C05犬種・猫種別ケア

ターキッシュバンの長毛|毛玉を毎日のケアで防ぐ

公開日 2023年3月21日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、白く長い毛の猫が淡い色の布の上に落ち着いて寝そべっている
毛玉のできる場所は、その子が水に触った場所と重なります。場所は、遊んだ記録として読めます。写真:Anete Lusina/Pexels

ターキッシュバンと暮らしていると、朝いちばんに水皿のまわりの床が濡れていることがあります。飲みこぼしにしては範囲が広く、水皿のふちには前足の跡が残っている。蛇口をひねれば顔を寄せてきて、落ちてくる水を前足でつつく。洗面台に湯をためようものなら、ふちに乗って中をのぞきこむ。この子たちの毛玉は、その前足の飾り毛と、胸元と、あごの下にできます。水に触った場所と、毛玉のできる場所が、驚くほどきれいに重なるのです。ターキッシュバンの毛玉は、手入れが足りなかった印ではありません。その子がどこで、どんなふうに水と遊んだかの記録として残ります。この記事では、なぜ水に触りにいくのか、なぜ濡れた場所に毛玉が残るのか、そして遊びを取り上げずに家で変えられる条件はどこかを、順番に書いていきます。

水皿のふちに、前足の跡が残っている|猫のターキッシュバンと暮らして最初に気づく経験

水を避ける猫のほうが多いなかで、ターキッシュバンは水のあるところへ自分から近づいていく子が多いと言われます。水皿に前足を入れてかき回す、蛇口から落ちる水を前足で叩く、風呂のふたの上に座って湯の音を聞いている。止めても、しばらくするとまた戻ってきます。困った行動というより、その子にとっては遊びの一つとして続いているように見えます。

この遊びのあと、体のどこが濡れているかを見てみてください。全身ではありません。濡れているのは、前足の先から手首の上まで、胸元、そしてあごの下の3か所に集まります。前足で水をかき、そのまま前足をなめ、顔を洗う。落ちたしずくは胸元をつたい、水皿に顔を近づければあごの下が触れる。濡れる順番が決まっているので、濡れる場所も決まります。

そして数週間たったころ、飼い主が指を入れて気づくのが、まさにその3か所の毛玉です。背中や腰はするりと指が通るのに、前足の飾り毛の根元だけが引っかかる。胸元の毛を分けようとすると、束のまま動く。あごの下に指を入れると、小さな塊が並んでいる。体の面積でいえばごく一部で、そこだけがまとまって重くなっています。

毛玉の場所と、水に触った場所。この2つを並べたとき、多くの飼い主が最初に考えるのは「水で遊ばせるのをやめさせよう」ということだと思います。ただ、この記事はその方向へは進みません。水に触りにいくのはその子の性質に近いところから来ていて、取り上げても別の場所を探すだけになることが多いからです。かわりに、濡れたあとの数分をどう扱うかという話をします。

Note毛玉の場所は、責める材料ではありません

前足と胸元とあごの下に毛玉ができているのを見つけると、手入れが足りなかったように感じるかもしれません。ただ、この3か所は、その子の舌がいちばん届きにくい場所でもあります。猫は自分でていねいに毛づくろいをしますが、あごの下と胸の奥には舌が入りません。前足の飾り毛はなめられても、根元までは届きません。毛玉のできる場所は、その子の毛づくろいが届かない場所と重なっています。そこだけを人が代わる、という考え方になります。

ヴァン湖のほとりで育った被毛|ターキッシュバンが水を嫌がらない背景

この猫の名前は、トルコの東にあるヴァン湖のあたりから来ています。標高のある高地で、夏は乾いて暑く、冬は雪が積もる。気温の幅が大きい土地で、湖のそばに人の暮らしがあり、その周りに猫がいた。そういう場所で長く続いてきた猫だと考えられています。水のあるところが生活の中心にあった土地だ、という点だけでも、この猫の被毛を読むときの手がかりになります。

ターキッシュバンの毛は、手に取るとカシミアのような、乾いてやわらかい手ざわりをしています。下毛がほとんどない中〜長毛で、毛の表面がなめらかなので、水がすぐには根元まで入りません。前足を水に入れても、しばらくは表面で水がまとまって、振ればかなりの量が落ちます。濡れても重くならず、乾くのも早い。水に触ったときに不快になりにくい被毛だと言えます。

冬になると首まわりと尾の毛が増え、暖かくなるとその分が薄くなる、という変わり方をする子が多いのも特徴です。換毛期には、季節をまたいで毛の量そのものが入れ替わります。夏に短くなった被毛を見て、別の猫のように感じたという話はよく聞きます。毛玉の出方も、この季節の変化にそのまま乗ります。毛が増える時期は、濡れたあとに寄る毛の量も増えるからです。

