C05犬種・猫種別ケア

シッパーキーと暮らすなら知っておきたい、抜け毛の話

公開日 2022年4月12日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の明るい色の床の上で、小さな犬が落ち着いて休んでいる
同じ1頭の体の上で、毛の長さは3段階に分かれています。抜けた毛の行き先も、そこで分かれます。

シッパーキーの背中を、首から腰まで1本の指でなぞってみると、途中で3回、毛の長さが変わります。首まわりでは指が押し返されるほど厚く、肩から先の胴では急に薄くなって体の形がそのまま指に伝わり、後ろ脚のうしろでまた長くなる。1頭の中に、短毛の場所と飾り毛の場所が同居しています。抜け毛の話がややこしくなるのは、ここからです。胴から抜けた毛は、引っかかる相手がないのでそのまま床へ落ちます。首まわりのたてがみと後ろ脚のキュロットから抜けた毛は、まわりの長い毛につかまって体に留まります。この記事では、落ちる場所と留まる場所を並べて、今日どっちに手を入れる日なのかをどう決めるかを書きます。

胴・首まわり・後ろ脚|1頭のシッパーキーで毛の長さが3段階に分かれる条件

シッパーキーはベルギーの運河沿いで生まれた小型犬です。船やはしけの上で番をし、狭い場所を走り回って小さな動物を追う仕事をしていました。その働き方に合わせて、体の前後には厚みのある飾り毛が残り、胴の毛は短く体に沿ったままになっています。被毛は上毛と下毛の二層で、下毛は季節で入れ替わります。

首まわりの毛は、そこだけ立ち上がって襟のように見えます。俗にたてがみ、あるいは立て襟と呼ばれる場所です。胸の側にも同じように長い毛が下がっていて、後ろ脚のうしろにはキュロットと呼ばれる飾り毛があります。前も後ろも毛が長く、その間にはさまれた胴だけが短い。これがシッパーキーの被毛の条件です。

この3段階は、同じ1頭の中で起きています。犬種が違うのではなく、体の場所が違うだけです。それなのに、手ざわりも、毛のとかされ方も、抜け毛の見え方も、3か所でまったく変わります。胴で覚えた感覚は、首まわりでは通用しません。ここを1つの被毛として扱おうとすると、どこかが必ず後回しになります。

毛が短い場所と長い場所では、抜けた毛の行き先が変わります。短い胴では、抜けた毛のまわりに引っかかる相手がありません。体が動いたぶんだけ、毛はそのまま外へ出ていきます。長い飾り毛では、抜けた毛のまわりに生えている毛が何本もあり、そこにつかまって留まります。抜けている量は同じでも、目に入る場所が変わるということです。

Note抜け毛が多いか少ないかの話ではありません

シッパーキーと暮らしている方から、「床の毛は思ったほどでもないのに、触ると内側に溜まっている」という話をよく聞きます。床の毛の量は、胴から落ちた毛の量です。飾り毛に留まっている毛は、そこには出てきません。抜け毛の総量を床で判断すると、たてがみとキュロットのぶんが丸ごと抜け落ちます。量ではなく、行き先で見てください。

床に落ちる毛と、体に留まる毛|シッパーキーの抜け毛を比較する

同じ日に抜けた毛でも、胴から抜けたものと飾り毛から抜けたものでは、そのあとの経路がまったく違います。比較するのは量ではなく、抜けたあとどこへ行き、どれくらいの時間そこにあるかです。ここを分けておくと、掃除の話と、その子の体に手を入れる話が混ざらなくなります。

胴から抜けた毛は、床、ソファ、服に移ります。短くてまっすぐなので、布の織り目に刺さるように入り込みます。目にはよく入りますが、その子の体の上には残っていません。床に落ちた毛は、すでにその子から離れた毛です。掃除の手間にはなりますが、皮膚の上で起きていることとは、もう関係がありません。

飾り毛から抜けた毛は、体に留まります。首まわりの内側、胸の奥、太ももの後ろ。どこも外から見えにくく、毛の流れがそろっているので、外側だけ見ると整っています。留まった毛は、時間がたつほど皮脂を含んでまとまります。そこへ静電気が加わる季節になると、まとまった毛が根元の側でさらに寄り、指が入らない面になります。

シッパーキーの抜け毛を、行き先で比較する
胴から抜ける毛飾り毛から抜ける毛
場所肩から腰までの短毛の面首まわり・胸・後ろ脚
抜けたあとそのまま床や服へ落ちるまわりの毛につかまって留まる
気づき方掃除のときに目に入る触ったときに指が止まる
留まる時間ほぼ残らない手を入れるまで残り続ける
時間がたつと床の量が増えるだけ皮脂を含んで面になる
使う道具毛の流れに沿って通す道具毛を分けて引き出す道具
手を入れる目的落ちる前に受け止める留まっている毛を外へ出す

