C05犬種・猫種別ケア

ハバニーズはなぜ毛玉が起きやすいのか。シルキーコートから考える

公開日 2022年8月16日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの入る部屋で、白く長い毛の小型犬が木の床に寝そべっている
毛と毛のあいだには、風が抜けるすきまがあります。毛玉は、そのすきまが閉じた場所に育ちます。

ハバニーズが生まれた土地は、年じゅう気温が25度を超えるカリブ海の島です。その島で、この犬種は足もとまで届く長い毛を持ったまま暮らしてきました。毛が担っているのは、日ざしを遮る役です。細く、軽く、毛と毛のあいだを風が抜けるように作られています。シルキーコートと呼ばれるこの軽さが、暑い島で長い毛を保てた理由でした。だとすると、ハバニーズの毛玉は、その風の通り道が閉じた場所ということになります。閉じた場所には湿りが残り、残った湿りが毛をさらにまとめます。この記事では、通り道がどこにあり、どの順番で閉じるのかを先に見てから、開ける順番とやり方、手を入れる頻度の決め方を書きます。

日ざしを遮り、風は通す|ハバニーズの被毛と、毛玉が閉じていく順番

ハバニーズの被毛は、シルキーコートと呼ばれます。1本ずつが細く、まっすぐか、ゆるく波を打っていて、持ち上げるとほとんど重さを感じません。寒い土地の犬種が持つような、綿のようにびっしり詰まった下毛の層がありません。あっても薄く、上毛と下毛の境目がはっきりしない子が多い犬種です。手を差し込むと、毛の中に空気が入っているのが分かります。

この作りは、生まれた土地の気候と結びついています。カリブ海の島は一年を通して暑く、湿度も高い。そこで長い毛が役に立つとしたら、熱をためる役ではなく、日ざしを遮る屋根の役です。屋根としては働くけれど、下に熱をこもらせない。そのために、毛は細く軽く、毛と毛のあいだにすきまが残るように作られています。ハバニーズの被毛の中には、空気の層ではなく、空気の通り道があると考えたほうが実際に近くなります。

そう考えると、毛玉の見え方が変わります。ハバニーズの毛玉は、通り道が閉じた場所に育ちます。毛が絡んだ結果として通り道が閉じるのではなく、閉じた場所だから毛玉が育つ、という順番です。風が止まった場所には、体から出た湿気と、散歩から帰ったあとの水分が残ります。残った湿りは毛の表面を寄せ、寄った毛はさらに風を止めます。ここから先は、放っておくと自分で進みます。

では、その通り道はどこで閉じるのか。体じゅうに均等に散らばるわけではありません。もともと風が入りにくい場所が、決まっています。面と面が向かい合っている場所、動きのたびに毛がこすれる場所、そして何かが押さえている場所です。ハバニーズで毛玉が繰り返す場所を並べると、ほぼこの6か所に収まります。

閉じていく順番も、だいたい決まっています。まず動きのたびに毛先どうしが寄って、小さな結び目ができます。ハバニーズの毛は細くて軽いので、この結び目は毛先に留まりません。毛の上を滑るように、根元の側へ下りていきます。下りた結び目は地肌の近くで止まり、そこで風をふさぎます。ふさがれた地肌の側に湿りが残り、湿りが周りの毛を引き寄せて、平たい面になります。ブラシが表面を通っているのに毛玉が育っていくのは、結び目がすでに根元まで下りているからです。

ハバニーズの毛玉が、風の通り道を閉じるまで 細く軽い毛は、毛先でできた結び目を根元まで運びます。根元で結び目が止まると、そこから先へ風が入らなくなります。 毛先 寄る 結び目 下りる 根元 風が止む 動きのたびに毛先どうしが寄る 細く軽い毛は結び目を根元へ運ぶ 閉じた場所で起きること 湿りが残り、乾きにくくなる 残った湿りが毛をまとめる 開けるときに見るところ 根元を支え、毛先から開く 開いたら毛を左右へ分ける
手を入れる場所は、毛先ではなく、結び目が止まった根元の側です。
Noteハバニーズには、換毛期という区切りがはっきりしません

