C09シーン別・暮らし

帰省を楽にする、シニア猫と暮らす人の毎日の習慣

公開日 2022年11月19日|文=mofuwa編集部

明るい窓辺の淡い色の毛布の上で、年を重ねた猫が静かに休んでいる
連れて行っても、置いていっても、崩れるのは同じ一日です。崩れる場所が違うだけです。写真:Yori H/Pexels

帰省の前の晩、廊下にキャリーを出しておいたら、その中で朝まで寝ていました。16歳になる猫です。若いころは箱の中に入れるだけで一騒動でしたが、いまは自分から入って、そのまま動きません。連れて行くほうが楽になったのだと、そのときは思いました。実際には、連れて行っても、置いていっても、その子の一日は同じようには続きませんでした。老猫と暮らす家が帰省で迷うのは、どちらが正しいかが分からないからではありません。どちらを選んでも、その子が毎日くり返している型のどこかが抜けるからです。抜ける場所が違うだけで、抜けること自体は避けられません。この記事では、連れて行った年と置いていった年に何が起きたかを並べ、決める前に分けておくことと、帰宅後の数日で見るところを書きます。ペットの帰省をどちらにすべきかという答えは、ここには書きません。

連れて行った年と、置いていった年|老猫と暮らす家が帰省で重ねた2つの経験

一昨年は連れて行きました。車で2時間半、途中で一度だけ止まって、キャリーの扉を開けて水を出しました。飲みませんでした。実家に着いてからは和室に落ち着かせて、押し入れの前に寝床を置きました。その3日間、その子は押し入れの前から2メートル以上離れませんでした。ごはんは半分ほど残り、トイレは夜中に一度だけ。母が「静かな子ね」と言いましたが、静かなのではなく、動いていなかったのだと思います。

去年は置いていきました。1日2回、決まった時間にペットシッターへ来てもらう形にしました。連絡は毎日届いていて、食べた量も排泄の回数も、記録の上ではふだんとほとんど変わりませんでした。それなのに、帰った日の玄関にはいませんでした。探したら、ふだんは使わないソファの裏で丸くなっていました。寝ていた場所が変わっていたことに気づいたのは、荷物を片づけ終えたあとです。

2つの年で共通していたのは、帰省が終わったあとのほうでした。どちらの年も、いつもの一日に戻るまでに3日ほどかかりました。連れて行った年は、家に帰った翌日から窓辺に戻り、2日目に食器の前で待つようになりました。置いていった年は、玄関に出てくるまでに2日、ひざに乗るまでにさらに1日。順番は違いますが、かかった日数はほとんど同じでした。

老猫と暮らしていると、この数日が気になります。若いころは、旅行から帰った翌朝にはもう元の顔をしていました。いまは、戻り方がゆっくりで、途中の様子が見えます。見えるようになったぶん、こちらが不安になる。連れて行けばよかったのか、置いていけばよかったのか、という問いはここから出てきます。ただ、2年ぶん並べてみると、その問いの立て方のほうがずれていました。

どちらを選んでも「いつも」が崩れる理由|帰省がペットの一日から抜いていくもの

その子の一日は、いくつかの部品でできています。起きる時刻、日の当たる場所、水の器の位置、人が近くにいる時間、静かになる時刻。毎日ほとんど同じ順番で並んでいて、その並びごと一日になっています。老猫になるほど、この並びは細かく、動かしにくくなります。自分で作り直せる量が減っているぶん、いまある並びに寄りかかって暮らしているからです。

帰省は、この並びから部品を抜きます。ただし、抜ける部品が選び方によって違います。連れて行けば、場所と空気とにおいがまるごと入れ替わり、人と時刻は手元に残ります。置いていけば、場所とにおいはそのまま残り、人と時刻のほうが入れ替わります。どちらも、抜けている部品の数はそう変わりません。抜けた場所が違うだけです。

連れて行く場合と置いていく場合で、何が残り、何が入れ替わるか
部品連れて行く置いていく
寝る場所と床の感触入れ替わるそのまま残る
室内のにおいと音入れ替わるそのまま残る
水と食器の位置持ち込めば近づけられるそのまま残る
人が近くにいる時間そのまま残る入れ替わる
世話をする時刻そのまま残る決めておけば近づけられる
移動そのものの負担生まれる生まれない

