C12Q&A・豆知識
多頭飼いでケア時間は何倍になるか
犬2頭と猫1頭。帰宅後のケアにかかる時間を、3日ぶんストップウォッチで測ってみました。3頭そろえて17分でした。その前に1頭だけで暮らしていたころは、同じ手順で9分かかっていました。頭数は3倍になっていますが、かかった時間は2倍に届いていません。多頭飼いで増える時間は、頭数に比例しません。比べているのは、同じ家の、同じ手順、同じ道具での前後です。よその家の平均ではありません。増えないぶんがどこに隠れているかというと、準備と片づけです。この2つは、1頭でも3頭でも同じだけかかります。この記事では、多頭飼いの毎日のケアを4つの項目に割って、頭数で増えるものと増えないものを並べます。そのうえで、まとめて1周するのと1頭ずつ通すのと、どちらが短く終わるのかまで書きます。
3頭で17分、1頭で9分|多頭飼いのケアの時間を家で測った結果
先に、この記事で使う数字の条件を書いておきます。これは、うちの家で、平日の帰宅後に、同じ手順で測った時間です。手順は、ブラシを一往復、足の裏を拭く、寝床のまわりの毛を取る。これだけです。3日ぶん測って、いちばん近い分にまるめました。よその家の平均でも、どこかの調査の数字でもありません。
条件をここまで細かく書くのは、多頭飼いの時間というのは、家ごとに中身が違いすぎて、平均という数字が役に立たないからです。頭数が同じでも、犬か猫か、室内のどこまで動くか、洗面所が近いか遠いか、道具をどこにしまっているかで簡単に前後します。だから、この記事で持ち帰ってほしいのは分数そのものではなく、どの項目が頭数で増えて、どの項目が増えないのかという構造のほうです。
| 項目 | この記事での条件 |
|---|---|
| 測った場所 | 帰宅後の玄関と、室内のリビング1部屋 |
| 手順 | ブラシ一往復、足の裏を拭く、寝床のまわりの毛を取る |
| 頭数 | 犬2頭と猫1頭。1頭のころの記録と比べています |
| 測った回数 | 平日3日ぶん。いちばん近い分にまるめました |
| 含めていないもの | 洗う日の工程、爪切り、耳のケア |
| 含めているもの | 道具を出す時間、しまう時間、順番を待たせる時間 |
この6行目が、あとで効いてきます。道具を出す時間としまう時間を含めるかどうかで、多頭飼いの時間の見え方はまるごと変わります。手を動かしている時間だけを数えると、たしかに頭数ぶん増えます。けれど、実際に夜の予定を圧迫しているのは、始めるまでと、終わってからの時間のほうです。
9分と17分は、うちの条件でしか出ない数字です。持ち帰ってほしいのは、3倍にならなかったという構造のほうです。自分の家の数字がほしいときは、スマートフォンのストップウォッチを押してから道具を出し、しまい終わったところで止める。これを3日やれば、平均を探すより早く自分の数字が出ます。多頭飼いの時間は、その家の間取りと道具の置き場所で決まる部分が大きいので、他所の数字を借りてもあまり当たりません。
頭数で増える時間と、増えない時間|多頭飼いのケアを分ける2つの条件
毎日のケアにかかる時間を、4つの項目に割ります。準備、触る、片づけ、見分け。この4つを頭数で増えるかどうかで分けると、きれいに2つずつに分かれます。多頭飼いの時間を考えるときの軸は、この2つの条件です。
- 準備(増えない):ブラシと拭くものを出し、床に座る場所をつくる。1頭でも3頭でも1回きりです
- 片づけ(増えない):道具をしまい、取れた毛をまとめ、手を洗う。これも最後に1回だけです
- 触る(増える):体に手を入れている時間。ここは頭数ぶんそのまま積み上がります
- 見分け(増える):どの子を先にするか、今日はどの子に何かあったか。頭数ぶん増えます