下毛の層が薄い犬種なので、春と秋にまとめて毛が入れ替わる、という分かりやすい区切りがありません。そのぶん抜けた毛は床に落ちにくく、被毛の中に留まります。留まった毛は、通り道の中に置かれた小さな詰め物のように働きます。「換毛期だけ頑張る」という組み立てが、この犬種では成り立ちにくい理由がここにあります。季節ではなく、場所で区切ってください。

閉じた通り道を開ける|ハバニーズの毛玉に手を入れるやり方

ここからが実際の手順です。開けるときの原則は、支える手と、動かす手を分けることです。結び目は根元の側で止まっています。そこへ道具をそのまま入れると、動かした力が地肌まで届きます。ハバニーズの毛は細いので、皮膚が引っぱられていることに気づきにくい。支える手を先に置くのは、そのためです。次の5つを順番どおりに回してください。

  1. 手の甲を毛の中に入れて、風が止まっている場所を探す

    手のひらではなく、手の甲を使います。甲のほうが温度と湿りを感じやすいからです。耳の下、脇、股、尻尾の付け根の順に、毛をかき分けて甲を当ててください。ほかより温かい、あるいはしっとりしている場所があれば、そこが今日の場所です。目で探すと、ハバニーズは表面がそろっているので見つかりません。

  2. 結び目の根元の側を、指2本ではさんで支える

    見つけた場所の毛を、地肌に近いところで指2本ではさみます。はさむのは毛の束であって、皮膚ではありません。ここを支えておくと、このあと毛先の側でどれだけ動かしても、力が地肌まで下りません。支えないまま道具を入れると、ハバニーズの細い毛は根元から抜けます。

  3. 毛先の側から、目の粗いコームの先を1cmだけ入れる

    コームを深く差し込まないでください。入れるのは歯の先1cmまで、動かすのは手前へ数センチだけです。抵抗があったら、そこで止めて引き抜き、少し毛先の側へずらして入れ直します。これを何度かくり返すと、結び目のいちばん外側から少しずつ緩みます。一度で根元まで届かせようとしないことが、この工程のすべてです。

  4. ひとかたまり緩んだら、毛を左右へ分けて風を入れる

    緩めた場所の毛を、指で左右へ開きます。開いた面に手の甲を当てて、さっきより涼しくなっているかを確かめてください。涼しくなっていれば、その場所の通り道は開いています。まだ温かければ、下にもう1枚残っています。ハバニーズの毛玉は層になっていることが多いので、1枚開いたら確かめる、を挟んでください。

  5. 隣へ1cmずらして、同じことをくり返す

    同じ場所を何度も往復せず、開けた場所の隣へ移ります。1か所は5分まで、と決めておくと続きます。脇を今日、耳の下を明日、というくらいで足ります。全身を一日で回そうとすると、支える手がおろそかになり、結局いちばん深い場所が残ります。

場所ごとに、支える手を置く位置が変わります
場所支える手を置くところ動かす向き
耳の下・耳の付け根の裏耳を上へ持ち上げて、付け根を軽く固定耳のふちに沿って、外へ
前脚の付け根(脇)前脚を少し前へ出させて、面を開く体の側から脚の側へ、短く
後ろ脚の内側・股立たせたまま、太ももの外側を支える上から下へ、毛の流れに沿って
首輪・ハーネスの下金具を外し、首の皮膚をたるませない首の前から後ろへ、ゆっくり
胸の前・あごの下あごを軽く上げて、面を水平にするのどから胸へ、下向きに
尻尾の付け根尻尾の中ほどを持って、毛を立てる付け根から先へ、毛先まで
Caution根元で固まった面に、力を加えて引かないでください

支える手を置いても緩まない、コームの先が1cmも入らない。そういう面は、家で開ける段階を過ぎています。力を加えて引くと、ハバニーズの細い毛は毛玉ごと地肌を引っぱります。その場で手を止めて、トリミングサロンか動物病院にご相談ください。無理に開けようとした跡は、あとから見ても分かりません。相談する日まで、その場所は触らずに残しておいてください。

