C05犬種・猫種別ケア
シッパーキーと暮らすなら知っておきたい、抜け毛の話
シッパーキーの背中を、首から腰まで1本の指でなぞってみると、途中で3回、毛の長さが変わります。首まわりでは指が押し返されるほど厚く、肩から先の胴では急に薄くなって体の形がそのまま指に伝わり、後ろ脚のうしろでまた長くなる。1頭の中に、短毛の場所と飾り毛の場所が同居しています。抜け毛の話がややこしくなるのは、ここからです。胴から抜けた毛は、引っかかる相手がないのでそのまま床へ落ちます。首まわりのたてがみと後ろ脚のキュロットから抜けた毛は、まわりの長い毛につかまって体に留まります。この記事では、落ちる場所と留まる場所を並べて、今日どっちに手を入れる日なのかをどう決めるかを書きます。
胴・首まわり・後ろ脚|1頭のシッパーキーで毛の長さが3段階に分かれる条件
シッパーキーはベルギーの運河沿いで生まれた小型犬です。船やはしけの上で番をし、狭い場所を走り回って小さな動物を追う仕事をしていました。その働き方に合わせて、体の前後には厚みのある飾り毛が残り、胴の毛は短く体に沿ったままになっています。被毛は上毛と下毛の二層で、下毛は季節で入れ替わります。
首まわりの毛は、そこだけ立ち上がって襟のように見えます。俗にたてがみ、あるいは立て襟と呼ばれる場所です。胸の側にも同じように長い毛が下がっていて、後ろ脚のうしろにはキュロットと呼ばれる飾り毛があります。前も後ろも毛が長く、その間にはさまれた胴だけが短い。これがシッパーキーの被毛の条件です。
この3段階は、同じ1頭の中で起きています。犬種が違うのではなく、体の場所が違うだけです。それなのに、手ざわりも、毛のとかされ方も、抜け毛の見え方も、3か所でまったく変わります。胴で覚えた感覚は、首まわりでは通用しません。ここを1つの被毛として扱おうとすると、どこかが必ず後回しになります。
- 胴(肩から腰):毛が短く、体に沿って寝ています。指を当てると体の形がそのまま返ってきます
- 首まわりのたてがみ:毛が長く立ち上がっています。指を沈めても地肌まで届かないことがあります
- 胸のジャボ:前脚のあいだに毛が下がり、歩くたびに前脚とこすれます
- 後ろ脚のキュロット:太ももの後ろ側に飾り毛が残り、座ると床と接します
- しっぽの付け根:胴と飾り毛の境目にあたり、長さが切り替わる場所です
毛が短い場所と長い場所では、抜けた毛の行き先が変わります。短い胴では、抜けた毛のまわりに引っかかる相手がありません。体が動いたぶんだけ、毛はそのまま外へ出ていきます。長い飾り毛では、抜けた毛のまわりに生えている毛が何本もあり、そこにつかまって留まります。抜けている量は同じでも、目に入る場所が変わるということです。
シッパーキーと暮らしている方から、「床の毛は思ったほどでもないのに、触ると内側に溜まっている」という話をよく聞きます。床の毛の量は、胴から落ちた毛の量です。飾り毛に留まっている毛は、そこには出てきません。抜け毛の総量を床で判断すると、たてがみとキュロットのぶんが丸ごと抜け落ちます。量ではなく、行き先で見てください。
床に落ちる毛と、体に留まる毛|シッパーキーの抜け毛を比較する
同じ日に抜けた毛でも、胴から抜けたものと飾り毛から抜けたものでは、そのあとの経路がまったく違います。比較するのは量ではなく、抜けたあとどこへ行き、どれくらいの時間そこにあるかです。ここを分けておくと、掃除の話と、その子の体に手を入れる話が混ざらなくなります。
胴から抜けた毛は、床、ソファ、服に移ります。短くてまっすぐなので、布の織り目に刺さるように入り込みます。目にはよく入りますが、その子の体の上には残っていません。床に落ちた毛は、すでにその子から離れた毛です。掃除の手間にはなりますが、皮膚の上で起きていることとは、もう関係がありません。
飾り毛から抜けた毛は、体に留まります。首まわりの内側、胸の奥、太ももの後ろ。どこも外から見えにくく、毛の流れがそろっているので、外側だけ見ると整っています。留まった毛は、時間がたつほど皮脂を含んでまとまります。そこへ静電気が加わる季節になると、まとまった毛が根元の側でさらに寄り、指が入らない面になります。
| 胴から抜ける毛 | 飾り毛から抜ける毛 | |
|---|---|---|
| 場所 | 肩から腰までの短毛の面 | 首まわり・胸・後ろ脚 |
