C12Q&A・豆知識

猫のひげの役割と長さの意味

公開日 2022年6月10日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、正面を向いて静かに座っている淡いクリーム色の猫
猫のひげは、左右に張り出した先から先までの幅で見ると、長さの意味が分かります。写真:Hutomo Abrianto/Pexels

猫を正面から見ると、左右に張り出したひげの先から先までの幅が、その子の胴のいちばん太いところと、だいたい同じくらいに収まっています。猫のひげの役割は、触れて感じることです。長さのほうにも意味があって、あの幅は「そのすきまを通れるかどうか」を、体より先に測るための目盛りだと考えると筋が通ります。ここから先は、どこまでが言えることで、どこからが言い過ぎなのかも分けて書きます。ひげの本数も長さも個体差が大きく、体格が変われば体の幅のほうが先に動くので、いつでもぴったり合っているわけではありません。この記事でいちばん書きたいのは、最後の一点です。猫のひげの役割が「測ること」だと分かると、毎日のケアで顔まわりを拭くときの手つきが変わります。ひげを巻き込まない、というところだけ持ち帰っていただければ十分です。7つの問答で開いていきます。

猫のひげの役割を一言で言うと、何をしている器官ですか

答えから書きます。猫のひげの役割は、触れて感じることです。見た目は毛ですし、実際に被毛と同じところから生えていますが、根元の作りが違うとされています。ふつうの毛より深く皮膚に埋まっていて、その根元のまわりに血液の入った空間と神経が集まっている、と説明されるのが一般的です。だから、ひげの先が何かに触れると、そのわずかな動きが根元に伝わります。

呼び名もふつうの毛とは分けられていて、洞毛(どうもう)、触毛(しょくもう)といった言い方をされます。名前が分かれているということは、役割が分かれている、ということです。人の眉やまつげのような「そこに生えているもの」ではなく、はたらきの側から名前がついています。

ここが分かると、あとの話が全部つながります。ひげは飾りでも、余った毛でもありません。猫が体を動かす前に、まわりの情報を先に取る役割を持った器官だとされています。目より先に届き、耳より近いところを担当している、という位置づけです。長さの意味も、切らないほうがよいとされる理由も、顔まわりのケアで気をつけることも、この一点から出てきます。

Noteこの記事では、医学的な定義を断定しません

ひげの構造や本数は、調べた対象や測り方によって説明が変わります。この記事では「〜とされています」の形で書き、出典を装った論文名や研究機関の名前を挙げることはしません。そのほうが、読む側で確かめ直せるからです。皮膚や被毛の状態そのものについて正確なことが必要な場面なら、それは言葉の意味を調べる話ではなく、動物病院で相談する話になります。

ひげの長さは、何と比べた長さなのですか

比べる相手は、その猫自身の体です。左右に張り出したひげの、先から先までの幅が、胴のいちばん太いところの幅とだいたい合っているとされています。「何センチです」という数字ではなく、「自分の体と同じくらい」という比です。比べる相手が自分の体なので、体の大きい子ではひげも長く、小さい子では短くなります。数字を一つに固められないのは、そのためです。

長さを測ろうとすると、測り方でまるで違う数字が出ます。片側の1本を測るのか、左右の先端どうしを測るのか、それとも顔の幅と比べるのか。「ひげの長さ」という言い方は、その3つを混ぜたまま使われていることが多いです。意味が出てくるのは、左右の先端どうしで測ったときだけです。

「ひげの長さ」の3つの測り方と、意味の違い
測り方何が分かるか比べる相手
片側の1本の長さその1本が今どのくらい伸びているか同じ子の前回のひげ
左右の先端どうしの幅通れるすきまの幅の目安その子自身の胴の幅
顔の幅との比顔に対して張り出している量その子の顔
他の子との比較ほとんど分かりません体格が違うので比較になりません