被毛の作りと、水に触ったときに起きること
毛の作り水に触ったときに起きること
下毛がほとんどない根元まで水が入りにくく、乾くのが早い
表面がなめらか水が毛の上でまとまり、振れば落ちる
中〜長毛で、飾り毛がある飾り毛の先だけが水を含んで束になる
冬に増え、暖かくなると薄くなる同じ遊び方でも、季節で残る毛玉の量が変わる
うるおいが表面にとどまる何度も濡れると、表面の油分が落ちて乾きすぎる

水に触っても重くならず、すぐ乾く。この条件がそろっていると、水は「避けるもの」になりません。ターキッシュバンが水に近づくのは、水に触ることの負担が小さい被毛を持っているからだ、という読み方ができます。もちろん、すべての子が水を好むわけではありません。水皿に触らない子もいます。ただ、触りにいく子がいたときに、その行動は被毛の作りと矛盾していない、ということです。

Point泳がせる必要はまったくありません

水を嫌がらないという話は、しばしば「泳ぐ猫」として紹介されます。ただ、家庭で泳がせる理由はどこにもありません。水に触ることを負担に感じにくいという性質と、水に入れて構わないということは別の話です。この記事で扱っているのも、その子が自分で水皿や蛇口に触りにいく範囲の話だけです。人の側から水に入れると、乾くまでの時間が一気に長くなり、毛玉のできる範囲も体全体に広がります。

濡れて乾くたびに、毛は一度ずつ寄る|ターキッシュバンの毛玉ができる理由

水そのものが毛玉を作るわけではありません。作るのは、濡れたあとに乾いていく時間のほうです。濡れた毛は何本かずつ束になり、その束の形のまま乾きます。1回なら、束はブラシを入れれば戻ります。問題は、同じ場所で同じことが2回、3回とくり返される場合です。戻りきらないうちに次の水が来ると、寄った形が少しずつ残っていきます。

残るのは、根元の側です。毛先は動きが大きいので、乾いたあとに自然に散ります。根元は毛どうしが密で、しかも乾くのがいちばん遅い場所です。ここで束のまま固定されると、毛の向きがそろわなくなります。向きのそろっていない毛が3方向から集まると、そこが小さな塊の中心になります。前足の飾り毛の根元、胸元の奥、あごの下。どれも根元まで空気が入りにくい場所です。

濡れてから毛玉になるまでの経路 水に触れた毛が束になり、乾く途中で向きがそろわないまま固定され、その上を舌が通ることで根元が締まっていく流れです。 濡れる 前足・胸 乾く 束のまま 締まる 根元で 毛が束になる 舌が一方向に寄せる 1回なら戻ります 乾いたあとに指を通せば、 束はほどけて散ります くり返されると残ります 戻りきらないうちに次が来ると、 寄った形が根元に残ります
経路の入口は水ですが、手を入れられるのは真ん中——乾いていく数分のほうです。

ここに、猫自身の毛づくろいが加わります。濡れた場所は気になるので、その子はまずそこをなめます。舌のざらつきは毛を一方向へ寄せる作りをしているので、なめるほどに束はまとまっていきます。乾いた毛をなめるぶんには毛の流れが整いますが、湿って束になっている毛をなめると、束のまま固められることになります。前足の飾り毛が、なめられているのに毛玉になるのは、この順番のせいです。

そして、いちばんできやすいあごの下と胸の奥には、その舌が届きません。猫は自分の顔と首の前側を、直接なめることができません。前足をなめて、その前足で顔をぬぐうという間接的なやり方になります。濡れた前足で濡れたあごをぬぐっても、毛の向きはそろいません。ここが、ターキッシュバンで「その子の毛づくろいが届かない場所」として最初に挙がるところです。

場所ごとに、何が起きているか
場所水はどう来るかその子の舌は届くか
前足の飾り毛直接ひたる。根元まで含む毛先は届くが、根元までは入らない
手首の上水をかいたときに跳ねる届く。ただし束のまま固まりやすい
胸元前足から落ちたしずくがつたう届かない。前足でぬぐうだけ
あごの下水面とふちの両方が触れる届かない。自分では終わらない場所
脇の下濡れた前足をたたんだときに触れる姿勢を変えないと届かない

この仕組みが分かると、毛玉の位置から遊び方まで読めるようになります。あごの下ばかりに出るなら、水皿に顔を突っこんでいる。前足の根元なら、かき回している。胸元まで及んでいるなら、立ち上がって高いところの水に触っている。その子が家のどこで、どんな姿勢で水と遊んでいるかが、毛玉の並び方に残っているということです。責める材料ではなく、読む材料として見てください。

遊びを取り上げずに替えられるもの|ターキッシュバンの毛玉との付き合い方の考え方

変えられるのは、水そのものではありません。濡れてから乾くまでの数分と、その数分にその子がどこにいるかです。ここを整えると、同じだけ遊んでいても根元に残る束の数が減ります。4つ挙げますが、全部を一度にやる必要はありません。上から順に、その家で無理のないものだけを選んでください。

  1. 水皿の下と周りに、水を吸って乾く敷きものを置く

    濡れた前足で歩いた先が、そのまま毛玉の場所を増やします。水皿のまわり半歩ぶんに、吸って乾く敷きものを置くだけで、前足の水は歩くうちにかなり落ちます。毛足の長い起毛のものは繊維が毛に入るので、目の詰まった平らなものを選んでください。濡れたら替える、を1日1回だけ決めておきます。

