C12Q&A・豆知識
毛玉ができやすい部位の順位
脇の下、内もも、耳の後ろ、首輪の下、尾のつけ根。毛玉の話をすると、名前が挙がるのはたいていこの5か所です。順位をつけた並びを見かけることもありますが、その順位は、何を数えたかで入れ替わります。サロンでほどいた数を数えるのか、飼い主が家で見つけた数を数えるのかで、上位に来る部位は変わります。並びを覚えるより先に見ておきたいのは、5か所に共通している条件のほうです。毛玉ができやすい場所は、どれも何かとこすれている場所です。この記事では、こすれ方を「動きでこすれる」と「物でこすれる」の2つに分けて比較し、その子の生活のどちらを先に見ればいいかを決めます。
毛玉ができやすい場所の順位は、何を数えたかで入れ替わる
順位という並びを見るときは、先に分母を確かめておくと迷いません。毛玉ができやすい場所の順位は、誰が、どの場面で数えたかによって作られています。数え方が変われば、上位も変わります。ここを飛ばして並びだけ覚えると、自分の家の子に当てはまらないときに、どこを見ればいいか分からなくなります。
| 何を数えたか | 上位に来やすい場所 | 数から抜けやすい場所 |
|---|---|---|
| サロンでほどいた数 | 全身のうち、道具が入りにくい部位 | 飼い主が先に自分でほどいた部位 |
| 飼い主が家で見つけた数 | 目に入る場所、手が届く場所 | 腹の下や内もも、見えない側 |
| ブラッシングで引っかかった数 | 毛の量が多い部位 | 毛の短い部位 |
| 換毛期だけを数えた数 | 抜けた毛がたまる背中側 | 季節に関係なくこすれる部位 |
| 1年を通して数えた数 | 毎日こすれている部位 | その時期だけ増える部位 |
表を見ると分かるとおり、上位に来る部位は「毛玉ができやすい」というより「その数え方で見つかりやすい」場所です。家で数えれば、見える場所が上に来ます。サロンで数えれば、飼い主がほどけなかった場所が上に来ます。どちらも間違っていませんが、そのまま順位として覚えると、見落とす場所が固定されます。
それでも、どの数え方をしても名前が残る場所があります。脇の下、内もも、耳の後ろ、首輪の下、尾のつけ根。この5か所は、数え方を変えても上位から消えません。ということは、数え方の側ではなく、体の側に理由があるということになります。5か所に共通している条件は1つで、どれも何かとこすれている場所だという点です。
こすれると、毛と毛が同じ場所で何度も向きを変えます。毛先だけでなく、根元の近くでも向きがずれます。ずれた毛どうしが絡み、そこへ抜けた毛が入り込むと、ほどけなくなります。だから毛玉ができやすい場所を探すときは、部位の名前を覚えるより、こすれている場所を探すほうが早く終わります。ここから先は、こすれ方を2つに分けて比べていきます。
「◯番目に多い」「◯%がここ」といった数字は、調べ方によっていくらでも動きます。出どころを確かめられない数字を覚えても、自分の家の子には使えません。この記事で扱うのは、数え方によらず上位に残る5か所と、その5か所に共通している条件だけです。自分の家の順位が知りたいときは、下で書く1週間の数え方で、その子だけの並びを作るほうが確実です。
軸1・体の動きでこすれる場所|毛玉ができやすい条件を関節の側から見る
1つめの軸は、その子自身の動きです。体が曲がるところは、毛が閉じたり開いたりを1日に何百回も繰り返しています。関節の内側は、閉じたときに毛どうしが密着し、開いたときに向きが戻ります。この往復が、毛の根元に近いところで起きます。毛先だけがなびいている場所とは、絡み方が違います。
- 脇の下:前足を出すたびに閉じます。歩数がそのまま回数になります
- 内もも:後ろ足の内側。座る・立つのたびに毛が擦れ合います
- 耳の後ろ:頭を振る動きと、後ろ足でかく動きの両方が当たります
- 前足のつけ根の前側:胸との境目。伏せる姿勢で折りたたまれます
- 尾のつけ根:尾を振る動きと、座ったときの体重が重なります
- あごの下から首の前:うつむく姿勢が長い子ほど、閉じている時間が長くなります
見つけ方は、部位を覚えるより毛の向きを見るほうが早いです。こすれている場所は、毛が一方向にそろっていません。渦を巻いたり、途中で向きが折り返したりしています。毛先ではなく、根元に近いところで向きが乱れている場所が、動きでこすれている場所です。被毛を手のひらで軽く逆立てて、光の当たり方が変わるところを探すと見つかります。
動きでこすれる場所には、もう1つ特徴があります。左右で同じように出るということです。脇も内ももも耳の後ろも、両側に同じくらいの毛玉ができます。片側だけに偏っているときは、動きではない理由が混ざっています。この見分けは、あとで出てくる2つめの軸を切り分けるときに使えます。
