C05犬種・猫種別ケア
キースホンドのダブルコート|アンダーコートの詰まりを毎日のケアで防ぐ
部屋の入口で立ち止まって、3歩ぶん離れたところからキースホンドの背中を見たとき、灰色がところどころ白っぽく浮いて見えることがあります。近づいて上から覗き込むと、その白っぽさは消えます。もう一度下がると、また浮いて見える。アンダーコートが詰まりはじめたことを、この犬種は色で先に知らせます。灰色の毛は、先が黒く、根元にいくほど色が薄い。下から押し上げられた上毛は寝ていた向きを変え、薄い根元の側が表を向きます。この記事では、手で触る前に離れて見るという順番で、詰まりをどこに見つけ、どこから手を入れるかを書きます。
離れて見ると分かる|キースホンドの背中の灰色が均一でなくなる
夕方、部屋に入ろうとして入口で足が止まる。床に伏せているキースホンドの背中が、いつもより粗く見えます。腰からしっぽのつけねにかけてだけ、白い粉をうっすら振ったように見える。近づいて、上から覗き込むと、その白っぽさは見当たりません。灰色はいつもどおりで、毛の先は黒く揃っています。
気のせいだったかと思って部屋を出るとき、もう一度振り返ると、また同じ場所が浮いて見えます。近づくと消えて、離れると見える。キースホンドと暮らしていると、この見え方に何度か出会います。目の錯覚でも、光の加減でもありません。
上から近くで見ているとき、目に入っているのは毛の先だけです。先端は黒いので、面としては均一な濃い灰色に見えます。離れると、毛の面ぜんたいの平均の色が見えます。上毛が寝ている場所は黒が勝ち、上毛が押し上げられて角度が変わった場所は、根元寄りの薄い色が混ざる。その差が、まだらとして見えています。
- 腰からしっぽのつけねだけ白っぽい:いちばん多い見え方です。手が最後に回る面でもあります
- 首まわりの毛が長い場所だけ、灰色が浅い:毛量のあるところほど、下に溜められる量が増えます
- 左右で色が違う:いつも同じ向きで寝ている子に出ます。当たっている側が先に浮きます
- 光の向きを変えても、まだらの位置が動かない:動かないなら、光ではなく毛の角度です
- 近づくと消え、上から覗くと分からない:見つけられる距離が決まっている、ということです
そのままにして数日たち、あらためてブラシを入れると、その場所からだけ下毛が束で出てきます。ほかの場所では同じようには出ません。離れて見えていたまだらは、下に溜まっていたアンダーコートの位置とそのまま重なります。見えていたものを、あとから手が追いかけた形です。
床に毛が落ちていないと、まだ換毛期ではないと思ってしまいがちです。けれど下毛は、根元で抜けたあとも上毛の内側に留まります。落ちていないだけで、抜けてはいます。キースホンドの場合、その留まった量が増えると、床より先に背中の色のほうに出てきます。掃除の手間で判断すると、いちばん早い合図を見送ることになります。
毛の先は黒く、根元は薄い|キースホンドの灰色ができている背景
キースホンドの上毛は、1本の中で色が変わります。先端が黒、中ほどが濃い灰、根元にいくほどクリームがかった薄い色になる。1本だけ抜いて手のひらに乗せると、ずいぶん地味な毛に見えます。それが体じゅうに並び、先の黒が表を向いて揃うことで、あの深みのある灰色になります。
下毛のほうは、上毛よりずっと短く、やわらかく、色は淡い。上毛はこの下毛の層に支えられて、体から外向きに立っています。上毛の角度を決めているのは、下の層の厚みです。層が薄ければ上毛は寝て、厚くなれば持ち上がる。ここがこの犬種の見え方の入口になります。
こうした被毛の背景には、この犬種が過ごしてきた場所があります。オランダの運河を行き来する船の上で、荷と人のそばにいた犬です。水辺の風は年じゅう当たり、夏も冬も甲板の上で過ごす。外側で風雨を受ける上毛と、内側で空気をためる下毛という、2枚がはっきり分かれた被毛はここから来ています。体格は中型で、胴は短く、首から胸にかけて毛が長い作りを持っています。同じ体格でも、毛の面としては見た目よりずっと広く取っている犬種です。
| 上毛(外側) | 下毛(内側) | |
|---|---|---|
| 色 | 先が黒く、根元にいくほど薄い | 終始うすい。ほとんど色が変わらない |
| 長さと質 | 長く、しっかりして張りがある | 短く、やわらかく、密 |
| 役目 | 風と雨を外側で受け止める | 空気をためて、体温を保つ |
| 抜け方 | 少しずつ、年間を通して | 換毛期に、根元でまとまって |
| 抜けたあと | 落ちるものが多い | 上毛の内側に留まり、層になる |
| 見た目への出方 | 面の色をつくっている | 上毛の角度を変えて、色を動かす |
換毛期になると、アンダーコートは根元でまとまって離れます。ところが、その上には長い上毛が何枚も重なっています。離れた下毛は外へ抜けきれず、上毛の内側に残ります。残った量が増えるほど、上毛の根元は下から持ち上げられる。持ち上げられた上毛は、それまで寝ていた角度を保てなくなります。
角度が変わると、表を向くのは黒い先端ではなく、根元寄りの薄い部分になります。1本では気づけない差です。それが手のひらほどの広さで起きると、その面だけ灰色が浅くなり、白っぽく浮いて見えるようになります。キースホンドのアンダーコートの詰まりが、触る前に見える理由はここにあります。
全身がほぼ単色の犬種では、この見え方は起こりません。上毛が押し上げられても、表を向く色が変わらないからです。1本の毛の中に濃淡があること。これがキースホンドだけの手がかりになります。飼い主にとっては、道具を持たなくても使える確認の手段がひとつ増える、ということでもあります。
