C09シーン別・暮らし

防災と避難、保護犬・保護猫を迎えた人はどうしている?

公開日 2022年1月29日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色のクッションの上で、白っぽい毛の猫が静かに休んでいる
持ち出し袋に最初に入れるのは、ケアの道具より前に、その子のにおいがついた布1枚です。写真:Kaan Keskin/Pexels

防災の袋を押し入れから出して床に広げたら、人のぶんは入っているのに、うちの子のぶんが1つも入っていませんでした。水とフードとリード、そこまでは思いつきます。次に何を足すかで手が止まりました。避難した先で、その子は知らない人の声と、鳴りやまない音の中に置かれます。保護犬・保護猫を迎えた家では、いま暮らしているこの家の中でさえ、落ち着ける場所とそうでない場所が分かれています。ペットの防災を持ち物の一覧から始めると、そこがいちばん最後に回ります。この記事では、袋に何から入れるかを順番で書きます。

避難した先にあるのは、知らない人と知らない音です|保護犬・保護猫の防災で、家でできることから考える

ペットと一緒に避難する場所は、家によって違います。近くの施設の一室になることもあれば、車の中や、親戚の家になることもあります。場所は違っても、共通していることが1つあります。人の数が増えて、音が途切れない、ということです。荷物を動かす音、ドアの音、知らない人の声。夜になっても、家のように静かにはなりません。

ペットと暮らす家の防災は、たいてい持ち物の一覧から始まります。水、フード、食器、リード、薬。一覧は正しいのですが、そこに載るのは物だけです。避難した先で、その子の側に起きていることは、物の欄には出てきません。

保護犬・保護猫を迎えた家では、ここがもう少し手前から始まります。いま暮らしているこの家の中でも、落ち着ける場所は限られていて、部屋によって、時間帯によって違います。以前どこでどう過ごしていたかは、こちらには分かりません。分からないぶん、この家で確かめられたことだけが手がかりになります。

5つのうち、家から持って行けるものが1つだけあります。においです。床も音も人も持って行けませんが、においのついた布は袋に入ります。保護犬・保護猫の防災で、家でできることの中心を、ここに置きます。

Note防災とは、何をしておくことか

防災とは、災害が起きる前に、起きたあとの負担をできるだけ小さくしておく準備のことです。起きたあとに何をするかではなく、いま何を決めておくか、という話になります。ですからこの記事に書けるのは、家でできる範囲だけです。避難の方法や場所、受け入れの条件については、お住まいの自治体が出している案内をそのまま確かめてください。ここでは、袋の中身と毎日の習慣の2つに絞ります。

持ち出し袋に、においのついた布を1枚|ペットの防災、詰めるものの順番

袋に入れる順番を決めます。入れるものの数を増やすより、何を先に入れるかを決めておくほうが、あとで見直すときに楽です。次の順で足してください。

  1. 1番目:寝床に敷いていた布を、洗わずに1枚

    その子が毎日いちばん長く乗っている布です。使い古したタオルでも、毛布を切ったものでも構いません。洗わないまま、袋に入れます。洗うと、入れる意味のほうがなくなります。避難した先ですぐ敷けるよう、折りたたんで一番上に置いてください。保護犬・保護猫を迎えた家では、この布がその子にとって唯一の「知っているもの」になります。

  2. 2番目:同じ布を、月に1回入れ替える

    袋に入れたままだと、においは時間とともに薄くなります。月に1回、寝床の布と袋の布を入れ替えるだけです。新しく買う必要はありません。入れ替える日を毎月の同じ日に決めておくと、袋を開ける習慣も一緒につきます。中の水とフードの期限を見るのも、その日にまとめてしまいます。