動きの量は、その子の暮らし方で変わります。散歩が長い子は脇と内ももが増えます。家の中で寝ている時間が長い子は、この軸の毛玉は少なめになります。年齢が上がって動きが減ると、こちらの軸は減り、代わりにもう1つの軸が増えます。毛玉ができやすい場所は、同じ子でも一生同じではありません。
軸2・物でこすれる場所|首輪と寝床が毛玉のできやすい場所をつくる
2つめの軸は、体の外側にある物です。物は動かないので、同じ一点に力が集まり続けます。体の動きは向きが毎回少しずつ違いますが、首輪が当たる場所は毎日ほぼ同じです。だから、こちらの軸でできる毛玉は、範囲が狭く、輪郭がはっきりしています。
- 首輪の下:一周ぐるりと同じ幅で当たります。留め具の側が特に強く当たります
- ハーネスが通る胸と脇:ベルトの線に沿って、帯のように出ます
- 寝床に接する側:横向きに寝る子は、いつも下になる側だけに出ます
- 抱き上げるときに手が入る位置:胸の下と、後ろ足の前。毎回同じ場所です
- 服やエリザベスカラーのふち:布の端が当たる線に沿って出ます
- キャリーの床と壁:移動の多い子では、当たる面に出ます
こちらの軸の見つけ方は簡単です。物を外して、その物が当たっていた線をなぞってください。首輪を外して、留めていた位置の毛に指を入れます。ハーネスを外して、ベルトが通っていた線をたどります。物の形と、毛の乱れている形が一致していれば、原因の側は物です。体の動きでできた毛玉は、こういう直線的な形になりません。
そして、こちらの軸は片側だけに出ることがあります。いつも同じ側を下にして寝る子は、その側だけ。留め具がいつも同じ位置に来る首輪は、その位置だけ。左右差があるときは、まず物の側を疑うほうが早く見つかります。動きの軸との切り分けは、この左右差で足ります。
物の軸には、家の側で変えられる余地があります。首輪の位置を少しずらす、寝床の布を毛のすべりやすいものに替える、抱き上げるときに手を入れる位置を毎回ずらす。体の動きは減らせませんが、物の当たり方は動かせます。毛玉ができやすい場所のうち、手が入るのはこちら側です。
2つのこすれ方を並べて比べる|毛玉ができやすい場所はどっちを先に見るか
2つの軸を並べます。同じ「こすれる」でも、出方も、見つけ方も、手の入れ方も違います。この表のどちらに当てはまるかが決まると、その子の毛玉ができやすい場所は、部位の名前ではなく条件で言えるようになります。
| 動きでこすれる場所 | 物でこすれる場所 | |
|---|---|---|
| 代表的な部位 | 脇の下・内もも・耳の後ろ | 首輪の下・寝床に接する側・胸のベルト位置 |
| 形 | 丸くぼんやり広がる | 線や帯の形になる |
| 左右差 | 両側に同じくらい出る | 片側だけに出ることがある |
| 毛の向き | 根元で渦を巻く | 一方向に押しつぶされている |
| 増える時期 | 散歩や遊びが増える時期 | 服や首輪を使う時期 |
| 家で変えられること | ほとんど変えられない | 位置・素材・当たる時間を変えられる |
| 先に見る順番 | 毎日ブラシを入れる場所として | 物を外したときに毎回確かめる場所として |
どちらを先に見るか。答えはその子の1日で、時間が長いほうです。1日の大半を寝て過ごしている子なら、寝床に接する側から見ます。散歩と遊びで動いている時間が長い子なら、脇と内ももから見ます。部位の順位ではなく、時間の順位で決めるということです。毛玉ができやすい場所は、こすれている時間の長い場所から順に並びます。
自分の家の順位は、1週間で作れます。やり方は、見つけた毛玉の場所を紙に書くだけです。ほどいたかどうかは書かなくて構いません。場所と、その日の日付だけ。7日分たまると、同じ場所が何回出てきたかが並びます。これがその子の順位です。よそから借りた順位より、こちらのほうが当たります。
| 日 | 見つけた場所 | どちらの軸か |
|---|---|---|
| 月 | 左の脇の下 | 動き |
| 火 | 首輪の下、留め具の側 | 物 |
| 水 | 右の脇の下 | 動き |
| 木 | 首輪の下、同じ位置 | 物 |
| 金 | 内もも(左右とも) | 動き |
| 土 | 下になって寝ている側の肩 | 物 |
| 日 | 耳の後ろ(左右とも) | 動き |
この例なら、動きが4回、物が3回です。そして物の3回のうち2回が、首輪の同じ位置に出ています。ここまで分かれば、次にやることは1つに決まります。首輪の位置を少しずらすか、毎日外したときにその線をなぞるか。順位を覚えていても、ここまでは出てきません。
順位より、その子の生活でこすれている時間を見る|時期で上位が入れ替わること
最後に、時期の話をしておきます。毛玉ができやすい場所の順位は、季節でも入れ替わります。同じ子でも、春と冬で上位が変わります。理由は2つあって、換毛期と、空気の乾く時期です。この2つは、効いてくる軸が違います。
