C05犬種・猫種別ケア

ロシアンブルーのプラッシュコート|抜け毛を毎日のケアで防ぐ

公開日 2022年11月29日|文=mofuwa編集部

明るい自然光の入る部屋で、短い毛の灰色の猫がソファの上に落ち着いて座っている
毛が体から立ち上がっているので、指を入れても分け目ができません。層が見えないことが、この被毛の出発点です。

ロシアンブルーの背中に指を入れて、毛を左右に分けようとすると、毛は分かれないまま立ち上がって、すぐ元の面に戻ります。他の猫なら、分け目のところに地肌の細い線が出ます。その線ができません。二層の被毛を持っているはずなのに、層が見えない猫です。ロシアンブルーの抜け毛が扱いにくいのは、この「分けられなさ」から始まります。ブラッシングをした直後は道具に残る毛が少ないのに、数時間たつとソファや床に毛が落ちている。手をかけた量と、出てくる抜け毛の量が合いません。この記事では、上毛と下毛の長さがほとんど変わらないという被毛の作りから、抜け毛が体の外へ出るまでに何が起きているのかを書きます。

毛を分けようとして、指がすべる|ロシアンブルーと暮らして最初に戸惑う経験

ロシアンブルーの被毛は、手のひらを当てると軽く押し返してきます。毛が体の面に沿って寝ているのではなく、体から垂直に近い角度で立ち上がっているからです。指を沈めて左右に開こうとしても、開いた毛はその場でまた立ち、地肌の線が出てきません。長毛の猫でも、上毛の長い猫でも、そこには分け目ができます。ロシアンブルーではできません。

この手ざわりに慣れるまで、多くの飼い主が同じところで戸惑います。ブラッシングをしても、道具に残る抜け毛がやけに少ないのです。短毛だから抜け毛が少ない猫なのだろう、と一度は思います。ところが数時間後、座っていたソファの上や、日の当たる床に、細く柔らかい毛がまとまって落ちている。道具で取れた量と、部屋に落ちる量が合いません。

もうひとつよくあるのが、黒い服にだけ毛がつくという経験です。ふだんは毛が舞っている感じがしないのに、抱き上げたあとの服には細い毛が残っている。これも、抜けた毛が体の上に留まっていて、動いたはずみでまとめて出ているためです。抜け毛そのものが少ないのではなく、外へ出るまでに時間がかかっています。

Note毛の色や見え方の話ではありません

ロシアンブルーというと毛の色の話になりがちですが、抜け毛を考えるときに見るのは色ではありません。見るのは、毛の長さと、毛が立っている角度です。色は抜け毛がどこに留まるかを変えませんが、上毛と下毛の長さの関係は変えます。ここを取り違えると、手入れの方向が「きれいに見せる」ほうへ寄っていき、内側に残った抜け毛はそのままになります。

上毛と下毛の長さがほとんど変わらない|プラッシュコートという背景

ロシアンブルーの被毛は二層です。外側に上毛があり、内側に下毛があります。ここまでは、二層の被毛を持つ他の猫と同じです。違うのは、その2つの長さがほとんど変わらないことです。一般的な二層の被毛では、上毛のほうが長く、下毛は短い。だから上毛をかき分ければ、その下に短い下毛の面が現れます。層が目で見えます。

ロシアンブルーでは、上毛と下毛がほぼ同じ長さで、同じ高さまで伸びています。かき分ける相手の上毛と、その下に見えるはずの下毛が、同じ面にそろって立っています。二層なのに、層として分かれて見えません。手のひらで押すと沈んで、離すと戻る。ぬいぐるみの毛のような、この独特の弾力が、プラッシュコートと呼ばれる被毛の手ざわりです。

この作りは、寒い土地で暮らしてきた猫が持つ被毛として説明されることが多いものです。細い毛が密に、しかも体から立ち上がって生えていると、毛と毛のあいだにたくさんの空気をためられます。ためた空気が体温を逃がしにくくします。毛を寝かせて雨をはじく作りではなく、毛を立てて空気を抱える作りです。二層が同じ長さなのは、その結果として理にかなっています。

