C05犬種・猫種別ケア

フィニッシュスピッツはなぜ抜け毛が起きやすいのか。ダブルコートから考える

公開日 2022年3月29日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、立ち耳の赤みがかった被毛の犬が静かに休んでいる
換毛の合図は、暦ではなくその子が受け取っている明るい時間の長さのほうにあります。写真:Everson Mayer/Pexels

11月の終わり、フィニッシュスピッツをブラッシングした翌日に、掃除機の中身が急に重くなりました。カレンダーの上では、換毛期はとっくに終わっているはずの時期です。この犬種の抜け毛は、暦の春と秋に合わせて動くとはかぎりません。フィンランドで育った被毛は、気温より先に日の長さの変化を合図にします。ところが日本の室内では、夜になっても照明がついている。その子の体が受け取っている「日の長さ」は、外の日の出と日の入りからずれていきます。この記事では、なぜずれるのかという理由と、その子自身の時期を記録から見つける手順を書きます。

暦の春秋では合わない|フィニッシュスピッツの抜け毛が日の長さで動く

3月の第1週にブラシを買い足して、換毛期にそなえる。ところがその年は、3月も4月もたいして出ませんでした。かわりに、11月の終わりから12月にかけて、ブラシの目が毎回詰まるようになった。フィニッシュスピッツと暮らしていると、こういう年に出会います。やり方を間違えたわけでも、道具が合っていなかったわけでもありません。

犬の被毛が入れ替わる合図は、いくつかあります。そのなかで、北の高い緯度で作られた犬種がとくに強く受け取っているのが、明るい時間がどれだけ長いか、そしてそれが伸びているのか縮んでいるのかという情報です。フィンランドは、夏に日がほとんど沈まない時期があり、冬には昼がごく短くなる土地です。1年のあいだに、明るい時間が大きく振れます。

振れ幅が大きい土地では、いまが1年のどこなのかが、明るさだけではっきり分かります。被毛の入れ替えは、その大きな振れに合わせて組まれています。フィニッシュスピッツの抜け毛が季節でまとまるのは、この作りがあるからです。上毛と下毛が分かれたダブルコートを持ち、下毛が季節でまとまって入れ替わります。

日本は、フィンランドよりずっと低い緯度にあります。夏と冬で昼の長さは変わりますが、その差は北欧ほど大きくありません。合図そのものが、もともと小さく届く土地です。そこへもうひとつ、家の中の事情が重なります。

日が落ちてからも、部屋には照明がついています。夕方から夜11時まで明るいリビングで過ごしている子にとって、その日の「明るかった時間」は、外の日の入りでは終わっていません。体が受け取っている日の長さは、暦とずれます。しかも、その家の暮らし方によって、ずれ方が変わります。

つまり、フィニッシュスピッツの換毛期は「春と秋」という一般的な言い方では当てになりません。当てにならないのは、その子が悪いのでも、体が乱れているのでもありません。もともと大きな振れを合図にするようにできた被毛が、振れの小さい場所で暮らしているだけです。だから、暦を見るかわりに、その子自身の抜け毛のほうを見にいきます。

Note照明を消すために、暮らしを変える必要はありません

合図がずれると聞くと、夜の照明を早く消したほうがいいのだろうか、と考えてしまいます。そこまでする必要はありません。変えたほうがいいのは、暮らしのほうではなく、換毛期を暦で決めるという前提のほうです。ずれていても構いません。ずれた先がどこなのかを、こちらが知っていれば足ります。むしろ、照明を消す時刻が毎日ばらばらだと、合図まで揺れます。そろえるだけで十分です。

線を1本引くだけ|フィニッシュスピッツの抜け毛の時期を見つける手順

ここからは手順です。やることは、ブラシに乗った毛を1か所に集めて、週に一度その量を線の本数で書きとめる、それだけです。量そのものを正確に量る必要はありません。知りたいのは絶対の量ではなく、増えているのか減っているのかという向きだからです。

順番も決めておきます。集める容器を先に用意し、ブラッシングの場所を決め、それから記録を始める。道具より先に、置き場所を決めるほうが続きます。取りに立ち上がる動作がひとつ入るだけで、記録は途切れます。

  1. 毛を入れる容器を、1つだけ決める

    ブラシから外した毛を、そこにだけ入れます。透明な袋でも、空き箱でも構いません。置き場所は、ブラッシングをする場所のすぐ横にしてください。いくつも使うと、その週にどれだけ出たのかが分からなくなります。1週間たったら中身を捨てて、また空から始めます。