| 時期 | 何が変わるか | 増えやすい側 |
|---|---|---|
| 換毛期 | 抜けた毛が被毛の中に残る | 動きの軸。こすれる場所に抜け毛が入り込む |
| 空気が乾く時期 | 静電気で毛先が広がり、絡みやすくなる | 両方。特に物が当たる線に沿って増える |
| 服や首輪を使う時期 | 当たっている時間が長くなる | 物の軸 |
| 雨や雪の多い時期 | 毛が湿ったまま押される時間が延びる | 物の軸。寝床に接する側 |
| 動きが増える時期 | 関節の開閉が増える | 動きの軸 |
換毛期は、抜けた毛が体の外へ出ていかず、被毛の中に残ります。こすれている場所には、その抜けた毛が集まります。もともと絡んでいるところへ、材料が足されるかたちです。だから換毛期に増えるのは、新しい場所ではなく、いつもの場所です。ブラッシングを増やすとしても、増やす場所は同じで構いません。
空気が乾く時期は、静電気で毛先が互いに反発して広がります。広がった毛先は隣の毛と交差しやすく、根元まで戻りにくくなります。うるおいが足りない被毛は、ブラシを当てたときに毛が立って、毛先から根元へ歯が入りません。この時期は、乾いたままブラシを入れるより、毛先を一度落ち着かせてから始めるほうが早く終わります。
水を使わない日のケアとして、被毛の側を整えておく手もあります。mofuwa 毛玉予防ジェルは、被毛をコーティングして、もつれと静電気が起きにくい状態にするジェルです。香料無添加で、こすれる場所にだけ薄くのばして使えます。すでにできている毛玉をほどく道具ではなく、こすれている場所の毛先を落ち着かせておくためのものです。洗い流さないケアと合わせるなら、mofuwa グルーミングスプレーを布に取って毛先をなでてから、ブラシを入れる順番にすると、根元まで歯が入りやすくなります。使う場所は、1週間の記録で上位に来た場所だけで足ります。
毛玉ができやすい場所が5か所に絞れているなら、ブラッシングも5か所から始めてください。全身を1回通すより、上位の2か所を毎日、残りを2〜3日に1回のほうが、結果として毛玉は減ります。1回の時間が長くなると、その子が途中で嫌がって、いちばん最後に回した場所がいつも残ります。順位を作る意味は、増やすためではなく、削るためにあります。
毛玉のあった場所の地肌が赤い、じくじくしている、触ると痛がる、同じ場所を舐め続けている、においが出てきた、短い期間に急に増えた。こうした変化があるときは、ブラッシングの回数を増やしたり、その場でほどこうとしたりする前に、動物病院にご相談ください。皮膚の側に何かが起きていて、その結果としてこすれている場合もあります。いつから、どの場所に、どのくらいの間隔で出ているか。1週間の記録があれば、そのまま持っていってください。
毛玉ができやすい場所の順位は、覚えるものではなく、作るものです。共通しているのは「こすれる場所にできる」という条件だけで、そこから先は、その子の1日で決まります。動きの時間が長い子と、寝ている時間が長い子では、上位が入れ替わります。年齢が変われば、また入れ替わります。だから、よそで見た並びを当てはめるより、場所だけを7日書き出すほうが早い。毛玉ができやすい場所を探すというのは、部位を覚えることではなく、その子の生活のどこがこすれているかを見ることです。
Product
よくある質問
- 毛玉ができやすい場所の順位は、犬と猫で違いますか
- こすれる場所にできるという条件は同じですが、こすれ方の中身が変わります。自分で毛づくろいをする猫では、口が届かない背中側と首の後ろが上位に残りやすくなります。犬では、首輪やハーネスなど物が当たる場所の比重が上がります。どちらの場合も、順位を借りてくるより、その子の1日で時間が長いほうから見るのが確実です。
- 短毛でも毛玉ができやすい場所はありますか
- 毛の長さが短いほど絡む余地は小さくなりますが、こすれる条件そのものは同じです。短毛の子では、毛玉としてほどけなくなるより、その場所の毛が寝てしまう、毛の向きが乱れる、という見え方になりやすくなります。首輪の下や、寝床に接する側で、毛の向きが周りと違っていないかを見てください。
- 換毛期は、ブラッシングの回数を増やしたほうがいいですか
- 増やすなら、場所を広げるのではなく、上位に来ている場所の回数だけを増やしてください。換毛期に増えるのは新しい場所ではなく、いつもこすれている場所です。1回の時間は延ばさないほうが続きます。地肌の赤みや、触ると痛がる様子があるときは、回数を増やす前に動物病院にご相談ください。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