うちの数字で書くと、準備が2分、片づけが3分。この5分は、頭数が何頭になっても5分のままです。触るのが1頭あたり3分、見分けが1頭あたり1分。だから1頭なら5+4で9分、3頭なら5+12で17分になります。頭数が3倍でも、共通の5分は1回しか払わないので、全体は2倍に届きません。
この構造は、頭数が増えるほど効いてきます。共通の5分は、頭数で割られていくからです。1頭なら1頭が5分ぶんを丸ごと負担しますが、3頭なら1頭あたり1分ちょっとになります。多頭飼いの毎日で「思ったより増えなかった」と感じるとしたら、たいていこの割り算のほうが働いています。
逆に言うと、多頭飼いで時間を短くしたいときに、触る時間を削っても効きが薄いということでもあります。1頭あたり3分を2分にしても、3頭で3分しか縮みません。それより、準備と片づけの5分を4分にするほうが、頭数に関係なく毎日効きます。道具を1か所にまとめる、床に座らずに済む高さに置く、拭いたものを入れる袋を出しっぱなしにしておく。手を入れる前と後ろのほうに、削れるところが残っています。
1頭・2頭・3頭を同じ4項目で並べる|多頭飼いの時間の比較
4つの項目を、頭数ごとに並べます。比較したいのは合計の分数ではなく、どの列が動いて、どの列が動かないかのほうです。
| 項目 | 1頭 | 2頭 | 3頭 | 頭数で増えるか |
|---|---|---|---|---|
| 準備(道具を出す・場所をつくる) | 2分 | 2分 | 2分 | 増えない |
| 触る(体に手を入れる) | 3分 | 6分 | 9分 | 増える |
| 見分け(順番と、今日の様子) | 1分 | 2分 | 3分 | 増える |
| 片づけ(しまう・毛をまとめる) | 3分 | 3分 | 3分 | 増えない |
| 合計 | 9分 | 13分 | 17分 | 頭数ほどには増えない |
| 1頭あたりに直すと | 9分 | 6分半 | 約6分 | 頭数が増えるほど下がる |
図で見ると、いちばん下の帯だけが飛び出しています。頭数を3倍にして、時間も3倍だと見積もると、10分ぶん多く見積もることになります。この10分は、準備と片づけを3回払ったつもりで数えた金額です。実際には1回しか払っていません。多頭飼いを迎える前に「時間が3倍になる」と思って身構えると、この10分ぶんだけ怖く見えます。
犬と猫が混ざっている家では、もう少し形が変わります。猫は触る時間が短くて、見分けの時間が長くなりやすい。逃げられる場所が多いので、どこにいるかを探すところから始まるからです。犬の多頭飼いだと逆で、触る時間のほうが長く、見分けは短くなります。それでも、準備と片づけが頭数で増えないという構造は変わりません。
表のいちばん下の行を見てください。1頭あたりにかかる時間は、頭数が増えるほど短くなります。9分、6分半、約6分。これは効率がよくなったという話ではなく、共通の5分を分け合っているだけです。ただ、毎日のこととして体感に出るのはこの行のほうです。多頭飼いの家で「思ったほど大変ではない」と言われることがあるのは、この割り算が毎日効いているからだと思います。
まとめて1周するか、1頭ずつ通すか|多頭飼いの帰宅後はどっちが短いか
ここまでの構造が分かると、次の問いが立ちます。多頭飼いのケアは、まとめて1周するのと、1頭ずつ通すのと、どっちが短く終わるのか。まとめて1周するというのは、全頭のブラシを先に済ませ、次に全頭の足の裏、という進め方です。1頭ずつ通すというのは、1頭目のブラシと足の裏を終わらせてから、2頭目に移る進め方です。
| まとめて1周する | 1頭ずつ通す | |
|---|---|---|
| 準備・片づけ | 1回で済みます | 1回で済みます(道具を置いたままなら) |
| 道具の持ち替え | 少ない。同じ道具を続けて使えます | 多い。1頭ごとに2回持ち替えます |
| 待つ子の数 | 多い。全頭が最後まで待ちます | 少ない。終わった子から解放されます |
