C05犬種・猫種別ケア
アビシニアンの短毛|皮膚の乾燥を毎日のケアで防ぐ
朝は南側の窓辺、昼は暖房の吹き出し口の前、夕方は録画機の上、夜は膝の上。アビシニアンの居場所は、1日のうちに何度も変わります。追いかけているのは日ざしでも家族でもなく、たいていは「暖かい面」のほうです。そしてその子が選んだ場所が、そのまま乾燥の条件になっています。毛が短く、体温が外へ逃げやすいぶん、暖かい面を自分の外から借りにいく。借りた先の空気は、部屋の中央に置いた湿度計が指している数字とは違います。この記事では、その子の行き先を1か所ずつたどって、そこで地肌に何が起きているのかを書きます。
窓辺、暖房の前、家電の上|アビシニアンが1日に選ぶ場所と、その背景
朝いちばんに探すと、たいてい南側の窓辺にいます。まだ暖房が動く前で、部屋全体はいちばん冷えている時間です。その中で、日ざしが当たっている床の一角だけが先に温まっています。アビシニアンは、その一角に体を伸ばして寝ています。日が回って影になると、少しずれた場所へ移ります。追いかけているのは日ざしではなく、日ざしが作った温かい面のほうです。
昼になって暖房が入ると、行き先が変わります。吹き出し口の正面、風が直接当たる位置。そこに座り込んで、しばらく動きません。午後、録画機やルーターの上に乗っているのを見つけることもあります。家電の天板は、使っているあいだずっと、排気でぬるく温まっています。夕方から夜にかけては、こたつの中、人の膝、ふとんの中。順番に移っていきます。
並べてみると、行き先には共通点があります。どれもその時間帯に、家の中でいちばん面が温かい場所です。1日の移動をたどると、そのまま家の中の熱源の地図になります。アビシニアンと暮らしている方なら、思い当たる並びだと思います。ここで大事なのは、この移動の理由を、その子の性格の話にしないことです。
移動しているのは、温かい面のほうが移動しているからです。日ざしは時間とともに動きますし、暖房は設定温度に届けば止まります。家電は使い終われば冷めます。面の温かさが消えた場所から、まだ温かい場所へ移る。それだけのことをくり返しています。そして、この行き先の一つひとつが、アビシニアンの乾燥に関わってきます。
- 朝:南側の窓辺:ガラス越しの日ざしで、床の表面だけが先に温まります
- 昼:暖房の吹き出し口の前:温風が直接当たり、面ではなく風で温まります
- 昼過ぎ:録画機やルーターの上:家電の排気で、天板がぬるく温まります
- 夕方:こたつや床暖房:下から一定に温まり、空気がほとんど動きません
- 夜:人の膝、ふとんの中:人の体温が、そのまま温かい面になります
1日に何度も移動するのを性格の話にすると、乾燥の話に戻ってこられなくなります。見るべきなのは移動そのものではなく、移動した先がどんな場所かのほうです。アビシニアンの乾燥を考えるときに手がかりになるのは、その子が今日どこにいたか、という一点です。部屋の広さでも、加湿器の有無でもありません。
毛が短いほど、体温は外へ出ていきます|アビシニアンの乾燥をさかのぼる考え方
なぜ暖かい面を探しに行くのか、被毛の側から見ます。アビシニアンの被毛は、猫の中でもとくに短い部類に入ります。体に貼りつくように寝ていて、1本1本には色の帯が何段も重なっている。下毛は多くありません。手のひらを当てると、毛の感触より先に体の熱が伝わってきます。長毛の猫を撫でたときと、明らかに手ざわりが違います。
被毛が体温を保つとき、仕事をしているのは毛そのものではなく、毛と毛のあいだにたまった空気です。毛が長く、下毛が多いほど、この空気の層は厚くなります。アビシニアンでは、この層が薄い。層が薄いということは、体の熱が外へ出ていく速さが上がるということです。だから、自分の外側にある暖かい面を借りにいきます。ここまでが体温の話です。
乾燥につながるのは、この次の段です。空気の層が薄いということは、部屋の空気の条件が、そのまま地肌の条件になるということでもあります。長い毛と厚い下毛がある猫では、外の空気は毛の面でいったん受け止められます。アビシニアンでは、その受け止める距離が短い。皮膚の表面から水分が出ていく速さは、まわりの温度と風で変わります。地肌が近いほど、その影響が直接届きます。
| 毛が長く下毛の多い猫 | アビシニアンのような短毛 | |
|---|---|---|
| 毛のあいだの空気 | 厚い層になる | 層が薄い |
| 体温の逃げ方 | ゆっくり | 早い |
