C09シーン別・暮らし

旅行とペットホテル、シニア猫と暮らす人はどうしている?

公開日 2023年5月20日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、キャリーのそばに落ち着いてすわっている淡い色の猫
動かせるのは預けている数日ではなく、その手前にある2週間のほうです。写真:Batuhan Küçükdemir/Pexels

3泊の旅行で老猫を預ける前日、キャリーに毛布を入れ、いつものごはんを小分けにして、注意書きを1枚書きました。支度は30分で終わりました。受け取った日、その子の口の周りと、後ろ足のつけ根と、尾のつけ根の3か所が、預ける前と違っていました。預け先が何かを怠ったわけではありません。旅行でペットを預けるあいだ、老猫の側で止まるのは、その家でしか成り立っていない毎日の手のほうです。自分でできる量が減っているぶん、人が代わっている範囲が広い。その範囲は、前日の30分では渡せません。この記事では、預ける当日ではなく14日前から手をつける順番を、5つの手順に分けて書きます。

旅行でペットを預けると、老猫は毎日の手のほうを先に失います

旅行でペットを預けると決めたとき、準備の多くは預けている数日に向かいます。何泊か、どこに預けるか、何を持たせるか。ただ、老猫と暮らしている家では、預けている数日そのものより、その数日のあいだに止まるものの大きさのほうが効いてきます。老猫では、毛づくろいで口が届く範囲が年ごとに狭くなります。届かない場所は、人が代わりに触っている。旅行でペットを預けると、その代わりの手が、預けた日数ぶんまるごと止まります。

若い猫であれば、数日ぶんの毛づくろいは自分で取り戻せます。老猫はそこが違います。後ろ足のつけ根、尾のつけ根、あごの下、背中の真ん中。自分の口が届かなくなった場所ほど、人が代わっている度合いが高くなっています。そして、その代わり方は家ごとにばらばらです。どの向きで触ると受け入れるか、どこまでなら嫌がらないか、何分で切り上げるか。ペットホテルの側が手を抜いているのではなく、その家の毎日の手は、その家の中でしか組み上がっていません。

もう一つ、老猫には変化の受け取り方に癖があります。変化が2つ以上同時に来ると、どれに反応しているのかが本人にも周りにも分からなくなります。旅行でペットを預ける当日は、場所が変わり、人が変わり、器が変わり、部屋のにおいが変わります。前日にまとめて支度をすると、変化が全部その日に束ねられます。2週間あれば、その束を1つずつほどいて、先に済ませておけます。預ける日に残る変化を、場所の1つだけにする。これが、老猫では14日前から手をつける理由です。

Note預ける日数を短くする、という話ではありません

旅行でペットを預ける日数を削れば止まる時間は短くなりますが、旅行のほうを縮めるのは現実的ではありません。それに、老猫で問題になるのは日数そのものより、止まったあとに戻すのにかかる時間のほうです。3泊で止まった手を、帰った日の1回で取り戻そうとすると、触る回数が急に増えます。老猫にはそこが負担になります。2週間の準備は、旅行を短くする代わりに、戻す側の負担を下げるためのものです。

14日前から1つずつずらす|旅行でペットを預ける日までの手順

ここからが手順です。5つに分けますが、1日にやるのは1つだけにしてください。老猫に変化を1つずつ渡すための2週間なので、こちら側が急ぐと意味がなくなります。旅行でペットを預ける日が決まった時点で、カレンダーに14日前・12日前・9日前・5日前・前日の5つに印を付けるところから始めます。

  1. 14日前:人が代わっている場所を、1日かけて書き出す

    何かを変える日ではありません。今日その子に触った場所を、触った順に紙へ書くだけです。朝ごはんのあとに口の周りを拭いた、夜に尾のつけ根をなでた、寝る前にあごの下をかいた。1日ぶんで足ります。書き出すと、老猫のために人が代わっている手が、思っていたより多いことが見えます。この紙が、あとで預け先へ渡すものの下書きになります。

  2. 12日前:預け先で使うものを、家のほうへ先に入れる

    キャリー、預け先で使う予定の器、持っていく毛布。2日に1つずつ、家の中の見える場所に出しておきます。キャリーは扉を開けたまま、通り道に置く。器は空のまま、いつもの器の隣に置く。旅行でペットを預ける日に初めて出すと、その日に変化が1つ増えます。先に出しておけば、老猫にとっては「もう部屋にあるもの」に変わります。

