C05犬種・猫種別ケア

ノルウェジアンエルクハウンドのケア|アンダーコートの詰まりを減らす3つの習慣

公開日 2022年4月5日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、厚い被毛の北欧犬が落ち着いて休んでいる
同じ詰まりでも、乾いているか湿っているかで、外へ出せるかどうかが変わります。写真:Cup of Couple/Pexels

ノルウェジアンエルクハウンドの腰にドライヤーを40分あてて、もう乾いたと決めた翌朝、同じ場所に指を入れたら根元はまだ湿っていました。暮らしていると、この読み違いが何度か起きます。水を弾く被毛なので、濡らすのに時間がかかる。同じ理由で、乾かすのにも時間がかかります。アンダーコートの詰まりは、乾いているときと湿ったときで、まったく別のものになります。乾いていれば、詰まっていても外へ出せる。湿ると、そこで固まって動かなくなる。この記事では、この2つの条件を比較しながら、いまどっちなのかの見分け方と、粒度の違う3つの習慣を書きます。

弾くのに、乾かない|ノルウェジアンエルクハウンドの下毛が持っている二面

洗って、しっかり乾かしたつもりで一日を終える。翌朝、腰のあたりに指を入れると、根元だけがひんやりしています。ドライヤーの時間が足りなかったのだろうと、次からは長くあてる。それでも、また同じ場所が残る。ノルウェジアンエルクハウンドと暮らしていると、乾いたかどうかの判断でつまずきます。

この犬種の被毛は、ノルウェーの山と海の両方で人と歩いてきた作りを持っています。山では雪と風、海辺では水しぶきと潮風。下毛が厚いのは、寒さのためだけではありません。水と風を、体まで届かせないための厚みでもあります。だから密で、しかも皮脂が回っていて、水をはじきます。

水を弾くというのは、内側まで濡れるのに時間がかかるということです。そして同じ性質が、乾くときにも同じだけ働きます。いったん奥まで入った水は、外へ出るのにも同じ抵抗を受ける。表面が乾いても、下毛の層の中はまだ湿ったままという時間が、ずいぶん長く続きます。

体格も、この時間を延ばす側に働きます。胴が詰まってがっしりとした体で、首から肩にかけては毛の層がとくに厚い。面積というより、厚みのある犬種です。厚い層の真ん中は、風も熱も届きにくい。乾かすときに、いちばん最後まで残るのがここです。

そしてここからが、ノルウェジアンエルクハウンドのアンダーコートの中心にあることです。湿っているあいだの詰まりと、乾いているあいだの詰まりは、同じ場所にあっても中身が違います。乾いていれば、詰まった下毛はまだ動きます。層のあいだに空気があるので、上へ運び出せる。湿っていると、隣の毛と貼りついて、その場で固まります。

Note弾くことは、汚れにくいという意味ではありません

水を弾く被毛は、扱いが楽そうに見えます。実際、泥や砂は乾けば落ちやすい。ただし、弾いているあいだに毛の内側で起きていることは、外からは見えません。皮脂が回っているぶん、下毛の1本1本は隣とくっつきやすい状態にあります。乾いていればそれでも離れますが、水が入ると離れなくなる。汚れの話ではなく、動くか動かないかの話だと考えてください。

乾いているときと湿ったとき|アンダーコートの詰まりが別物になる2つの条件

同じ腰の、同じ広さのアンダーコートの詰まりでも、その日が乾いているか湿っているかで、できることが入れ替わります。乾いた日に30分かけて出せるものが、湿った日には1時間かけても出ません。力の問題でも、道具の問題でもありません。下毛が空気を含んでいるかどうかで、隣の毛から離れられるかどうかが決まるからです。

同じ詰まりが、乾いているときと湿ったときで入れ替わる
乾いているとき湿ったとき
下毛の状態空気を含んで、ふくらんでいる水を含んで、寝たまま重い
抜けた下毛の行き先上毛のあいだを通って外へ出る隣の毛と貼りつき、その場に留まる
ブラシの手ごたえ根元から毛先まで、途切れない線の途中で止まって、押し返される
同じ力で引いたとき下毛だけが動く下毛と皮膚が、一緒に動く
そのまま置くと少しずつ表面へ上がってくる締まって、束のまま固くなる
その日にやること詰まりを外へ出す乾かしきる。とかさない
乾いているアンダーコートと、湿ったアンダーコート 同じ場所の同じ詰まりでも、下毛が空気を含んでいるか水を含んでいるかで、手を入れたときの動き方が変わります。どっちの日かを先に決めてから、その日にやることを選びます。 同じ体の、同じ場所で条件が入れ替わります 乾いているとき 分けた線が、開いたまま残る つまむと、ふわりとほどける ブラシがすっと抜けていく 詰まっていても、外へ出せる 湿っているとき 分けた線が、すぐ閉じる つまむと、丸まって締まる ブラシが途中で止まる その場で固まって、動かない 湿った日に無理に出そうとすると、皮膚のほうが持ち上がります
やることを決めているのは、詰まりの量ではなく、その日の状態のほうです。