| 抜けたあと | そのまま床や服へ落ちる | まわりの毛につかまって留まる |
| 気づき方 | 掃除のときに目に入る | 触ったときに指が止まる |
| 留まる時間 | ほぼ残らない | 手を入れるまで残り続ける |
| 時間がたつと | 床の量が増えるだけ | 皮脂を含んで面になる |
| 使う道具 | 毛の流れに沿って通す道具 | 毛を分けて引き出す道具 |
| 手を入れる目的 | 落ちる前に受け止める | 留まっている毛を外へ出す |
この比較で見えてくるのは、床の毛が減ったからといって、体の中の抜け毛が減ったわけではないということです。むしろ逆のこともあります。胴の毛が落ち着いた時期に飾り毛のほうが動きはじめると、床の量は変わらないのに、首まわりだけが厚くなります。掃除機の中身を基準にしていると、この動きは見えません。
- 床で分かるのは胴のことだけ:首まわりと後ろ脚は、床には出てきません
- 飾り毛は外から整って見える:毛が長いぶん、内側の状態は表面に出ません
- 留まった毛は皮脂でまとまる:日がたつほど、指を入れたときの抵抗が増えます
- 静電気の季節は寄りやすい:乾いた空気の日は、留まった毛が根元側へ集まります
- 座る姿勢が長い子はキュロット側:床と接する時間が長い場所ほど、毛が押しつけられます
今日はどっちから手を入れるか|シッパーキーの毛を指で立てて決める
2つの行き先が分かったら、次はその日どちらに時間を使うかです。毎日3か所を全部やる必要はありません。決め手になるのは、目に入る毛の量ではなく、指を毛の中へ立てたときの止まり方です。立たせたまま、片手で体を支えて、もう片方の手だけで確かめます。
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胴の上を、手のひらで腰まで滑らせる
毛の流れに沿って、肩から腰まで一度に滑らせます。手のひらに短い毛がまとまって付いてくるなら、胴の毛が動いている日です。この日は胴を先に、毛の流れに沿って通してください。飾り毛のほうは後回しでかまいません。
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首まわりに、指を1本まっすぐ立てて入れる
たてがみは毛を左右に開こうとせず、指を差し込むように入れます。指が地肌まで届くか、途中で押し返されるか。押し返された深さが、そこに留まっている抜け毛の厚みです。届くなら、今日の首まわりは手つかずで大丈夫です。
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後ろ脚のキュロットを、下から上へ指ですくう
太ももの後ろは、毛の流れが下を向いています。下から上へ向けて指をすくい上げると、留まっている毛が指の背に乗ってきます。指の背に何本乗るかで、その場所を今日やるかどうかを決めてください。1〜2本なら見送ります。
-
胸のジャボに、手の甲を当てて左右に振る
前脚のあいだは自分で見えにくく、後回しになりやすい場所です。手の甲を当てて軽く左右に振ると、毛が動くか、面のままかが分かります。面のまま動かないときは、そこに手を入れる日です。
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3か所のうち、指が止まった場所を1つだけ選ぶ
全部やろうとしないでください。いちばん深く押し返された場所を1つ選んで、そこだけに時間を使います。翌日は別の場所を確かめる。この回し方のほうが、結果として3か所すべてに手が届きます。
| 指で確かめたこと | その日にやること |
|---|---|
| 手のひらに短い毛がまとまって付く | 胴を、毛の流れに沿って通す |
| 首まわりで指が浅い位置で止まる | たてがみを層に分けて、抜け毛を外へ出す |
| 指の背に、毛が3本以上乗ってくる | 後ろ脚のキュロットを下から上へ |
| 胸の毛が面のまま動かない | ジャボを、前脚の側から少しずつ |
| どこも指が地肌まで届く | その日は手を入れなくて構いません |
