C09シーン別・暮らし
高齢の飼い主、多頭飼いの人はどうしている?
多頭飼いの3頭に同じことをした日、かがんで立ち上がる動作を1日に9回くり返していました。1頭につき3回。足先で1回、おなかで1回、耳のまわりで1回です。1頭だけなら、たいした手間ではありません。それが頭数の分だけ掛け算になります。高齢の飼い主がペットのケアで先に使い切るのは、時間ではなく姿勢を変えられる回数のほうです。だから「今日は時間がなかった」ではなく「今日はもう立ったり座ったりしたくない」で止まります。この記事では、多頭飼いで当たり前になっている「全頭を毎日」という前提をいったん外します。曜日で1頭ずつに割り振る手順を先に決めて、それでも毎日全頭に要る最小限だけを別にする。その分け方を書きます。
かがんで立ち上がる回数が頭数の分だけ増える|高齢の飼い主が多頭飼いのペットに毎日向き合うと起きること
多頭飼いのケアを、頭数で割った時間の話として考えている方が多いと思います。1頭に5分なら、3頭で15分。それなら30分早く起きれば足りるはずだ、と。けれど実際に続かなくなる理由は、合計時間のほうにはありません。止まるのは、床の高さまで下りて、また立ち上がる、という動作の回数のほうです。
1頭のケアの中で、飼い主は何度も高さを変えています。足先を見るときは床の近くまで下ります。背中に手を入れるときは中腰になります。耳のまわりを見るときは、その子の顔の高さまで自分の目を持っていきます。1頭あたり3回として、3頭なら9回。4頭なら12回です。時間は3倍でも、姿勢を変える回数は同じだけ増えます。
そして、この回数には順番があります。1回目と9回目では、同じ動作でもかかる負担が違います。後半に回された子ほど、手が雑になるか、その日はとばされるかのどちらかになります。多頭飼いで「いちばん最後にケアする子だけ、いつも状態が違う」ということが起きるのは、その子の体質のせいではなく、順番のせいであることがあります。
| 1頭 | 3頭 | 4頭 | |
|---|---|---|---|
| かける時間 | 5分 | 15分 | 20分 |
| かがんで立ち上がる回数 | 3回 | 9回 | 12回 |
| 最後の子に手を入れるまでの経過 | 0分 | 10分後 | 15分後 |
| 途中で立ち上がって道具を取りに行く回数 | 1回 | 3回 | 4回 |
| 帰宅後にまとめてやろうとしたときの所要 | 5分 | 20分前後 | 25分以上 |
多頭飼いには、もうひとつ条件があります。体についたものは、頭数のあいだで互いに移ります。同じ寝床を使い、同じ床を歩き、鼻先で触れ合う。だから1頭だけがきれいでも、部屋の中では均されていきます。この事実は、負担を増やす方向にも、減らす方向にも読めます。増やす方向に読むと「全頭を同時にやらないと意味がない」になります。減らす方向に読むと「今日1頭に手を入れたぶんは、明日には他の子の側にも回っている」になります。
- 負担は時間ではなく回数で増える:合計時間だけ見ていると、なぜ続かないのか説明がつきません
- 後半の子ほど雑になる:順番が固定されていると、同じ子がいつも最後になります
- 体についたものは頭数のあいだで移る:1頭に手を入れた結果は、その子だけで止まりません
- 道具を取りに行く回数も掛け算になる:立ち上がる理由の半分は、ケアそのものではありません
- におい・毛・足裏の汚れは共有物の側に集まる:寝床・水皿・玄関マットは頭数に関係なく1か所です
高齢の飼い主がペットのケアを負担に感じたとき、それを体力の話として受け取る必要はありません。1日に9回かがむという設計そのものが、年齢に関係なく続かない組み方です。若い頃なら回せていた、というより、若い頃は頭数が少なかったか、その子が自分でできる量が多かったかのどちらかであることが多い。減らすのは気持ちでも体力でもなく、回数のほうです。
「全頭を毎日」をやめる|高齢の飼い主が多頭飼いのペットを曜日で割り振る手順
ここからが具体的な組み方です。やることは1つだけで、1日に触るペットを1頭に決めます。残りの子には、その日は手を入れません。多頭飼いのケアを頭数で割るのではなく、1週間で割ります。そう決めると、かがんで立ち上がる回数は9回から3回に戻ります。高齢の飼い主にとっては、ここが最初にいちばん大きく効く1手です。