  3. 3番目:ケアの道具は、ここから下に置く

    ブラシを1本と、スキンケアミストを1本。避難した先で、その子が自分でできる手入れは、なめることだけになります。落ち着かない場所ほど、体をなめる回数は増えます。拭いたものは、そのまま口に入ると考えておくほうが確かです。mofuwa スキンケアミストの中身は電解水で、清涼飲料水の規格基準をクリアした成分だけでできています。耳のふちや口のまわりのように、ほかのものを使いにくい場所にも同じ1本で手が届くのは、そのためです。使い方は、布に移して背中と足先を表面からなでるだけで、すすぎも乾かす手も要りません。ペット用のウェットシートを足すなら、乾きやすい薄手のものを1袋だけにします。種類を増やさず、1つずつにしてください。袋が重くなるほど、いざというときに置いていくことになります。

  4. 4番目:キャリーは、袋の中ではなく部屋に出す

    押し入れにしまって、移動のときだけ出す使い方をやめます。ふだんから室内に置いて、扉を開けたままにしておきます。中に1番目の布を敷いておくと、そのうち自分から入って寝るようになります。避難のときに初めて入る箱と、毎日寝ている箱では、その子の側の受け取り方が変わります。

  5. 5番目:連絡先を、首輪とキャリーの両方に

    迷子札だけにしないでください。キャリーの外側にも、名前と連絡先を書いた紙を貼っておきます。避難した先では、飼い主が少しのあいだ手を離すことがあります。書いておくのは、名前、連絡先、それと苦手なもの(大きな音、抱き上げられること、など)を1行だけ。保護犬・保護猫を迎えた家では、この1行がそのまま引き継ぎになります。

袋に入れる順番と、その順番にする理由
順番入れるものなぜその順番か
1寝床の布を1枚(洗わない)唯一、家から持ち出せる「知っているもの」だから
2月1回の入れ替えにおいは時間がたつと薄くなるから
3ブラシ1本と、水を使わずに拭ける道具水が使えない前提だと、洗う道具は出番がないから
4キャリー(ふだんから室内に出す)避難のときに初めて入る箱にしないため
5名前・連絡先・苦手なもの1行手を離す時間が出るかもしれないから

順番を決めておくと、袋を軽くしたいときに下から外せます。1番目と2番目は、費用も重さもほとんどかかりません。ペットの防災で最初に手をつけるところとして、ここがいちばん動かしやすい場所です。

練習を増やすほど手が止まります|保護犬・保護猫を迎えた家で、防災の準備を毎日に置く頻度

準備を始めると、次は練習をしたくなります。キャリーに入る練習、車に乗る練習、抱き上げる練習。ところが、迎えて間もない子にとっては、練習そのものが新しい出来事です。同じ週に3つ始めると、どれが負担だったのかが分からなくなります。ペットの側から見ると、防災の練習も引越しの荷造りも、区別のつかない同じ出来事です。

毎日・週1・月1に分けた、続けられる頻度の目安
頻度やることかかる時間
毎日帰宅後に、足先と背中を1分だけ見る1分
毎日キャリーの扉を、開けたままにしておく0分
週1キャリーの中の布を、手で軽くならす1分
月1袋の布を寝床のものと入れ替え、水とフードの期限を見る5分
年2回袋の中身を全部出して、季節に合わせて入れ替える15分

毎日の欄が1分で終わるようにしてあります。ペットの防災は、続かないと形だけが残るものの代表です。時間のかかる作業を毎日に置くと、2週間で止まります。止まったあとに残るのは、袋があるという事実だけになります。

Point同じ週に、条件を2つ以上変えない

これは防災に限った話ではありません。保護犬・保護猫を迎えた家で、何かを変えるときの基本の置き方です。布を替える週は、置き場所を動かさない。置き場所を動かす週は、布はそのまま。変えたことが1つなら、その子の反応がどちらに向いたかで判断できます。毎日の記録は、日付と「変えたこと1行」だけで足ります。ノートでなくても、カレンダーの余白で構いません。