この表で見ておきたいのは、いちばん下の行です。湿った日にやるべきことは、詰まりを出すことではなく、乾かしきることのほうです。その日は詰まりに手をつけない、と決めてしまって構いません。乾いてからのほうが、短い時間で、しかも痛くなく出せます。

湿った日に無理に出そうとすると、どうなるか。貼りついた下毛は、束のまま持ち上がります。手には「取れそうだ」という感触が返ってきますが、実際に動いているのは束と、その下の皮膚です。出ているのではなく、皮膚ごと引っぱっています。これを何度か繰り返すと、その場所を触られること自体を嫌がるようになります。

どっちの日か|ノルウェジアンエルクハウンドのアンダーコートを分けて見分ける

見分け方に、道具は要りません。毛を分けて線をつくり、手を離す。それだけです。乾いた下毛は空気を含んで立っているので、分けた線がそのまま開いて残ります。湿っていると、下毛が寝たまま戻ってくるので、線はすぐ閉じます。表面を手のひらでなでても分からない差が、線の開き方には出ます。

  1. 腰の毛を、上下に分けて線を1本つくる

    指を根元まで入れて、毛を左右へ寄せます。地肌が細く見える線ができたら、そこで手を離してください。見るのは、離したあとです。線が開いたまま5秒残るなら乾いている側、すぐに閉じて元どおりになるなら湿っている側です。

  2. その場所から、下毛をひとつまみだけ外へ出す

    指の腹で軽くはさんで、上へ運びます。抵抗なく出てくるひとつまみで足ります。出ないなら、その時点で湿った側だと決めてしまって構いません。無理に引かないでください。

  3. 出したひとつまみを、手のひらで転がす

    乾いていれば、ふわりとほどけて広がります。湿っていれば、指のあいだで丸まって、小さく締まります。出した毛のほうを見るのが、この犬種でいちばん確かです。体に触って迷うより、外に出したものを見るほうが早く決まります。

  4. ブラシを一度だけ入れて、抜けるときの手ごたえを見る

    根元から毛先まで、途切れずに抜けるなら乾いています。途中で止まって押し返されるなら、その先はまだ湿っています。2度目は入れないでください。確かめるための1回と、作業としてのブラッシングは、分けておきます。

  5. 首・腰・しっぽのつけねを、別々に見る

    背中が乾いていても、層の厚い場所はまだ残っていることがあります。1か所で決めて全身に当てはめない。どっちの日か、ではなく、どこがどっちか、で見るほうがこの体格には合います。厚いところだけ翌日に回す、という選び方ができます。

Point確かめるのは、日に1回で足ります

毎回ブラシを持つたびに調べる必要はありません。その日にいちど、腰で線を1本つくるだけです。数秒で終わります。結果は「開いた」「閉じた」のどちらかで、迷う余地がありません。書き残すなら一行で足ります。「金曜、腰は開いた、首は閉じた」。次の週、同じ天気の日にどこから見ればいいかが、これだけで決まります。

この見分け方が効くのは、比較の軸がアンダーコートの量ではなく状態だからです。詰まりがどれだけあるかは、その日にできることを変えません。ノルウェジアンエルクハウンドでは、量の多い少ないは翌日の話にすぎません。変えるのは、乾いているかどうかのほうです。量を数えようとすると毎回結論が変わりますが、開くか閉じるかなら、誰が見ても同じ答えになります。

判断・配分・予定|アンダーコートの詰まりを減らす3つの習慣

ここまでの見方を、続く形にします。3つ挙げますが、大きさはわざとそろえていません。1つ目はその場の数秒の判断、2つ目は1週間のなかでの回の配分、3つ目は先の予定の組み方です。かかる手間も、効いてくるまでの時間も違います。

  1. 習慣1|1日にいちど、腰で線を1本つくって「開いた」か「閉じた」かを決める

    数秒の判断です。ごはんを置くとき、寝る前に声をかけるとき、そのついでで足ります。決めることは1つだけ、開いたか閉じたか。この判断があると、今日ブラシを持つかどうかが自動的に決まります。迷う時間がなくなるぶん、続きます。ノルウェジアンエルクハウンドの毎日のケアは、この数秒から始まります。

  2. 習慣2|詰まりを外へ出すのは、開いた日にだけ寄せる

    1週間ぶんの回数を、均等に割らないという配分です。週3回と決めて、湿った日にも義理で入れるより、開いた日に2回まとめて、閉じた日は何もしないほうが進みます。閉じた日にやることは、乾かしきることだけです。合計の回数は減っても、外へ出た量は増えます。

  3. 習慣3|濡れる用事のほうを、翌日に乾かしきれる日へ寄せる

    先の予定の組み方です。洗う日、水辺へ行く日、雪の中を長く歩く日。これらを、翌日にゆっくり乾かせる日の前に置きます。翌朝から出かける日の夜に洗うと、層の中が湿ったまま一日が過ぎます。予定表の側を先に動かしておくと、閉じた日そのものが減ります。換毛期は層が厚くなるので、この寄せ方がとくに効いてきます。

