C05犬種・猫種別ケア
バリニーズと暮らすなら知っておきたい、毛のもつれの話
バリニーズがソファと壁のすき間を抜けていくとき、体の横がその両側をこすっていきます。通り抜けるのは一瞬です。ところが同じ一瞬が、1日に何十回とくり返されます。バリニーズのもつれは、この回数のほうで育ちます。寝ていた場所を探しても、面になった毛が見つからないことがあります。かわりに脇の下、後ろ脚の外側、しっぽのつけ根といった、体の出っぱったところだけが寄っている。この記事では、寝床でできるもつれと、通り道でできるもつれを並べて比べます。どちらの条件が先に育っているかで、その日に手を入れる場所が変わります。
絹のような一枚の被毛と、よく動く体|バリニーズのもつれが育つ条件
バリニーズの毛を1本だけ指ではさんで、根元から毛先まで送ってみてください。途中で張りが返ってくることがなく、そのまま指の先まで抜けていきます。細くて、まっすぐで、軽い。長い毛なのに手のひらに重さが残りません。この手ざわりが、バリニーズのもつれを考えるときの出発点になります。
この猫種の被毛には、綿のような下毛がほとんどありません。上毛だけの、ほぼ一枚の作りです。だから毛の量があっても体に沿って寝てくれますし、長毛の猫にありがちなふくらみ方をしません。しっぽだけが羽のように広がって見えるのは、そこだけ毛が長いからで、密度が高いからではありません。
一枚の被毛は、上から押される力に強い作りです。寝床で体の下になっても、起き上がったときに毛が立ち直ります。受け止めてくれる下毛がないぶん、押されても行き場を失わずに済むからです。つまりバリニーズでは、じっとしている時間だけではもつれが育ちにくいということになります。ここが、下毛を持つ長毛の猫との大きな違いです。
そのかわり、横向きの力には弱くなります。細くて長い毛が、毛の流れと直角にこすられると、隣の毛と交差したまま戻りません。1本ずつは軽いので、交差してもその場では気づかれず、そのまま次の交差が重なっていきます。すき間を抜ける一瞬に起きているのが、まさにこの横向きの力です。
そこへ、この猫種の動きの多さが重なります。棚の上、椅子の下、開いたドアの向こう。呼べば来ますし、こちらが立てばついてきます。寝ている時間そのものが短く、家の中を移動している時間が長い子が多い。もつれの条件が、寝床の側ではなく通り道の側に寄るのは、この2つが重なるからです。
- 下毛がほとんどない:上から押されても、毛が行き場を失いません
- 毛が細く、長く、軽い:横向きに交差すると、そのまま戻りません
- 体に沿って寝る被毛:もつれの芯が小さいうちは、表面から見えません
- 移動が多い:同じ場所を1日に何十回も通ります
- 体が細く、すき間に入れる:通れてしまうぶん、両側が毛に当たります
- しっぽの毛だけが長い:つけ根と先で、こすれ方が変わります
バリニーズは表面がなめらかなので、内側に芯ができていても外からは分かりません。見た目で判断できないことは、もつれていないことの証明にはなりません。手でなでても、手のひらは毛の上を滑っていくだけです。確かめるときは、なでるのではなく、指を毛の流れと直角に入れて、根元の側で止まるかどうかを見てください。芯の段階なら、指1本でほどけます。
寝床でできるもつれと、通り道でできるもつれ|バリニーズで比較する
もつれの成り立ちは、大きく2つに分かれます。時間で育つものと、回数で育つものです。同じ「毛が寄って面になった」という結果でも、そこに至る過程がまったく違います。バリニーズで手の入れどころを決めるには、まずこの2つを分けて考えるところからです。
1つ目が、寝床でできるもつれです。同じ面が長い時間押さえられて、毛が起き上がる機会を失っていくタイプ。できる場所は、体の下になる面です。脇腹、肩の下側、寝る向きが決まっている子なら片側だけ。ゆっくり進むので、気づいたときにはすでに面のまま広がっています。下毛を持つ猫種では、こちらが主役になります。
2つ目が、通り道でできるもつれです。一瞬の横向きの摩擦が、回数だけ積み上がっていくタイプ。できる場所は、体の出っぱったところです。脇の下、後ろ脚の外側、しっぽのつけ根、胸の前、首の横。どれも、狭いところを抜けるときに最初に壁へ触れる場所です。小さな芯から始まって、周りの毛を巻き込みながら太っていきます。
