C05犬種・猫種別ケア

オールドイングリッシュシープドッグはなぜ毛玉が起きやすいのか。長毛から考える

公開日 2022年2月1日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、長く厚い被毛の大型犬が静かに立っている
表面がふんわり整っていても、その下は別です。届いているかどうかは、指を入れてみないと分かりません。写真:Yaroslav Shuraev/Pexels

オールドイングリッシュシープドッグの背中にブラシを通すと、端から端まで抵抗なく抜けました。それなのに、同じ場所を両手で開いて地肌を見ようとすると、指は毛の途中で止まります。ブラシが通ったのは、その止まった位置より、まだ上のほうです。この犬種の毛玉は、ここから始まります。毛が厚く、長い。だから手もブラシも、地肌まで届いていません。「毎日ブラッシングしているのに毛玉ができる」という食い違いは、やっていないから起きているのではありません。届いていないから起きています。この記事では、なぜ届かないのかを先に、そのうえで届かせる手順を書きます。

ブラシは表面だけを通っている|オールドイングリッシュシープドッグの毛玉が育つ場所

オールドイングリッシュシープドッグの毛は、体の上で何層にも重なっています。表面から見えているのは、いちばん外側の毛先だけです。その下に、同じくらい長い毛が何枚も入っている。手のひらを押しつけると、沈んでいく感触がずっと続いて、なかなか底に当たりません。この厚みが、この犬種の被毛の出発点です。

この犬種はイングランドで、牛や羊を市場まで追っていく仕事をしてきました。雨と風の多い土地を、一日じゅう歩く仕事です。厚く長い被毛は、天候から体を守るためにこの形になりました。上毛も下毛も長く伸び、毛先がゆるく波打って重なります。外から見て体の輪郭が丸く見えるのは、この毛の量のためです。

ここで、ブラシの側を見てみます。市販のブラシの歯の長さは、たいてい1センチから2センチほどです。ところがオールドイングリッシュシープドッグの被毛の層は、それよりずっと厚い。ブラシを上からあてても、歯は毛の上のほうを通るだけで、根元には最初から届いていません。抵抗なく通るのは、毛が整っているからではなく、抵抗のある層まで入っていないからです。

毛玉ができるのは、その触られていない根元です。抜けた下毛が長い上毛に絡んで留まり、そこへ次の毛が重なります。オールドイングリッシュシープドッグの毛玉は、いきなり大きくなるのではありません。誰にも触られない場所で、毎日少しずつ育ちます。外から見て気づいたときには、指ではほどけない硬さになっていることがあります。

乾く季節には、もうひとつ条件が乗ります。空気が乾くと、毛先どうしが静電気で寄ります。長い毛どうしが寄り合うと、そのまま絡んだ形で固定されます。うるおいが減った毛は、毛先の滑りも落ちます。冬に毛玉が増えたと感じるのは、毛量が変わったからではなく、毛先が寄りやすくなっているからです。換毛期も同じで、抜けた下毛の量が増えるぶん、根元に残るものが増えます。

Noteやっていないのではなく、届いていない

毎日ブラッシングしているのに毛玉ができると、自分のやり方が悪いのではないかと感じてしまいます。オールドイングリッシュシープドッグの場合、回数を増やしても、上を通す回数が増えるだけです。足りないのは時間でも熱心さでもなく、ブラシが入っていく深さです。深さの問題は、手順を変えれば片づきます。次の章がその話です。

毛を層に分けて、下から順に上げていく|オールドイングリッシュシープドッグの毛玉へのやり方

届かせるやり方は、ひとつしかありません。毛の層を、自分の手で一枚ずつ開いていくことです。厚い本を上からなでても中は読めませんが、ページを1枚ずつめくれば読めます。それと同じことを、被毛でやります。毛を横に分けて線をつくり、その線から下だけをとかす。終わったら線を少し上へずらす。この繰り返しです。

始める前に、道具と姿勢を決めておきます。目の粗いコームと、スリッカーブラシ。犬は立たせたままでも、横に寝かせてもかまいませんが、同じ姿勢が10分続けられるほうを選んでください。途中で立たせ直すと、どこまでやったか分からなくなります。始める場所は、いちばん下です。理由は次の手順の中で書きます。

  1. 体のいちばん下から始める

    背中からではなく、お腹の際や脚の下のほうから始めます。上から始めると、とかし終わった毛が下へ落ちてきて、まだやっていない毛と混ざります。下から順に上げていけば、終わった層はそのまま上に乗っていくので、どこまで進んだかが目で分かります。オールドイングリッシュシープドッグは体が大きいぶん、この順番の差がそのまま時間の差になります。