そして、この目盛りには前提があります。ひげの長さはゆっくりしか変わらないのに、体の幅のほうは短い期間で変わることがある、という点です。体重が増えたときや、冬に被毛が厚くなったときは、体の幅だけが先に広くなります。目盛りは前のままなので、そこにずれが出るとされています。「ひげは体の幅と合っている」という言い方は、だいたいの目安であって、いつでも正確な物差しだという意味ではありません。

だから、この数字は「約」と「とされています」を外して書けません。ひげの長さは体の幅とだいたい合っているとされる、という幅のある言い方が、いちばん実際に近い書き方です。小数点のついた数字が出てきたら、それは何をどう測ったのかを先に確かめたほうがよい、という目印になります。

ひげは口の脇だけに生えているのですか|場所と本数の目安

口の脇だけではありません。顔まわりでは、上唇の脇、目の上、ほお、あごの下に生えているとされています。さらに、顔から離れた場所にもあります。前脚の後ろ側、手首の裏にあたるあたりに短いひげがあるとされ、こちらは足元で触れたものを感じる役割を持つと説明されます。

本数は、口の脇でいうと片側に10本台、4〜5列に並んでいるとされることが多いです。ただし、これも幅のある数字です。個体差があり、生え替わりの途中では抜けているところもあります。数えて増減を管理するようなものではありません。並び方だけ覚えておけば十分で、覚える意味は次のセクションで出てきます。

場所が分かると、毎日のケアで触れてしまう場所も分かります。口まわりを拭くとき、あご下を拭くとき、目やにを取ろうとするとき。この3つは、どれもひげのある場所です。顔を触るケアは、ほぼ全部がひげの上を通っている、と考えておくほうが実際に近いです。

「通れるかどうかを測る」とは、実際に何が起きているのですか

順番の話です。猫がすきまに顔を入れようとすると、体より先に、ひげの先端が両側の壁に触れます。触れたら、そこで止まる。触れなければ、そのまま入る。数値として幅を測っているわけではなく、触れたか触れないかという、たった1つの情報を取っている、という説明のほうが実際に近いとされています。

顔より先にひげが触れる、という順番
順番何が起きるかその結果
1すきまに顔を向けるまだ体はどこにも触れていません
2左右のひげの先端が壁に届く触れたかどうかの情報だけが伝わります
3触れなかった胴の幅より広い、という目安になります
4触れたそこで止まる、または向きを変えます
5体が入る触れずに入れた場合だけ、ここまで進みます

この順番のありがたいところは、暗くても働くことです。目で見て判断しているなら、光がないところでは使えません。触れて判断しているなら、光は要りません。家の中でいうと、ソファの下、家具のすきま、洗濯機の裏。猫がためらわずに入っていく場所は、たいてい先に測ってあります。

ただし、ここも言い過ぎには気をつけたいところです。ひげだけで通れるかどうかを決めている、と断定できるほどはっきりしているわけではありません。目も、記憶も、体の感覚も同時に使っているはずです。言えるのは「先に触れる位置に、長さの合った感覚器がある」というところまでです。それでも、この順番を知っているだけで、次のセクションの答えの理由が物として分かります。

猫のひげは切っても大丈夫ですか|抜けたひげを見つけたときも含めて

切らないほうがよいとされます。理由は、痛いかどうかではありません。前のセクションで書いた順番が崩れるからです。ひげは体の幅に合わせた目盛りなので、短くすると、触れるはずの場所で触れなくなります。目盛りだけが短くなった物差しを持たされる、という状態です。狭いところに入ってから止まることになれば、その子にとっては手間が増えます。

痛みについては、断定を避けます。ひげそのものには神経が通っていないとされますが、根元には集まっているとされます。だから「切っても痛くない」とも「切ると痛い」とも、この記事では書きません。書けるのは、感じるための道具を短くすることになる、という一点です。切っても生えてくるので問題ありませんという言い方も、生えてくるまでのあいだの話が抜けています。