下毛が層のまま残っているところは、空気の通り道も細くなります。すると根元に出た皮脂が、そのまま毛のあいだにとどまりやすくなります。指を入れたときに、しっとりというより、薄い膜のような手ざわりが残ることがあります。汚れているというより、動いていないだけの状態です。層を外へ運び出すと、この手ざわりも一緒に戻ります。
触る前に3歩下がる|キースホンドのアンダーコートに向かう考え方
ブラッシングは、たいてい触ることから始まります。犬を呼んで、押さえて、道具を入れて、そこではじめて詰まっている場所に気づく。キースホンドでは、この順番を入れ替えられます。先に見て、場所を決めてから触る。決めてから触ると、その日にやることが、始める前に決まっています。
この考え方に切り替えると、全身をひととおり回る必要がなくなります。毛の面が広い犬種なので、毎回すべてを見ようとすると、途中で終わります。今日の入口を1か所だけ決めるほうが、結局は続きます。見る作業には、道具も、犬を押さえる時間も要りません。
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同じ場所に立って、同じ距離から見る
距離が変わると、見え方が変わってしまいます。廊下の同じ位置、ソファの同じ端、というように立つ場所を決めてしまってください。3歩ぶんほど離れたところが目安です。近すぎると毛の先しか見えず、遠すぎると全体がぼやけます。
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立たせるより、伏せているところを横から見る
立っている犬は、こちらを見て向きを変えてしまいます。伏せて落ち着いているときのほうが、面がそのまま見えます。上から覗き込むのではなく、目線を下げて横から見る。これだけで、浮いている面が拾えるようになります。
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浮いて見えた場所を、指でさして覚える
「腰の右寄り」「首の左側」のように、口に出せる名前にしておきます。写真を1枚撮っておくのも確実です。覚えておこうとしないでください。触りはじめると、手のほうに気を取られて、見えていた場所は簡単に飛びます。
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その場所だけ、指を根元まで入れて確かめる
毛を左右に分けて、地肌が見える線をつくります。指がすっと届けば、色は光の加減だった可能性があります。途中で止まる、あるいは指がやわらかい層に当たって進まないなら、そこが詰まっている場所です。見えたものと、手ざわりが一致します。
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左右を、同じ手順で見比べる
片側だけ浮いているときは、寝る向きや、いつも当たっているものを思い出してください。ハーネス、寝床の縁、車の座席。同じ場所が何度も浮くなら、毛のせいではなく当たっているもののほうです。
「あとでブラシをかけるときに見よう」と思うと、たいてい見ないまま終わります。見るのは、犬に近づく前の数秒です。ごはんを置きに行くとき、電気をつけに入るとき、そのついでで足ります。1日1回、決まった場所で目をやるだけにしておくと、日をまたいだ変化のほうが分かるようになります。キースホンドの色は、1日では動きません。動いたなら、そこには数日ぶんの積み重ねがあります。
この見方は、経験を重ねるほど早くなります。最初のうちは、まだらなのか毛の流れなのか判断がつきません。それでも、同じ場所から同じ姿勢の犬を見ていれば、「いつもと違う」だけは数日で分かるようになります。色の名前を当てる必要はありません。違いに気づけば足ります。
色が浮いた場所から入れる|アンダーコートを運び出す毎日のケア
場所が決まったら、手を入れます。ここでのブラッシングは、汚れを落とす作業ではありません。上毛の内側に留まっているアンダーコートを、外まで運び出す作業です。運び出す係を、人が代わっている形になります。取るというより、通り道をつくる、と考えたほうが手つきが合います。
| 浮いた場所 | 起きていること | 手の入れ方 |
|---|---|---|
| 腰からしっぽのつけね | 手が最後に回り、層が残りやすい | しゃがんで、体の横から線を引く |
| 首まわりと胸 | 毛が長く、下に溜められる量が多い | 毛を上下に分け、下側から少しずつ |
| 肩から背中 | 立ったまま届くので、進みやすい | 線を少しずつずらして、面で回る |
| 脇と前脚のつけね | 面と面が合わさり、動きも多い | 前脚を軽く上げ、短い距離で |
| いつも下になる側 | 当たっているものが押さえている | 浮く原因のほうを先に見直す |
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根元まで指を入れて、毛を分ける線をつくる
上毛の上をなでても、下毛は出てきません。地肌が見える線を1本つくって、そこを入口にします。線の上に道具を置いて、外へ向かって運び出します。1か所を何度も往復するより、線を数センチずつずらしていくほうが進みます。
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毛先ではなく、線に沿って外へ運ぶ
毛の先だけを何度もとかすと、上毛の表面は整いますが、下の層は動きません。整った表面は、色が戻ったこととは別です。離れて見て色が戻らないなら、まだ層が残っています。