  2. ブラッシングは、曜日ではなく回数で揃える

    週に3回なら3回、毎日なら毎日。回数が週によって違うと、増えたのか、たくさんやっただけなのかが分かりません。1回にかける時間も、だいたい同じにしておきます。5分なら5分。長くやった週だけ量が増えるのは、当たり前だからです。

  3. 週に一度、たまった量を線の本数で書く

    カレンダーの端に、線を引くだけです。容器の底が薄く覆われるくらいなら1本、半分なら3本、いっぱいなら5本。目盛りは自分で決めて構いません。大事なのは、毎週同じ目で見ることです。写真を1枚撮って残しておくと、目が揺れません。

  4. 同じ日に、その部屋が暗くなった時刻も書く

    照明を消した時刻を、数字で1つ書き添えます。「23」だけで足ります。この一列があると、あとで見返したときに、合図の側が動いたのかどうかが分かります。帰宅が遅くなった週、旅行に出た週。暮らしが動いた週は、たいてい線の本数も動きます。

  5. 3週間ためてから、はじめて見返す

    1週や2週では、向きは読めません。3つ並んで、はじめて増えているのか減っているのかが見えます。そこで増える向きが出ていたら、その週からがその子の換毛期の入口です。カレンダーの3月や10月ではなく、線が動いた週のほうを起点にしてください。

暦で決めるやり方と、記録で決めるやり方 換毛期の入口を、カレンダーの季節で決めるか、その子から出た量の向きで決めるか。フィニッシュスピッツでは、後者のほうが外れません。 同じ手間でも、起点の決め方が変わります 暦で決める 3月と10月に構える 毎年、同じ週から始める ずれた年は空振りになる 増え始めに気づけない 記録で決める 線が3週続けて増えた週 その子ごとに起点が動く 暮らしが変われば追える 増え始めから手を入れる 起点が決まると、その先のブラッシングの回数も決められます
見るのは量の大小ではなく、増えているか減っているかの向きです。

増える向きが見えたら、そこからブラッシングの回数を上げます。週3回なら毎日に、毎日なら朝と夜に。回数を上げるのは、線が増えている期間だけで足ります。線が3週続けて減りはじめたら、もとの回数に戻します。フィニッシュスピッツの抜け毛は、この上げ下げだけでずいぶん扱いやすくなります。

記録がぶれる週のコツ|量ではなく増える向きを読むやり方

続けていると、必ず読めない週が出てきます。先週より明らかに少ないのに、床には毛が落ちている。あるいは、その週だけ極端に多い。どちらも記録が失敗したのではなく、量が動く条件がほかにもあるというだけです。ぶれる理由を先に知っておくと、線を引く手が止まりません。

線の本数がぶれる週に、たいてい起きていること
その週の様子起きていることどう扱うか
急に減った前の週に取りすぎている翌週と合わせて2週で見る
急に増えた1回を長くやった日がある時間をそろえて、翌週を待つ
空気が乾いた週だけ増える静電気で毛先が広がっている先に静電気を落としてからとかす
雨や湿りが続いた週根元に毛が張りついている乾かしきってから量る
旅行や帰省があった週照明のつく時刻が変わっているその週は数えず、印だけ残す
家族が増えた・減った部屋の明るい時間が動いている起点を取り直す

とくに冬に多いのが、静電気で数字が動く週です。空気が乾くと、とかすほど毛先が広がって寄ります。本当に抜けた毛ではなく、寄って絡んだ毛が容器に入る。これでは向きが読めません。乾いた時期は、布をわずかに湿らせて上毛の表面を一度なでてから、ブラシを入れてください。布は、握って水がしたたらない程度で足ります。

湿らせたら、その日のうちに乾かしきるところまでを1セットにします。中途半端に湿ったまま置くと、下毛が根元で締まって、次の日にはもっと取りにくくなります。また、洗う回数のほうを増やすのはおすすめしません。回数を増やすと、地肌のうるおいも一緒に減ります。うるおいが落ちた被毛は、静電気をさらに拾いやすくなります。

  1. 根元まで指を入れて、毛を分ける線をつくる

    上毛の上をなでても、下毛は出てきません。地肌が見える線を1本つくって、そこを入口にします。その線に沿って、根元から毛先の向きへ運び出します。取るというより、外へ運ぶ作業だと考えたほうが手つきが合います。