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手順1:紙に曜日を7つ書いて、頭数で埋める
3頭なら、月曜と木曜が1頭目、火曜と金曜が2頭目、水曜と土曜が3頭目。日曜は、どの子でもなく共有物の日にします。寝床・水皿・玄関マットのように、頭数に関係なく1か所しかないものへ回す日です。4頭なら月火水木で1頭ずつ、金土でとくに手のかかる2頭をもう一度、日曜は共有物。紙は冷蔵庫に貼ってください。覚えようとすると、覚えている状態を保つこと自体が負担になります。
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手順2:1頭につき、手のかかる場所を1か所だけ決める
全身を回そうとしないでください。その子が自分で届かない場所を1か所だけ選びます。後ろ足で耳をかいている子なら耳のまわり、背中の同じところをなめている子ならその周囲、散歩から帰るといつも足を気にしている子なら足先。多頭飼いでは、この1か所が頭数のぶんだけ違うのが普通です。同じ場所を全頭に当てはめないほうが、担当日の中身が濃くなります。
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手順3:担当日の作業は、座ったまま終わる形に組む
床に下りるのは1回まで、と決めます。椅子に座って、その子を横に立たせる。あるいはこちらが低い台に腰かけて、その子を膝の前に立たせる。その子を持ち上げるのではなく、こちらの目の高さをその1か所に合わせるほうです。体重のある子を抱え上げる動作は、この組み方には入れません。
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手順4:担当日でない子には、その日は触らない
ここがいちばん難しいところです。目が合うと手が出ます。触らないと決めた日は、なでるのは構いません。ケアの手を入れないだけです。多頭飼いで全頭に平等であろうとすると、1頭あたりの中身が薄くなります。7日のうち2日、その子だけに向き合う時間があるほうが、毎日30秒ずつよりも結果が出ます。
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手順5:終わったら、紙に丸を1つ書く
記録は丸だけで足ります。何をしたか、どうだったかは書きません。書くことを増やすと続かなくなるからです。1週間分の丸が並ぶと、どの曜日が崩れやすいかが目で見て分かります。崩れる曜日が決まっているなら、その曜日の担当をいちばん手のかからない子に入れ替えてください。
| 曜日 | 3頭のとき | 4頭のとき |
|---|---|---|
| 月 | 1頭目 | 1頭目 |
| 火 | 2頭目 | 2頭目 |
| 水 | 3頭目 | 3頭目 |
| 木 | 1頭目 | 4頭目 |
| 金 | 2頭目 | 手のかかる子をもう一度 |
| 土 | 3頭目 | そのつぎに手のかかる子 |
| 日 | 共有物(寝床・水皿・玄関) | 共有物(寝床・水皿・玄関) |
この割り振りで抜け落ちるものが1つあります。においです。においは1頭ずつ担当日を待ってくれません。頭数が増えるほど、部屋の空気の側で混ざって、どの子のものか分からなくなります。だからにおいだけは、担当日の枠から外して、毎日全頭に共通の最小限として残します。次のセクションで、その最小限をどう軽くするかを書きます。
毎日全頭を少しずつ見ていると、比べる相手がその日の他の子になります。週に2回、同じ子の同じ場所だけを見る形にすると、比べる相手が3日前のその子になります。多頭飼いでいちばん見落とされるのは、頭数のあいだの差ではなく、1頭の中の時間の差です。高齢の飼い主にとって、この組み方は負担を減らすためのものであると同時に、記憶に頼らずに変化を拾うための形でもあります。
かがまずに届く高さをつくる|高齢の飼い主が多頭飼いのペットに手を入れるやり方
回数を減らしたら、次は1回あたりの姿勢です。やり方の中心は、その子に合わせて自分が下りることではなく、その1か所を自分の手の高さへ持ってくることのほうです。多頭飼いでは体格の違うペットが混ざっていることが多いので、頭数のぶんだけ高さの作り方が変わります。高齢の飼い主が同じ姿勢を全頭に使い回そうとすると、いちばん大きい子に合わせた無理が、いちばん小さい子にも持ち込まれます。
| その子の大きさ | 高さの作り方 | こちらの姿勢 |