この比較で見えてくるのは、床の毛が減ったからといって、体の中の抜け毛が減ったわけではないということです。むしろ逆のこともあります。胴の毛が落ち着いた時期に飾り毛のほうが動きはじめると、床の量は変わらないのに、首まわりだけが厚くなります。掃除機の中身を基準にしていると、この動きは見えません。

今日はどっちから手を入れるか|シッパーキーの毛を指で立てて決める

2つの行き先が分かったら、次はその日どちらに時間を使うかです。毎日3か所を全部やる必要はありません。決め手になるのは、目に入る毛の量ではなく、指を毛の中へ立てたときの止まり方です。立たせたまま、片手で体を支えて、もう片方の手だけで確かめます。

  1. 胴の上を、手のひらで腰まで滑らせる

    毛の流れに沿って、肩から腰まで一度に滑らせます。手のひらに短い毛がまとまって付いてくるなら、胴の毛が動いている日です。この日は胴を先に、毛の流れに沿って通してください。飾り毛のほうは後回しでかまいません。

  2. 首まわりに、指を1本まっすぐ立てて入れる

    たてがみは毛を左右に開こうとせず、指を差し込むように入れます。指が地肌まで届くか、途中で押し返されるか。押し返された深さが、そこに留まっている抜け毛の厚みです。届くなら、今日の首まわりは手つかずで大丈夫です。

  3. 後ろ脚のキュロットを、下から上へ指ですくう

    太ももの後ろは、毛の流れが下を向いています。下から上へ向けて指をすくい上げると、留まっている毛が指の背に乗ってきます。指の背に何本乗るかで、その場所を今日やるかどうかを決めてください。1〜2本なら見送ります。

  4. 胸のジャボに、手の甲を当てて左右に振る

    前脚のあいだは自分で見えにくく、後回しになりやすい場所です。手の甲を当てて軽く左右に振ると、毛が動くか、面のままかが分かります。面のまま動かないときは、そこに手を入れる日です。

  5. 3か所のうち、指が止まった場所を1つだけ選ぶ

    全部やろうとしないでください。いちばん深く押し返された場所を1つ選んで、そこだけに時間を使います。翌日は別の場所を確かめる。この回し方のほうが、結果として3か所すべてに手が届きます。

指で確かめた結果と、その日にどっちへ手を入れるか
指で確かめたことその日にやること
手のひらに短い毛がまとまって付く胴を、毛の流れに沿って通す
首まわりで指が浅い位置で止まるたてがみを層に分けて、抜け毛を外へ出す
指の背に、毛が3本以上乗ってくる後ろ脚のキュロットを下から上へ
胸の毛が面のまま動かないジャボを、前脚の側から少しずつ
どこも指が地肌まで届くその日は手を入れなくて構いません
Pointシッパーキーは、見た目では飾り毛の中が分かりません

たてがみもキュロットも、毛の流れがそろっているので、内側に抜け毛が留まっていても外からは整って見えます。見た目がきれいなことは、内側が通っている証明にはなりません。抱き上げたついでに首まわりへ指を立てる、と決めてしまうと、思い出さなくても回るようになります。指の止まり方の差は、数日で覚えられます。

たてがみとキュロットが動く時期|シッパーキーの抜け毛で手数が増える場所

下毛が入れ替わる時期になると、3か所の動き方がそろわなくなります。胴のほうが先に動きはじめ、床の毛が増えます。そのあと少し遅れて、たてがみとキュロットの内側が動きます。ここで手数を足す場所を間違えると、床は片づいたのに体の中だけが残る、という状態になります。

この時期に増やすのは、道具の数ではありません。同じ道具で、飾り毛だけ通す回数を増やします。胴は毛が短いので、1回のブラッシングで通せる面積が広く、時間もかかりません。たてがみとキュロットは、層に分けながら進めるぶん時間がかかります。時期によって配分を変える、というのが実際にやることです。

  1. 胴は、これまでどおりの回数のまま

    毛が短いので、毛の流れに沿って通すだけで足ります。回数を増やしても、落ちるものが早く落ちるだけです。この時期に胴へ時間を足しても、飾り毛の側は変わりません。いつもどおりで置いておきます。

  2. たてがみは、層を1枚ずつ出して通す

    首まわりの毛を指で分けて、地肌に近い層を1枚だけ出します。出した層のぶんだけ通し、終わったら分ける線を少し上へ移す。これを3〜4回くり返せば、たてがみ全体に届きます。上から一気に入れると、外側だけが通って内側が残ります。

  3. キュロットは、下から上へ向けて短く

    太ももの後ろは毛の流れが下向きなので、上から下へ通すと表面をなでるだけになります。下から上へ、短い距離で区切って通してください。座ったときに床と接する面から先にやると、押しつけられて寄った毛から外へ出せます。

