C14トリマー/獣医師視点

毛の間に空気の層をつくる|ふわふわの物理

公開日 2022年2月13日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の木の床に立っている、毛のふんわりした淡い色の小型犬
見た目のふくらみを決めているのは毛の本数ではなく、毛が立ち上がった角度と、そこに入った空気の量です。写真:Doğan Alpaslan Demir/Pexels

ふわふわに仕上がった毛は、指を1本入れて抜くと、数秒で元の高さへ戻ってきます。この戻る速さは毛の量と関係しません。毛と毛のあいだにどれだけ空気が入っているかで決まります。トリミングの現場が仕上げの良し悪しを手で測っているのは、まさにこの一点です。毛の本数は増やせませんが、毛のあいだの空気は、乾かす順番と地肌の状態で変わります。ここでは、ふわふわという言葉が指している物理と、その仕上げを家のケアの側へ移すときにどこを見ればいいのかを書きます。

指を抜いたあと、毛が戻るまでの数秒|現場がふわふわと呼んでいる状態と、そこで積んだ経験

仕上げの最後に現場がやっているのは、全身を見渡すことではなく、数か所に指を入れて抜くことです。背中の中心、首の横、腰の上。指を根元まで入れて、そのまま抜きます。抜いたあとに毛がすぐ元の高さへ戻れば、そこはふわふわに仕上がっています。抜いた跡がへこんだまま残るなら、見た目がどれだけ整っていても、その場所は仕上がっていません。判定に使っているのは目ではなく、指が抜けるときの抵抗と、戻るまでの数秒です。

指を入れたときの手ごたえと、そこから読んでいること
手ごたえ毛のほうで起きていることその場でやること
すっと根元まで入る毛が1本ずつ離れているそのまま仕上げへ進む
途中で止まって押し返す毛が束のまま固まっている束を割り直してから戻る
抜いた跡がへこんで残る空気が入らず毛が寝ている根元の側から風を入れ直す
戻るまでに3秒以上かかる立ち上がりの角度が浅い乾かす順番を組み替える
左右で戻る速さが違う寝る向きの癖か毛量の差遅いほうに全体を合わせる

この表の右端は、どれも手を止めて何かを足す動作です。ふわふわの仕上げは、最後にひと吹きして生まれるものではなく、途中で何回引き返したかで決まります。1頭で3回引き返すこともあれば、1回も引き返さない子もいます。何頭も触っているうちに積み上がる経験は、道具の使い方よりも、この引き返す場所の見当のほうです。

飼い主への説明でも、現場はこの手ごたえの話から入ります。毛がふくらんで見えるかどうかを言葉で伝えるのは難しいのですが、指を入れて戻る速さなら、その場で一緒に触って確かめられます。家に帰ってから同じ場所を触ってもらえば、仕上げがどこから崩れていくのかも、同じ手ごたえで追えます。ふわふわという言葉を、感想ではなく手で測れるものに置き換えておくと、次のトリミングまでの話が続きます。

Note見た目が整ったあとに、触って分かることが始まります

被毛は表面がそろった時点で見た目が仕上がるので、そこから先の差は外に出てきません。毛先だけが持ち上がって空気が入っていない状態と、根元から立ち上がって空気が入っている状態は、写真に撮るとほとんど同じに写ります。差が出るのは翌日からです。空気が入っていない側は、寝ているあいだに毛が同じ向きへ倒れ、朝には形が消えています。触って確かめる工程を省くと、この差が翌日まで分かりません。

空気を支えているのは根元の角度|ふわふわの仕上げが崩れる理由

毛と毛のあいだの空気は、浮いているのではなく、毛そのものが支えています。根元から斜めに立ち上がった毛が、隣の毛とぶつからずに交差することで、あいだに隙間ができます。この隙間の集まりが空気の層です。毛が根元で寝てしまうと隙間は消え、毛は隣の毛と平らに重なります。ふわふわに見えるかどうかは、この立ち上がりの角度がそろっているかどうかで決まります。

