが、はるかに伝わります。

毛を分けて地肌を撮った写真も、1枚あると役に立ちます。診察室の照明は家の窓辺とは違いますし、硬い毛は分けた場所がすぐ戻ってしまうので、その場で再現できないことがあります。撮っておくだけで、伝えられることが1つ増えます。

床に毛が落ちないというのは、ボーダーテリアと暮らすうえでの気楽さのひとつだと思います。ただ、落ちていない毛はどこかにあります。その行き先が体の上だと知っていれば、毎日の3分の意味も変わってきます。取り除く作業ではなく、外へ出ていけない毛の運び役を人が代わっている。そう考えると、指を入れて出てきた毛の量が、その日いちばん確かな手がかりになります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。