| 寝床でできるもつれ | 通り道でできるもつれ | |
|---|---|---|
| 育つもの | 時間。同じ面が押さえられた長さ | 回数。すり抜けた本数 |
| 力の向き | 上から下へ、毛を押しつぶす向き | 毛の流れと直角、横へずらす向き |
| 出る場所 | 体の下になる面。脇腹、肩の下 | 体の出っぱり。脇の下、後ろ脚の外側 |
| 形 | 面のまま平たく広がる | 小さな芯から、球のように太る |
| 毛の並び | 流れに沿って、寄って寝ている | 流れと交差して、ねじれている |
| 気づき方 | なでたときに手のひらが引っかかる | 指を入れたときだけ、根元で止まる |
| バリニーズでの比重 | 少ない。一枚の毛は押されても戻る | 多い。横向きの力に戻る力がない |
この2つは、手の入れ方も分かれます。寝床でできたもつれは、面を起こしてから、根元の側へ道具を入れます。毛は寄っているだけで交差していないので、起こせば流れが戻ります。ブラッシングも、毛の流れに沿って長く動かすやり方が合います。
通り道でできたもつれは、同じやり方が通りません。毛が交差してねじれているので、流れに沿って引くと、ねじれが締まる向きに力がかかります。芯を指で持って、外側の毛を毛先の側から少しずつ外していく。道具を持つ前に、指で芯の大きさを確かめるところからになります。
どちらが起きているかを決めているのは、その子の1日です。日なたで長く寝る子なら寝床の側が増えますし、家じゅうを歩き回る子なら通り道の側が増えます。バリニーズと暮らしていて、寝床を疑ったのに何も見つからなかったという経験があるなら、比べる相手を通り道に移してください。被毛の条件と生活の条件が、両方ともそちらを向いています。
今日はどっちのもつれか|バリニーズの毛がねじれる向きで見分ける
2つに分かれると決まったら、次はその子のもつれがどちらなのかです。見るのは大きさではなく、毛の並び方の向きです。同じ直径でも、寄っているだけのものと、交差して締まっているものでは、手の入れ方が逆になります。次の順で確かめてください。
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明るい場所で、もつれの外側の毛を指ではさむ
上から押さえずに、毛先の側から2〜3本だけつまみます。毛が体の流れと同じ向きに並んでいるなら、寝床の側です。流れと交差して、斜めに入り込んでいるなら通り道の側になります。バリニーズは毛が細いので、この向きは明るいところでないと見えません。窓ぎわか、照明の下でやってください。
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根元と毛先の、どちらが締まっているかを見る
指を入れて、根元の側がすかすかしていて毛先だけが固いなら、こすれてできたものです。通り道でできるもつれは、外側から巻き込むので毛先の側から締まります。逆に根元の側が詰まっていて毛先が広がっているなら、押さえられて起きられなくなった毛です。
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体の下になる面と、出っぱった面を順にたどる
寝そべっているときに床に着く面を、まず手のひらでなでます。次に、立たせて脇の下、後ろ脚の外側、しっぽのつけ根に指を沈めます。出っぱった側にだけ芯があるなら、その日は通り道の条件を見に行ってください。両方にあるなら、下になる面から先に手を入れます。
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その子が1日に通っている狭い場所を、実際に歩いてたどる
ソファと壁のあいだ、テーブルの脚のあいだ、開けっぱなしのドアのすき間、カーテンの裾。体の幅よりわずかに広いだけの場所が、いちばんこすれます。入口がひとつしかない部屋があるなら、そこは1日の往復の回数がそのまま摩擦の回数になります。手が届く範囲で、幅を広げるか、通る面をなめらかなものに替えてください。
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見つけた芯の数と場所を、その日のうちに書き出す
