C12Q&A・豆知識
犬の視野は人より広い
ブラッシングの前に、顔の正面から手を差し出す。その手は、鼻先に近づいたところで相手の視野から外れています。犬の視野は人より広いとされ、水平方向で人が約180度前後、犬は約250度前後という数字が一般に挙げられます。ただし、この2つの数字が比べているのは「見える範囲の合計」だけです。目が顔の横寄りについていれば外側は広く見えますが、そのぶん左右の目が同時に見ている範囲は狭くなり、正面のすぐ手前には見えない範囲が残ります。広いという言葉と、正面の近くまで見えているという言葉は、同じことを指していません。この記事では、人と犬の視野を「見える範囲の広さ」と「正面の近く」という2つの軸に分けて比較し、どちらの軸で見るかによって、毎日のケアで手を出す向きが変わるところまで書きます。
「見える範囲」と「正面の近く」|犬の視野を2つの軸に分ける
答えから置きます。犬の視野が広いのは、目が顔の横寄りについているからです。顔の中心線から見て、両目が外側に振られているぶん、それぞれの目が受け持つ外側の範囲が広くなります。ただし、外側に振れば振るほど、左右の目が同時に見ている範囲は狭くなります。視野の広さと、正面の近くの見やすさは、同じ体のつくりから逆向きに出てきます。
数字を並べる前に、比べる相手を決めておきます。ここで挙げる度数は、すべて人と比べた数字です。比較の相手を書かずに「約250度」とだけ置くと、それが広いのか狭いのかが決まりません。人が水平方向にどれくらい見ているかを横に並べて、はじめて意味が出ます。犬の視野という言葉が一人歩きしやすいのは、この比較の相手が省かれるからです。
- 軸1:水平方向に見える範囲の合計。人は約180度前後、犬は約250度前後とされています
- 軸2:左右の目が同時に見ている範囲。人は約120度前後、犬は約80度前後とされています
- 軸1が広いほど、外側の動きに気づきやすい。横から来たものが早く目に入ります
- 軸2が広いほど、距離をつかみやすい。同じものを2つの目で見ているぶん、奥行きが分かります
- 2つの軸は同時には広げられない。目を外側に振れば軸1が伸び、軸2が縮みます
図の上半分だけを見ると、犬の視野は人より広いという話で終わります。下半分を一緒に見ると、話が変わります。両目が重なる範囲が狭いということは、奥行きをつかむために使える範囲が狭いということです。だから犬は、じっと一点を見つめるより、頭をわずかに動かして角度を変えながら見ることが多くなります。首をかしげる動きも、この角度づけの一部だとされています。
ここで挙げた度数は、一般に目安として挙げられる、幅のある数字です。測り方(片目ずつ測るか、頭を固定するか)で結果が変わりますし、顔の作りによっても幅が出ます。犬の視野は250度ですと小数点まで詰めて言い切れる数字ではありません。この記事では、正確な度数を当てにいくのではなく、人と比べてどちらの軸が広く、どちらの軸が狭いかという向きだけを使います。向きが分かれば、毎日のケアで手をどこから出すかは決められます。
人と犬では、見える範囲と正面の近くがどう違うか|視野の比較
2つの軸を、同じ項目で並べます。表の上から3行は目のつき方と度数、下の5行は「その結果として何が起きるか」です。度数だけを覚えても家では使えないので、下の5行のほうを覚えてください。犬の視野を比較するときに実際に効いてくるのは、こちら側です。
| 見る項目 | 人 | 犬 |
|---|---|---|
| 目のつく位置 | 顔の前面寄りに、ほぼ並んでいる | 顔の横寄りに、外へ振られている |
| 水平方向に見える範囲 | 約180度前後とされる | 約250度前後とされる |
| 左右の目が重なる範囲 | 約120度前後とされる | 約80度前後とされる |
| 正面のすぐ手前 | 鼻先の近くまで見えている | 見えにくい範囲が残るとされる |
| 横から来たもの | 顔を向けないと気づきにくい | 顔を向けなくても目に入りやすい |
| 奥行きのつかみ方 | 両目の重なりで距離をつかむ | 頭の角度を変えながら補う |
| 真後ろ | 体を回さないと見えない | 体をわずかに傾けると入る |
| 近くの細かいもの | 目を寄せて確かめる | 鼻と口のまわりで確かめることが多い |
この比較で読み取ってほしいのは、広い・狭いという優劣ではなく、受け持っている場所が違うということです。外側を広く受け持つ体は、近づいてくるものに早く気づけます。そのかわり、鼻先の手前に来たものは、目から手渡されなくなります。そこから先を受け持っているのが、においと、口のまわりの感覚です。顔まわりを触られるのを嫌がる子が多い理由の一つが、ここにあります。
