C05犬種・猫種別ケア

エアデールテリアはなぜ毛のもつれが起きやすいのか。ワイヤーコートから考える

公開日 2021年12月7日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、硬い毛の大型テリアが静かに立っている
硬い毛は、組んだ形のまま動きません。ほどく作業ではなく、組ませない場所を決める作業になります。写真:TheOtherKev/Pixabay

エアデールテリアの毛を1本つまんで指で二つ折りにすると、離しても折り目がまっすぐには戻りません。テリアの中でいちばん大きな体を覆っているのは、針金のように硬い剛毛です。ワイヤーコートと呼ばれるこの硬さが、毛のもつれの性質そのものを変えます。柔らかい毛のもつれなら、指を差し込めば少しずつ緩みます。硬い毛は緩みません。押しても引いても、組んだときの形のまま動かない。つまりエアデールテリアでは、もつれてから手を入れるという順番が成り立たないということです。間に合わせる方法はひとつだけで、もつれる前に指を入れること。この記事では、なぜ硬い毛がほどけないのかを先に書いてから、どこを触るかを決める手順へ進みます。頻度を上げる話ではなく、場所を絞る話です。

エアデールテリアの毛は、組んだ形のまま戻りません

毛がほどけるというのは、毛が動くということです。2本の毛が組み合っていても、片方が少し曲がれば、そこにすき間ができます。すき間ができれば指が入り、順に外れていきます。柔らかい被毛のもつれをほどけるのは、毛のほうが形を変えてくれるからです。

エアデールテリアの被毛は、そこが違います。硬い毛は、外から力を加えても自分の形を変えません。組んだときの角度が、そのまま残ります。指を差し込んでも、すき間が生まれないので広がりません。だから、ほどこうとすると毛ではなく皮膚のほうが動きます。引っぱられて持ち上がるのは、毛玉の下にある地肌のほうです。

この犬種の毛の作りを、いくつかに分けて見てみます。どれも広く知られている特徴で、特別なことは何もありません。ただ、4つを重ねると、手の入れ方が他の犬種と変わってきます。

上の3つが「ほどけない」をつくり、4つ目が「全部は回せない」をつくります。ほどけないのに面積が広い。これがエアデールテリアのもつれをめぐる、いちばん厄介な組み合わせです。毎日全身にブラシを入れれば解決する、という話にはなりません。大型のテリアの体を、毛先から根元まで毎日通しきるのは、現実的な時間の使い方ではないからです。

そこで発想を入れ替えます。全身を薄く回すのをやめて、組まれてしまう場所だけを、先に潰す。硬い毛は自分では曲がらないのですから、逆に言えば、外から曲げられた場所でしか組み合いません。曲げているものが分かれば、触る場所は絞れます。

Noteほどける毛と、ほどけない毛があります

エアデールテリアの体には、性質の違う毛が同居しています。背中や体側の剛毛は硬く、口のまわりや脚に伸びる飾り毛は、それよりやわらかく長い。やわらかいほうは、まだ指で緩められます。硬いほうは緩みません。同じ1頭の中で、ほどける場所とほどけない場所が分かれている、と考えてください。ほどこうとして時間が溶けていくのは、たいてい硬いほうです。

頻度ではなく場所を決める|先に指を入れる順番

硬い毛を曲げているものは、そう多くありません。毎日の暮らしの中で見ると、3つに整理できます。関節が折れること、外のものが当たること、自分でこすること。この3つが起きている場所が、もつれの出発点です。逆に言えば、この3つのどれも起きていない場所は、放っておいても組み合いません。

毛を曲げているものと、エアデールテリアで出る場所
曲げているもの出る場所見つけ方
関節がたたまれる脇の内側、肘の内側、後ろ足のつけね足を持ち上げて、合わさる面を開く
外のものが当たる首輪やハーネスの下、寝床に当たる側面毎日同じ向きで触れているものを探す
自分でこする口ひげ、眉、あごの下こすったあとに毛が立ち上がる場所
濡れて乾く口のまわり、前足の先水を飲んだあと、歩いたあとに湿る場所

表を見ると、背中や腰の上面が入っていないことに気づくと思います。上面の剛毛は、曲げられる機会がほとんどありません。そこにブラシを毎日入れても、もつれの数は変わりにくい。エアデールテリアで手の届く時間には限りがあるのですから、変わらない場所に配るのはもったいない使い方です。