数と場所を残しておくと、翌週に同じ場所へ戻ったかどうかが分かります。もつれのケアで比べる相手は、他の子ではなく、先週のその子です。1週間で同じ場所に戻るなら、通り道の条件がまだ動いていないという意味になります。
| 確かめたこと | その日の手の入れ方 |
|---|---|
| 毛が流れに沿って寄っている | 面を起こしてから、根元の側へ道具を入れる |
| 毛が流れと交差してねじれている | 指で芯を持ち、毛先の側から外していく |
| 出っぱった場所にだけ芯がある | 通る場所の幅を見に行く。毛はその日は触らなくてよい |
| 下になる面と出っぱりの両方にある | 下になる面から先。出っぱりは翌日に回す |
| 先週と同じ場所に、同じ大きさで戻った | 毛の側ではなく、部屋の側の条件を1つ変える |
時間を決めても、猫のほうの都合で流れます。帰ってきて、その子がいつものすき間を抜けて足元へ来る。その直後に、脇の下と後ろ脚の外側だけ指を入れる。これなら30秒で終わりますし、こすれた直後なので芯が小さいうちに見つかります。全身を1日で回そうとしないほうが、結果として毛先まで手が届きます。
猫のバリニーズで、家の中の通り道が増える時期と減る時期
通り道の数は、1年を通して同じではありません。気温が変われば、その子が行きたい場所が変わり、通るすき間の顔ぶれも入れ替わります。季節ごとに何が動くかを知っておくと、もつれが増える前に手を入れる場所を決められます。
夏は、低くて涼しい場所が選ばれます。家具の下、洗面台の陰、玄関のたたき。低い場所ほど、抜けるときに体の上下が同時にこすれます。この時期は脇の下と後ろ脚の外側に芯ができやすく、しっぽのつけ根も増えます。床に近いぶんほこりも巻き込むので、指で外すときにざらつきを感じることがあります。
冬は、行き先が暖かい場所に移ります。暖房の前、布団の中、人のひざの上。通る回数そのものは減っても、空気が乾いて静電気が起きるぶん、毛どうしが寄ったまま離れません。同じ1回のこすれが、乾いた季節ほど長く残るということです。うるおいが抜けた毛は毛先が広がり、そこから交差が始まります。
春と秋の換毛期は、また条件が変わります。バリニーズは下毛がほとんどないので、抜けた毛を受け止める層がありません。抜けた毛は被毛の表面に浮いてきます。浮いた毛がそのまま落ちればいいのですが、すき間を抜ける一瞬に、まとめて体側へ押し込まれます。押し込まれた毛が芯になるので、換毛期は通り道の側のもつれが最も増える時期になります。
| 時期 | 行き先の変化 | 増えるもつれの場所 |
|---|---|---|
| 春(3〜5月) | 窓ぎわと、日の当たる高い場所 | 肩の横、しっぽのつけ根。抜け毛が押し込まれる |
| 夏(6〜8月) | 家具の下、床に近い涼しい場所 | 脇の下、後ろ脚の外側。上下が同時にこすれる |
| 秋(9〜11月) | 移動が増え、家じゅうを回る | 胸の前、首の横。抜け毛が表面に浮く |
| 冬(12〜2月) | 暖房の前、布団の中。回数は減る | 全身。静電気で、寄った毛が離れない |
季節ごとにブラッシングの回数を増やす、という組み方はおすすめしません。回数を増やしても、通り道の条件が動かなければ同じ場所に戻ります。動かすのは、通る場所の幅と、その面の素材のほうです。ソファと壁を数センチ離す。カーテンの裾を短くする。椅子を1脚どける。1つ変えて、1週間後に同じ場所を触って比べてください。
毛玉予防ジェルは、もつれが締まったときに毛を切らずに済ませるためのジェルです。手のひらに少量とって、脇の下や後ろ脚の外側のように、壁に最初に触れる場所へなでるように広げてください。トリートメント成分が毛を1本ずつコーティングするので、塗っておくと、こすれた一瞬に毛が交差しにくい状態が続きます。すでに芯ができている場所には、同じ毛玉予防ジェルをその芯にもみこみます。ゆるんでこないときは mofuwa グルーミングスプレーを足してもみこむと、よりほぐれやすくなります。ハサミを毛の下へ入れる前に、この順番を試してください。
毛先の側から締まった芯は、根元の毛と皮膚を巻き込んでいることがあります。引っぱると、ほどけるより先に皮膚が持ち上がります。1回で外しきらなくて構いません。外側の数本だけを毛先から抜いて、翌日にもう数本。嫌がる、声を出す、その場を離れようとするというときは、その日はそこで手を止めてください。ハサミを毛の下に入れるのも避けてください。皮膚が一緒に持ち上がっている状態では、境目が見えません。
