C14トリマー/獣医師視点
介護期の犬に、シャンプーの負担をかけないという選択
介護期に入った犬のシャンプーを1回、時計で測ってみると、湯をかけている時間は全体の4分の1しかありませんでした。残りは、浴室まで歩く時間、立たせておく時間、乾かす時間、そのあと寝床へ戻す時間です。負担というひとことでまとめてしまうと、この4つのどこが重いのかが見えなくなります。介護期の犬にシャンプーの負担をかけないという選択は、やめるか続けるかの二択ではなく、内訳のどれを外すかを決めることです。老犬のシャンプーを負担の少ない形にする道は、ここから分かれます。
介護期の犬のシャンプーで長いのは、湯をかけている時間ではない|1時間の背景
ある日の1回を、家の時計で測ってみたことがあります。寝床から浴室まで12分、湯をかける前後で立たせておいたのが15分、実際に洗ったのが15分、乾かすのに18分。合わせて60分でした。この子のシャンプーは1時間かかる、と家族のあいだで言われていましたが、洗っていた時間は4分の1です。介護期の犬のシャンプーが重くなる背景は、洗う工程そのものよりも、その前後に積み上がった時間のほうにあります。
測ってみるまで、家族の記憶では「洗うのに1時間」でした。重さの記憶は、いちばん緊張していた工程に引きずられます。湯をかけているあいだは声をかけ続けていて、その15分が長く感じられる。ところが実際に足腰へ効いていたのは、そのあと18分立たせたまま乾かした時間のほうです。介護期の犬のシャンプーを見直すとき、最初にやることは道具をそろえることではなく、自分の家の1回を1度だけ測ることです。
測り方は簡単で、工程が切り替わるたびに時計を見て、紙に数字を書くだけです。移動・立位・洗い・乾かす。この4つに分ければ足ります。1回だけでいいので、次のシャンプーの日にやってみてください。数字が出ると、家族のあいだで「かわいそうだからやめよう」「でもにおうから」という話が、「乾かす18分をどうするか」という話に変わります。介護期の犬のシャンプーをめぐる会話は、この置き換えで前へ進みます。
立っていられる時間が先に短くなる|介護期の犬にシャンプー中に起きる変化
介護期に入った犬で最初に短くなるのは、洗われる体力ではなく、濡れた床の上で立っていられる時間です。後ろ足のつけ根から力が抜けると、体は前へ寄りかかります。前足だけで支える形になり、その姿勢が5分続くと、次の日に前足のつけ根をなめます。シャンプーの負担が翌日に出るのは、この順番で起きているからです。
- 濡れた床では、乾いた床の半分しか立てません:滑る分を踏ん張りで補うので、同じ時間でも消耗が違います
- 体温は洗っているあいだより、乾かしているあいだに下がります:毛が水を含んだままの時間が、いちばん長いのが乾かす工程です
- 音の逃げ場がありません:浴室は音が反響します。ドライヤーの音と、換気扇の音と、湯の音が同時に鳴る場所は家の中でここだけです
- 皮膚はヒトの3分の1の薄さです:こする回数が同じでも、シニア期は戻るまでの時間が延びます
音の話は、介護期の犬のシャンプーでいちばん見落とされます。若いころは平気だった子が急に嫌がりだしたとき、体が痛いのだろうと考えがちですが、耳が遠くなりかけている時期は、音の方向が分からなくなるぶん、かえって強く反応します。どこから鳴っているのか分からない音が、逃げられない場所で続く。浴室の戸を開けておく、ドライヤーを浴室の外で使う、それだけで立っている時間が2分縮むことがあります。
| 工程 | その子にかかっているもの | 翌日に出る形 |
|---|---|---|
| 寝床から浴室まで歩く | 床の段差と、滑る面 | 足先をなめる/段差の前で止まる |
| 洗う前後に立たせておく | 前足のつけ根への荷重 | 前足のつけ根をなめる/立ち上がりが遅い |
| 湯をかけて洗う | 水温と、こする回数 | 地肌の赤み/同じ場所を掻く |
| 乾かす | 体温の低下と、音 | 寝床でふるえる/耳を伏せる |
この表の右端が、家で見える変化です。翌日どこをなめているかで、前の日のどの工程が重かったかが逆算できます。前足のつけ根をなめているなら立位の15分、足先なら移動の12分、耳を伏せているなら乾かす18分。介護期の犬のシャンプーを組み替える手がかりは、洗っている最中ではなく、次の日の朝に出ています。
全部を1日でやらないと決める|介護期の犬のシャンプーを組み替える考え方
外す順番は、移動・立位・乾かす・洗う、の並びです。体に残るものが大きい順に上から外していき、洗う工程はいちばん最後まで残します。介護期の犬のシャンプーをやめるかどうかという考え方をとると、ここで話が止まります。外すのは工程で、目的のほうは残ります。