硬い毛がもつれに変わる経路 外から曲げられた毛が、そのままの角度で組み合い、動かないまま締まっていく流れです。 硬い毛 曲がらない 曲がる面 外から折れる 組んだ形 動かない 関節・当たり・こすり 角度が残る できてから手を入れる場合 毛が動かず緩まない 地肌のほうが持ち上がる 曲がる面に先に入れる場合 組む前にすき間が戻る 力を使わずに済む
途中でほどく段階がありません。だから経路の入口、曲げられる場所のほうに手を入れます。
  1. 体ではなく、折れ目を探して一周する

    最初の1回だけ、時間をとってください。前足を持ち上げて脇と肘の内側を開き、後ろ足のつけねを開き、首輪やハーネスを外して当たっていた面をなで、口のまわりと眉を触ります。指が引っかかった場所を覚えておくだけで、その日はかまいません。エアデールテリアは体が大きいので、この一周も5分ほどかかります。

  2. 触る場所を絞って、順番を固定する

    一周で引っかかった場所のうち、上から順に4つほどに絞ります。多くの子では、口のまわり、脇と肘の内側、ハーネスの当たる面、後ろ足のつけねが残ります。順番は毎回同じにしてください。同じ順で回すと「今日は脇だけ引っかかった」という差が記憶に残り、その差がそのまま記録になります。

  3. 根元を支えて、毛先の側から入れる

    硬い毛は、根元からブラシを入れると毛ではなく皮膚が動きます。もつれの根元側を指ではさんで固定してから、毛先の側にコームを当ててください。少しずつ上へ移していきます。1回で通しきらなくてかまいません。通らない場所を無理に通すと、地肌が引き上がります。

  4. 空気が乾く日は、静電気を先に落とす

    冬の乾いた日は、とかすほど毛先が広がって寄ります。硬い毛は広がったまま戻らないので、静電気が出ている日ほど組み合いやすい。布をわずかに湿らせて表面を一度なでてから、コームを入れてください。毛先の向きが変わる量で足ります。湿らせたら、その日のうちに乾かしきるまでを一続きにします。

  5. 換毛期は、残っている抜け毛から先に外へ出す

    エアデールテリアの被毛は、抜けても下へ落ちにくい作りです。換毛期には、抜けた毛が隣の硬い毛に引っかかって体の上に留まります。この残った毛が、もつれの芯になります。換毛期のあいだだけは、絞った4か所に加えて、体側面をコームで一度通してください。

Point頻度を上げる前に、場所が合っているかを見ます

ブラッシングの頻度を毎日に上げても、当てている場所が曲がらない面ばかりなら、もつれの数はほとんど動きません。逆に、曲がる面だけを2日に一度回すほうが結果は変わります。時間を増やすのではなく、時間を置く場所を変える。エアデールテリアのように体が大きい犬種では、この差がそのまま続くかどうかを決めます。

家でできるのに続かないのは、根元の手前で止まるから

手順そのものは難しくありません。それでも途中で止まる理由は、だいたい決まっています。エアデールテリアと暮らしている方から聞く話を並べると、次の4つに集まります。

いちばん多いのは1つ目です。硬い被毛の表面はコームがよく滑るので、通っている感触が出ます。ところが毛の量があるぶん、コームの歯は根元まで届いていません。手ごたえがいいときほど、届いていないことがあります。確かめ方は単純で、コームを止めたところで、歯の先が地肌に触れているかを指で確認します。触れていなければ、そこは通っていません。

2つ目は順番の話です。脇の内側や後ろ足のつけねは、多くの子が触られたくない場所です。そこから始めると、嫌がられた時点でその日が終わります。口のまわりやあごの下のように、受け入れやすい場所から入る。そして嫌がる場所は、最後に短く。1日で4か所すべてを回そうとしないでください。1日1か所でも、順番が固定されていれば1週間で一周します。

3つ目は、この犬種でいちばん時間を奪います。硬い毛のもつれは、粘っても緩みません。目安として、指の腹で2〜3回押してみて動かないものは、その日は置いてください。それは家でほどく対象ではなく、トリミングで扱う対象です。置く判断ができると、残りの場所に手が回るようになります。

4つ目については、地肌のうるおいの話も関わります。かたい毛を毎日強く引くと、地肌のほうが荒れます。洗う回数を増やすのも同じで、洗うたびに地肌のうるおいは減っていきます。もつれができたから洗う、という順番にしないでください。ほどけていないもつれが水を含むと、乾くときにさらに締まります。順番は、ほどいてから洗うほうです。