ハバニーズの毛先と根元|開けた通り道を、その日のうちに閉じ直さないコツ

手順どおりに開けても、その日のうちに閉じ直してしまうことがあります。閉じ直しの多くは、開けたあとの数十分に起きています。ハバニーズの毛は軽いので、条件がそろうと、驚くほど早く元の向きへ戻ります。ここでは、戻る側の条件を4つに分けます。どれも道具を買い足す話ではなく、手の動かし方と部屋の条件の話です。

1つ目は静電気です。空気が乾いた日に、ブラシを速く長く動かすと、細い毛は持ち上がったまま帯電します。持ち上がった毛は、離れた場所の毛どうしをくっつけます。開けたはずの通り道が、開けた直後にふさがるのはこの形です。ハバニーズでは、ブラシを速く動かすほど毛が寝ないと考えてください。静電気が出ている日は、動かす距離を短く、速さを半分に落とすほうが結果として早く進みます。

2つ目はうるおいの残りかたです。散歩から帰ったあと、あるいは洗った日の夜。毛先が乾いていても、根元はまだ湿っていることがあります。湿った根元の上に乾いた毛先を寝かせると、その下で風が止まります。ハバニーズは毛が細く量があるので、根元まで乾ききるのに思ったより時間がかかります。乾いたかどうかは毛先ではなく、指を沈めて根元で確かめてください。

3つ目は、毛先だけをとかして終えることです。表面のブラッシングは気持ちよく通ります。通るからこそ、そこで終わりたくなる。けれど結び目はすでに根元の側へ下りているので、毛先を何度往復しても届きません。表面がそろっている時間だけが延びて、内側では毛玉が育ちます。1日1か所でいいので、根元まで指を入れる時間を混ぜてください。

4つ目は、外から押さえているものです。首輪、ハーネス、抱っこのときに腕が当たる場所、寝床の縁。押さえられている場所では、開けた通り道がその日のうちに元へ戻ります。ハバニーズと暮らしていて同じ一か所だけが繰り返すときは、道具や手順より先に、押さえているものを思い出してください。散歩から帰ったら首輪を外して数時間休ませる、というだけで変わる場所があります。

閉じ直す4つの条件と、その日にできる手
閉じ直す条件起きていることその日にできる手
静電気毛が持ち上がり、離れた毛どうしがくっつく動かす距離を短く、速さを半分に
根元の湿り乾いた毛先が、湿った根元にふたをする毛先ではなく根元で乾きを確かめる
毛先だけのブラッシング結び目は根元にあり、届いていない1日1か所、根元まで指を入れる
外から押さえるもの毛が寝たまま戻らず、風が入らない首輪を外す時間を毎日つくる

1つ目の静電気には、梳かすときの道具の側からも手を入れられます。mofuwa グルーミングスプレーは、ブラッシングスプレーとしても使えるように作られています。吹きかけてそのまま梳かせるので、乾いた毛をそのまま動かす回数を減らせます。ハバニーズのように1本が細い犬種では、持ち上がった毛が離れた毛どうしをくっつけるところから閉じ直しが始まるので、寝かせてから梳かせるかどうかが、そのまま今日の結果に響きます。

使うのは、開けたあとです。グルーミングスプレーを布に含ませてから、開いた場所の毛の流れに沿って、毛先の側へ一方向になでます。持ち上がった毛を寝かせて、その日のうちに閉じ直す条件を1つ減らすための一手です。まだ固まっている面に直接吹きかけて、そのまま置かないこと。湿らせたまま放っておくと、根元の湿りという2つ目の条件を自分でつくることになります。

あごの下と胸の前は、伏せた姿勢のときに口のすぐ近くにくる場所です。mofuwa の水は清涼飲料水の規格基準をクリアしているので、この2か所にも量を気にせず使えます。ハバニーズで毛玉が繰り返す6か所のうち2か所が口の届く範囲にあるので、ここを避けずに済むかどうかで、一周の中身が変わります。

Point1本つまんで、根元まで指を送ってみてください

ハバニーズの毛は細いので、1本つまんで根元まで指を送ると、途中に結び目があるかどうかが手で分かります。途中で指が引っかかる場所が、その毛の通り道が閉じている高さです。毛先の側で引っかかるならまだ浅く、根元のすぐ上で引っかかるなら深い。抱き上げたついでに1か所だけ、と決めてしまえば、道具を出さなくても今日の状態が分かります。