この表を見ると、どちらか一方だけが負担で、もう一方が負担なしという形にはなっていません。移動の負担がない代わりに人が抜け、人が残る代わりに場所が抜ける。ペットの側から見れば、いつもの一日が途中で切れることに変わりはありません。老猫の場合、切れたところを自分で埋め直す力が、若いころより小さくなっています。

もうひとつ、老猫だけに起きることがあります。自分で毛づくろいをする量が減っていることです。若いころは体じゅうを自分で整えていた子でも、年を重ねると届かない場所が出てきます。背中の真ん中、尾のつけ根、後ろ足の外側。ふだんは人が少し手を貸すことで釣り合っている状態が、帰省の数日で止まると、そこだけ手ざわりが変わって戻ってきます。

Note「うちの子は平気だった」も、正しい観察です

連れて行っても置いていっても、いつもどおりだった、という家もあります。それは強がりでも見落としでもなく、その子の一日が、たまたま抜けた部品に寄りかかっていなかったということです。猫の一日がどの部品で立っているかは、その子ごとに違います。だから、よその家のペットの帰省の話をそのまま当てはめても合いません。合わせる先は、うちの子の毎日のほうです。

崩れ方が違うだけ、と考える|老猫の帰省を、決める前に分けておく考え方

この記事では、ペットを連れて行くほうがいい、置いていくほうがいい、という結論は出しません。どちらにも抜ける部品があり、その子によってどちらが重いかが変わるからです。代わりに、決める前にやっておくと迷いが減ることを書きます。やることはひとつで、その子の一日を「場所に紐づいている部分」と「人に紐づいている部分」に分けておくことです。

分け方は簡単です。帰省の1か月前から、1日1行だけ書きます。何時に、どこで、誰がいるときに、何をしていたか。これを2週間ぶん並べると、その子が場所で動いているのか、人で動いているのかが見えてきます。日が当たる時間に合わせて移動している子は場所の側、人が台所に立つと出てくる子は人の側です。

連れて行く場合と、置いていく場合に残るもの 老猫の一日は、場所に紐づいた部品と、人に紐づいた部品でできています。帰省ではそのどちらかが入れ替わります。どちらを選んでも、抜ける部品の数は大きくは変わりません。 残るものと入れ替わるものが、選び方で入れ替わります 連れて行く 場所と空気が入れ替わる 人と世話の時刻は残る 移動の時間が体にかかる 戻すのは帰宅後から 置いていく 場所とにおいは残る 人と世話の時刻が変わる 移動の負担は生まれない 戻すのは帰宅後すぐから 先に決めるのは、どちらを選ぶかではなく、何を持ち越すかです
どちらが軽いかは、その子が何に寄りかかって一日を作っているかで変わります。

分けたうえで、毎日の側を少しだけ動かしておきます。帰省の日だけを何とかしようとすると、その日にできることが少なすぎて手が足りません。反対に、ふだんの一日に「動かせる部品」をいくつか作っておけば、どちらを選んでも持ち越せます。次の3つは、どれも今日から始められて、帰省が終わったあともそのまま残ります。

  1. 水の器を2か所に増やしておく

    1か所しかないと、その場所が変わったときに飲む機会そのものが消えます。ふだんから2か所にしておくと、片方が変わっても、もう片方の形が記憶に残ります。実家に持って行くのも、家に残しておくのも、同じ器にしてください。老猫は水を飲む量が落ちやすいので、ここは帰省に関係なく置いておく価値があります。

  2. 寝床の布を2枚で回す習慣にする

    同じ布を洗い替えなしで使っていると、洗った日に一日ぶんのにおいが消えます。2枚を交互に使い、片方は洗わずに置いておく形にしてください。連れて行くなら洗っていないほうを持って行き、置いていくなら家に残します。どちらの選び方でも、そのまま使える一手です。

  3. 人が触る時刻を、1日1回だけ固定する

    夜の同じ時刻に、5分だけ体に手を当てる時間を作ります。回数を増やすのではなく、時刻を決めるのが要点です。人が入れ替わる日でも「この時刻に触られる」という並びは伝えられます。置いていく場合は、来てもらうペットシッターにその時刻を伝えるだけで、人に紐づいた部品を1つ残せます。

この3つを続けていると、帰省の準備そのものが短くなります。持って行くもの、残すもの、頼むことが、毎日の中ですでに形になっているからです。帰省を楽にするのは、当日の工夫ではなく、その前の1か月の習慣のほうでした。連れて行くと決めた年も、置いていくと決めた年も、この3つは同じように働きます。