| 外の空気の届き方 | 毛の面でいったん受ける | 地肌の近くまで届く |
| 暖かい面の必要性 | 低い。動かずに済む | 高い。自分で探しに行く |
| 乾燥に気づく場所 | 毛を分けないと見えない | 撫でた手のひらに出る |
| 条件が変わる速さ | 部屋の変化から遅れて動く | その場所へ移った時点で変わる |
この2つを合わせると、アビシニアンの乾燥がどこで起きているかがはっきりします。その子は、体温が逃げやすいから暖かい場所を探し、探し当てた場所は温度が高いか風が動いているかのどちらかで、どちらも地肌から水分が出ていきやすい条件です。つまり、暖を取る行動と、乾燥の条件が、同じ場所で重なっています。この重なりは、その子の側では避けようがありません。
だから見る順番が変わります。部屋全体の湿度をどう上げるか、という問いより先に、その子が今いる場所の条件はどうなっているかを見ます。加湿器を1台足しても、暖房の風が直接当たる位置に居場所があるなら、その一角の条件はほとんど動きません。逆に、居場所の側を1か所ずらすだけで、条件がまとめて変わることがあります。
部屋の中央、人の目の高さに置いた湿度計と、床から20cmの窓辺と、暖房の風下では、数字が違います。アビシニアンの乾燥を考えるときに見るのは、部屋の平均ではなく、その子が今いる場所の数字のほうです。小さな温湿度計をひとつ、いつもの居場所の高さに置いてみてください。部屋の数字とどれくらい離れているかが分かると、次に動かす場所が決まります。
行き先ごとに、乾いている理由が違います|猫のアビシニアンで場所を1つずつ見る考え方
ここからは、行き先を1か所ずつ見ていきます。「乾燥している」とひとことで言っても、場所ごとに乾いている理由が違います。風で乾いているのか、温度で乾いているのか、こすれて乾いているのか。理由が違えば、変えられるところも違います。アビシニアンの1日の行き先を、この目で並べ直してみてください。
| 行き先 | その場所が乾いている理由 | 地肌や被毛に出やすいこと |
|---|---|---|
| 暖房の吹き出し口の前 | 温風が当たり続け、毛のあいだの空気が入れ替わる | 背中と腰の毛がぱさつき、指を通すと引っかかる |
| 南向きの窓辺 | 日ざしで表面が温まる一方、ガラス際には冷えた空気が下りて動く | 日の当たっていた側だけ、手ざわりが変わる |
| 録画機やルーターの上 | 乾いた排気が上がり、ほこりも一緒に舞う | 腹側と脇に、細かいフケが出る |
| こたつ・床暖房 | 下から一定に温まり、空気がこもって動かない | 腹側と内股が温まりすぎ、地肌に赤みが出る |
| 人の膝、ふとんの中 | 衣類とこすれ、乾いた時期は静電気が起きる | 毛先が寄り、撫でると音がする |
この表を見ると、同じ「アビシニアンの乾燥」でも、対処が1つにならないことが分かります。暖房の前は風の問題なので、風向きを変えれば済みます。窓辺は温度差の問題なので、床から少し上げるだけで変わります。膝の上は摩擦の問題なので、時間帯の問題ではありません。加湿器という1つの答えで全部を引き受けようとすると、どこも半分ずつしか動きません。
記録の取り方も書いておきます。1週間だけ、朝・帰宅後・寝る前の3回、その子がどこにいたかをメモしてください。それだけで、行き先の順番が見えてきます。そのメモに、地肌の様子を書き足します。撫でた手に細かい粉のようなものが付いた日、毛先が寄っていた日。この2つを重ねると、どの行き先のあとに変化が出ているかが分かります。
ここで気をつけたいのが、洗いすぎの側へ寄ってしまうことです。アビシニアンは毛が短いので、汚れが目立ちにくい代わりに、地肌の変化には早く気づけます。気づいたときに「洗ってさっぱりさせよう」と回数を増やすと、皮脂と一緒に、地肌に残っていたうるおいまで持っていくことになります。短毛は乾きが早いので洗いやすく、そのぶん回数が増えやすい猫でもあります。増やす前に、行き先の条件を1つ変えてみてください。
ブラッシングも同じです。乾燥に気づくと回数を増やしたくなりますが、短毛のアビシニアンでは、毎日長い時間とかす必要はありません。それより、その子が暖かい場所から降りてきた直後、体が温まっているタイミングで短く1回。体が温まっていると毛が動きやすく、地肌の様子も見やすくなります。回数を増やすより、いつやるかを決めるほうが効きます。
行き先は取り上げずに、行き先の条件だけを変える|アビシニアンの地肌に出る変化