乾いた日に布をわずかに湿らせる、と書いた手順で使っているのが、mofuwa グルーミングスプレーです。グルーミングスプレーでありブラッシングスプレーでもある1本で、コームを入れる前にひと吹きしておくと、静電気で立ち上がった毛先が寄らないまま梳かせます。エアデールテリアの硬い毛は、広がった形のままでも戻りません。だから乾いた日は、毛先の向きをそろえてから入れるかどうかで、歯が根元まで届く距離が変わります。滑りが出たぶんだけ、同じ力で奥へ進みます。

絞った4か所の日課として見ると、この1本の置き場所はコームの隣です。脇や肘の内側、口のまわりやあごの下は、その子が自分で舐める面でもあります。グルーミングスプレーは舐めても差し支えない基準でつくられているので、口が届く面にも量を加減せずに使えます。硬い毛は、湿らせる量が足りないと表面だけが動いて根元が残ります。濡らすのは、毛先の向きが変わるぶんだけで足ります。テリアの中でいちばん大きい体を毎日洗うことはできませんが、曲がる面だけなら数分で回せます。毎日きれいにしておきたいのは、たいていこの4か所のほうです。すでに固まって動かないもつれには吹きかけず、そこは次のトリミングまで置いてください。

Caution力は毛ではなく、その下の皮膚へ行きます

硬い毛のもつれは、力を入れれば取れそうに見えます。けれど毛が動かないぶん、力はすべて皮膚へ行きます。引き抜くとその周りの毛ごと持ち上がりますし、ハサミの先は毛ではなく地肌に届きます。エアデールテリアのもつれは根元で締まっていることが多く、外から見えるより下が浅い。取れないものは、次のトリミングまでそのまま残してください。

ほどけないもつれを、そのまま連れて行くコツ

ここまでは、毛の硬さで説明のつくもつれの話でした。場所が合っているのに戻ってくるもつれは、別の見方をしてください。曲げているものが見当たらないのに固まる、同じ一か所だけが何度も戻る、といったときです。

Cautionもつれより先に、下の地肌を見てほしいとき

もつれの下の地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、元気や食欲が落ちている。どれか1つでも見つかったときは、そこをほどく作業はやめて、動物病院で地肌のほうを診てもらってください。硬い毛のもつれは外から下が見えないぶん、判断を1日持ち越すあいだに下だけが進むことがあります。

サロンや動物病院へ行くときのコツは、ひとつだけです。ほどこうとした跡を作らずに、そのまま連れて行ってください。途中まで引いたもつれは、もとの形が分からなくなります。どこから組まれていたのかが読めなくなると、扱う側は最初から探し直すことになります。前日に洗うのも同じ理由でおすすめしません。

あわせて、3つだけメモを持っていくと話が早くなります。いつから気づいたか、どの場所か、その場所に当たっているものは何か。使っているハーネスをそのまま持って行けるなら、いちばん確実です。エアデールテリアのように毛の面積が広い犬種では、口で説明するより現物のほうが早く伝わります。

ワイヤーコートの手入れの仕方は、サロンによって考え方が分かれます。伸びきった毛を入れ替える手入れを行うところもあれば、刈って整えるところもあります。どちらを選んでも、家でやることは変わりません。曲がる面に、先に指を入れる。それだけです。

エアデールテリアと暮らしていて、もつれをゼロにすることはできません。硬い毛が、抜けても体の上に残る作りだからです。ほどける前提を捨てて、組ませない場所を決める。頻度を上げるより、場所を4つに絞って順番を固定するほうが、次のトリミングまでの数週間はずいぶん違ってきます。

Product

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よくある質問

エアデールテリアのもつれは、毎日ブラッシングすれば防げますか?
毎日入れること自体が悪いわけではありませんが、当てている場所が背中や腰の上面ばかりだと、数はあまり動きません。硬い毛は外から曲げられた場所でしか組み合わないので、脇や肘の内側、ハーネスの下、口のまわりといった、曲がる面に時間を置くほうが結果は変わります。頻度より場所です。
硬いもつれを、家でほどききったほうがいいですか?
指の腹で2〜3回押して動かないものは、その日は置いてください。硬い毛は緩まないので、粘っても毛のほうは動かず、力は下の皮膚へ行きます。そのまま残して次のトリミングで扱ってもらうほうが、地肌にとっては穏やかです。ほどこうとした跡を作らずに連れて行くと、もとの状態が伝わります。
静電気の出る季節だけ、もつれが増える気がします。
乾いた日は毛先が広がって寄りやすく、硬い毛は広がったまま戻らないので、組み合う機会がその季節だけ増えることがあります。とかす前に、わずかに湿らせた布で表面を一度なでてください。湿らせたら、その日のうちに乾かしきるところまでを一続きにします。地肌のうるおいまで落とさないよう、洗う回数のほうは増やさないでください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。