体の手入れも、毎日の側に寄せておきます。この子が自分で届かない場所は、背中の真ん中、尾のつけ根、後ろ足の外側の3か所です。若いころは全身を自分で回していたので、人が足すものはありませんでした。いまは、その3か所だけが人の側に残っています。mofuwaのグルーミングスプレーを布に含ませて、毛の流れに沿ってなでる。1か所10秒ほどで、老猫が姿勢を変える必要もありません。原料は電解水で、清涼飲料水の規格基準をクリアしているため、そのあと自分で毛づくろいを始めても量を気にせずに済みます。届かない場所は、年を追うごとに少しずつ広がります。グルーミングスプレーは帰省のために足す道具ではなく、帰省の前からその3か所に置いておくものです。

帰宅後の3日で見るのは、水と姿勢とにおいの3つ|老猫に出る変化の順番

帰省から戻った日、いちばんやりたくなるのは、抱き上げて全身を確かめることです。ただ、玄関で長く押さえると、その子の側では帰宅がもう一つの出来事になります。初日は、置く場所を元に戻して、水と食器の位置を確かめるところまでで足ります。体の様子は、翌日からの3日で見ていきます。

見るのは3つです。水を飲む量、体の姿勢、においの出方。この順番には理由があります。水はいちばん早く数字に出て、姿勢はその次、においはいちばん遅れて出ます。老猫の場合、変化がゆっくり出るので、初日に何もなかったことは「何も起きていない」の証明にはなりません。

帰宅後の3日、ペットのどこを、どう見るか
見るもの見方気になる変わり方
水を飲む量器の減りを朝と夜に見る帰省前より明らかに減ったまま3日続く
体の姿勢高い場所への上り下りを見るいつも乗る場所に上がらなくなった
丸まり方寝ているときの体の形を見る体を伸ばさず、同じ向きだけで寝ている
においの出方口・耳のうしろ・尾のつけ根帰省前と比べてはっきり変わった
毛の手ざわり背中の真ん中を手のひらで指が引っかかる場所が増えている
室内での居場所日中いる場所を1日3回ふだん使わない場所に居続ける

ここで大事なのは、見つけた変化をすべて帰省のせいにしないことです。老猫の一日は、帰省がなくても少しずつ変わっていきます。数日家を空けたあとは、こちらの目が久しぶりにその子を見るので、前から少しずつ進んでいた変化に、その日はじめて気づくことがあります。帰省の前の1週間の記録があると、この切り分けがその場でできます。1か月前から書き始めた1日1行が、ここで効いてきます。

Cautionこの変わり方は、様子を見ずに相談してください

水を飲む量が急に増えた、または減ったまま戻らない。食べない日が2日続く。嘔吐や下痢がくり返される。呼吸が速い。体を丸めたまま動かない。触ると痛がる。口のにおいが強く変わった。体重が落ちている。これらのどれかに当てはまるときは、帰省のせいかどうかを家で判断せず、動物病院にご相談ください。老猫は変化が出るまでに時間がかかる代わりに、出てからの進み方が早いことがあります。1日1行の記録を持っていくと、帰省の前の1週間と帰宅後の3日を並べて見てもらえます。

3日が過ぎて、水も姿勢も戻ってきたら、記録に1行だけ書き足しておきます。今年はどちらを選んで、どこが何日で戻ったか。連れて行った年と置いていった年で、崩れた場所と戻る順番が違っていたことは、来年の判断材料になります。どちらが正解だったかではなく、うちの子の一日がどの部品で立っているか、が分かるからです。

老猫との帰省は、たぶんこれから毎年、少しずつ条件が変わります。去年と同じ選び方が今年も合うとは限りません。それでも、毎日の側に持ち越せる部品を作っておけば、どちらを選んでも渡せるものが残ります。水の器を2か所に、寝床の布を2枚で、触る時刻をひとつ。帰省を楽にしたのは、この3つと、1日1行の記録でした。ペットの帰省で迷ったときは、決める前に、その子の一日を見るところから戻ってきてください。

Product

mofuwa グルーミングスプレー

mofuwa グルーミングスプレー

300ml / 2,970円(税込)

特許電解水を使った、吹きかけてそのまま梳かせるケアスプレーです。無香料・界面活性剤不使用。ブラッシング前や散歩のあと、毎日きれいにしておきたいときに。

商品ページを見る

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。