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色が戻ったところで、その場所は終わりにする
終わりの合図を、量ではなく色に置いてください。もう一度3歩下がって見て、浮きが消えていればその日は十分です。まだ出るからと続けると、地肌をこすることになります。残っていれば、明日も同じ場所から入れば足ります。
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空気が乾く時期は、静電気を先に落とす
冬から春先にかけては、とかすほど毛先が広がって寄ります。布をわずかに湿らせ、上毛の表面を一度なでてからにしてください。湿らせたら、その日のうちに乾かしきるところまでを1セットにします。中途半端に湿ったまま置くと、下毛の層が締まります。
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洗う回数のほうは、増やさない
色が浮いたから洗う、という順番にすると、層が水を含んで重くなり、かえって動かなくなります。先に運び出して、そのあとで洗うが順番です。洗う回数そのものを増やすと、地肌のうるおいも一緒に減ります。
換毛期のあいだは、この形を毎日1か所ずつ回します。1回は5分から10分ほどで終わります。短くしたのではなく、その日の範囲を色で決めたので、終わりが来るようになっただけです。換毛期の外は、間隔をあけて構いません。やめてしまうのではなく、あける。周回そのものが止まると、次にまた全身から探すことになります。
層になった下毛は、指ではさむと束のまま持ち上がります。そのまま引くと、まだ抜けていない毛と、その下の皮膚まで一緒に引くことになります。キースホンドは毛の面が厚いぶん、どこまで引いているかが手に伝わりにくい犬種です。動かないものは、その場でほどこうとせず、日をあけてもう一度入れてください。ハサミも入れないでください。毛のつもりで先を入れると、持ち上がった皮膚に届きます。
色が浮いた場所を、その日のうちにきれいにしておきたい。そこで使っているのが mofuwa グルーミングスプレーです。布に含ませて、その日に手を入れる場所だけを、毛の流れに沿ってなでてください。運び出す前に毛先の滑りがそろっていると、線に沿って動かした道具が、上毛の表面で止まらずに下の層まで入ります。洗う日はモイストシャンプーで地肌まで洗い、洗う日と洗う日のあいだはグルーミングスプレーで色が浮いた場所だけを整える。この2本で受け持つ範囲が分かれています。舐めても差し支えない基準(清涼飲料水の規格基準)をクリアしているので、自分でなめる脇や前脚のつけねにも量を気にせず使えます。全身にまとめて吹きかける必要はありません。
色の変化では説明がつかない、毛と皮膚のようすに気づいたとき
ここまでは、アンダーコートの層で説明のつく色の変化の話でした。手を入れて層を出しきったのに戻らない色は、別のものとして見てください。キースホンドの灰色は毛の濃淡でできているので、毛そのものの状態が変われば、同じように色として出てきます。
- アンダーコートを出しきったのに、色が戻らない:層の厚みでは説明がつきません。毛そのものを見てください
- 浮いている場所の縁が、はっきりしている:層は境目がぼやけます。輪郭がある変化は別です
- 灰色が薄いのではなく、地肌が見えている:毛の量そのものが減っている可能性があります
- その場所を気にしている:なめる、かく、床にこすりつける。色より先に皮膚のほうを見てください
- 地肌が赤い、いつもと違うにおいがする:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、手をその場で止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、いつもと違うにおいがする、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が丸く広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、換毛期だからと様子を見ずに、動物病院にご相談ください。被毛の厚い犬は、地肌の変化が外から見えにくく、気づいたときには進んでいることがあります。離れて撮った写真1枚と、手を入れてから何日たったかを添えて伝えてください。
相談やトリミングの前には、浮いて見えた場所、いつから気づいたか、手を入れて色が戻ったかどうかをメモしてください。この3つがあると、層で説明のつく変化なのかどうかが、その場で切り分けられます。離れて撮った写真が1枚あれば、それがそのまま記録になります。近づいて撮ると写らないので、必ず離れて撮ってください。
キースホンドと長く暮らしている方は、この色の見え方を経験として持っています。うまく言葉にできなくても、「今日は背中が粗い」と感じる日がある。その感覚は、アンダーコートがどこまで溜まったかを、そのまま拾っています。詰まりをゼロにすることはできません。上毛が何枚も重なった被毛の作りだからです。
できるのは、溜まっている場所を早く見つけて、そこだけ通り道をつくることです。触る前に3歩下がる。キースホンドのアンダーコートに向かうときは、この一手間が、道具を変えることよりも先に効いてきます。毎日のケアは、その数秒から始められます。
Product
mofuwa グルーミングスプレー
300ml / 2,970円(税込)
特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