たてがみもキュロットも、毛の流れがそろっているので、内側に抜け毛が留まっていても外からは整って見えます。見た目がきれいなことは、内側が通っている証明にはなりません。抱き上げたついでに首まわりへ指を立てる、と決めてしまうと、思い出さなくても回るようになります。指の止まり方の差は、数日で覚えられます。
たてがみとキュロットが動く時期|シッパーキーの抜け毛で手数が増える場所
下毛が入れ替わる時期になると、3か所の動き方がそろわなくなります。胴のほうが先に動きはじめ、床の毛が増えます。そのあと少し遅れて、たてがみとキュロットの内側が動きます。ここで手数を足す場所を間違えると、床は片づいたのに体の中だけが残る、という状態になります。
この時期に増やすのは、道具の数ではありません。同じ道具で、飾り毛だけ通す回数を増やします。胴は毛が短いので、1回のブラッシングで通せる面積が広く、時間もかかりません。たてがみとキュロットは、層に分けながら進めるぶん時間がかかります。時期によって配分を変える、というのが実際にやることです。
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胴は、これまでどおりの回数のまま
毛が短いので、毛の流れに沿って通すだけで足ります。回数を増やしても、落ちるものが早く落ちるだけです。この時期に胴へ時間を足しても、飾り毛の側は変わりません。いつもどおりで置いておきます。
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たてがみは、層を1枚ずつ出して通す
首まわりの毛を指で分けて、地肌に近い層を1枚だけ出します。出した層のぶんだけ通し、終わったら分ける線を少し上へ移す。これを3〜4回くり返せば、たてがみ全体に届きます。上から一気に入れると、外側だけが通って内側が残ります。
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キュロットは、下から上へ向けて短く
太ももの後ろは毛の流れが下向きなので、上から下へ通すと表面をなでるだけになります。下から上へ、短い距離で区切って通してください。座ったときに床と接する面から先にやると、押しつけられて寄った毛から外へ出せます。
-
同じ場所を、2〜3日あけてもう一度確かめる
一度で出しきろうとしないでください。飾り毛の内側は、その日に出せた層のぶんだけ空きます。2〜3日たつと、また指が止まる深さが変わります。時期が終われば、この回数はもとに戻して構いません。
| ふだん | 下毛が動く時期 | |
|---|---|---|
| 胴 | 毛の流れに沿って一往復 | 同じでよい |
| たてがみ | 指を立てて確かめるだけの日もある | 層を1枚ずつ、3〜4回に分ける |
| キュロット | 気づいたときに下から上へ | 床と接する面から先に、2〜3日おき |
| 胸のジャボ | 週に一度 | 前脚とこすれる側だけ回数を足す |
うるおいの話も、この時期にひとまとめにしておきます。留まった毛を外へ出すために洗う回数を増やす、という方向へは寄せないでください。洗う回数を増やすと、皮脂と一緒に地肌のうるおいまで減ります。シッパーキーは飾り毛の内側が乾きにくく、乾かしきるまでの時間も長くなります。動かすのは洗う回数ではなく、飾り毛へ指が届いているかどうかのほうです。
うるおいの側で足すものは決まっています。mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませ、たてがみやキュロットの毛先から根元へ向けてなでてから、層を出してください。滑りがそろうと、同じ力でも道具が1枚深いところまで入ります。洗い流さずに使えるので、洗う日はモイストシャンプーにあてて、その間の日はグルーミングスプレーで飾り毛だけ通す、という分け方ができます。舐めても問題のない基準でつくられているので、口の届くジャボや首まわりでも、布を湿らせる量を気にしなくて構いません。留まって面になっている場所へ直接吹きかけて、そのまま置かないでください。
指が浅い位置で止まる場所へ、上から強く道具を入れると、抜けた毛ではなく、生えている毛と皮膚を一緒に引っぱることになります。面は1日でほどききらなくて構いません。その日に出せた層のぶんだけ、外へ運びます。体をひねる、声を出すというときは、その場所はそこで区切ってください。翌日に1枚ぶん進めるほうが早く終わります。