  4. 同じ場所を、2〜3日あけてもう一度確かめる

    一度で出しきろうとしないでください。飾り毛の内側は、その日に出せた層のぶんだけ空きます。2〜3日たつと、また指が止まる深さが変わります。時期が終われば、この回数はもとに戻して構いません。

時期によって、3か所への配分がどう変わるか
ふだん下毛が動く時期
胴毛の流れに沿って一往復同じでよい
たてがみ指を立てて確かめるだけの日もある層を1枚ずつ、3〜4回に分ける
キュロット気づいたときに下から上へ床と接する面から先に、2〜3日おき
胸のジャボ週に一度前脚とこすれる側だけ回数を足す

うるおいの話も、この時期にひとまとめにしておきます。留まった毛を外へ出すために洗う回数を増やす、という方向へは寄せないでください。洗う回数を増やすと、皮脂と一緒に地肌のうるおいまで減ります。シッパーキーは飾り毛の内側が乾きにくく、乾かしきるまでの時間も長くなります。動かすのは洗う回数ではなく、飾り毛へ指が届いているかどうかのほうです。

うるおいの側で足すものは決まっています。mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませ、たてがみやキュロットの毛先から根元へ向けてなでてから、層を出してください。滑りがそろうと、同じ力でも道具が1枚深いところまで入ります。洗い流さずに使えるので、洗う日はモイストシャンプーにあてて、その間の日はグルーミングスプレーで飾り毛だけ通す、という分け方ができます。舐めても問題のない基準でつくられているので、口の届くジャボや首まわりでも、布を湿らせる量を気にしなくて構いません。留まって面になっている場所へ直接吹きかけて、そのまま置かないでください。

Caution面になった飾り毛に、力で道具を入れないでください

指が浅い位置で止まる場所へ、上から強く道具を入れると、抜けた毛ではなく、生えている毛と皮膚を一緒に引っぱることになります。面は1日でほどききらなくて構いません。その日に出せた層のぶんだけ、外へ運びます。体をひねる、声を出すというときは、その場所はそこで区切ってください。翌日に1枚ぶん進めるほうが早く終わります。

床の毛の量は変わらないのに、シッパーキーの飾り毛だけが厚くなるとき

ここまでは、毛の長さが3段階に分かれているという条件で説明のつく抜け毛の話でした。3か所を順番に回していても、同じ場所だけが短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、ブラッシングの回数の話として片づけないほうが安全です。

Caution飾り毛の下で進んでいたときの見え方

地肌が赤い、じくじくしている、かさぶたがある、においが強くなった、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、通す回数を足す前に、動物病院にご相談ください。シッパーキーは飾り毛の下が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。指が止まる場所が3か所のどこで、それが何日続いているかを、そのまま伝えてください。

相談やトリミングの前には、指が止まる場所、いつからか、床に落ちる量は変わったかの3つをメモしてください。この3つがあると、毛の長さの条件で説明のつく抜け毛なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。出しきれなかった飾り毛は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。行く前の晩にまとめて層を出すと、指が止まっていた深さが分からなくなります。

シッパーキーと暮らすうえで、抜け毛そのものがなくなることはありません。二層の被毛も、前後に残った飾り毛も、この犬種が運河沿いの仕事に合わせて持っている作りです。減らせるのは抜ける量ではなく、抜けた毛が飾り毛の内側に留まっている時間のほうです。胴は落ちる場所、たてがみとキュロットは留まる場所。1頭の中で条件が3つに分かれていることが分かれば、今日どっちに手を入れるかは、指1本で決められます。

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よくある質問

シッパーキーの抜け毛は、床の量で判断してもいいですか?
床に落ちているのは、胴の短い毛だけです。首まわりのたてがみと後ろ脚のキュロットから抜けた毛は、まわりの長い毛につかまって体に留まるので、床には出てきません。床の量が少ない日でも、飾り毛の内側には溜まっていることがあります。量ではなく、指を立てたときの止まり方で見てください。
毎日3か所すべてをブラッシングしたほうがいいですか?
毎日でなくて構いません。指を立てて確かめて、いちばん深く押し返された場所を1つだけ選ぶほうが続きます。翌日は別の場所を確かめる、という回し方でも3か所に手が届きます。指が地肌まで届く場所には、その日の出番はありません。
外から見ると整っているのに、内側に毛が溜まっているのはなぜですか?
たてがみもキュロットも毛が長く、流れがそろっているためです。表面の毛が面をつくって、内側に留まった抜け毛を隠します。見た目は判断材料になりません。毛の中へ指をまっすぐ立てて、地肌まで届くかどうかで確かめてください。届かない深さが、そのまま留まっている厚みです。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。