C09シーン別・暮らし

在宅ワークの日を楽にする、はじめて犬を迎えた人の毎日の習慣

公開日 2022年6月4日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、うすいクリーム色の犬が木の机のそばに落ち着いて伏せている
同じ部屋に一日いることと、その子を見ていることは、同じではありません。写真:Lum3n/Pexels

在宅ワークの日、足元で寝ていた息づかいが、いつやんだのか思い出せませんでした。朝9時に来て伏せて、気づいたら夕方の17時にはいなかった。そのあいだ、ずっと同じ部屋にいたはずなのに、いつ立ったのかを1つも言えません。犬を迎えて初めての在宅ワークで、多くの人がここでつまずきます。一日じゅう見ていられるから、その子のふだんが分かるようになる——実際に起きるのは逆で、見すぎることで変化のほうが見えなくなります。ペットと同じ部屋で働く日の習慣は、見る回数を増やす方向ではなく、1日1回だけ他人の目を入れる方向へ組みます。

足元の息づかいが、いつやんだのか言えない|在宅ワークで初めて犬と過ごした日の経験

犬を迎えて3週間目に、初めて在宅ワークの日が来ました。朝9時にパソコンを開くと、その子は机の下へ入ってきて、足の甲に背中をつけて伏せます。これで一日ずっと様子が見られる、と思っていました。会社に行く日は、朝に会って、夜に会うだけ。その8時間が気がかりだったので、同じ部屋にいられる日を待っていたところがあります。

ところが夕方、席を立ったときに気づきます。足元にいません。水を飲みに行ったのか、ソファへ移ったのか、いつ動いたのか、まったく覚えていない。一日じゅう同じ部屋にいたのに、その子が何時に立ったかを1つも言えませんでした。夜に家族から「今日どうだった」と聞かれて、出てきた言葉は「ふつうだった」だけです。

この「ふつうだった」が曲者です。初めて犬を迎えた人にとって、ふつうがどこなのかは、まだ決まっていません。前の週と比べて水を飲む回数が増えたのか、足先をなめる時間が長くなったのか、比べる相手がないので判断が置けない。それでも一日じゅう見ていたという事実だけが残るので、見たつもりになります。ここが、在宅ワークとペットの組み合わせでいちばん静かに起きている問題です。

在宅ワークの日を重ねるほど、この感覚は強くなります。毎日ずっと一緒にいるのだから、何かあれば気づくはずだ、と思っている。けれど気づくというのは、差を拾うことです。差を拾うには、比べる2点がいります。同じ部屋に一日いることは、点を無数に増やしているだけで、比べる2点を作ってはいません。

見る回数が増えるほど、基準が上書きされていく|在宅ワークとペットの距離が近すぎる背景

人の感覚は、絶対の値ではなく差を拾うようにできています。同じ刺激が続くと、そこを基準として扱い、拾うのをやめる。においがいちばん分かりやすい例ですが、見た目でも、音でも、同じことが起こります。在宅ワークの日は、その子の姿が視界に入り続けるので、基準が1時間ごとに上書きされていきます。朝の状態と夕方の状態を比べているのではなく、5分前と今を比べ続けている状態です。

会社に行っていた日のほうが、じつは差が見えていました。朝に見て、8時間の空白があって、夜にもう一度見る。この空白が、比べるための2点目を作っていました。帰宅した瞬間に「今日は水がずいぶん減っている」「朝より足先をなめている」と分かったのは、注意深かったからではなく、あいだが空いていたからです。ペットの様子に気づく力は、一緒にいた時間の長さでは決まりません。

会社に行く日と在宅ワークの日で、見えているものが入れ替わる
会社に行く日在宅ワークの日
一緒にいる時間朝と夜の合計3〜4時間起きているあいだずっと
比べる2点朝と夜。8時間空いている5分前と今。空いていない
拾いやすいもの1日ぶんの差。量の増減その瞬間の様子。表情や姿勢
拾いにくいもの日中に何をしていたか朝からの積み重ねと、ゆっくりした変化
記録の残り方帰宅時の1回だけ残る回数が多すぎて、どれも残らない