もうひとつ、表のいちばん下の行を見てください。近くの細かいものを確かめる仕事は、目から鼻へ移っています。だから、手を見せてから触るという人のやり方は、犬の側からするとまだ確かめが済んでいない状態で触られることになります。見せる場所を、目の正面から、鼻の届く横へずらすだけで、順番がそろいます。
正面から出す手と、横から出す手は、どっちが先に見えているか
ここが、この記事でいちばん家に持ち帰れる部分です。どっちが届くかと言えば、横から出す手のほうです。正面から出した手は、遠いうちは見えていますが、近づくほど両目の重なる範囲の内側に入り、最後は鼻先の手前で消えます。横から出した手は、外側の広い範囲に最初から入っていて、近づいても消えません。犬の視野の広さが、そのまま働く向きです。
言い換えると、正面は「早く見つかるが、最後に消える場所」、横は「見つかるのは同じくらい早く、消えない場所」です。ケアの手をどっちから出すかは、この一点で決められます。以下は、ブラッシングや顔まわりを拭くときの手の出し方です。
-
手は、顔の正面ではなく体の横から出す
自分が正面に立っていても、手だけは体の横を通して出します。正面から鼻先へまっすぐ近づける動きは、犬の視野からいちばん早く消える動きです。横から出すと、手は最後まで見える範囲に残ります。真上からかぶせるように出すのも、同じ理由で消えやすい向きになります。
-
目の高さより下から、ゆっくり上げる
目より上から下ろす手は、見上げる動きを強いることになります。下から上げると、手は外側の広い範囲を通ってから顔に近づきます。速さも関係します。速い動きは外側でよく目に入るので、ゆっくり動かすほうが落ち着きます。
-
触る前に、いったん視野の中で手を止める
顔に触れる手前で、2秒ほど手を止めます。止めるのは、鼻で確かめる時間を渡すためです。正面の近くが見えにくい体では、最後の確認をにおいが引き受けています。止めずに触ると、その確認の工程を飛ばしたことになります。
-
顔まわりは、体を触ったあとに回す
肩や背中など、視野の外側にあたる場所から始めて、顔は最後にします。ケアの順番を体の後ろから前へ動かすと、手はずっと見える範囲を通ります。顔から始めると、最初のひと触りが見えないところから来ることになります。
この4つは、道具を変えずにできます。変えているのは、手が入る角度と速さだけです。嫌がる理由を性格の問題として片づける前に、手の向きだけを1週間ぶん変えてみると、反応が変わることがあります。毎日のケアの中で試せるので、道具代もかかりません。
同じ数字が当てはまらなくなる条件|目の高さと顔の作り
度数には幅があります。幅を生んでいる条件は、少なくとも5つあります。ここを飛ばして「犬の視野は約250度」とだけ覚えると、自分の家の子に当てはめたときにずれます。条件のほうを覚えておくと、ずれた理由が分かります。
- 目が外へ振られている角度:顔の幅と目の位置で変わります。外へ振られているほど軸1が広く、軸2が狭くなります
- 鼻先の長さ:長いほど、正面のすぐ手前で鼻に隠れる範囲が増えるとされています
- 床から目までの高さ:体の大きさで、足もとの見え方が変わります。低い位置ほど、床の段差が近くに迫って見えます
- 目にかかる毛の長さ:外側がいくら広くても、毛が垂れていればその方向は塞がります。視野の内側からの目隠しです
- 年齢と明るさ:暗いところでの見え方は年齢で変わるとされ、正面の近くの見えにくさが強く出ることがあります
この5つのうち、家で動かせるのは4番目だけです。目にかかる毛は被毛の側の条件なので、毎日のケアで短くしておけます。ほかの4つは、その子の体と年齢の条件なので、数字を覚えても変わりません。だからこの記事では、度数を暗記するより、手の向きと毛の長さという2つの操作できる条件に話を寄せています。
そして、いちばん大事な線を引いておきます。見え方そのものは、家では測れません。ものにぶつかるようになった、段差の手前で止まる、呼んでも視線が合わない、明るい場所と暗い場所で動きが変わる。こうした変化があるときは、視野の話として片づけずに動物病院にご相談ください。目や皮膚に赤み・腫れ・目やにの変化があるときも同じです。度数は説明のための数字であって、その子の目を診る代わりにはなりません。
目にかかる毛が伸びる時期に、毎日のケアで先に変えること