すき間を減らしても戻るもつれは、通り道の条件では説明がつきません
ここまでは、一枚の被毛と、通り道の回数で説明のつくもつれの話でした。通る場所の幅を広げても、同じ場所が短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、ブラッシングの回数を増やす話として片づけないほうが安全です。
- 通り道と関係のない場所に、まとめて出てきた:背中の真ん中や腰など、壁に当たらない場所です
- その場所を、しきりになめている:毛の話より先に、皮膚のほうを見てください
- 芯を外したあとの地肌が赤い、においがある:湿った状態が続いた結果として起こることがあります
- 左右で、もつれの量がはっきり違う:体の使い方が変わっている可能性があります
- 毛づくろいの時間そのものが減った:届かない場所が増えると、もつれは全身に広がります
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、その場で手を止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、毛づくろいの時間や食欲が落ちている。これらは通り道の回数では説明のつかない変化です。当てはまるものがあれば、ブラッシングの回数を足すより先に、動物病院で地肌を見てもらってください。バリニーズは表面がなめらかで内側の変化が外から見えにくいので、芯を外した直後に見た地肌の色を覚えておくと、あとから比べられます。毎日30秒の手入れは、その日も続けてかまいません。
相談やトリミングの前には、芯があった場所、いつからか、その1週間で家の中を何か変えたかの3つをメモしてください。この3つがあると、通り道の条件で説明がつくもつれなのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。外しきれなかった芯は、無理に触らずそのまま連れて行ってください。前の晩に頑張ってほどくと、もとの状態が分からなくなります。
バリニーズと暮らすうえで、狭いところを通る回数そのものは減りません。高いところへ登り、家じゅうを回り、こちらが動けばついてくる。それがこの猫種の過ごし方だからです。減らせるのは通る回数ではなく、1回あたりに毛が受ける横向きの力のほうです。通る場所の幅を数センチ広げる。壁に最初に触れる場所の毛先をそろえておく。芯は小さいうちに、毛先の側から外す。バリニーズのもつれで動かせるのは、そこです。
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よくある質問
- バリニーズは長毛なのに、ブラッシングは毎日必要ですか?
- 全身を毎日回す必要はありません。バリニーズの被毛は下毛がほとんどないので、上から押されても毛が起き上がります。手が要るのは、狭いところを抜けるときに壁へ最初に触れる場所です。脇の下、後ろ脚の外側、しっぽのつけ根、胸の前。この4か所に指を入れるだけなら30秒で終わります。全身は週に1〜2回で足りることが多いです。
- もつれを見つけたとき、ブラシとコームのどちらから使えばいいですか?
- 道具を持つ前に、指で芯の大きさと毛の向きを確かめてください。毛が交差してねじれているものに道具を入れると、ねじれが締まる向きに力がかかります。外側の毛を毛先の側から数本ずつ外して、芯が小さくなってから道具を入れてください。道具は、ほどく役ではなく、ほどけたあとの流れをそろえる役になります。
- 同じ場所ばかりもつれるのですが、毛質のせいでしょうか?
- 同じ場所に戻るときは、毛の側より、その場所が毎日何に触れているかを先に見てください。首輪の下、寝床の縁、通っているすき間の壁。バリニーズは1日に何度も同じ経路を歩くので、同じ場所が同じ回数だけこすれます。部屋の側を1つ変えて、1週間後に同じ場所を触って比べると、原因がどちらにあるか分かります。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