二層の被毛のうち、ロシアンブルーで何が違うのか
上毛が長い一般的な二層ロシアンブルーの被毛
上毛と下毛の長さ上毛が長く、下毛は短い2つがほとんど同じ長さ
毛の立ち方体の面に沿って寝ている体から立ち上がっている
指で分けたとき地肌の線が出て、層が見える分かれず、すぐ面に戻る
下毛に届く道具上毛をかき分けてから当てるかき分ける段階が成立しない
換毛期の分かりやすさ抜けた下毛が目に見えて増える手ざわりが変わりにくい
抜けた毛の行き先上毛のあいだを通って外へ落ちる立った毛のあいだに挟まって残る

つまり、他の猫向けに書かれた「上毛をかき分けて、下毛を取り出す」という手順が、ロシアンブルーではそのまま成立しません。かき分けるという最初の一手が空振りするからです。手順の途中で失敗しているのではなく、手順の前提がこの猫には当てはまっていません。ここを知らないまま道具を強く当てると、力の入れ方だけが増えていきます。

Point分け目ができないことは、手入れが足りない証拠ではありません

毛を分けようとしてうまくいかないと、自分のやり方が悪いのだろうかと考えてしまいます。けれどロシアンブルーでは、分け目ができないことのほうが、この被毛が本来の状態にあるという印です。毛が寝てしまって分け目ができるようになったときのほうが、皮脂で毛どうしが寄っているなど、別の条件が動いています。分けられないことを前提に、手の入れ方のほうを組み替えてください。

抜けた毛が層のあいだに残る|ロシアンブルーの抜け毛が外へ出にくい理由

毛は、抜けたその瞬間に体から離れるわけではありません。抜けたあとも、周りの毛に挟まれたまま、しばらく体の上に留まります。この留まっている時間の長さが、猫によって大きく違います。毛が寝ている被毛なら、抜けた毛は毛の流れに沿って毛先のほうへ押し出され、そのまま落ちます。距離が短く、向きも決まっています。

ロシアンブルーでは、毛が立ち上がっているので、抜けた毛は横へ逃げられません。上下の向きしかない密な毛のあいだに、細い毛がまっすぐ挟まった状態になります。立った毛の壁に、抜けた毛が縦に刺さって留まります。しかも上毛と下毛が同じ長さなので、途中に「短い毛の層」という抜け道がありません。抜け毛は、根元から毛先までの距離をそのまま上がってこないと外へ出られません。

そこへ、乾いた季節の静電気が加わります。空気が乾くと毛どうしが反発したり張りついたりして、抜けた毛はいっそう動かなくなります。冬に部屋の毛が増えたように感じるのは、抜ける量が急に増えたからとは限りません。留まる時間が延びて、まとめて出ているという見え方もします。ブラッシングのあとに毛が舞う日と舞わない日があるのも、同じ理由で説明がつきます。

猫はもともと、自分で毛づくろいをして抜けた毛を外へ出します。ざらついた舌には細かい突起があり、これが櫛の役割をします。ただ、舌が動く向きは毛の表面をなでる向きです。立ち上がった密な毛の、根元の側までは届きにくくなります。とくに首の後ろ、肩甲骨のあいだ、腰から尾のつけ根にかけては、体をひねっても舌が回りません。ロシアンブルーで抜け毛が溜まるのは、たいていこの3か所です。

Note毛づくろいが届く場所と、届かない場所を分けて考える

前脚・胸・脇腹・後ろ脚は、猫が自分でよく毛づくろいをする場所です。ここは基本的にその子にまかせて構いません。人が代わるのは、舌も前脚も回らない、首の後ろ・肩甲骨のあいだ・尾のつけ根です。全身に同じ時間をかけるより、この3か所だけを短く回すほうが、留まっている抜け毛は動きます。飲み込む毛の量も、届かない場所を人が引き受けたぶんだけ変わります。

分けるのをやめて、毛を起こす|今日から手を入れられる変化

ここからが毎日のケアの話です。ロシアンブルーの被毛でやることは、層を分けて下毛を取り出すことではありません。やるのは、立っている毛を根元から起こして、毛と毛のあいだに空気の通り道をつくることです。挟まって留まっている抜け毛は、道具で引き抜くのではなく、通り道ができたところから自分で浮いてきます。

  1. 毛の流れに逆らわず、短いストロークで根元から動かす

    長く一気になで下ろすと、道具は表面だけを滑ります。5〜10センチの短い幅で、根元に道具を置いてから毛先へ抜く。これを同じ場所で3〜4回くり返します。強く押しつける必要はありません。道具の重さぶんで足ります。押しつけるほど毛は寝てしまい、あいだの空間がつぶれます。

