C12Q&A・豆知識
防腐剤とは?入れる理由と入れない理由
ペット用のスプレーを2本並べて、片方のラベルにだけ「防腐剤フリー」と書かれていました。防腐剤とは、中身が変わってしまうのを遅らせるために入れるものです。役割はそれだけで、入っているかどうかだけでは、その製品の良し悪しは決まりません。入れる理由と、入れない理由が、両方あるからです。入れれば、開封してから何度も使うあいだ、中身が変わりにくくなります。入れなければ、そのぶん使える期限が短くなり、置く場所や容器の条件が厳しくなります。どちらが優れているという話ではなく、どちらの制約を引き受けるかという選択です。この記事は、その選択の中身を開く読みものです。犬と猫のケア用品の棚の前で、2本を同じ基準で比べられるようになるところまで書きます。
「防腐剤フリー」と書かれた2本を、同じ基準で比べられなかった
棚に並んでいた2本は、どちらも犬と猫に使えると書かれていました。片方の正面には大きく「防腐剤フリー」とあり、もう片方には何も書かれていません。この2本を、どういう基準で比べればいいのか、その場では決められませんでした。書かれているのは「入っていない」という情報だけで、入っていないことによって何がどう変わるのかは、正面のどこにも書かれていないからです。
裏面を見ると、片方には「開封後は3か月以内にお使いください」とありました。もう片方には、そういう記載がありません。同じ棚の2本で、期限の書き方だけが違っていました。このとき初めて、正面の言葉と裏面の記載がつながっていることに気づきます。入っていないという表示と、早く使い切ってくださいという記載は、別々の話ではありませんでした。
ペット用品の売り場では、この形の表示がとても増えています。「◯◯フリー」「◯◯不使用」という言葉は目に入りやすく、選ぶときの手がかりになります。ただ、その言葉だけを持って帰ると、家に着いてから困ることがあります。いつまでに使えばいいのか、どこに置けばいいのか、口をどう扱えばいいのか。入れていない設計であるほど、そこの条件がはっきりしてきます。
この記事で書きたいのは、どちらが良いという結論ではありません。防腐剤とは何をしているものなのかを一度おさえて、入れる設計と入れない設計が、それぞれ何を引き受けているのかを並べて見る。そこまで分かると、棚の前で比べられるようになります。毎日のケアで使うものほど、置き場所と使い切る速さが効いてくるので、この違いは実際の生活のほうに出てきます。
防腐剤という言葉には、避けたほうがよいものというイメージがついていることがあります。この記事では、防腐剤そのものについても、他の製品についても、危ないとも安心とも書きません。書けるのは、それが何をする係なのかという役割と、入れる・入れないの選択がどこに条件を回すのか、という設計の話だけだからです。防腐剤が入っていないから安心して使えますという言い方も、この記事では使いません。入っていないことと、その製品が自分の家に合うかどうかは、別の話です。
中身が変わる、というのは何が変わることなのか|防腐剤とは何を遅らせる係か
定義をもう一度置きます。防腐剤とは、中身が変わってしまうのを遅らせるために入れるものです。ここで「変わる」と言っているのは、見た目の話ではありません。ボトルの中で起きる変化には、いくつか種類があって、防腐剤が受け持つのはそのうちの一部だけです。まず、その種類を分けます。
| 何が変わるか | きっかけになるもの | 受け持つ係 |
|---|---|---|
| 微生物が増える | 空気・指・水・時間 | 防腐剤が受け持つ範囲とされます |
| 油が酸化する | 空気・光・熱 | 酸化を遅らせる別の成分の担当です |
| 色が変わる | 光・熱・原料そのもの | 容器の遮光や保管条件の話になります |
| においが変わる | 上のいくつかが同時に進んだ結果 | 原因を1つに絞れないことが多いです |
| 分離する | 温度差・振動・時間 | 処方の作り方の話です |