初めて犬を迎えた人の場合、ここにもう一つ条件が重なります。去年の同じ時期を知らないので、季節で変わるものと、その子の変化とを分けられません。毛が抜ける量が増えたとき、それが季節のものなのか違うのかは、経験のある人なら見当がつきます。初めての年は、その見当自体がありません。だから、外から持ち込んだ知識ではなく、自分の手元に記録を作るしかない。

Note気にしすぎている、という自覚とは別の問題です

在宅ワークの日にその子ばかり見てしまい、仕事が進まないと感じる人は多いです。ただ、ここで書いているのは気にする量の話ではありません。気にする量が多くても、比べる2点がなければ変化は出てきません。逆に、1日1回だけと決めて残りの時間は放っておくほうが、拾える変化は増えます。見る量を減らすことが、見えるものを増やす。ペットと同じ部屋で働く日は、この入れ替えが要ります。

1日1回、決めた時刻に他人の目で見る|初めて犬を迎えた人の在宅ワークの考え方

やることは1つです。1日のうち1回だけ、その子を「今日初めて会った人」として見る時間を作ります。他人の目というのは、連続していない目のことです。昨日からの流れを知らない人は、目の前の状態をそのまま受け取ります。同居している人にはできない見方ですが、条件を3つそろえると近いことができます。同じ時刻、同じ場所、そして頭の外へ出すこと。

3つのうち、いちばん大事なのは3つ目です。頭の中で見ただけの観察は、その場で基準に吸収されて消えます。声に出す、紙に書く、写真を撮る。外に出した瞬間に、その1点は上書きされなくなります。ペットの記録というと大げさに聞こえますが、必要なのは3分です。在宅ワークの日なら、昼食のあとに必ず作れます。

  1. 時刻を決める。毎日必ず来る区切りに置く

    13時、昼食のあと。この形が続きやすいのは、仕事の予定に左右されないからです。「手が空いたら」にすると、忙しい日に消えます。在宅ワークの日と出社の日が混ざる人は、両方に共通してある区切り、たとえば夕食前に置いてください。時刻は動かさず、内容も動かさないのが要点です。

  2. 同じ場所へ呼ぶ。床の同じ位置に立たせる

    見る場所が毎日変わると、明るさと背景が変わって、差が場所のせいなのか体のせいなのか分からなくなります。窓から同じ距離の、同じ床の上。その子が来ない日は、無理に呼ばず、寝ている場所で構いません。ただし、どこで見たかも一緒に残しておいてください。

  3. 見るものを3つに決めて、声に出す

    初めて犬を迎えた人でも言葉にできるものを選びます。今日は「目のまわり」「足先」「背中の毛の向き」。あるいは「食べた量」「歩き出しの1歩目」「寝ていた場所」。3つ以上にすると続きません。「目のまわりは昨日と同じ、足先はなめた跡が湿っている」と、そのまま口に出してください。

  4. 写真を1枚、同じ向きで撮る

    全身を真横から1枚。毎日同じ向きにしておくと、あとで並べたときに差が出ます。記憶ではなく、画像のほうを比べる相手にします。特別な変化がない日ほど撮る価値があります。ふつうの日の画像がたまっていることが、初めての人にとっての基準そのものになります。

この3分に、体へ手を入れる時間を少しだけ重ねておくと、毎日の習慣として崩れにくくなります。見るだけだと、忙しい日に飛ばしても何も起きないので、そのうち飛ばしたままになる。手を動かす動作を1つ足しておくと、体のほうが時刻を覚えます。背中から腰までを毛の流れに沿ってなでる、それだけで足ります。触った手ざわりも、目で見た情報と同じように差が出ます。