  2. 水皿の深さとふちの高さを、あごが触れないものに替える

    あごの下の毛玉は、ふちに触れる回数で決まります。口先だけが水面に届き、あごがふちに乗らない高さと深さを探してください。浅く広い器を少し高い台に置くと、顔の角度が変わってあごが下がりません。器を替えるだけで、あごの下の塊が減ることがあります。前足を入れる遊びは続けていて構いません。

  3. 遊びが終わって2分以内に、乾いた布で毛の向きだけ戻す

    拭いて乾かすのではなく、束になった毛の向きをそろえるために、毛の流れに沿って手を滑らせます。乾いた布を手にかぶせて、前足の先から手首、胸元、あごの下の順に一往復。10秒か20秒で終わります。ここで水を全部取る必要はありません。この被毛は乾くのが早いので、向きさえ戻れば残りは自然に乾きます。

  4. 水のあるところと寝床のあいだに、距離を作る

    濡れたまま寝床に入ると、寄った毛が体重で押さえられて、その形のまま固定されます。水皿と寝床が並んでいる家では、これだけで胸元の毛玉が増えます。数歩でも距離があれば、歩くあいだに水は落ちます。寝床を動かせないなら、水皿のほうを部屋の反対側へ移してみてください。飲む量が減らないかだけ、数日は見ておきます。

  5. 毛が増える時期だけ、あごの下と胸元を毎日確かめる

    換毛期は、同じ遊び方でも残る束の量が増えます。この時期だけは、あごの下と胸元に指を入れて、束になっている場所がないかを毎日見てください。見つけたら、その日のうちに指で分けます。1日でほどけるものが、3日おくと道具が要るようになります。時期が終われば、週に2〜3回に戻して構いません。

できてしまった束をほどくときは、根元をつかんでから毛先へ向かいます。塊の下の毛を指でつまんで皮膚から浮かせ、その状態で先のほうから少しずつ分けていく。根元から一気に引くと、皮膚ごと持ち上がって痛みます。ターキッシュバンの毛は表面がなめらかなので、束の外側からは意外にほどけます。1回で全部やろうとせず、半分ほどけたところで止めて、翌日に残りを分けるほうが早く終わります。

指で分けても外側からほどけてこない束は、先に滑りを入れてから触るほうが早く終わります。mofuwa 毛玉予防ジェルを、その束にだけ直接なじませてください。塗るのはほぐしたいところだけで、しっとり濡れる程度が目安になります。そのうえで束の外側からブラシを当てると、組んでいた毛のあいだに滑りが入っているぶん、外へ向かって少しずつ外れます。ゆるんでこないときは、グルーミングスプレーを少し足してもみこむと、よりほぐれやすくなります。この順番を先に持っておく理由は、はさみです。あごの下や胸元の束は皮膚のすぐ上で締まっていることがあり、根元で切ると皮膚まで切ってしまうことがあります。フェルトのようにまとまった束は毛が引っぱられた状態になるので、その子にとっては触られること自体が痛みになります。ゆるめてからほどけるなら、はさみを持たずに済みます。

束ができる前の時期には、もう一つ置いておける手があります。同じ mofuwa 毛玉予防ジェルを、平時から前足の飾り毛と胸元に塗っておくやり方です。5プッシュほどを手のひらに広げてなじませ、そのあとブラシを通します。2〜3日に1回で足ります。被毛をまとめて、毛玉ができにくい状態を維持することを目的にしたジェルなので、濡れて乾くことがくり返される時期こそ出番になります。なじませるのは、水で遊んだあとに毛の向きを戻したあとです。濡れた毛の上に重ねるのではなく、向きが戻ってから、ブラシを入れる前に手を通してください。地肌が赤い場所、じくじくしている場所には使わないでください。

Caution毛玉の下の地肌に、変化があるとき

塊の下の地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、水を飲む量や元気が急に変わった。いずれかに当てはまるときは、毛玉をほどこうとする前に動物病院にご相談ください。濡れる場所とできる場所が重なっているぶん、湿ったまま時間がたっている可能性もあります。前の晩に無理にほどかず、そのまま連れて行ってください。いつから、どこに、どのくらいの大きさで、の3つをメモしておくと話が早くなります。

ターキッシュバンと暮らしていると、毛玉の場所が季節ごとに少しずつ動くのが分かってきます。夏は水皿の前に長くいるのであごの下が増え、冬は毛が厚くなるぶん胸元に残る。その動き方は、その子が家のどこで過ごしているかの記録でもあります。毛玉を見つけたときに、まず「どこで遊んだんだろう」と考えられるようになると、手を入れる場所は自然に決まります。水を取り上げる必要はありません。濡れたあとの数分を、こちらが少しだけ引き受ける。ターキッシュバンの毛玉との付き合い方は、そこに落ち着きます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。