C09シーン別・暮らし

車でのおでかけを楽にする、保護犬・保護猫を迎えた人の毎日の習慣

公開日 2023年5月6日|文=mofuwa編集部

明るい日ざしの入る車の後席に、クリーム色の犬が落ち着いて座っている
行き先を作らない5分を重ねると、車は移動の道具から、家の続きに近づいていきます。写真:Valeria Boltneva/Pexels

保護犬・保護猫を迎えた家で、車が最初に使われるのは、たいてい迎えた日の帰り道です。次に使うのはワクチンや健康診断で動物病院へ行く日。その次も、たいてい病院です。こうして車での移動が、月に1回あるかないかの用事とだけ結びついていきます。その子が以前どうしていたかは分かりません。いま何を思っているかも分かりません。分かるのは、こちらが車を何回、どういう用事で出したかのほうだけです。この記事は、行き先のある移動を減らす話ではありません。行き先のない5分を、そのあいだに何回はさめるかという話です。近所を1周して帰るだけの移動を、週に2回。保護犬・保護猫と暮らす家で、車そのものを毎日の側に置いていく組み立てを書きます。

エンジンをかけないまま、車に5分だけ乗る|保護犬・保護猫を迎えた家が最初に用意する背景

最初にやることは、走らせないことです。駐車場に停めたままの車のドアを開けて、後席に布を1枚敷いて、その上にキャリーごと置く。自分から乗る子なら、乗せるだけでいい。エンジンはかけません。5分たったら降ります。これが1回目です。

保護犬・保護猫を迎えた家では、移動という言葉に用事がついて回ります。譲渡の日、健康診断、ワクチン、去勢や避妊の相談。どれも必要な移動ですが、共通しているのは「行き先が決まっていて、こちらが時間をコントロールできない」という点です。車に乗る=長い時間が始まる、という並びが、こちらの都合でできあがっていきます。

だから最初の何回かは、行き先を作りません。エンジンをかけないので音も振動もありません。5分で降りるので、時間も短い。車に乗ったのに、何も始まらないまま終わる回を作ります。これを週に2回。2週間で4回になります。

5つとも、こちらが数えられるものだけにしてあります。保護犬・保護猫と暮らしはじめた時期は、こちらが読み取ろうとするほど、事実と解釈の境目があいまいになります。数えられるものだけを記録に残しておくと、あとで比べられます。3か月後にもう一度同じ5つを見たときに、変化が数字で出ます。

Note車の中で触らない、を最初の決まりにします

5分のあいだ、体には触りません。声もかけすぎません。やることは、こちらが運転席に座って前を向いていることだけです。手を出さないと決めておくと、こちらの5分も短く感じられます。触られることに慣れていない子と暮らしているなら、車という場所を先に用意して、体に触る話はあとに回すほうが順番として自然です。

行き先のある日にしか車を出していなかった理由|移動が動物病院と結びつく回数

一度、数えてみてください。この1年で、その子を車に乗せた回数は何回でしょうか。保護犬・保護猫を迎えて最初の年なら、多くの家で5回から10回のあいだに収まると思います。そのうち半分以上は動物病院です。残りは、迎えた日と、トリミングか、帰省です。

行き先のある移動だけを積み上げると、車に乗る回数はこうなります
用事年に何回くらいか1回にかかる時間
迎えた日の帰り道1回30分〜数時間
動物病院(ワクチン・健康診断)2〜4回往復と待合で1〜2時間
動物病院(体調を崩したとき)0〜3回読めない
トリミングやペットホテルへの送迎0〜4回往復で1時間前後
帰省・旅行0〜2回半日以上

表を見ると、ひとつの傾向が出ます。回数が少なく、1回が長い。そして間隔が空きます。間隔が空くほど、次の1回で「はじめて」に近い条件がそろってしまいます。車での移動が特別なままなのは、その子の側の問題ではなく、こちらが用意した回数と長さの組み合わせのほうです。

車という場所そのものが持っている条件も、ここで書いておきます。車内は閉じた空間です。窓を閉めて走れば温度が上がります。温度が上がると、体からのにおいが空気に戻ってきて、それが布や内張りに残ります。1回が長いほど、この時間が長くなります。被毛の根元に湿り気がこもるのも、たいてい30分を超えたあたりからです。

ここで、保護犬・保護猫を迎えた人の制約がはっきりします。触られることに慣れていない子に対して、移動の途中で押さえて拭く、という手が使えません。走っている車の中で、キャリーを開けて体に触るという選択肢が最初からないのです。多くの記事が「移動中にこまめに拭く」と書きますが、その手は、その子の許容が先にある家では成立しません。

使える手が2つ残りました。短くすることと、増やすこと。この2つは同じ方向を向いています。1回を5分にすれば、週に2回でも負担になりません。そして5分の移動では、車内の温度もにおいもほとんど動きません。犬でも猫でも、ここは同じです。次の見出しから、その組み立て方を書きます。

近所を1周して帰る、を週2回|車そのものを毎日の側に置く考え方

行き先を作らない移動を、8週間かけて少しずつ伸ばします。伸ばすのは距離ではなく、時間です。5分から始めて、10分で止めます。10分を超えたら、それはもう用事のある移動と同じ条件になるので、この習慣の外に置きます。

  1. 1〜2週目:エンジンをかけないで、5分乗って降りる

    駐車場に停めたまま。後席に布を敷いて、その上に置くだけです。週2回、合計4回。降りたら家に入って、それ以上何もしません。ここで記録するのは、伏せるまでの秒数と、降りたあとの身震いの回数だけです。

