C09シーン別・暮らし

新幹線・飛行機、保護犬・保護猫を迎えた人はどうしている?

公開日 2022年11月5日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、扉の開いたキャリーの中に落ち着いて入っている淡い色の猫
先に決まっているのは移動の日ではなく、その子がその箱をどう思っているか、のほうです。写真:Francesco Ungaro/Pexels

新幹線に乗る日が3週間後に決まっていても、その子にとってキャリーはまだ「昨日から部屋にある知らない箱」です。ペットと一緒に遠くへ行く話は、ふつう当日の持ち物と乗り換えの段取りから始まります。ところが保護犬・保護猫を迎えたばかりの家では、その手前で一度止まります。キャリーに入ること自体が、まだ練習中だからです。触られることに慣れていない子に、抱き上げて入れる、という手は最初から選べません。この記事では、なぜそこで止まるのかを先に書いて、そのあとに、移動の日から逆算して家でキャリーを触れる場所に変えていく手順を置きます。

移動の日より先に、キャリーの中身が決まっていません|新幹線にペットと乗る前に家でできることの範囲

新幹線でペットと移動する、という話を調べると、出てくるのはたいてい当日のことです。何を持っていくか、いつ水を飲ませるか、どこで休むか。どれも「キャリーに入っている」ことが前提になっています。保護犬・保護猫を迎えて日が浅い家では、この前提のところで一度止まります。入る・入らないが、まだ決まっていないからです。

先に線を引いておきます。乗るときの条件は利用する会社ごとに違うので、必ず事前にその会社の案内で確認してください。この記事で書くのは、家の側でできることだけです。新幹線の日までに、その子とキャリーのあいだで何を進めておけるか。保護犬・保護猫を迎えた家では、ここがいちばん時間のかかる部分になります。

なぜ時間がかかるのかというと、「抱き上げて入れる」という手が最初から使えないからです。触られることに慣れていない子にとって、持ち上げられることも、狭いところへ入れられることも、同じ日に初めて起きる出来事になります。人の側の作業として1分で終わらせられるなら悩みませんが、それをやると、キャリーはその子にとって「連れて行かれる箱」として記憶されます。1回で決まってしまうので、やり直しがききません。

当日の話と、家の話を分けておく
誰が決めることかこの記事で扱うか
乗るときの条件・手続き利用する会社の案内扱いません。事前に確認を
当日の持ち物と時間配分飼い主が組める最後に少しだけ
キャリーに入るかどうかその子が決めるこの記事の中心
キャリーの中の布飼い主が用意できる扱います
練習をどこまで進めるかその子の様子が決める扱います

表の3行目だけ、決める人が違います。ここだけは飼い主が決められません。だから、日付から逆算して「今週までにここまで」と決めるやり方が、保護犬・保護猫ではうまく回りません。逆算するのは進み方ではなく、始める時期のほうです。新幹線の日が決まっているなら、少なくとも3週間前、できれば1か月前からキャリーを部屋に出します。

Note以前どうしていたかは、分からなくて構いません

うちに来る前にどんな暮らしだったかは、たいてい分かりません。分からないまま進めて大丈夫です。推し量ろうとすると、目の前で起きていることより想像のほうを見てしまいます。見るのは、今日この部屋でその子がキャリーの何メートル手前にいるか、という事実だけで足ります。新幹線の日までに必要な情報も、それで全部です。

3週間かけて、箱を通り道に変える4つの手順|新幹線とペットの日から逆算する

ここからが手順です。全体で3週間、1手順あたりだいたい5日から7日。目的は「入れるようになること」ではなく、キャリーが部屋の一部として扱われるようになることです。入るかどうかは、その結果として後からついてきます。保護犬・保護猫を迎えた家では、この順番でしか進みません。

  1. 1週目:分解して、底だけを床に置く

    上半分と扉を外して、底の部分だけを床に置きます。ふたのない、ただの浅い皿のような形です。置く場所は、その子がいつも通る道の脇。部屋の隅ではありません。近づけようとせず、名前も呼ばず、そこにあることだけを1週間続けます。この週にやることは、置く、それだけです。