|---|---|---|
| 抱き上げられる大きさ | 低めの台か、洗面台の横に上げる | 立ったまま。かがまない |
| 抱き上げるのが重い | ソファに上がってもらい、こちらは床の座椅子 | 座ったまま。目線がほぼ同じ |
| ソファに上がらない子 | こちらが低い台に腰かけ、横に立たせる | 座ったまま。手だけ動かす |
| 猫で、高い場所にいる | 降りてくるのを待つ。棚の上で触らない | 立ったまま。腕を上げない |
| じっとしていられない子 | 壁と自分のあいだに入れて、通り道を短くする | 座ったまま。追いかけない |
道具の置き方も、立ち上がる回数に直結します。ケアの途中で立ち上がる理由の半分は、道具を取りに行くことです。担当日の前に、その日使うものを1か所へまとめておいてください。布、ごみを入れる袋、それだけです。多頭飼いだと道具を頭数分そろえたくなりますが、担当日に触るのは1頭なので、1組で足ります。
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座る場所を先に決めてから、その子を呼ぶ
呼んでから場所を探すと、必ず1回余計に立ちます。座る、道具を横に置く、それから呼ぶ。この順番にするだけで、1回のケアで立ち上がる回数が2回から1回に減ります。
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布は、使う枚数を先に用意する
足先で1枚、体で1枚。途中で取りに行かないぶんだけ、姿勢が続きます。使い終わった布を置く場所も、手の届く範囲に先に決めておいてください。
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その子の側を、こちらの利き手側に立たせる
多頭飼いの部屋は物が多く、動ける幅が限られます。利き手が壁の側だと、腕を体の前で交差させることになって、肩に負担が集まります。立たせる向きを毎回同じにすると、体が覚えます。
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1か所が終わったら、そこで手を止める
ついでに他の場所も、と続けると、次の担当日の中身がなくなります。決めた1か所で終える。余った体力は、翌日の別の子のために残しておくものです。
毎日全頭に共通で残すのは、においまわりの最小限です。これは1頭ずつではなく、部屋の側でまとめて回します。水皿を洗う、寝床のカバーに鼻を近づけて3秒だけ嗅ぐ、玄関マットの上で足を止めさせる。この3つは、かがむ回数を増やしません。水皿は流し台の高さ、寝床は座ったまま、玄関マットは立ったままです。多頭飼いのにおいは、その子ではなく共有物の側に集まるので、共有物を回すほうが早く動きます。
道具の側も、担当日に合わせて選びます。グルーミングスプレーは、毎日きれいにしておきたいを、頭数で割らずに済ませるための道具です。その子に直接吹きかけるのではなく、布に含ませてから、担当日に決めた1か所をなでるように拭く。座ったまま、布1枚で終わるので、立ち上がる回数は増えません。舐めても問題のない基準(清涼飲料水の規格基準)でつくられているため、拭いたそばから他の子が寄ってきて同じ場所をなめても、かかる量を気にしないで済みます。多頭飼いでは、ここがいちばん効く条件です。余分な皮脂と、外から持ち帰った油分は水と混ざって乳化し、布の側へ移ります。ブラシを入れる日は、先に1往復してから梳かすと、静電気が起きにくい状態になります。被毛の側はグルーミングスプレー、地肌の側はスキンケアミスト。担当日の1か所を、2本で分け持たせることもできます。
その子が動いたときに、姿勢を保ったまま押さえ込もうとすると、力が腰と手首に集まります。動いたら、いったん手を離してください。多頭飼いでは、他の子が寄ってきて割り込むこともあります。割り込まれた日は、そこで終わりにして構いません。転ばないことのほうが、その日のケアより先です。
割り振りが崩れた週に、どの子から戻すかという順番
曜日で割っても、崩れる週は必ずあります。崩れたときに元の曜日へ戻そうとすると、たいてい2週続けて崩れます。曜日に戻すのではなく、順番に戻す。ここだけ覚えておけば、割り振りは何度でも立て直せます。
- 2日とばした:曜日を無視して、とばした子から再開します。日付ではなく並び順を守るほうが、頭数のあいだの間隔がそろいます