表のいちばん上の行だけが、防腐剤の担当です。つまり防腐剤とは、中身の変化を全部止めるものではなく、微生物が増えるまでの時間を延ばす係だとされています。入っていても油は酸化しますし、光が当たれば色は変わります。「入っているから何も変わらない」わけではなく、「入っていないから全部が早く変わる」わけでもありません。受け持ちが分かれています。
もう一つ、条件があります。水が多く入っている処方ほど、微生物が増えやすい条件になるとされています。だから、水分の少ないクリームやオイルと、水がほとんどを占めるスプレーやシャンプーでは、同じ「入れる・入れない」でも意味の重さが違います。ペットのケア用品は水の多いものが多いので、この話は他人事になりません。
そして、使い方の側にも条件があります。開封してから使い切るまでのあいだに、中身は何度も外の空気に触れます。スプレーなら、押すたびに減ったぶんの空気がボトルに入ります。ジャーに入ったものなら、指やコットンが直接入ります。中身が変わるきっかけを持ち込んでいるのは、実は使う側の動作です。ここが、次のセクションで出てくる「引き受けるもの」の分かれ道になります。
ここまでで、言葉の意味としての防腐剤とは何かは出そろいました。整理すると、①受け持つのは微生物が増える側の変化 ②水が多い処方ほど条件が厳しい ③外の空気や指が入るたびにきっかけが増える、の3つです。この3つを持ったまま、入れる理由と入れない理由を並べます。
入れる設計と入れない設計は、どこで引き受けるものが違うのか
並べてみると、どちらの側にも、はっきりした理由があります。入れる理由は、使う人の条件を選ばずに済むことです。開封してから長く使っても、置き場所が洗面所でも、口に指が触れても、中身が変わるまでの時間を稼げます。ペットのケア用品は、置き場所を選べないことが多いものです。玄関の棚、洗面所、車の中。そこまで含めて成立させたいなら、入れる設計には合理性があります。
入れない理由は、処方の中身を1つ減らせることです。ただし、減らしたぶんは消えるのではなく、別のところへ移ります。使える期限が短くなる。置き場所の条件が厳しくなる。容器の側で受け持つ必要が出てくる。作る側の製造管理も厳しくなります。入れないという選択は、何もしないことではなく、他のところで引き受け直すことです。
容器の話は、あまり表に出てきませんが大きい要素です。口の細いスプレー、光を通しにくい容器、中身が減っても空気が入りにくい構造。入れない設計を選んだ製品ほど、容器の側に条件が寄っていることがあります。ジャーに入っていて指を入れるタイプと、スプレーで押すタイプでは、外から入るものの量がそもそも違います。ラベルの成分表だけを見ていると、この差が見えません。
| 見るところ | 入れる設計の場合 | 入れない設計の場合 |
|---|---|---|
| 開封後の期限 | 比較的長く書かれています | 短めに書かれていることが多いです |
| 置き場所 | 洗面所や玄関でも成立します | 直射日光と高温を避ける必要があります |
| 容器 | 形の自由度が高いです | 空気と光を入れにくい形が選ばれます |
| 容量の選び方 | 大きくても使い切れます | 使い切れる大きさを選ぶ話になります |
| 使うときの動作 | 口に触れても余裕があります | 口に指を触れないほうが条件に合います |
| 作る側 | 製造の条件に幅があります | 工程の管理が厳しくなります |
この表を作ってみて分かるのは、どの行にも「どちらも同じ」という欄がないということです。入れれば入れたぶんの条件が、入れなければ入れないぶんの条件が、必ずどこかに出てきます。だから、防腐剤とは何かという問いの答えを「良いもの」「悪いもの」の形で持ってしまうと、選ぶときに使えません。どちらの制約を、自分の家で引き受けられるか。それが実際の選び方です。
家の事情でいうと、選ぶ材料は3つに絞れます。①どのくらいの速さで使い切る家か ②置き場所を選べる家か ③容器の口に触れずに使えるか。毎日ケアに使う家なら、入れない設計でも期限の中で終わります。月に数回しか使わない家で、大きい容量を買うと、期限のほうが先に来ます。犬が複数いる家と、猫が1匹の家では、同じ200mlでも中身の置かれた時間がまるで違います。
「入れていない」と書いた側が、飼い主に渡している条件