抜けたひげを見つけたときは、まず落ち着いて構いません。ひげも生え替わるとされていて、床やベッドで1本、2本見つけるのはよくあることです。抜けた1本を持って心配するより、顔全体の見え方が変わっていないかを見るほうが役に立ちます。左右の張り出しが同じくらいか、片側だけ短くなっていないか。ここは鏡の代わりに、正面から1枚写真を撮っておくと比べやすくなります。

Cautionこういう変わり方のときは、動物病院にご相談ください

左右のひげがまとめて短くなっている、根元が腫れている、同じ側だけ続けて抜ける、顔をしきりに前脚でこすっている、口まわりの皮膚が赤い、食べ方が変わった。こうした変化が重なっているときは、ひげの話として片づけずに動物病院にご相談ください。ひげは顔の皮膚に埋まっているので、皮膚の側の変化が先に出ることがあります。いつから、どちら側から、というメモを持っていくと、その場で切り分けてもらいやすくなります。

顔まわりを拭くとき、ひげはどう扱えばいいですか

ここが、この記事でいちばん実際に使えるところです。ひげを巻き込まないように拭く、それだけです。顔の上から布をかぶせて、そのまま手前に引くと、上唇の脇のひげが列ごと後ろへ倒れます。1回で済ませようとするほど、この持ち方になります。役割が「触れて感じること」だと分かっていると、そこを一度に押し倒すのは避けたくなります。

  1. 布はあご側から入れる

    上からかぶせず、顔の下から近づけます。ひげは前と横に向かって生えているので、下から入れるとひげの列に当たりません。猫の側からも、視界をふさがれないぶん落ち着きやすくなります。

  2. ひげの生えている向きに沿って、外へ抜く

    口の脇は、鼻に近いほうから外側へ。逆向きに動かすと、ひげの根元が押し戻されます。毛の流れに沿うのと同じ考え方で、ひげにも向きがあります。一往復ではなく、外へ一方向だけで足ります。

  3. 口の脇は、ひげの列の下を通す

    拭きたいのは口のまわりの皮膚と被毛で、ひげそのものではありません。指を布の下に添えて、ひげの列より下を通すと、巻き込まずに口角まで届きます。

  4. 目のまわりには持っていかない

    目の上にもひげはありますが、目のまわりは別の条件が要る場所です。顔まわりのケアの続きで目の際まで進めない、と決めておいてください。気になる汚れが続くときは、拭き方を工夫するより先に動物病院で見てもらうほうが早く終わります。

顔まわりの拭き方で、ひげに起きることの違い 顔の上から布をかぶせて引く持ち方と、あご側から入れてひげの向きに沿わせる持ち方を、同じ項目で並べています。 拭く強さの話ではなく、布を入れる向きの話です 上からかぶせて手前に引く ひげが列ごと後ろへ倒れる 視界が先にふさがれる 顔を引く動きが出やすい 1回で終わらせようとしがち あご下まで届かないことがある あご側から入れて外へ抜く ひげの向きに沿って抜ける 視界がふさがれない 顔を引く動きが出にくい 口の脇と、あご下に分けられる 触る時間を短くできる
同じ1回の拭き取りでも、布をどちらから入れたかで、ひげに起きることが変わります。

布を湿らせて使うなら、口の脇とあごの下は、猫が自分の舌では届かない場所です。前脚をなめて、その脚で顔をこする、という手順を踏まないと届きません。そして顔をこすった前脚は、そのままなめられます。だから口まわりに置いたものは、必ず口へ戻ります。mofuwa スキンケアミストの中身は電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。前脚をなめる猫にとって、これが選ぶ理由になります。布に含ませてから、あご側から入れて外へ抜く。顔に向けて直接ふきかけないでください。音が近いことと、目に入る可能性があることの2つが理由です。ひげの列より下を通すところまでは、乾いた布のときと変わりません。猫のひげの役割が触れて感じることだと分かっていれば、湿らせた布でも手つきは同じになります。

器の縁にひげが当たる、という話はどこまで言えますか

深い器で食べるときに、両側の縁にひげが当たる。それが続くと食べにくくなる、という話を見かけることがあります。この記事では、はっきり確かめられていることとして書きません。言葉としては広く使われていますが、どこまで実際に起きているのかは、まだはっきりしていないという立場で書きます。