犬の視野が実際に狭くなる時期が、暮らしの中に何度かあります。いちばん多いのは、目のまわりの毛が伸びてくる時期です。外側の広い範囲は体の作りで決まっていますが、内側は毛で塞げます。トリミングの間隔が空いた時期と、換毛期に抜けた毛が顔まわりに残っている時期。この2つが重なると、正面の手前だけでなく上の方向まで塞がります。
- トリミングの間隔が空いた時期:目の上の毛が垂れて、上と正面が同時に狭くなります
- 換毛期:抜けた毛が顔まわりの被毛に引っかかったまま残り、束になって視界に入ります
- 朝夕の逆光:外側から強い光が入る時間帯は、正面の近くがいっそう見えにくくなります
- 暗い時間のケア:手もとだけを明るくすると、その外側が暗く沈み、手の出所が分かりにくくなります
- 年齢が上がってから:同じ環境でも、慣れた家の中でぶつかる回数が増えることがあります
やることは、時期ごとに変わりません。目にかかる毛を短く保つことと、手を横から出すことの2つだけです。毛を切る作業は目のすぐ近くなので、家で全部を引き受けなくて構いません。トリマーに任せる範囲と、家でブラシを通す範囲を分けておくと、間隔が空いた時期でも視界が塞がりきりません。
片方の目だけをこすっている、白っぽく濁って見える、まぶしがって目を細める時間が増えた、暗い場所で立ち止まる、いつも同じ側にぶつかる。こうした変化は、視野の広さや毛の長さでは説明がつきません。皮膚や被毛のケアの範囲を超えているので、様子を見る前に動物病院にご相談ください。犬の視野についての数字は、人と比べたときの一般的な目安にすぎません。目の前にいる1頭の見え方を説明する数字ではありません。
毛を短く保つ日のあいだにも、顔まわりは毎日さわる場所です。目のまわりと口のまわりは、その子から見えない場所であると同時に、自分の舌が届く場所でもあります。前足でこすることはできても、拭き取るところまでは自分ではできません。mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、原料に使っている成分が清涼飲料水の規格基準をクリアしています(江東微生物研究所ほかの検査機関調べ)。舐めても問題のない基準でつくられているので、口のまわりまでそのまま届きます。使うときは顔に向けて吹きかけるのではなく、いったん布に取ってから、体の横を通して手を入れてください。ボトルが正面から近づくと、それ自体が、いちばん見えにくい方向から来る動きになります。目には直接入れないでください。
毛の長さと手の向きは、どちらも家で毎日決められる側の条件です。ブラシを入れる前に、今日はどこまで毛が目にかかっているかを一度だけ見てください。この確認を続けると、トリミングの予約を「そろそろ」ではなく、視界が塞がりはじめた週に入れられるようになります。犬の視野そのものは体のつくりで決まっていて広げられませんが、内側から塞いでいるぶんは、毎日のケアで減らせます。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見るよくある質問
- 犬の視野は約250度と書かれているのをよく見ますが、うちの子も同じですか?
- 同じとは限りません。約250度前後という数字は、人の約180度前後と比べるための目安で、測り方や顔の作りによって幅が出ます。目が外へ振られている角度、鼻先の長さ、床から目までの高さで、実際に見えている範囲は1頭ずつ違います。家で使えるのは度数そのものではなく、外側は広く、正面のすぐ手前は見えにくい、という向きのほうです。
- 正面から手を出すと顔をそらすのは、視野と関係がありますか?
- 関係していることがあります。正面から近づく手は、鼻先の手前で両目の重なる範囲から外れ、いちばん見えにくい位置に入ります。見えないところから触られる形になるので、顔をそらす、体を引く、という反応が出やすくなります。手を体の横から、目の高さより下から出して、触る前に2秒ほど止めてみてください。それでも毎回そらす、触られること自体を避けるようになった、という場合は痛みが隠れていることもあるので、動物病院にご相談ください。
- 目のまわりの毛は、家で切ってもいいですか?
- 目のすぐ近くは、家で全部を引き受けなくてよい場所です。犬は正面のすぐ手前が見えにくいので、刃物が近づいていることに気づきにくく、頭を動かした瞬間に位置が変わります。家でやるのはブラシとコームで毛を整えるところまでにして、切る作業はトリマーに任せる範囲として分けておくと、視界が塞がる時期を短くできます。目やにや涙の量が増えている、目のまわりの皮膚が赤いという場合は、切る前に動物病院にご相談ください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