ここからは、自分たちの製品の話も含めて書きます。mofuwa スキンケアミストは、防腐剤を入れていない側の設計です。入れていないのは防腐剤だけではありません。アルコール、添加物、香料、界面活性剤、鉱物油、オイル、着色料、そして防腐剤の8つを入れていない処方にしています。ただ、そう書いた時点で、こちらは条件を使う人に渡しています。そこを書かずに「入れていません」とだけ言うのは、この記事で並べてきた話と合いません。
渡している条件は、次の4つです。どれも難しいことではありませんが、知らないまま使うと、期限のほうが先に来ます。
- 開封したら、書かれている期間のうちに使い切ること:未開封のときと、開封したあとでは条件が変わります
- 直射日光と高温になる場所を避けること:夏の車の中と、窓ぎわの棚は条件が厳しい場所です
- 容器の口に、指やコットンを直接触れさせないこと:布に取ってから使う形にすると、口に触れずに済みます
- 使い切れる容量を選ぶこと:毎日のケアで使う家と、月に数回の家では、同じ容量でも置かれる時間が違います
- 色・におい・にごりが変わったと感じたら、使わないこと:期限の中でも、保管の条件によっては先に変わることがあります
この5つは、入れていない設計を選んだ側の宿題です。入れないという判断は、使う人と分担して初めて成立します。だから、こちらとしては「入れていません」で終わらせずに、どこまでが自分たちの受け持ちで、どこからが使う人の受け持ちなのかを書いておきたいと考えています。
毎日のケアの側から言うと、この条件はそれほど重くありません。毎日手に取る道具は、そもそも減っていく速さが違うからです。散歩から帰ったあとに足の裏を拭く、ブラッシングの前に被毛を整える、皮膚が乾きやすい時期に気になる部分だけなじませる。こういう使い方をしている家では、期限より先に中身がなくなります。使い切る速さが前提になる設計は、毎日使う道具と相性がよい、という言い方もできます。
この設計で条件をいちばん大きく動かすのは、置き場所と、減っていく速さです。どちらも、作った側では決められません。だから、使える場所が1か所しかない道具ほど、入れていない側の設計とは相性が悪くなります。この点で、mofuwa スキンケアミストは使える場所を1か所に絞っていません。地肌、耳のまわり、口のまわり、目のまわり、肉球。中身が電解水だけなので、場所ごとに処方を分けずに済んでいるためです。場所ごとに別の1本を棚に増やさなくていいことが、そのまま回転の速さに変わります。朝に足先、夜に口のまわり、というふうに1日2回ちがう場所で使えば、開封後の期限より先に容器のほうが空になります。入れる・入れないの話は、どれか1本を選ぶときの話ではなく、家にあるものをどのくらいの速さで回しているか、という話につながっています。棚に何本も置いて、どれも半分残っている状態が、いちばん条件に合いません。
最後に、ラベルの読み方として持ち帰っていただきたいことを書きます。「フリー」と書かれた表示から読み取れるのは、それが入っていないという事実だけです。そこから安全さを読み取ることはできませんし、逆に、書かれていない製品を避ける理由にもなりません。読むところは、正面の言葉ではなく裏面です。開封後の期限がどう書かれているか、保管の条件が書かれているか、容器がどういう形か。この3つを見ると、その製品がどちらの制約を引き受けたのかが分かります。
そして、成分の話でどうしても線を引けないことがあります。その子の皮膚や被毛に、その処方が合うかどうかは、ラベルからは分かりません。使ったあとに地肌が赤くなった、同じ場所をなめ続けている、フケが増えた、においが変わった。こうした変化が出たときは、成分表を読み比べる前に、使うのをやめて動物病院にご相談ください。いつから、どこに、どの製品を使ったあとか。この3つをメモして持っていくと、切り分けが早くなります。防腐剤とは何かを知っておく意味は、選ぶときの材料が1つ増えることであって、家で判断できる範囲が広がることではありません。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