空気の層は、見た目のためだけにあるものではありません。空気は熱を伝えにくいので、層があるあいだは体の熱が外へ逃げにくく、外の冷たさも届きにくくなります。その子にとって、毛のあいだの空気は着ているものそのものです。層がつぶれた状態は、見た目がしぼむだけでなく、寒い時期には体温の面でも不利になります。仕上げの話が単なる見栄えの話ではないのは、ここが理由です。

毛を3つの層に分けて見る 被毛は、毛先・中ほど・根元の3つの層で別のことが起きています。見た目を決めるのは毛先ですが、空気が入るのは中ほどで、その空気を支えているのは根元の立ち上がりです。手で分かるのは真ん中の層、翌日まで残るかどうかを決めるのはいちばん下の層になります。 3つの層は同じ速さで乾きません 毛先の層 外から見える側 手が最初に触れる 見た目が決まる 中ほどの層 毛が斜めに交差する 指が入る 空気が入る場所 根元の1センチ 立ち上がりの角度 風と水が残る 戻る速さが決まる 指が止まる境目 地肌の手前 見た目が変わるのは毛先、戻る速さが変わるのは根元です
触って分かるのは中ほどの層、仕上げの持ちを決めているのは根元の層です。

立ち上がりが倒れる原因は、現場で見るかぎり3つに分かれます。どれも仕上げの直前ではなく、その手前の工程で起きています。

この3つのうち、いちばん手前で決まるのが3つめです。根元が乾ききる前に仕上げのブラシへ進むと、そのあとで何をしても立ち上がりは戻りません。風量を上げるほど毛先の乾きだけが先へ進み、根元との差は開きます。ふわふわの仕上げが崩れる理由を1つに絞るなら、乾かす速さではなく、乾く順番が上から下へ逆さになっていることです。

毛先の手入れより、根元の1センチ|犬と猫で分かれるふわふわの仕上げの背景

同じ空気の層でも、犬と猫では崩れ方が違います。犬は下毛のある子とない子で、層の厚みそのものが変わります。下毛のある子は空気をためる場所が二重になっているので、いったん整うとふわふわの持ちが長く、崩れるときは下毛の側から先に寝ます。下毛のない子は層が一枚しかないため、表面の毛が寝た時点で層ごと消えます。触って戻る速さを測る場所も、前者は根元の1センチ、後者は毛の中ほどになります。

猫の場合、現場が最初に見るのは毛づくろいの跡です。猫は自分の舌で毛を寝かせるので、よくなめる場所だけ毛が同じ向きにそろって倒れています。前脚が届く胸や前脚の内側は、そこだけ空気が抜けた状態になりやすく、届かない背中の中心との差が手に残ります。ふわふわの仕上げを猫で見るときは、全身をならすのではなく、その子が届く場所と届かない場所の差を縮める順番で組みます。

犬と猫で、空気の層を見る場所と崩れる順番
見る場所犬(下毛のある子)犬(下毛のない子)猫
指を入れる深さ根元の1センチまで毛の中ほどまで毛の中ほどまで
先に寝る場所下毛の側から表面の毛から自分でなめる場所から
戻る速さの目安1〜2秒で戻るすぐ戻る場所ごとに差が出る
崩れが見える時期翌日から数日かけてその日の夜のうちになめた直後から
組み直す順番遅い場所を先に全体を同じ速さで届かない場所を先に

この表を飼い主への説明に使うと、家でやることが1か所に絞れます。全身をととのえる話ではなく、その子がいちばん先に寝る場所を1つ覚えて、そこだけ毎日触るという話になります。下毛のある犬なら腰の上、下毛のない犬なら背中の中心、猫なら前脚が届かない肩の後ろ。場所が決まっていれば、ふわふわの仕上げが崩れ始めた日を、飼い主のほうが先に見つけられます。