その手を動かす1つに、mofuwa グルーミングスプレーを使っています。布に含ませて、背中から腰までを毛の流れに沿って一往復させる。3分のうちの30秒ぶんです。この一往復には、手ざわりを毎日同じ条件にそろえてから触る、という役目があります。乾いた日に毛が立っているのは、静電気でそうなっているのか、その子の側で何か動いているのか。初めて犬を迎えた年は、そこが混ざったままメモに残ります。先に毛の流れを落ち着かせておけば、記録に残るのは混ざっていない側だけになります。

ペットは体から脂を出します。昨日なでた背中は、今日にはもう同じではありません。毎日変わるものを毎日同じ形でなでるから、変わり方のほうが読めるようになります。グルーミングスプレーを13時の3分に入れているのは、在宅ワークの日に同じ条件で背中へ手を置くためです。量を決めなくていいので、3分の中に迷う時間が入りません。

Point残りの時間は、見ないでいてください

1日1回と決めたら、そのほかの時間はその子を評価しないでください。足元で寝ているのを見て「今日は寝すぎでは」と考えはじめると、また基準の上書きが始まります。在宅ワークの日にペットと同じ部屋にいることの良さは、細かく観察できることではなく、その子が人の気配のある場所で安心して寝ていられることのほうです。見る仕事は13時の3分に預けて、残りは同居に戻してください。

7日ぶんを並べて読む日|6日の空白が、1日では出てこない変化を出してくれる

毎日3分をためて、週に1回だけ読み返します。日曜の夜でも、月曜の朝でも構いません。7行のメモと7枚の写真を、時刻順に並べる。ここで初めて、離れた2点を比べることになります。1日目と7日目のあいだには6日ぶんの空白があるので、会社に行っていた日の「8時間の空白」と同じ働きをしてくれます。

この読み返しで拾えるのは、ゆっくり進む変化です。毎日少しずつなので、その日その日では絶対に分からない。初めて犬を迎えた人が持っていない「その子のふつう」は、この7行の重なりから作られていきます。3週間ぶんたまると、季節で動くものと、その子だけに起きているものが、少しずつ分かれてきます。

1週間ぶんを並べたときに、拾えるものと拾えないもの
拾えるもの見方
量の変化食べ残しの有無、水を替える回数毎日同じ器で見ていれば、7日で差が出ます
時間の変化寝ている場所と、そこにいる長さ写真の背景に何が写っているかで分かります
手ざわりの変化背中の毛の起き方、足先の湿りメモの言葉が2日以上続けて変わったとき
拾えないものその日だけの一時的な様子1日で消えたものは、7日の並びには出ません
拾えないもの痛みや気持ち悪さそのもの体の内側は、外から見た記録では分かりません

拾えないものがある、というところが大事です。記録は万能ではありません。急に進む変化は、週に1回の読み返しでは間に合いません。次のような様子があるときは、7日たつのを待たずに、その場で動物病院にご相談ください。初めて犬を迎えた人ほど、これは大げさではないかと迷いますが、迷った時点で相談してよい範囲です。

Cautionその日のうちに相談したい様子

ぐったりして起き上がらない、水を飲まない・飲みすぎる、何度も吐く、下痢が続く、呼吸が速い、歩き方が急に変わった、体の同じ場所をなめ続けている、皮膚が赤くじくじくしている、触ると痛がる。いずれかに当てはまるときは、記録をためる前に動物病院へ。在宅ワークの日は、その場で気づける立場にいます。撮りためた写真とメモを持っていくと、いつからの変化かを伝えられます。それが、この3分のいちばんの使いどころです。

1か月続けると、読み返す側の感覚も変わってきます。最初は「ふつうだった」としか書けなかった行に、少しずつ具体が入るようになる。毎日3分の記録は、その子を測る道具であると同時に、初めて犬を迎えた人が見る目を育てる道具でもあります。在宅ワークの日が続く人ほど、この差は大きく出ます。

在宅ワークとペットの組み合わせで手に入るのは、長く一緒にいられる時間そのものではありません。手に入るのは、決めた時刻に必ず立ち会えるという条件のほうです。その条件を、見続けることに使わず、1日1回の他人の目に使う。犬を初めて迎えた最初の1年は、それだけで足ります。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。