| 途中で崩れたとき | どこまでやったか分からなくなります | その子で区切れているので分かります |
| 見分けのしやすさ | 同じ場所を続けて見るので、差に気づきやすい | 1頭の中で完結するので、差には気づきにくい |
| 向いている条件 | 頭数が多い。落ち着いて待てる子がそろっている | 待てない子がいる。途中で中断が入りやすい |
時間だけを見ると、まとめて1周するほうが短く終わります。道具の持ち替えが減るぶんです。うちで測ったときは、3頭で1分から2分ほど違いました。ただ、これは全頭が最後まで待てた日の数字です。待てない子が1頭でもいると、この差はすぐ逆転します。途中で1頭が動きだすと、その子を追いかけて、戻ってきて、どこまでやったかを思い出すところからやり直しになるからです。
だから、どっちを選ぶかは時間では決まりません。決まるのは、待たせられる子がそろっているかどうかという条件のほうです。多頭飼いを始めたばかりの時期や、新しい子を迎えた直後は、1頭ずつ通すほうが結果的に短く終わります。全員が待てるようになってきたら、まとめて1周に切り替える。順番はこちらです。逆から始めると、毎晩やり直しが入ります。
- 1頭ずつ通すのが向く時期:迎えて間もない子がいる、待つあいだに吠える子がいる、室内で場所が固定できていない
- まとめて1周が向く時期:全頭が同じ部屋で落ち着いていられる、順番が毎回同じで決まっている
- どちらでも変わらないこと:準備と片づけの時間。ここは進め方を変えても縮みません
- 切り替えるときの合図:待たせた子が、呼ぶ前に自分から順番の場所に来るようになったら
犬だけの多頭飼いなら、まとめて1周のほうへ早く移れます。犬と猫が同居している家では、猫のぶんだけ切り離して、犬はまとめて1周、猫は1頭ずつ通す、という混ぜ方も現実的です。全部を同じ進め方でそろえる必要はありません。
増えたのは時間より順番を決める手間|多頭飼いで時期ごとに測り直す習慣
3日ぶん測ってみて、いちばん意外だったのはここでした。多頭飼いになって増えたのは、時間よりも「順番を決める手間」のほうです。17分という数字は、順番が決まっている日の数字です。順番が決まっていない日は、同じ17分の中に、迷っている時間が混ざります。そして迷っている時間は、ストップウォッチには映っても、記憶には残りません。
順番を決めるというのは、優劣をつけるという話ではありません。毎日、同じ順番でやると決めてしまう、というだけの話です。うちでは、玄関から遠い場所にいる子から始める、と決めました。理由は何でもよくて、決まっていることのほうが大事です。決めた日から、見分けの時間が3分から2分に落ちました。頭数は変わっていません。
そのうえで、この時間は時期によって動きます。頭数が変わらなくても、同じ数字がずっと続くわけではありません。だから、季節の変わり目や、暮らしが変わったタイミングで測り直すのを習慣にしています。3日ぶん測るだけなので、負担にはなりません。
| 時期 | どこが動くか | 測り直すとよいタイミング |
|---|---|---|
| 毛が抜けかわる時期 | 触る時間が延びます | 抜け毛が増えたと感じた週 |
| 雨が続く時期 | 足の裏に手をかける時間が延びます | 梅雨に入ったころ |
| 新しい子を迎えた直後 | 見分けと順番の時間が跳ね上がります | 迎えて1週間目と1か月目 |
| 室内の模様替えのあと | 準備の時間が変わります | 道具の置き場所を動かしたとき |
| 高齢の子が出てきた時期 | 触る時間が延び、待たせにくくなります | 半年に1回 |
| においが気になりだした時期 | 拭く場所が増えて、触る時間が延びます | 気になったその週のうちに |
最後の行に、においを入れておきました。多頭飼いの家では、においの出どころが1頭に絞りにくくなります。においが気になりだしたときにやることは、全頭のケアを増やすことではなく、どの子のどこから出ているのかを1回だけ確かめることです。ここでも増えているのは、手を動かす時間ではなく、見分けるための手間のほうでした。