  2. 1か所を往復せず、線を少しずつずらす

    同じところを何度も往復すると、地肌をこすることになります。数センチずつずらして面を回るほうが、結果として早く進みます。ブラシの目が詰まったら、その場で外してください。詰まったまま続けると、表面を滑るだけになります。

  3. 毛先だけを整えて終わりにしない

    毛先をとかすと、見た目はすぐ整います。ところが下毛は動いていません。整った表面と、下毛が出きったことは別です。容器に入る量が急に減った週は、毛先だけで終わっていないか思い返してください。

  4. 嫌がる日は、1か所だけで切り上げる

    毎回全身を回る必要はありません。今日は背中だけ、明日は腰だけ、と決めてしまうほうが続きます。回数と時間さえそろっていれば、範囲が狭くても向きは読めます。コツは、量を稼ごうとしないことです。

Point3週たまるまでは、判断しないでください

記録を始めると、2週目あたりで「増えている気がする」と思いはじめます。そこで回数を上げてしまうと、次の週の量が上がるのが当たり前になり、向きが読めなくなります。3つ並ぶまでは、手を変えないでください。これがいちばん外しやすいところで、いちばん効くところでもあります。線を引くだけの3週間は、何もしていないように見えて、いちばん働いている期間です。

乾いた季節の記録をそろえるのに、mofuwa のグルーミングスプレーが役に立ちます。洗う日はモイストシャンプー、その間の日はグルーミングスプレー、という分け方で毎日の手入れに組み込める商品です。清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、舐める子でも量をためらわずに使えます。布に含ませて、その日にとかす場所を毛の流れに沿ってなでてから、ブラシを入れてください。毛先の滑りがそろうと、静電気で寄って絡んだ毛と、本当に抜けた毛が分かれます。線の本数がぶれる週ほど、ここを先に片づけておく値打ちがあります。

記録の線が説明しない抜け方|地肌とにおいのほうを見る

ここまでは、日の長さと合図で説明のつく抜け毛の話でした。線の向きでは説明がつかない抜け方は、別のものとして見てください。記録をつけていると、この切り分けが早くなります。いつもと違うことが、数字ではなく手ざわりのほうに先に出るからです。

Caution3週ぶんの線を待たずに連れていく状態

地肌が赤い、じくじくしている、いつもと違うにおいがする、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が丸く広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、換毛期だからと様子を見ずに、動物病院にご相談ください。被毛の厚い犬は、地肌の変化が外から見えにくく、気づいたときには進んでいることがあります。線が3週ぶんたまるのを待たずに、その週のうちに連れていってください。

相談の前には、線を引いてきたカレンダーをそのまま持っていってください。いつから増えたのか、その週に何が変わったのかが、1枚で伝わります。「換毛期だと思います」と言葉で説明するより、3週ぶんの線のほうが早い。照明を消した時刻の列も、そのままにしておいてください。暮らしが動いた週が分かります。

フィニッシュスピッツの抜け毛は、量そのものが減ることはありません。季節で下毛が入れ替わる被毛を持っている犬だからです。減らそうとするのではなく、増えはじめる週を先に知る。暦は教えてくれませんが、その子から出た毛は教えてくれます。線を1本引くだけの記録が、この犬種ではいちばん確かなカレンダーになります。

Product

mofuwa グルーミングスプレー

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よくある質問

フィニッシュスピッツの換毛期は、春と秋と考えていいですか。
そう考えて合う年もありますが、外れる年もあります。この犬種の被毛は、気温より先に明るい時間の長さの変化を合図にします。日本は北欧より日照の振れ幅が小さく、室内では夜も照明がつくので、体が受け取っている日の長さが暦とずれます。ブラシに乗った毛の量を週に一度書きとめて、3週続けて増えた週を入口と考えるほうが外れません。
夜の照明を早く消したほうがいいですか。
暮らしを変える必要はありません。ずれていること自体は困りごとではなく、ずれた先を知らないまま暦で構えることのほうが空振りにつながります。ひとつだけ挙げるなら、照明を消す時刻が毎日ばらばらだと合図まで揺れるので、だいたいの時刻をそろえておくと記録が読みやすくなります。
記録はどのくらい続ければいいですか。
まずは3週間です。3つ並ぶと、増えているのか減っているのかの向きが見えます。向きが読めたらそこで手を変え、線が減りはじめたらもとの回数に戻します。1年続けると、その子の入口がいつごろ来るのかが分かるので、翌年からは構える時期そのものが決められるようになります。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。