そのうえで、家で確かめられる形にはできます。浅くて広い器に1週間だけ替えて、食べ残しの位置が変わるかどうかを見る。それだけです。器の底の真ん中だけ残っていたのが、替えたら残らなくなったなら、器の形が関係していた可能性があります。何も変わらないなら、器の問題ではありません。

器を替えて1週間、どこを見るか
見るところ変わった場合変わらない場合
食べ残しの位置器の形が関係していたかもしれません器以外の理由を探します
食べ終わるまでの時間食べやすさが変わった目安になります元から時間がかかる子です
途中で顔を上げる回数縁に当たっていた可能性があります落ち着ける場所かどうかを見ます
食べる量そのもの量が落ちているなら器の話ではありません様子を見て構いません

大事なのは最後の行です。食べる量そのものが落ちているときは、器を替える話ではありません。猫は食べない時間が続くこと自体が体に響くとされているので、器を試している日数のほうが惜しくなります。量が戻らない、水を飲む量が変わった、口を気にしているといったときは、器を替える前に動物病院にご相談ください。

7つの答えを「長さ」の一点でつなぎ直す|猫のひげと役割の整理

最後に、ここまでの答えを1枚に並べ直します。猫のひげの役割は感じることで、長さはその役割を果たすための寸法です。この2つを押さえておくと、残りは全部そこから出てきます。切らないほうがよいとされるのも、拭くときに巻き込まないのも、理由は同じところにあります。

7つの問いと、その答え、家で使える形
問い答え家で使える形
役割は何か触れて感じる器官とされます飾りではないと考える
長さは何と比べた長さかその子自身の胴の幅とだいたい合うとされます正面から1枚撮って左右を比べる
どこに生えているか上唇の脇・目の上・ほお・あご下・前脚の後ろ顔のケアはほぼひげの上を通ると考える
測るとはどういうことか体より先に触れて、触れたかどうかを取ること暗い場所でも働くと考える
切ってもよいか切らないほうがよいとされます顔まわりのカットは自分でやらない
抜けたひげをどう見るか生え替わりで抜けるとされます1本ではなく左右の張り出しで見る
拭くときどうするかあご側から入れて、外へ抜く上からかぶせない

毎日のケアに落とすと、覚えることは1つだけになります。布は下から入れて、ひげの向きに沿って外へ抜く。顔まわりを触る回数は、犬より猫のほうが少なくて済むことが多いので、1回あたりの手つきのほうが結果に効きます。被毛の手入れは体のほうで時間をかけて、顔は短く終わらせる。この配分にすると、嫌がられる回数が減ります。

ここでひとつ、切り分けの話をしておきます。ひげは皮膚に埋まっている器官なので、ひげの見え方が変わったときは、皮膚の側の変化が先に出ていることがあります。左右で張り出しが違う、根元が腫れている、顔をこする回数が増えた。どれか1つでも続いているなら、拭き方を変える前に動物病院にご相談ください。猫のひげの役割を知っておく意味は、変化に早く気づけるところにもあります。

この記事で書かなかったことも、はっきりさせておきます。ひげの本数を数えて健康状態を判断する方法、ひげの色の変化から何かを読み取る方法、ひげを触ると猫がどう感じるかという中身の話。この3つは、確かめられていることとして書ける段階にありません。言葉や数字の意味を調べているときにいちばん困るのは、確かなことと、そうでないことが同じ調子で並んでいることです。この記事では、そこを分けて書きました。

毎日のところに戻して終わります。顔まわりに手を入れるのは、1日1回、布をあご側から入れて外へ抜く数十秒で足ります。この数十秒を1か月続けると、左右の張り出しがそろっているかどうかが、写真を見返さなくても布の抜け方で分かるようになります。猫のひげの役割は測ることなので、飼い主のほうがひげを測り直す必要はありません。同じ手つきで同じ場所を通っていれば、変わった日に指が止まります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。