洗う日は、この17分の外にあります。測る対象からは外しましたが、多頭飼いでいちばん頭数ぶんに積み上がるのは、実はこの工程のほうです。泡立てて、被毛をかき分けて擦って、すすぐ。3つとも「触る」の列に入るので、準備や片づけのように分け合えません。頭数がそのまま倍率になります。mofuwa 入浴シャンプーは、お湯に溶かして、湯そのものを洗浄液にするタイプです。浸かるだけで全身に行きわたるので、泡立てる工程と、かき分けて擦る工程がなくなります。増える列そのものを短くできる、数少ない選び直しです。ただし、乾かす時間は変わりません。そこは頭数ぶん残るので、洗う日を組むときは、乾かす側から先に数えてください。
多頭飼いで測っていると、特定の1頭だけ、触る時間がだんだん延びていくことがあります。毛のもつれが増えた、同じ場所を触ると嫌がる、拭いても半日で元に戻る、掻いている回数が増えた、においが1頭だけ強い。こうした変化は、順番や進め方を工夫して吸収するものではありません。動物病院にご相談ください。多頭飼いは比べられる相手が家の中にいるという点で有利です。ほかの子と何が違うかを言えるようにして行くと、そこがそのまま手がかりになります。
最後にもう一度、この記事の一行に戻します。頭数が3倍になっても、多頭飼いのケアの時間は3倍にはなりませんでした。うちでは9分が17分、2倍弱です。準備と片づけを1回しか払わないからです。そして、実際に増えたのは分数よりも、誰から始めるかを決める手間のほうでした。順番を先に決めてしまえば、その手間は毎日ぶん消えます。多頭飼いを迎える前に時間の心配をしているなら、見積もるべきなのは頭数ではなく、この4つの項目のうちどれが増えるか、です。
Product
mofuwa 入浴シャンプー
400ml / 3,410円(税込)
浸かるだけで洗える入浴タイプ。「泡立て・ごしごし・すすぎ」の3手間を省けるので、高齢のペット・大型犬・多頭飼いのご家庭に向いています。
商品ページを見るよくある質問
- 多頭飼いになると、毎日のケアの時間は頭数ぶん増えますか
- 頭数ぶんそのままは増えません。うちで測ったときは、1頭で9分、3頭で17分でした。準備と片づけは頭数に関係なく1回で済むので、その5分ぶんが共通になります。増えるのは、体に手を入れている時間と、どの子を先にするかを決める見分けの時間の2つです。ただしこれはうちの家の条件で出た数字なので、自分の家の数字がほしいときは、道具を出すところからしまい終わるまでをストップウォッチで3日ぶん測ってみてください。
- まとめて1周するのと、1頭ずつ通すのは、どっちが短く終わりますか
- 全頭が落ち着いて待てる日なら、まとめて1周するほうが短く終わります。道具の持ち替えが減るためで、うちの3頭では1分から2分の差でした。ただし待てない子が1頭でもいると、途中で中断が入って差はすぐ逆転します。迎えて間もない子がいる時期は、1頭ずつ通すほうが結果的に短くなります。待たせた子が自分から順番の場所に来るようになったら、まとめて1周に切り替える。その順番で移ると失敗しません。
- 多頭飼いで、毎日の時間を短くするにはどこから手をつければいいですか
- 触る時間ではなく、準備と片づけから手をつけてください。触る時間を1頭あたり1分削っても、3頭で3分しか縮みません。準備と片づけの5分は頭数に関係なく毎日かかるので、ここを1分縮めるほうが確実です。道具を1か所にまとめる、床に座らずに済む高さに置く、取れた毛を入れる袋を出しっぱなしにしておく。そのうえで、始める順番を毎日同じに決めてしまうと、迷っている時間がなくなります。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