行き先が乾燥の条件になっているなら、その場所を使えなくすればいい、とはなりません。暖かい面を探すのは、体温が逃げやすいことへのその子なりの答えだからです。取り上げると、次に見つけた場所へ移るだけで、たいていそこはもっと条件が悪い。変えるのは、行き先そのものではなく、行き先の条件のほうです。
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暖房の風の向きを、1段だけずらす
吹き出し口の前が定位置になっているなら、風向きのルーバーを上向きに1段変えます。暖かさは残したまま、直接当たる風だけを外します。アビシニアンにとっては、そこが温かい面であることが大事で、風が当たっていることが大事なのではありません。風が外れると、その子はたいてい同じ場所に居続けます。
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風の当たらない暖かい場所を、1か所つくる
毛布を敷いたベッドを、暖房の風下にならない位置に置きます。壁ぎわ、家具の陰、床から10cmほど上げた台の上。選択肢を1つ増やすだけで、条件の悪い場所にいる時間が減ります。取り上げるのではなく、より良い行き先を足す、という考え方です。
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家電の天板には、布を1枚置く
録画機やルーターの上が定位置なら、その上に薄い布を1枚敷いてください。天板の熱と、排気の乾いた風を、直接受けなくなります。家電のほうの通気口をふさがない位置に置くことだけ気をつけてください。乗ること自体は止めなくて構いません。
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こたつは、出入り口を1か所開けておく
こたつの中は温度が高く、空気が動きません。腹側と内股が温まり続けて、地肌に赤みが出ることがあります。布団の一辺を少し開けておくと、こもりが減ります。長く入りっぱなしのときは、一度出てきたところで腹側を見てください。
季節の変化についても書いておきます。アビシニアンの乾燥が動くのは、暦ではなく暖房のスイッチです。秋に暖房を入れはじめた週と、春に止めた週。この2つの週で、その子の行き先が一気に入れ替わります。行き先が変われば、地肌にかかる条件も変わります。暦の上で秋になったから乾燥する、のではなく、その週に居場所が変わったから条件が変わる、という順番です。
毛の上に置くものも、同じ考え方で選べます。空気の層が薄いというのは、毛の上に置いたものが、そのまま地肌の条件になるということでもあります。アビシニアンでは、そこまでの距離が短い。mofuwa スキンケアミストは電解水100%で、精製水と浸透のしやすさを比べた自社の検証では、35倍という数字が出ています。毛の上にとどまるのではなく、地肌の側まで下りていくことを前提にした作りだ、ということです。手のひらに一度とって、体温でぬるくしてから、毛の流れに沿って背中と脇へ送ってください。冷たいまま直接かけると、暖かい面を探しに行ったばかりのこの猫は、その場から降ります。使うのは、その子が暖かい場所から降りてきた直後、まだ体が温まっているうちです。回数を増やすより、この1つのタイミングを決めておくほうが続きます。
地肌が赤い、じくじくしている、フケが急に増えた、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、触ると嫌がる、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、部屋の条件を変える前に、動物病院にご相談ください。居場所を変えても2週間で戻らない変化も同じです。アビシニアンは毛が短いぶん、地肌の変化が早く目に入ります。早く気づけるのは、この猫と暮らすうえでの利点です。
アビシニアンと暮らしていて、暖かい場所を探す行動そのものは変わりません。毛が短く、体温が外へ出ていきやすい体の作りから来ているからです。動かせるのは、その子がたどり着いた場所で、地肌にどんな条件がかかっているかのほうです。今日どこにいたかをメモして、そこが風なのか温度なのかこすれなのかを分ける。分かった条件を1つだけ変えて、次の週にもう一度なでてみる。アビシニアンの乾燥に対して、家でできるのはその積み重ねです。
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