C05犬種・猫種別ケア

プーリーの巻毛|毛玉を毎日のケアで防ぐ

公開日 2022年2月22日|文=mofuwa編集部

明るい草の上に、房のようになった毛の犬が立っている
房になった毛は、内側まで日が入りません。乾ききるまでの時間が、外から見えないところで長くなります。写真:Erwin Bosman/Pexels

プーリーの脇に、指の太さほどのかたまりを見つけて、ブラシを取りに行った。戻ってきて、毛の上に当てる直前で手が止まる。この犬種でブラシを入れていいのか、という迷いです。その手は、止まって正解です。プーリーでは、毛が絡んでいることそのものは正常だからです。絡んだ毛はほどく相手ではなく、コードと呼ばれる房に育てていく相手です。とかしてしまうと、この犬種の被毛はもとに戻りません。だからプーリーでは、毛玉という言葉の指すものが他の犬種と違います。何がふつうで、何が毛玉なのか。毎日のケアで見ているのはどこなのか。順に書いていきます。

ブラシを入れる手が止まる|プーリーで毛玉ができたと思ったとき

脇の毛をなでていて、指の太さほどのかたまりに当たる。他の犬種と暮らしてきた方なら、ここで毛玉だと思います。そしてブラシを取りに行く。プーリーの場合、その手が毛に触れる直前で止まるなら、それは正しい迷い方です。この犬種では、指に当たったかたまりが毛玉ではないことのほうが多いからです。

プーリーはハンガリーの平原で羊を追ってきた犬です。房になった毛が体をおおい、雨と風と、群れの中でぶつかるものから体を守ってきました。房になっていることが、この犬種の被毛の完成した形です。ほどけて一本ずつに分かれた状態は、途中の姿であって、目指す姿ではありません。

ここが、他の犬種の毛玉の話とまったく噛み合わないところです。多くの犬種では、絡んだ毛は元に戻すものとして扱われます。ブラシやコームを入れて、一本ずつに分けて、また流れをそろえる。プーリーでは、その作業をした時点で、育ててきた房が失われます。一度とかしてしまった被毛が、また同じ房に戻ることはありません。

だからプーリーと暮らすときは、最初に言葉の置き場所を変える必要があります。指に当たったかたまりを見て「毛玉ができた」と判断しない。まず、これは育っている途中の房なのか、それとも直したほうがよい状態なのかを見分けます。この見分けができるようになるまでが、この犬種の毎日のケアでいちばん時間のかかるところです。道具の話でも、時間の話でもありません。

Note「毛玉を防ぐ」という言い方が、そのままでは当てはまりません

他の犬種の記事では、毛玉を防ぐという言い方をします。毛が絡まないようにする、という意味です。プーリーでは、絡むこと自体を止めません。この犬種で防ぐという言葉を使うなら、対象は「絡むこと」ではなく「房が太くなりすぎること」「根元で隣とくっつくこと」「中まで乾かないこと」の3つになります。同じ言葉でも、指しているものが入れ替わります。

絡むことが正常|プーリーの被毛がコードになるまで

プーリーの被毛も、上毛と下毛の二層です。ここまでは他の犬種と変わりません。違うのは、抜けた下毛の行き先です。この犬種では、抜けた下毛が床に落ちません。上毛のカールにつかまって、その場に留まります。留まった下毛が上毛と絡み合い、少しずつ束になって、やがて一本の房になります。これがコードです。

つまりプーリーには、他の犬種のような換毛期の景色がありません。春と秋に床が毛だらけになる、ということが起きない。抜けた毛は外へ出ず、房の中身になっていきます。換毛期に抜けた毛は、そのままコードの材料になります。床に落ちる毛が少ないぶん、体の上にある毛の量は増え続けている、と考えてください。

子犬のうちは、まだ房になっていません。巻いた綿のような毛が全身をおおっていて、手を入れれば指が地肌まで届きます。房になり始めるのは生後10か月前後という子が多く、そこから形が落ち着くまでにさらに1年以上かかります。この時期にどう手を入れたかで、そのあと何年もつきあう房の太さが決まります。放っておいても房にはなりますが、放っておいた房は、たいてい太くなりすぎます。