  2. 毛を横に分けて、地肌が見える線を1本つくる

    片手で毛を上へ持ち上げ、押さえたまま保ちます。持ち上げた手の下に、地肌が見える横一直線ができます。この線が見えていないうちは、まだ届いていません。毛量の多い場所では、片手では押さえきれないことがあります。そのときは線を短く区切って、20センチずつ進めてください。

  3. 線から下の毛だけを、毛先から根元へ向かってとかす

    線の下に垂れている毛が、いまの作業範囲です。まず目の粗いコームを毛先に入れて、抵抗がなくなったら少しずつ根元側へ上げていきます。根元からブラシを入れると、毛玉ごと皮膚を引っぱることになります。毛先から始めて、ほどけた分だけ上がる。この向きだけは変えないでください。

  4. コームが根元まで抜けたら、線を1〜2センチ上へずらす

    根元まで一度も引っかからずにコームが抜けたら、その層は終わりです。押さえていた手をゆるめて、線を1〜2センチだけ上へ移します。一度に5センチ上げると、あいだの層が飛びます。飛んだ層は、次に触られるまで誰も触りません。そこが毛玉になります。地道ですが、これがいちばん速い順番です。

  5. 線を上げていって、背中の中心で終わる

    同じことを繰り返して、背骨の線まで上がったら片側は終わりです。反対側も、また下から始めます。脚のつけね、脇の下、耳の後ろ、しっぽのつけねは、線がつくりにくい場所です。ここは無理に線をつくらず、指で毛を左右に開いて、開いたまま短くとかしてください。

どこから始めるか|オールドイングリッシュシープドッグの毛玉に手を入れる順番
順番場所気をつけること
1後ろ脚の下側から腿へ立たせたまま。片脚ずつ
2お腹の際から脇腹へ寝かせるならここから
3脇の下と前脚のつけね線がつくれないので、指で開く
4胸から首の下へ毛が四方から集まる場所
5耳の後ろとあごの下動きが多く、根元で寄りやすい
6背中と腰、しっぽのつけね最後。上から落ちてきた毛も拾う

全部を一度にやろうとすると、大型犬では1時間近くかかります。1日で終わらせなくてかまいません。今日は後ろ脚と脇腹、明日は胸と首、というふうに区切ってください。区切った場所を紙に書いて、終わったところに印をつけていくと、抜けが出ません。この抜けが、そのまま毛玉の場所になります。

毎日30分より、部位を決めた5分|ブラッシングの頻度とコツ

頻度の話をします。オールドイングリッシュシープドッグと暮らしていると、「毎日全身を」という目標を立てたくなります。体の大きさと毛の量から言って、これはまず続きません。続かないと、やらない日ができます。やらない日ができると、翌日にまとめてやろうとして時間が延び、犬のほうが先に嫌になります。

頻度は、全身を何回、ではなく、1か所を何日おきに、で決めてください。体を6つに割って、1日1か所ずつ回せば、6日で全身が一周します。1か所あたり5分から10分。そのかわり、その5分は必ず地肌まで届かせます。届かない30分より、届く5分のほうが、毛玉に対しては効きます。

季節と場所で変わる、ブラッシングの頻度の目安
ふだんの時期換毛期・乾いた季節
全身が一周する日数6日で一周3日で一周
1か所あたりの時間5〜10分5〜10分(延ばさない)
重点の場所脇の下、脚のつけね耳の後ろ、しっぽのつけね
毛先の状態指で滑る静電気で寄る。滑りが落ちる
先にすること線を1本つくる毛先の滑りをそろえてから線をつくる
やらないこと上からだけ通す乾いたまま強くとかす

乾いた季節のコツを、もうひとつ。静電気が起きているときにとかすと、毛先が広がって、かえって寄ります。線をつくる前に、毛の表面を一度湿らせてから入ってください。ここで使えるのが mofuwa グルーミングスプレーです。グルーミングスプレーでありブラッシングスプレーでもあるので、吹きかけてから梳かすと、静電気の起きにくい状態で線をつくれます。毛先のうるおいが戻れば、コームの抵抗そのものが変わります。湿らせた日は、その日のうちに根元まで乾かしきるところまでを1セットにしてください。