床の毛の量は変わらないのに、シッパーキーの飾り毛だけが厚くなるとき
ここまでは、毛の長さが3段階に分かれているという条件で説明のつく抜け毛の話でした。3か所を順番に回していても、同じ場所だけが短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、ブラッシングの回数の話として片づけないほうが安全です。
- 下毛が動く時期でもないのに、指が急に止まるようになった:季節の区切りと合わない変わり方です
- いつも同じ一か所だけが戻る:首輪、ハーネス、寝床の縁など、毎日そこを押さえているものを思い出してください
- 左右で指の入り方が違う:寝る向きや、体を寄せている面が関係していることがあります
- 胴の短い毛が、まとまって薄くなった:床に落ちる量ではなく、生えている側が変わっています
- その場所を気にしている:なめる、かく、床にこすりつける。抜け毛より先に、皮膚のほうを見てください
- 層を出したあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
地肌が赤い、じくじくしている、かさぶたがある、においが強くなった、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、通す回数を足す前に、動物病院にご相談ください。シッパーキーは飾り毛の下が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。指が止まる場所が3か所のどこで、それが何日続いているかを、そのまま伝えてください。
相談やトリミングの前には、指が止まる場所、いつからか、床に落ちる量は変わったかの3つをメモしてください。この3つがあると、毛の長さの条件で説明のつく抜け毛なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。出しきれなかった飾り毛は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。行く前の晩にまとめて層を出すと、指が止まっていた深さが分からなくなります。
シッパーキーと暮らすうえで、抜け毛そのものがなくなることはありません。二層の被毛も、前後に残った飾り毛も、この犬種が運河沿いの仕事に合わせて持っている作りです。減らせるのは抜ける量ではなく、抜けた毛が飾り毛の内側に留まっている時間のほうです。胴は落ちる場所、たてがみとキュロットは留まる場所。1頭の中で条件が3つに分かれていることが分かれば、今日どっちに手を入れるかは、指1本で決められます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
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特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見るよくある質問
- シッパーキーの抜け毛は、床の量で判断してもいいですか?
- 床に落ちているのは、胴の短い毛だけです。首まわりのたてがみと後ろ脚のキュロットから抜けた毛は、まわりの長い毛につかまって体に留まるので、床には出てきません。床の量が少ない日でも、飾り毛の内側には溜まっていることがあります。量ではなく、指を立てたときの止まり方で見てください。
- 毎日3か所すべてをブラッシングしたほうがいいですか?
- 毎日でなくて構いません。指を立てて確かめて、いちばん深く押し返された場所を1つだけ選ぶほうが続きます。翌日は別の場所を確かめる、という回し方でも3か所に手が届きます。指が地肌まで届く場所には、その日の出番はありません。
- 外から見ると整っているのに、内側に毛が溜まっているのはなぜですか?
- たてがみもキュロットも毛が長く、流れがそろっているためです。表面の毛が面をつくって、内側に留まった抜け毛を隠します。見た目は判断材料になりません。毛の中へ指をまっすぐ立てて、地肌まで届くかどうかで確かめてください。届かない深さが、そのまま留まっている厚みです。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