  2. 3〜4週目:エンジンをかけて、停めたまま3分

    音と振動が加わります。走りません。3分で切ります。この週だけは5分ではなく3分に短くします。条件が1つ増えたので、時間のほうを減らして釣り合いを取ります。窓は指1本ぶん開けておくと、車内の空気が動きます。

  3. 5〜6週目:家の前の道を1周して帰る

    5分です。信号のない道を選び、止まる回数を減らします。目的地には寄りません。コンビニにも寄りません。出発した場所に戻って、そのまま降ります。ここが、この習慣のいちばん大事な部分です。

  4. 7〜8週目:10分に伸ばして、そこで止める

    少し広い道を含めて10分。ここで打ち止めにします。10分を毎週2回、続ける形に落ち着かせます。距離を伸ばしたくなりますが、伸ばすと用事のある移動と区別がつかなくなります。この習慣は、短いままにしておく価値があります。

  5. 降りたら、体には触らずに家に入る

    毎回、これで終わりです。触らないことを手順の一部として決めておきます。降りた直後に手が伸びると、車から降りることと、体を触られることが並んでしまいます。触るのは、家に入って落ち着いてから、その子のほうから近づいてきたときだけです。

8週間の進め方。伸ばすのは距離ではなく時間です
週エンジン動くかどうか1回の時間週の回数
1〜2週目かけない動かない5分2回
3〜4週目かける動かない3分2回
5〜6週目かける家の前を1周5分2回
7〜8週目以降かける少し広い道まで10分2回

犬と猫で、順番が少し入れ替わります。犬は自分で後席に上がることが多いので、布を敷く場所を先に決めます。猫はキャリーごと運ぶことが多いので、キャリーの置き場所を毎回まったく同じにするほうが条件がそろいます。助手席の足元か、後席の中央か。保護猫と暮らしているなら、置き場所を1か所に固定してください。動かさないこと自体が、条件を1つ減らします。

後席に敷く布は、家の寝床で使っているものと同じ素材にしてください。新しい布をおろすと、車の中だけ知らない繊維に触れることになります。使い終わった布は、その日のうちにたたんで車に置いたままにします。持ち込むのは家のにおい、持ち帰るのは布1枚。この形にしておくと、体に触らずに毎日のケアが回ります。

布の手入れは、週に1回で足ります。洗える布なら洗って、乾いたらそのまま車に戻しておいてください。車の中では体に触らないと決めているので、こちらの手が使えるのは、家に入ってから、その子のほうが近づいてきたあとだけです。順番が先に決まっているぶん、そのときに何を手元へ置いておくかも決まります。mofuwa スキンケアミストは中身が電解水100%で、アルコールも香料も入っていません。窓を閉めて走る車は、持ち込んだにおいが布と内張りに残っていく場所です。においを足さないものを選んでおくと、次に乗る日の条件を動かさずに済みます。10分の移動で湿りが残りやすいのは腹の下と内股なので、近づいてきた日だけ、その2か所に。布を1枚たたんで、当てて、離す。触られることに慣れていない子と暮らしている家では、この短さがそのまま続けられる形になります。

距離ではなく、降りたあとの数分が短くなる|車での移動を重ねた3か月の変化

3か月続けると、変わるものが出てきます。ただし、変わるのは走れる距離ではありません。10分の移動は10分のままです。変わるのは、降りたあとの数分のほうです。ここが、この習慣でいちばん面白いところだと思っています。

記録は、3つだけメモしておけば足ります。日付、その日の分数、降りてから家に入るまでにかかった時間。スマートフォンのメモに1行で構いません。1か月分たまると、線が見えます。保護犬・保護猫と暮らしていると、日々の小さな変化は記憶の中で混ざります。1行の記録は、その混ざりを防ぎます。

3か月たったころ、この習慣の効き目が別の場所に出ます。動物病院に行く日の車が、いつもの車になっているという点です。行き先が病院であることは変わりません。それでも、乗るまでの過程が特別ではなくなります。週2回の10分を積み上げると、3か月で24回。行き先のある移動の年間回数を、とっくに超えています。回数の比率が、用事のほうから日常のほうへ入れ替わります。

ここで、はっきり書いておきたいことがあります。この習慣は、その子の気持ちを変えるためのものではありません。気持ちは、こちらには見えません。変えているのは、こちらが用意する回数と時間の組み合わせだけです。それでも、数えられるものは動きます。伏せるまでの秒数も、布に残る毛の量も、記録に残る数字です。保護犬・保護猫と暮らす家で頼りになるのは、この種類の数字のほうだと思います。

Caution移動のあとに続く変化は、動物病院にご相談ください

車から降りたあとによだれが多い、吐く、同じ足をなめ続ける、腹や内股の皮膚が赤い、耳が熱い、食欲が落ちる。こうした変化が1回だけでなく続くときは、移動の時間を短くする前に、動物病院にご相談ください。5分や10分の移動でも、体調の側に理由があれば同じことが起こります。迷ったら、記録に残した日付と分数を持って行ってください。いつから、どのくらいの移動で出ているかが分かると、そこから話が早く進みます。

最後に、この習慣の続け方について。週2回が守れない週があっても構いません。1回に減っても、ゼロにしないことのほうが大事です。間隔が空くと、また「久しぶりの移動」に戻ってしまいます。5分でいいので、車に乗って、近所を回って、帰ってくる。保護犬・保護猫を迎えた家にとって、車での移動を毎日の側に置いておく方法は、この短い1周の積み重ねに尽きます。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。