  2. 2週目:その子のにおいがついた布を1枚のせる

    寝床で使っている布や、その子がよく乗っているタオル地のものを、底の上に1枚のせます。洗いたてのものは使いません。においが自分のものだと、そこは知っている場所になります。乗ったとしても、褒めたり近づいたりしないでください。反応があると、そこは人が来る場所になってしまいます。新幹線の日はまだ2週間先です。急ぐ必要はありません。

  3. 3週目:上半分を戻す。扉はつけない

    上半分をかぶせて、キャリーの形に戻します。扉は外したままにするか、開いた状態で固定します。閉じられる可能性がある、という状態を作らないのが要点です。ここで一度、近づかなくなる子がいます。それが普通です。近づかなくなったら、上半分をまた外して2週目へ戻してください。戻ることは失敗ではありません。

  4. 4週目(移動の1週間前):横に人が座る時間を作る

    キャリーの1メートルほど横に、飼い主が座ります。触らず、見ず、ただ数分そこにいる。キャリーの近くに人がいても何も起きない、という時間を作るのがこの週の目的です。その子が中に入ったら、そのまま何もしません。出てきても何もしません。ここまでで、家でできることの大半は終わっています。

4つ並べてみると、どれも「やらないこと」で構成されているのが分かると思います。置く、のせる、戻す、座る。手を出す手順が1つもありません。保護犬・保護猫のキャリー練習で人の側が持てる手は、実はこれだけです。触ることに慣れていない子に対して、こちらの手数を増やすほど、その子の側の許容は狭くなります。

Point扉を閉める練習は、家では入れなくて構いません

移動の日に扉は閉まります。でも、その前に家で何度も閉めて慣らす、という手順は入れません。閉めた回数だけ、キャリーは閉まる場所として覚えられます。3週間かけて作るのは「入っても何も起きない」という記憶のほうです。当日に1回閉まることと、家で10回閉まることでは、その子にとっての意味が違います。

1回の長さではなく、置いておく時間の総量で見る|保護犬・保護猫のキャリー練習でつまずく頻度の決め方

手順そのものより、つまずきやすいのは頻度です。「1日1回、30分がんばる」という形にすると、たいてい2日で止まります。人の側が見張ることになるからで、見られていると、その子はキャリーに近づきません。新幹線の日までの日数を数えるほど、この形になりやすくなります。

頻度の決め方でつまずくところと、代わりの置き方
やりがちなこと何が起きるか代わりに
1日1回、まとめて長く見る見張られる時間になる置きっぱなしにして、見ない
毎日「今日は入った?」と確認する近づくと人が来る、と覚える週に1度だけ振り返る
おやつで中まで誘導する入り口が課題として記憶される布のにおいだけで足りる
進まない週に手順を戻さないその場所ごと避けるようになる1つ前へ戻す。戻すのは正しい
移動の3日前から急に増やす直前だけ条件が変わる3週間前から始める。増やさない

実際に数えるとしたら、回数ではなくキャリーが部屋に出ている時間の総量です。1日24時間そこにあるなら、それが練習になっています。人が関わっている時間はゼロで構いません。保護犬・保護猫のキャリー練習でいちばん働くのは、人が何もしていない時間のほうです。ペットと新幹線に乗る日が決まっていても、この部分は早められません。

進み方には幅があります。3週間で中で寝るようになる子もいれば、1か月たっても底の上に前脚だけ乗せて終わる子もいます。どちらも、進んでいないわけではありません。前脚が乗るところまで来ているなら、当日にキャリーを開けて待つ形が取れます。抱き上げて入れるしかない状態とは、当日の負担がまるで違います。

それから、猫と犬で見るところが少し変わります。犬は人のほうを見て動くことが多いので、飼い主が離れているかどうかが効きます。猫は場所そのものを評価するので、置いた位置が合っているかが効きます。どちらも「その子がその場所をどう思っているか」を見る、という点では同じです。保護犬・保護猫という括りで一つの正解を決めず、目の前の反応で決めてください。