戻ってきた日に、玄関で1分だけ見る3か所|保護犬・保護猫の防災を毎日に残す

避難から戻ってきた日、あるいは持ち出し袋を持って外に出てみた日。室内に入る前に、玄関で1分だけ見る場所を3つ決めておきます。帰宅後の1分を先に決めておくのが、防災を毎日の習慣にするいちばんのコツです。

  1. 足先と、指のあいだ

    外の地面には、家の床にはないものが落ちています。指のあいだを開いて、はさまっているものがないかを見ます。取れないものを無理に引っぱらないでください。袋に入れておいたスキンケアミストを布に移して、表面をなでるように拭くところまでにします。それでも残るなら、そのまま動物病院で見てもらってください。

  2. 耳のふちと、首輪やハーネスが当たる場所

    移動のあいだ、同じ場所に同じものが当たり続けます。当たっていた場所は、毛が寝ているので手ざわりで分かります。その部分の毛を指で起こして、地肌の色を見ておきます。数日たっても寝たままなら、当たり方のほうを変えます。

  3. 背中の毛の中と、におい

    手を毛の中に沈めて、地肌まで指が届くかを見ます。室内に戻って数時間たってからのにおいが、その子のふだんのにおいと違うかどうかも、この日は気にしてよいところです。ふだんを知っていないと比べられないので、毎日の1分がここで効いてきます。

3か所とも、ペット用の特別な道具は要りません。やっているのは、ふだんとの差を見ることだけです。ペットの防災で家でできることの多くは、この「ふだんを知っておく」に集まります。持ち物は、そのための道具です。

Caution動物病院に見てもらう目安

足の裏や指のあいだに切り傷がある、地肌が赤い、においが今までと明らかに違う、同じ場所をなめ続けている、水を飲む量や食べる量が戻らない、動きが鈍い。いずれかに当てはまるときは、家で様子を見る前に動物病院にご相談ください。移動と環境の変化が重なった時期は、疲れによる一時的な変化と、体のほうで起きている変化が同じように見えます。保護犬・保護猫を迎えた家では、その子のふだんの数字がまだ手元にありません。だからこそ、帰宅後の1分で見ている3か所のうち、どこがいつから変わったのかを、そのまま伝えてください。

ペットの防災でやることを、最後にもう一度短くします。寝床の布を1枚、洗わずに袋へ。月に1回入れ替える。ケアの道具はそのあと。キャリーは室内に出しておく。帰宅後の1分で3か所を見る。保護犬・保護猫を迎えた家で先に効くのは、道具の数ではなく、その子が知っているものを1つ持ち出せるかどうかのほうでした。袋は、今日のうちに一度開けておいてください。開けたら、布を1枚入れる。今日の準備は、それで終わりです。

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よくある質問

においのついた布は、洗ってから入れたほうがいいですか?
洗わないまま入れてください。目的は清潔にしておくことではなく、その子が知っているにおいを1つだけ持ち出すことだからです。月に1回、寝床で使っているものと入れ替えれば、においが薄くなりすぎることもありません。避難した先で汚れたときのために、同じような布をもう1枚たたんで入れておくと、取り替えがききます。
キャリーにどうしても入ってくれません。防災の準備として、どこまでやればいいですか?
入れる練習を毎日増やすのは、いったんやめて構いません。扉を開けたまま室内に置いて、中に寝床の布を敷く。変えるのは1週間に1つだけ。入るようになるまでの期間は子によって大きく違うので、何日で入れるようにする、という目標の立て方をしないほうが続きます。どうしても間に合わないときは、洗濯ネットと厚手の袋を代わりに袋へ入れておく手もあります。
水が使えない数日は、体のケアをどこまでやればいいですか?
全身を毎日拭く必要はありません。足先と、床に接している面(脇腹とおなか)、それと口のまわりの3か所で足ります。吹きかけてそのまま拭けるものを布に移して、表面をなでるように拭いてください。乾かす道具が使えない状況では、濡らす量そのものを減らしたほうが体は楽です。ブラシで毛を通しておくだけでも、においの出方は変わります。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。