毛先と根元では、房の年齢がまるで違います。毛先はもっとも古く、根元がいちばん新しい。だから毎日のケアで手を入れるのは、ほとんどが根元の側です。毛先は、触らずに置いておく場所です。他の犬種のブラッシングが毛先から入るのに対して、プーリーは根元だけを見る。この一点だけでも、やることが入れ替わっているのが分かります。

太くなりすぎる・根元で隣とくっつく・中まで乾かない|プーリーで毛玉と呼ぶ3つ

絡むことが正常なら、この犬種で毛玉と呼ぶべきものは何なのか。3つあります。房が太くなりすぎること、根元で隣の房と癒着すること、そして中まで乾かないこと。どれも「絡んだかどうか」ではなく「絡み方がどうなっているか」の話です。順に見ていきます。

1つ目、太さです。房は放っておくと、隣の毛を巻き込みながら太くなっていきます。太い房は重く、根元の一点で体にぶら下がる形になります。指2本ではさんで、こちらの指がすっと合わないほどの太さになっていたら、それは太すぎる側です。目安は、人差し指1本ぶんより細いところ。太い房ほど、このあとの2つの問題も同時に抱えます。

2つ目、根元の癒着です。房は根元の側で新しく伸びてきます。この新しい部分を放っておくと、隣の房の新しい部分と混ざり、地肌のすぐ上で1枚の板になります。外から見ると房が並んでいるのに、根元だけがつながっている。プーリーの毛玉という言葉がいちばん近いのは、この状態です。板になった根元の下は、空気も通りません。

3つ目、乾き方です。房は水を吸います。しかも、外側から乾いていくので、中心はいちばん最後まで濡れたままです。表面を触って乾いていても、房の芯はまだ湿っている、ということが起こります。太い房ほど芯までの距離が長く、乾ききるまでの時間が延びます。根元が板になっていれば、そこはさらに乾きません。3つはつながっていて、太さの問題は乾き方の問題になります。

プーリーで毛玉と呼ぶべき3つと、どこを見るか
何が起きているかどこで気づくか見ている場所
房が太くなりすぎる指2本ではさんで、太さが合わない房のまん中あたり
根元で隣の房と癒着する地肌のすぐ上が、板のようにつながる根元から数センチ
中まで乾かない表面は乾いているのに、芯が冷たい房の中心

空気が乾く時期には、もうひとつ条件が乗ります。静電気です。房の表面から出ている細い毛が立ち上がり、隣の房の表面の毛と触れ合う。本来なら離れているはずの房どうしが、表面の毛を介してくっついていきます。根元の癒着が、毛先の側にまで広がっていく形です。冬に房のまとまりが悪くなったと感じるのは、たいていこれが起きています。

Point3つのうち、先に手をつけるのは根元です

太さは、根元で分けた結果として決まります。乾き方も、太さが決まれば変わります。だから毎日のケアで見るのは、まず根元ひとつです。房の途中や毛先を触っても、この3つは動きません。今日どこを触るか迷ったら、地肌に近いところ、とだけ覚えておいてください。

指で根元を裂き、太さを決め、乾かしきる|プーリーの毎日のケア

ここからが毎日の話です。プーリーの毎日のケアで、ブラシもコームも持ちません。他の犬種でブラッシングにあてている時間を、この犬種では指で根元を分ける時間にあてます。道具は自分の指だけです。爪は短くしておいてください。長い爪は、地肌に当たります。

  1. 地肌に近い側から、房の境目を指でたどる

    房を上からつまむのではなく、根元に指を差し入れて、隣の房とのあいだの線をたどります。線がすっと通るなら、そこはまだ分かれています。途中で指が止まる、線が消えて面になっている場所が、癒着が始まっているところです。全身を1日で回す必要はありません。今日は背中の半分、明日は脇、で足ります。

  2. 線が消えている場所を、根元から左右へ裂く

    両手の指で、癒着している部分をはさみ、地肌の側からゆっくり左右へ引き離します。上から引っぱるのではなく、地肌に沿って横へ離す。一度に全部を離そうとしないでください。今日は1センチぶん、明日はその続き、という進み方で構いません。この作業に道具は使いません。