ハバニーズの毛玉に手を入れる頻度と、被毛の作りでは説明がつかない変化

最後に頻度の話をします。ハバニーズで決めるのは、1日にかける時間ではなく、1週間で体を一周する割り振りです。毎日全身を回そうとすると、疲れた日にまるごと止まります。止まった日に進むのは、いちばん深い場所です。6か所を曜日に割り当てて、1日5分ずつ回すほうが、結果として通り道が開いている時間が長くなります。

1週間で一周させる割り振りの例
曜日手を入れる場所かける時間
月耳の下と、耳の付け根の裏5分
火前脚の付け根(脇)の左右5分
水胸の前と、あごの下5分
木後ろ脚の内側と、股のあたり5分
金尻尾の付け根と、腰の上5分
土首輪やハーネスが当たっていた場所5分
日手の甲で全身をなでて、温かい場所だけ3分

この頻度は、季節で少し動かします。湿度が高い時期は、脇と股で風が止まる時間が長くなります。梅雨から夏にかけては、その2か所だけ週に2回へ増やしてください。逆に空気が乾く時期は、静電気の側が強くなります。全身の回数を増やすより、1回あたりの動かす距離を短くするほうが合っています。ハバニーズには換毛期の区切りがないので、増やす時期も「季節の名前」ではなく「湿度が高いか、乾いているか」で決めるほうが迷いません。

ここまでは、被毛の作りで説明のつく毛玉の話でした。手順どおりに開けていて、頻度も落としていないのに、同じ場所が数日で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、ブラッシングの回数を増やして待つ対象から外れます。

Caution毛玉の話では足りない、地肌の側のサイン

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、手を入れる頻度を上げる前に動物病院にご相談ください。ハバニーズは表面の毛がそろって見えるぶん、地肌の変化が外から分かりにくい犬種です。開けた場所が戻ってくるまでの日数が3日を切ったら、その日数もあわせて伝えてください。

相談やトリミングの前には、手の甲が温かいと感じた場所、いつから戻るようになったか、その日に使った道具の3つをメモしてください。この3つがあると、通り道が閉じたことで育った毛玉なのか、それ以外の理由があるのかを、その場で切り分けてもらえます。開けきれなかった面は、前の晩に無理をせず、そのまま連れて行ってください。

ハバニーズと暮らすうえで、毛玉が一度もできない状態を目指す必要はありません。日ざしを遮りながら風を通すという作りは、この犬種が暑い島で長い毛を保つために持ってきたものです。動かせるのは、通り道が閉じている時間のほうです。閉じる順番を知って、支える手を置いてから毛先の側で開け、その日のうちに閉じ直す条件を1つ減らす。ハバニーズの毛玉に対して家でできるのは、この3つに尽きます。

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よくある質問

ハバニーズの毛は、短くカットしたほうが毛玉は減りますか?
短くすると通り道の長さが短くなるので、結び目が根元へ下りるまでの距離は減ります。ただし耳の下や脇のように、もともと風が入りにくい場所は長さを変えても残ります。カットは手を入れる時間を短くする手段であって、場所そのものをなくす手段にはなりません。短くしたあとも、6か所を一周する頻度は保ってください。
ブラシは通るのに、内側に毛玉があるのはなぜですか?
ハバニーズの毛は細くて軽いので、毛先でできた結び目が毛の上を滑って根元まで下りていきます。ブラシは毛先の側を通っているので、根元で止まっている結び目には触れません。表面がそろっていることは、通り道が開いている証明になりません。指を根元まで沈めて、引っかかる高さを確かめてください。
毎日ブラッシングする時間が取れません。どこを優先すればいいですか?
後ろ脚の内側と股、次に前脚の付け根です。体温が高く、湿りが最後まで残る場所だからです。時間が3分しかない日は、この2か所に手の甲を当てて、温かければそこだけ開ける。全身を毎日回すより、風が止まりやすい場所を毎日確かめるほうが、ハバニーズには合っています。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。