-
1つめに外す:浴室までの移動
洗う場所を、その子がいつも寝ている部屋へ移します。洗面器と湯と、足元に敷く滑らない布があれば、部屋でできます。ここで12分が0になります
-
2つめに外す:立たせておく時間
全身を1日でやるのをやめて、上半身の日と下半身の日に分けます。1回で立っている時間が15分から6分になります
-
3つめに外す:乾かす18分
面積を半分にすると、乾かす時間も半分です。ドライヤーは部屋の外に置き、タオルで挟んで押さえる手順を先に3分入れておくと、風を当てる時間がさらに縮みます
-
最後まで残す:洗う15分
ここは目的そのものなので、最後まで手をつけません。それでも、部分に分けたぶん1回は7分前後になります
タオルの使い方だけ、もう少し具体的に書いておきます。こするのではなく、挟んで20秒押さえる。介護期の犬は自分で体を振って水を飛ばせないので、毛が持っている水をタオルへ移す作業を人がやることになります。押さえて20秒、場所を変えてまた20秒。これを6か所やると、乾かす工程に入る時点で残っている水の量がはっきり減ります。タオルは大判1枚より、小さめを3枚のほうが手順として回ります。
そして、全身を洗う日と日のあいだをどう埋めるかです。毎日きれいにしてあげたい、という願いのほうは、外す工程のどれにも入っていません。犬は体から脂を出します。昨日整えても、今日また汚れます。散歩に出れば外のものもつきます。介護期に入っても、そこは若いころと変わりません。変わったのは、浴室まで歩いて立っていられる時間のほうだけです。
mofuwa グルーミングスプレーは、この願いのほうを毎日やれる形にするための1本です。吹きかけてブラシを通す、それだけで終わるので、立たせておく必要も、乾かす必要もありません。舐めても問題のない基準でつくられているので、量を気にせず、寝たままの姿勢で背中から順にかけていけます。アルカリ電解水と油がなじんで乳化するため、落ちるのは汚れのもとになっている余分な脂で、地肌に要る皮脂は残ります。
グルーミングスプレーであると同時にブラッシングスプレーでもあるので、静電気の起きにくい状態で梳かせるところも、介護期には意味があります。乾いた毛にブラシを入れて静電気が鳴ると、その音でその子が身をよじります。寝たままの姿勢が1回崩れると、そこで手順が終わってしまう。音を減らすことが、そのまま1回の長さを守ることになります。
組み替えても動かないものが出てきたときは、手順の話ではありません。同じ場所を1週間なめ続ける、地肌の赤みが2週間たっても同じ、寝床でふるえる時間が日ごとに延びる。こうした残り方は、工程を外しても変わりません。測った60分の内訳と、翌日どこをなめていたかのメモを持って、動物病院で診てもらう枠を取ってください。家でやるのは記録と、翌日から続けられる形を残すことです。
やらないと決めた日に残るもの|介護期の犬とシャンプーをめぐる経験
やらないと決めた日に、何も起きないわけではありません。浴室まで歩かせなかった日は、その子は夕方まで同じ姿勢で眠っています。立たせなかった日は、翌朝の立ち上がりが速い。介護期の犬とシャンプーをめぐる経験は、やった日の記録より、やらなかった日の翌朝に出ます。
| 見るところ | 全部を1日でやっていたとき | 工程を外したあと |
|---|---|---|
| 1回の合計 | 60分 | 上半身の日18分/下半身の日16分 |
| 立っている時間 | 15分 | 6分 |
| 翌朝の立ち上がり | いつもより遅い | 普段と同じ |
| 家族の会話 | やるかやらないか | 今週はどっちの半分をやるか |
| 紙に残るもの | やった日の丸 | 外した工程と、翌日なめていた場所 |
右の列に変わってから気づくのは、決めているのが「どこまでやるか」ではなく「どこで終わるか」になったことです。始める前に終わりが見えていると、途中でその子の様子が変わっても、予定より早く手を止めることに抵抗がなくなります。介護期の犬のシャンプーで家族が消耗するのは、体力ではなく、終わりが見えない時間のほうでした。
測った紙は捨てずに取っておいてください。半年後に同じ4工程をもう一度測ると、どこがどれだけ延びたかが数字で出ます。その差が、次に外す工程を決めます。介護期の犬とシャンプーの付き合い方は、一度決めて終わりではなく、半年ごとに1回ずつ短くしていくものです。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