3つを並べると、粒度が違うことが分かると思います。1つ目は毎日、しかも数秒。2つ目は週に一度考え直すだけ。3つ目は月に一度、予定を見るときに思い出せば足ります。毎日やることを増やそうとすると続きません。増やすのは判断だけにして、作業の側はむしろ減らします。

アンダーコートを出すときのブラッシングは、根元まで指を入れて線をつくり、その線に沿って外へ運ぶ形にします。取るというより運ぶ、という手つきです。1か所を往復せず、線を数センチずつずらして面を回ってください。道具の目が詰まったら、その場で外します。詰まったまま続けると、上毛の表面を滑るだけになります。乾いた日の厚い層は静電気が起きやすく、上毛が散らばると、せっかくつくった線が保てません。ブラシを入れる前に mofuwa のグルーミングスプレーを毛の流れに沿ってなでつけておくと、静電気の起きにくい状態で梳かせます。

Caution湿ったままとかさない、束を引き抜かない

閉じた日にブラシを入れると、貼りついたアンダーコートが束のまま持ち上がります。そのまま引くと、まだ抜けていない毛と、その下の皮膚まで一緒に動きます。被毛が厚いぶん、どこまで引いているかが手に伝わりにくい犬種です。ハサミも入れないでください。毛のつもりで先を入れると、持ち上がった皮膚に届きます。動かないものは、乾いた日まで待ってください。待つのがいちばん早い方法になります。

洗う回数を増やす、という方法は3つに入れていません。湿った状態を増やすことになるからです。順番としては、乾いた日に外へ出して、そのあとで洗う。洗う回数そのものを増やすと、地肌のうるおいと、下毛に回っている皮脂まで一緒に落ちます。皮脂は、この犬種にとっては水を弾く側の働きも担っています。

毎日きれいにしておきたい、という気持ちのほうが、厚い被毛の犬では先に立ちます。犬は体から脂を出すので、昨日そろえても、今日また表面が寝ます。mofuwa のグルーミングスプレーは、その毎日の側を受け持つ道具です。余分な皮脂と油が乳化して落ちるので、なでたあとの毛先が引っかからなくなり、外へ運ぶという手つきが、そのまま奥まで届きます。布に含ませて、その日に手を入れる場所だけを、毛の流れに沿ってなでてから入れてください。舐めても問題のない基準でつくられているので、量を気にしなくてよいのも、厚みのある体には助かります。全身に一度に吹きかける必要はありません。閉じた日は乾かしきることだけにして、開いた日に回してください。

乾いた日に入れても動かないアンダーコート|条件では説明がつかないとき

ここまでは、乾きと湿りで説明のつく詰まりの話でした。線が開いている日に手を入れても、そこだけ動かない。そういう場所が出てきたときは、条件の話から離れて見てください。乾いているのにアンダーコートが出ないのであれば、理由は水以外のところにあります。

Caution厚い層の下で、地肌のほうを先に見る目印

地肌が赤い、じくじくしている、いつもと違うにおいがする、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が丸く広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、換毛期だからと様子を見ずに、動物病院にご相談ください。被毛の厚い犬は、地肌の変化が外から見えにくく、気づいたときには進んでいることがあります。首から肩、腰、しっぽのつけねは外から見えにくい場所なので、開いた日を待たずに見てもらってください。

相談やトリミングの前には、その場所、いつから動かないか、最後に洗ったのはいつか、開いた日に入れたかどうかをメモしてください。この4つがあると、乾き湿りで説明のつく詰まりなのかどうかが、その場で切り分けられます。ほどけなかった束は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。ほどこうとした跡があると、もとの状態が分からなくなります。

ノルウェジアンエルクハウンドのアンダーコートは、薄くなることはありません。山と海の両方で体を守ってきた厚みだからです。詰まりをなくそうとするのではなく、外へ出せる日を選ぶ。開いた日に出して、閉じた日は乾かしきる。この2つを入れ替えないだけで、同じ手間が、ずっと届くところまで進むようになります。

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よくある質問

ノルウェジアンエルクハウンドは水を弾くのに、どうして乾きにくいのですか。
弾く力は、水を入れないためだけでなく、入った水を出しにくくもします。下毛が密で皮脂が回っているぶん、内側まで濡れるのに時間がかかり、同じ理由で乾くのにも時間がかかります。表面が乾いていても、層の中がまだ湿っていることがあるので、翌朝にもう一度、根元まで指を入れて確かめてください。
湿っている日に、詰まりをとかしてはいけませんか。
その日はやめておくほうが結果的に早いです。湿った下毛は隣の毛と貼りついていて、束のまま持ち上がります。手には取れそうな感触が返ってきますが、実際には皮膚ごと引いていることが多く、その場所を触られること自体を嫌がるようになります。乾いた日に入れれば、短い時間で、痛みも出さずに出せます。
どっちの日かは、どうやって決めればいいですか。
腰の毛を上下に分けて線を1本つくり、手を離してください。線が開いたまま残れば乾いている側、すぐ閉じれば湿っている側です。もうひとつ確かめるなら、下毛をひとつまみだけ出して手のひらで転がします。ふわりと広がれば乾いていて、丸まって締まれば湿っています。首と腰は厚みが違うので、別々に見てください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。