- 1頭だけ手がかかって他が回らない:その子を週2枠から週3枠に増やし、いちばん手のかからない子を週1枠に落とします。全頭を同じ枠数にしないでください
- 全頭のにおいが同時に気になりだした:担当日をやめて、共有物の日を前倒しします。寝床のカバーと水皿から動かすほうが、頭数ぶん拭くより早く変わります
- 体調がすぐれず1週間まるごと止まった:再開は共有物の日からです。1頭目からではありません。部屋の側を戻してから、体の側へ戻ります
- 新しい子を迎えて頭数が増えた:曜日を詰めずに、既にいる子の枠を1つ減らして空けます。7日は増えません
崩れた週に、埋め合わせをしないことも決めておいてください。とばした2日分を翌日にまとめると、その日のかがむ回数が9回に戻ります。元に戻したいという気持ちが、いちばん最初に外した設計を呼び戻します。高齢の飼い主が多頭飼いのペットのケアで力尽きるのは、たいてい崩れた週そのものではなく、崩れたぶんを取り返そうとした翌日のほうです。1週間の中で、その子に手が入る回数が2回から1回に減った、というだけの話です。翌週から2回に戻れば、間隔としては十分です。
担当日を守れているのに、同じ場所が短い間隔で戻ってくる。地肌が赤い、じくじくしている、においの質が変わった、触ると痛がる、同じところをなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、食欲や元気が落ちている。いずれかに当てはまるときは、ケアの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。多頭飼いでは、他の子と比べて「この子だけ」と思えるかどうかが手がかりになります。担当日が2回続けて同じ場所で止まったら、その週のうちに連れて行ってください。
相談に行くときは、紙に書いた丸をそのまま持って行ってください。いつからその子の担当日で気になっているのか、間隔がどう空いたのかが、丸の並びから分かります。多頭飼いだと、頭数のあいだで記憶が混ざります。どの子のいつの話だったかを、口で説明しようとしないほうが正確です。写真を撮っておくなら、同じ場所を同じ向きで、担当日ごとに1枚だけにしてください。
高齢の飼い主が多頭飼いのペットと暮らすとき、減らせるのは頭数でも愛情でもありません。減らせるのは、1日にかがんで立ち上がる回数のほうです。全頭を毎日という前提を外して、曜日で1頭ずつに割る。1頭につき1か所だけ決める。共有物は部屋の側でまとめる。崩れたら曜日ではなく順番で戻す。この4つで、9回は3回になります。回数が減ったぶんの余りは、翌日の分として残しておいてください。多頭飼いのケアで続いている家は、たいてい毎日全部をやっている家ではなく、今日やらないことを決めている家です。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- 頭数が多いと、担当日が回ってくるまで1週間近く空きます。間隔が長すぎませんか。
- 5頭を超えると、そのとおり間隔が空きます。その場合は、体の側の担当日は週1回のままにして、共有物の日を週2回に増やしてください。寝床・水皿・玄関マットのように頭数に関係なく1か所しかないものは、頭数が増えるほど早く条件が動きます。1頭あたりの間隔を詰めるより、共有物の間隔を詰めるほうが部屋全体では先に変わります。
- 犬と猫が混ざった多頭飼いでも、同じ割り振りで大丈夫ですか。
- 曜日で割る考え方は同じですが、猫の担当日だけは時刻を決めないほうがうまくいきます。犬は呼べば来ますが、猫は降りてくる時間がその子の側で決まっているためです。猫の担当日は「その日のうちに降りてきたとき」でよく、降りてこなければその週は見送って構いません。無理に高い場所へ腕を伸ばすと、姿勢の負担がいちばん大きくなります。
- 担当日以外の子に触らないでいると、その子が不満そうにします。
- ケアの手を入れないだけで、なでる・話しかける・そばにいることまでやめる必要はありません。多頭飼いの子が反応しているのは、たいてい道具や手つきのほうではなく、飼い主がその子に向いている時間の長さです。担当日以外は、道具を持たずに30秒だけ横に座る、と決めておくと、姿勢の負担を増やさずに時間だけを渡せます。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