降りたあとにキャリーを片づけない|新幹線でペットと移動した家の、そのあとの毎日

当日のことを少しだけ書いておきます。中に敷く布は、練習で使っていたものをそのまま入れてください。洗いたてに替えると、その子にとっては別の場所になります。3週間かけて作ったにおいの記憶が、当日の朝に消えてしまいます。移動が終わってから洗えば足ります。

降りたあと、どこでキャリーから出すかを先に決めておきます。宿でも実家でも、静かで、扉が閉まる部屋を1つ。着いた場所でいきなり開けず、部屋に入ってから開ける。開けたあとは、こちらから出そうとしません。出てくるまでキャリーを置いたままにしておけば、その子にとってそこは戻れる場所として残ります。ペットと新幹線で移動した日ほど、戻れる場所があるかどうかが効きます。

最後の項目について補足します。長い移動のあとは、毛が寝ていたり、におうように感じたりします。そこで全身を洗うと、その日1日でその子に起きたことが多すぎます。まずは布を替えて、体は乾いた布で軽く拭くところまで。皮膚の状態を見るのは翌日で構いません。保護犬・保護猫を迎えたばかりの家では、触る回数そのものが条件になるので、手を足さないという選択に価値があります。

背中の中ほどと首の後ろは、犬も猫も自分の口が届きにくい場所です。長い移動のあとに毛が寝たまま残るのも、におうように感じるのも、たいていこの帯のあたりです。猫は着いた先で毛づくろいを再開しますが、届くのは前脚とわき腹から先までで、背中の中ほどは自分では戻せません。ここだけは、人が代わることになります。

mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。その子に直接吹きかけるのではなく、布に含ませてから、背中を毛の流れに沿って1回なでてください。音と風が出ないので、触られることに慣れていない子に、その日はひとつも新しい条件が増えません。含ませた布から口へ回る量を数えなくていいことが、毛づくろいを再開したばかりの子に使える理由です。移動の翌日に被毛が寝たままの場所だけ、そこに手を入れる。毎日全身を扱う必要はありません。

Caution移動のあと、動物病院へ相談したほうがよいとき

水を飲まない、食べない状態が半日以上続く、下痢や嘔吐がある、呼吸が速いままもとに戻らない、同じ場所をなめ続けている、皮膚が赤い、じくじくしている、触ると痛がる、隠れたまま2日以上出てこない。いずれかに当てはまるときは、様子を見ずに動物病院にご相談ください。移動の前に一度受診して、その子の状態を診てもらっておくと、当日に何を見ればよいかも分かります。迎えて日が浅いうちは、そちらの順番のほうが安心です。

そして、キャリーは片づけないでください。移動が終わったからしまう、というのを1回やると、次の機会にまた3週間が要ります。通り道の脇に置いたままにしておけば、それは箱ではなく家具になります。新幹線でペットと移動した経験が次に生きるのは、当日の段取りではなく、この置きっぱなしの毎日のほうです。保護犬・保護猫を迎えた家で積み上がるものは、たいていこういう形をしています。

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よくある質問

キャリーの練習を始める前に、短い距離で乗り物に慣らしたほうがいいですか?
順番としては逆です。キャリーが安心できる場所になっていない段階で乗り物に乗せると、揺れと音がキャリーの記憶に足されます。まず家でキャリーが通り道になるところまで進めて、そのあとに移動の距離を短いところから足していくほうが、戻る場面が少なくて済みます。
練習が思ったほど進まないまま、移動の日が来てしまいました。どうすればいいですか?
進んだところまでで組み直します。前脚が乗る程度でも、キャリーを開けて床に置いて待つ形が取れます。抱き上げるしかないときは、体全体を支えて、頭からではなく後ろ足の側から入れます。その日は移動そのものが目的なので、練習の続きをやろうとしないでください。
キャリーの中で鳴き続けます。声をかけたほうがいいですか?
声をかけると、鳴いたときに人が来るという形になります。落ち着いているタイミングで一度だけ短く声を出して、鳴いているあいだは何もしないほうが、結果として早く静かになります。上から布を1枚かけて視界を狭くすると、それだけで落ち着く子もいます。呼吸が速いままのときは、途中で一度止まって様子を見てください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。