  3. 9日前:人が代わっている手を、誰でもできる形に減らす

    書き出した紙を見て、3手かかっているものを1手に落とします。「毛の流れに沿って3回なでてから、湿らせた布で尾のつけ根を拭く」を「布で尾のつけ根を一往復」にする。老猫のために積み上げた手順ほど細かくなっていますが、細かい手順は他人には引き継げません。減らした形で残りの日を過ごして、その子が受け入れるかどうかを先に確かめておきます。

  4. 5日前:水を使う日を、ここで終わりにする

    洗うなら5日前までです。老猫は乾くまでの時間が長く、洗ったあとの数日は毛の表面がそろっていません。旅行でペットを預ける日と重なると、預け先でついたものが乗りやすい時間帯を、こちらから差し出すことになります。5日前より後は、mofuwa グルーミングスプレーで1手を通します。布に含ませ、あごの下と尾のつけ根を毛の流れに沿って一往復させる。老猫が自分で口を届かせられなくなった場所に、人の手が代わって入る形です。この道具に求めているのは、その1手を14日のあいだまったく同じ形で繰り返せることです。新しく始めるのではなく、9日前に減らした形のまま続けます。

  5. 前日と当日:新しいものを足さない。渡す紙は1枚にする

    前日にできることは、もう何も足さないことです。新しいおやつ、新しい布、新しいにおいのするもの。ここで足すと、2週間かけてほどいた束をもう一度結び直すことになります。当日に持っていくのは、家で使っていた器、家のにおいのついた毛布、そして紙が1枚。紙には、触っていい場所・触ると嫌がる場所・1回あたりの時間の3つだけを書きます。書ききれない内容は、そもそも引き継げません。

旅行でペットを預ける14日前から当日までに、動かすもの
いつやること老猫の側で何が減るか
14日前触っている場所を1日ぶん書き出す何も変えない日。基準ができる
12日前キャリーと器を部屋に出す当日に増える『もの』の変化が1つ減る
10日前毛布を寝床の近くに置く家のにおいが移り、預け先で1つ味方が増える
9日前3手の手入れを1手に減らす引き継げない細かさが減る
7日前減らした形で数日過ごす受け入れるかどうかを先に確かめられる
5日前水を使う日はここまで毛の表面が戻る時間を確保できる
前日何も足さない。紙を1枚書く当日に残る変化が『場所』1つになる

この手順の全部をやりきる必要はありません。旅行の予定が急に決まることもあります。1つだけ選ぶなら、12日前のキャリーと器です。老猫が当日に受け取る変化のうち、こちらが確実に減らせるのがこの2つだからです。逆に、いちばん後回しにしていいのが5日前の水の話です。洗えないまま預けることになっても、旅行でペットを預ける数日で困る場面はほとんどありません。

上げるのは触る回数ではなく記録の頻度|2週間でつまずくところ

2週間あると分かった時点で、多くの方が手数を増やします。旅行でペットを預けるまでに整えておこう、と思うと自然にそうなります。ここが、老猫でいちばんつまずくところです。触る頻度を上げると、老猫にとっては当日より前から負担が増えます。触られること自体が体力を使う年齢なので、2週間の準備が2週間の消耗に変わってしまいます。

2週間のあいだに、上げていい頻度と上げないほうがいい頻度
内容なぜ
上げないブラッシングの回数触る時間が増えるほど、老猫は姿勢を保てなくなります
上げない拭き取りの回数皮膚に触れる回数そのものが条件になります
上げない新しいケアを試す回数受け入れるかどうかを確かめる時間が残っていません
上げる体重をはかる頻度週1回。旅行から帰った日に比べる相手になります
上げる食べた量を書く頻度毎日。数字は2週間ぶんないと読めません
上げる水を飲む器を見る頻度毎日。減り方の幅がその子の平常です
上げるトイレの回数を書く頻度毎日。預け先でも同じ項目を聞けます

上げるのは、手の頻度ではなく記録の頻度です。老猫の変化はゆっくり進むので、1日だけの数字では何も分かりません。2週間ぶんの体重・食べた量・水・トイレがあると、旅行から帰った日の数字がどこにあるのかを読めます。逆に、この2週間で触る回数だけを増やしていると、帰った日に何かが違っても、旅行のせいなのか準備のせいなのかを切り分けられなくなります。