現場がこの話を背景から伝えるようになったのには、理由があります。トリミングから帰った日がいちばん整っているのは当たり前で、価値があるのはその状態が何日残るかのほうだからです。同じ仕上げでも、家の触り方しだいで2日で消えることも、次の予約まで残ることもあります。差がつくのは道具の値段ではなく、根元の1センチに指が入っているかどうかです。

毛のあいだへ空気を戻す順番|ふわふわの仕上げを毎日の側に置く考え方

家で仕上げが崩れるのは、手順が足りないからではなく、順番が上から下へ流れているからです。毛先をととのえてから根元へ向かうと、根元へ着くころには毛先が乾ききって束になっています。逆にして、根元の側から空気を入れて、最後に毛先をなでる形にすると、同じ道具と同じ時間で戻る速さが変わります。

根元の側から始めるときに要るのは、毛を1本ずつ離せるだけのわずかな水気です。乾いた毛に指を入れると、摩擦で毛先が余計に引き合います。ここで使えるのがmofuwa スキンケアミストです。中身は高機能性電解酸化水100%で、水分の浸透力は精製水の35倍とされています。毛の表面で止まらずに根元の側まで入るので、地肌が乾いて毛の立ち上がりが固まっている子でも、指を入れる前の一段としてそのまま使えます。

場所を選ばずに使えることも、根元の側から組むときには効いてきます。口のまわり、耳のふち、内股。その子が自分でなめに行ける場所ほど、毛が寝て空気が抜けやすい場所です。スキンケアミストは清涼飲料水の基準をクリアした水でつくられているため、なめる場所を避けて手順を組み替える必要がありません。避ける場所がないというのは、毎日続けるうえでは手数の話でもあります。

  1. 根元へ先に入れる

    背中の中心と腰の上から、毛を分けて地肌の側へ届かせます。かける範囲は、その子でいちばん先に寝る1か所からで足ります。

  2. 毛の流れに逆らって指を入れる

    指を根元まで入れて、そのまま抜きます。束になっている場所はここで分かります。ブラシより先に、指で通り道を開けます。

  3. 束のある場所だけコームを入れる

    全身を梳かすと、そろった毛まで同じ向きに倒れます。止まった場所に、毛先の側から短く入れます。

  4. 最後に毛先をなでてそろえる

    毛先をととのえるのは最後です。ここを先にやると、根元へ戻る道がなくなります。

  5. 抜いた指の跡で確かめる

    1か所だけ指を入れて抜き、戻る速さを見ます。3秒以上かかるなら、その場所は根元へ戻ってやり直します。

体を洗う日には、そのあとの立ち上がりまで含めて考えます。洗い上がりがごわつくのは、汚れだけでなく地肌に要るものまで落ちているからで、ごわついた毛は角度を作れません。毎日の側では、余分な脂と汚れだけを落とすmofuwa グルーミングスプレーを吹きかけてブラシを通す形にしておくと、湯を使う回数を増やさずに毛を1本ずつ離した状態に保てます。地肌の乾きが先に出る子なら、スキンケアミストを根元へ、毛のもつれが先に出る子ならグルーミングスプレーを全体へ。2本の役割は、毛の側と地肌の側で分かれています。

Caution指を入れて戻らない場所が、同じ位置から動かないとき

同じ場所だけ2週間以上ふくらみが戻らない/毛を分けると地肌が赤い、または白い粉が続けて出る/その場所を毎日なめている/左右で毛の立ち上がりの差が開いていく。こうした残り方は、乾かし方や触る順番では説明がつきません。いつから、体のどこで起きているかを日付つきで書き出して、地肌の側を動物病院で診てもらってください。毛の下で何が起きているかを確かめる工程は、家のブラッシングの外にあります。そのうえで、家では同じ場所を毎日ひと通り触る形を続けてください。

ふわふわという言葉は、仕上がりの感想のように使われていますが、中身は毛の角度と空気の量という測れるものです。指を入れて、抜いて、戻る速さを数える。この10秒がその子の体に1か所ぶん残っていれば、次のトリミングまでの日数がどれだけ空いても、崩れ始めた日はすぐに分かります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。