  2. 首の後ろ・肩甲骨のあいだ・尾のつけ根の順に、1日1か所ずつ

    全身を毎日は要りません。その子の毛づくろいが届かない3か所を、日替わりで1か所ずつ回します。1か所は1〜2分で終わります。3日で一巡するので、同じ場所に抜け毛が長く留まりません。ロシアンブルーは触られること自体を嫌がらない子が多いので、短く区切るほうが続きます。

  3. 道具を当てる前に、手のひらで毛を起こす

    毛先から根元へ向かって、手のひらを軽く滑らせます。立っている毛がさらに起きて、根元の側に空気が入ります。この一手を先に入れると、道具は表面ではなく根元から仕事を始められます。手のひらでやるので、道具を当てる前にその日の毛の状態も分かります。

  4. 乾いた季節は、布を湿らせてから触る

    静電気が起きているときに乾いた道具をいきなり当てると、抜け毛は道具と毛の両方に張りついて、かえって動きません。固く絞った布で毛の表面をひとなでしてから道具を持つと、毛先の張りつきが落ち着いて、根元まで手が入ります。湿らせるのは毛の表面だけで、地肌まで届かせなくて構いません。

  5. 終わったら、手のひらで全体をなでて浮いた毛を集める

    道具で浮かせた抜け毛は、まだ体の上にいます。最後に手のひらでひとなでして回収するところまでが、1回のブラッシングです。ここを省くと、浮かせた毛がそのまま部屋に落ちます。手のひらを軽く湿らせておくと、細い毛がまとまって取れます。

換毛期と、それ以外の時期で変えるのは回数のほう
ふだんの時期換毛期(春と秋)
1日にやる場所3か所のうち1か所3か所のうち2か所
同じ場所での往復3〜4回5〜6回。ただし1回は短く
手のひらで起こす一手道具の前に1回道具の前と、途中にもう1回
仕上げの回収乾いた手のひら軽く湿らせた手のひら
1回にかける時間1〜2分2〜3分。長くしすぎない

皮脂とうるおいの扱いにも触れておきます。根元に留まった抜け毛がまとまって面のようになるのは、皮脂が毛どうしを寄せるからです。だからといって、洗う回数を増やす方向へ寄せないでください。洗う回数が増えると、皮脂と一緒に地肌のうるおいまで減っていきます。ロシアンブルーの被毛は乾くまでに時間がかかるので、洗うたびに濡れている時間も積み上がります。動かすのは洗う回数ではなく、根元に手が届いている回数のほうです。

立った毛の根元まで手を入れたい日に持つのが、mofuwa のグルーミングスプレーです。布に含ませて、首の後ろから背中にかけて毛の流れに沿ってひとなでしてから道具を持つと、静電気で毛先が張りついている日でも根元まで入ります。グルーミングスプレーはブラッシングスプレーでもあるので、道具を当てる前に毛を起こす一手を、そのまま兼ねられます。舐めても差し支えのない基準(清涼飲料水の規格基準)でつくられているので、毛づくろいの回数が多い猫でも、量を気にせず面ごとに使えます。地肌に溜まるほど吹きかけるのではなく、布の側に含ませて面へ移すと、立った毛の根元までそろいます。

Caution被毛の作りでは説明がつかない変化に気づいたら

同じ場所の毛だけが薄くなってきた、地肌が赤い、フケが目立つ、においがある、触ると嫌がる、一か所をなめ続けている、抜け毛の量が季節と関係なく急に増えた。こうした変わり方は、上毛と下毛の長さでは説明がつきません。ブラッシングの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。ロシアンブルーは毛が立っていて地肌が見えにくいぶん、変化に気づくのが遅れがちです。3か所のうちどこで気づいたか、何日前からか、その日に当てた道具は何か。この3つを書き留めてから行くと、話が早くなります。

ロシアンブルーと暮らすうえで、抜け毛が出ること自体はなくなりません。密に立った二層の被毛は、この猫が寒さの中で空気を抱えるために持っている作りだからです。変えられるのは抜ける量ではなく、抜けた毛が立った毛のあいだに留まっている時間のほうです。分けようとするのをやめて、根元を起こして空気を通す。届かない3か所を日替わりで代わる。ロシアンブルーの抜け毛で手を入れられるのは、そこです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。