  3. 分けるときに、房の太さを自分で決める

    裂く場所を選ぶということは、その房の太さを決めるということです。指1本ぶんより細くなるところで線を引くと、そのあとが楽になります。太いまま育った房を細くするのは、あとからではほとんどできません。房の太さは、根元で分けた瞬間に決まっています。

  4. 濡れた日は、乾かしきるまでを1セットにする

    雨の日、水たまりを歩いた日、洗った日。房は外側から乾くので、表面の手ざわりでは判断できません。房を1本つまんで、指の腹で中心のあたりを押してみてください。冷たさが残っていれば、まだ乾いていません。風を根元から当てて、房と房のあいだに通るようにします。時間がかかる作業なので、乾かしきれない日は濡らさない、という決め方も含めて考えてください。

  5. 空気が乾く時期は、根元の点検の間隔をつめる

    静電気で房の表面の毛が立ち、隣とくっつきやすくなる時期です。やることは増やさず、根元をたどる間隔だけを短くします。ふだん3日に一度なら、この時期は毎日。触る場所も範囲も変えません。地肌のうるおいが減る時期でもあるので、洗う回数のほうは増やさないでください。

毛先について、もう一度書いておきます。プーリーの房の先端は、何年も前に生えていた毛です。ここを切りそろえるかどうかは暮らし方によりますが、毎日のケアの中で毛先を触る理由はありません。床につくほど長くなって歩きにくい、食事のときに口に入る、といった実際の困りごとが出たときに、長さを見直せば足ります。毛玉を探して毛先をいじる時間は、根元に回してください。

Cautionはさみを入れない、引っぱって離さない

癒着した根元を早く離そうとして、はさみを入れる・上へ引っぱる、はどちらも避けてください。根元の板の下には、引き上げられた皮膚があります。はさみの先が、毛ではなく皮膚に届きます。引っぱれば、生えている毛ごと持ち上げることになります。今日離せなかったところは、明日でかまいません。嫌がる、声を出すというときは、その場で手を止めてください。

空気が乾く時期の根元の点検には、mofuwa グルーミングスプレーを1本そばに置いておくと手が早くなります。布に含ませて、房の表面を上から下へなでてから、根元の線をたどります。立ち上がっていた表面の毛が落ち着くので、隣の房と触れ合う面が減ります。静電気の起きにくい状態をつくるブラッシングスプレーとしてつくられているため、ブラシを持たないプーリーでも、この一往復だけで役目が立ちます。舐めても問題のない基準でつくられているので、口の届く胸や前脚の房にも量を気にせず使えます。ただしグルーミングスプレーを房へ直接吹きかけると、中心まで湿って乾ききらなくなります。布に含ませてから、という順番だけ守ってください。

コードの中は外から見えない|プーリーで家の手を止める線

プーリーの房は、外から中が見えません。他の犬種なら毛を分ければ地肌が見えますが、この犬種では房そのものがふたになっています。だから、地肌の変化に気づくのが遅れます。毎日のケアで根元に指を入れているのは、房を分けるためだけではなく、地肌の手ざわりを知るためでもあります。次のようなときは、その日は手を進めずに止めてください。

Caution自分で房を離すのをやめて、動物病院で見てもらう変化

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、房が根元から外れて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、自分で房を離そうとせず、動物病院にご相談ください。プーリーは房が地肌をおおっているぶん、変化が進んでから気づくことになりがちです。芯の冷たさが2日続いた場所があるなら、その日数も一緒に伝えてください。

相談やトリミングに行くときは、気になっている場所、いつからか、最後に濡れた日の3つをメモしてください。この3つがあると、乾ききらなかった時間の話なのか、それとも別のことなのかを、その場で切り分けてもらえます。癒着したままの根元は、無理に離さずそのまま連れて行ってください。前の晩に指を入れて離してしまうと、何日ぶんつながっていたのかが伝わらなくなります。

プーリーと暮らすうえで、毛が絡むことはなくなりません。絡むことがこの犬種の被毛の完成した形で、房はそうやって育っていくからです。やめさせるのではなく、どう絡ませるかを人が決める。根元をたどって、線を引いて、太さを決めて、濡れた日は乾かしきる。プーリーの毛玉という言葉を、この4つに置き換えられたら、毎日のケアで迷うことはずいぶん減ります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。