記録は紙1枚で足ります。日付を縦に14行書いて、体重・ごはん・水・トイレの4列。数字が書けない日は空欄のままにしておいてください。埋めようとして推測を書くと、比べる相手として使えなくなります。空欄が3日続いたら、その週の記録はなかったものとして扱う。それでも残りの11日ぶんが手元にあります。

Point預け先に聞くことも、頻度で決めておく

旅行でペットを預ける先に伝えることは、内容より頻度で決めると渡しやすくなります。「1日に何回」「1回に何分」の2つだけそろえてください。あごの下を1日1回、1回30秒。尾のつけ根は2日に1回、一往復。老猫の手入れは、細かい方法より回数のほうが引き継がれます。方法を長く書くほど、実際にはどれもやってもらえないという結果になりがちです。

受け取ってからの3日で、家でできることと、そうでないこと

旅行から戻って老猫を受け取った日、いちばんやりたくなるのは、止まっていた2週間ぶん……ではなく預けていた数日ぶんの手を、一度に取り戻すことです。その日は何もしないでください。移動して、知らない場所から戻って、部屋のにおいがまた変わっています。老猫にとっては、この日も変化が重なっている日です。手を入れるのは翌日からで間に合います。

Caution食べる量とトイレの回数が、3日たっても預ける前の幅に入らないとき

旅行から受け取って3日たっても、食べる量が預ける前の幅に戻らない、水を飲む量が明らかに増えた、体重が落ちている、トイレの回数が変わったまま、同じ場所をなめ続けている、触ると声を出す、隠れて出てこない。こうした変化があるときは、手入れの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。老猫では、環境が変わったあとに別の変化が重なって出ることがあります。2週間ぶんの記録と、預けた日数を書いた紙を持っていくと、その場で切り分けてもらえます。手を止めて様子を見る日を足すより、その紙を持って出かけるほうが早く済みます。

翌日から再開する手入れも、水を使うところからは始めません。洗うのは、食べる量とトイレの回数が預ける前の幅に戻ってからです。それまでは、mofuwa グルーミングスプレーを布に含ませて、あごの下と尾のつけ根を毛の流れに沿って一往復させる程度でかまいません。止まっていた手を戻すのが目的で、汚れを落としきるのが目的ではありません。猫は自分で毛づくろいをするので、あごの下に当てたものは口に入ります。舐めても差し支えのない基準でつくられているので、そこで手が止まりません。老猫は、触られている時間そのものが体力を使います。

旅行でペットを預けるという選び方は、老猫と暮らしていても取り上げなくていい選択肢です。ただ、預ける当日にできることはほとんどありません。動かせるのは、当日から数えて手前にある14日のほうです。キャリーと器を先に部屋へ出し、3手の手入れを1手に減らし、水を使う日を5日前で終わりにして、記録の頻度だけを上げておく。準備が2週間に伸びるぶん、1日あたりにやることは減ります。老猫にとって楽なのは、そちらの形です。

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よくある質問

旅行の予定が急に決まって、2週間ありません。何を優先すればいいですか。
キャリーと、預け先で使う器を部屋に出すところからにしてください。老猫が当日に受け取る変化のうち、こちらが確実に1つ減らせるのがこの2つです。3日しかなくても、扉を開けたキャリーを通り道に置くだけで、預ける日に初めて出すのとは違います。手入れを増やすのは後回しでかまいません。
預け先には、どのくらい細かく伝えればいいですか。
紙1枚に収まる量までです。触っていい場所、触ると嫌がる場所、1回あたりの時間の3つで足ります。方法を細かく書くほど、実際にはどれも実行されにくくなります。老猫の手入れは「1日に何回」「1回に何分」という頻度の形にすると引き継がれやすくなります。
帰ってきた日に、すぐ体を拭いてもいいですか。
その日は何もしないほうが楽に済みます。移動と場所の変化が重なっている日なので、そこへ手入れを足すと変化が3つになります。翌日から、預ける前と同じ回数で再開してください。取り戻そうとして回数を増やすと、老猫には触られる時間そのものが負担になります。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。