換毛期は、抜けた下毛の量が増えます。この時期に1回の時間を延ばすと、犬が動いて線が崩れます。延ばすのは時間ではなく、一周する速さのほうです。6日で一周していたところを3日にする。同じ5分を、倍の頻度で入れる。この形にすると、根元に留まる時間が短くなります。

Cautionハサミの先は、皮膚まで届きます

できてしまった毛玉を早く取ろうとして、引き抜く・ハサミを入れる、はどちらも避けてください。固まった毛玉は、下の皮膚をつまんだまま持ち上げた状態になっています。この犬種は毛が厚いぶん、どこまでが毛でどこからが皮膚か、外から見て分かりません。ハサミの先が皮膚に届きます。ほどけないものは、場所を伝えてトリマーに任せてください。

汚れのほうも、同じ6日の一周に乗せてしまうと楽になります。犬の体は毎日脂を出しますし、散歩に出れば外のものもつきます。オールドイングリッシュシープドッグのように毛の量が多い体では、その脂と汚れが毛の途中に残り、毛先の滑りを落としていきます。この体を毎日洗うことも、サロンへ毎日連れていくこともできません。それでも毎日きれいにしておきたいので、今日の1か所に線をつくる前に、そこへ mofuwa グルーミングスプレーを行き渡らせてから梳かします。舐めても問題のない基準でつくられているので、大型犬の広い面でも量を惜しまずに当てられます。すでに固まっている毛玉に吹きかけて、そのままにするのは避けてください。中まで乾ききらずに残ります。

地肌まで届いたのに、同じ場所で毛玉が戻るとき

ここまでは、ブラシが届いていないことで説明のつく毛玉の話でした。線をつくって根元までコームが抜けたのに、数日で同じ場所が固まる。これは、深さの話とは別の理由として見てください。届かせた記録があるからこそ、この切り分けができます。どこまでやったかを紙に残しておくと、その日にすぐ分かります。

Caution届かせたのに変わらないときの線

地肌が赤い、じくじくしている、においが強くなった、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。この7つが出ているときは、ほどく手を止めて獣医師に見てもらってください。オールドイングリッシュシープドッグは毛が厚いので、外から見えるようになった時点で、中ではもう何日か進んでいます。厚い被毛は、気づくのを遅らせる方向にはたらきます。

相談やトリミングの前には、最後にその場所を通した日、毛玉の場所、いつから気づいたかをメモしてください。この3つがあると、届いていなかったことで説明のつく毛玉なのかどうかが、その場で切り分けられます。ほどけなかったものは、そのままの形で見せるのがいちばん伝わります。前の晩に引っぱってほぐした跡があると、もともとどれだけ固まっていたのかが読めなくなります。

オールドイングリッシュシープドッグの被毛は、雨と風の中を歩く仕事のために、この厚みになりました。厚さそのものは変えられません。変えられるのは、その厚みの中に手を入れる順番です。上からなでる回数を増やすのではなく、毛を分けて線を1本つくり、下から順に上げていく。毛玉とつきあううえで、届いたかどうかを自分で確かめられることが、いちばん大きな支えになります。今日は1か所でかまいません。線が見えたところから始めてください。

Product

mofuwa グルーミングスプレー

mofuwa グルーミングスプレー

300ml / 2,970円(税込)

特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。

商品ページを見る

よくある質問

毎日ブラッシングしているのに、オールドイングリッシュシープドッグの毛玉ができるのはなぜですか?
回数ではなく、深さの問題であることが多いです。この犬種の被毛の層は、ブラシの歯の長さよりずっと厚いので、上からあてても根元には届きません。抵抗なく通るのは、整っているからではなく、抵抗のある層まで入っていないからです。毛を横に分けて地肌が見える線をつくり、その線から下だけをとかしてください。
全身を毎日やるのが難しいのですが、頻度はどのくらいがいいですか?
全身を毎日ではなく、体を6つに割って1日1か所ずつ回すやり方をおすすめします。6日で一周する形です。1か所5分から10分で、そのかわり必ず地肌まで届かせます。換毛期と乾いた季節は、時間を延ばすのではなく、3日で一周するように回数のほうを増やしてください。
固まってしまった毛玉は、家で切ってもいいですか?
おすすめしません。毛玉は下の皮膚を引っぱって持ち上げているうえ、この犬種は毛が厚くて、どこからが皮膚か外から見えません。ハサミの先が皮膚に届きます。ほどけないものは場所を伝えてトリマーに任せてください。地肌が赤い、痛がるといったときは、先に動物病院にご相談ください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。