C05犬種・猫種別ケア

ヒマラヤンはなぜ涙やけが起きやすいのか。長毛から考える

公開日 2023年9月12日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の窓のそばで、毛の長いふんわりした猫が静かに座っているところ
涙が下へ落ちていかない顔では、目のまわりの一点に涙が溜まったまま残ります。

ヒマラヤンの目の下を朝に拭いて、指の腹で鼻の脇を押すと、拭いたはずの場所からじわりと湿りが戻ってくることがあります。表面の毛は乾いています。それなのに、押すと水分が出てくる。ヒマラヤンの涙やけを考えるときは、この「押すと戻ってくる」が出発点になります。顔が長い子なら、あふれた涙は下へ落ちて毛を伝っていきます。鼻が低い顔では、落ちていく先の傾きがありません。行き場を失った涙は、目のすぐ下のくぼみに集まって、そこに留まります。流れる涙と、溜まる涙は別のものです。この記事では、まずなぜ溜まるのかを見てから、拭くより先にやることの順番を書きます。

流れる涙と、溜まる涙|ヒマラヤンの涙やけでやり方が変わる理由

ヒマラヤンの顔を正面から見ると、目の位置と鼻の先が、ほとんど同じ平面に並んでいます。鼻が低く、目が大きく、そのあいだに深い切れ込みがある。この顔の作りが、涙やけの出方をほかの猫と分けています。目のまわりの話をする前に、まず涙がどこへ行くのかを見てください。

顔の長い子では、目からあふれた涙は重力にしたがって下へ落ちます。落ちながら毛を伝い、少しずつ移動して、途中で乾いていきます。涙は「通っていくもの」で、その通り道が線として色づきます。だから拭くときも、線をたどるという発想が成り立ちます。

鼻が低い顔では、この前提が崩れます。目のすぐ下から鼻の脇にかけて、面が内側へへこんでいるからです。あふれた涙は下へ落ちる前に、そのくぼみへ集まって止まります。移動しないので線になりません。かわりに、同じ一点に溜まったまま、次の涙が上から加わっていきます。ヒマラヤンの涙やけが、鼻の脇の限られた範囲だけ濃くなるのは、このためです。

溜まった涙は、毛の表面ではなく、毛の下にあります。長い毛が上からふたをするので、外からは湿って見えません。表面の毛だけが乾いていて、底に液体が残っている状態です。指の腹で押すと湿りが戻ってくるのは、底の溜まりが押し出されて表面へ上がってくるからです。

ここが分かると、拭き取りのやり方が変わる理由も見えてきます。表面の毛を拭くのは、ふたを拭いているのと同じことです。ふたの上をどれだけ丁寧に拭いても、底の溜まりは減りません。拭いた直後にまた濡れてくる、色が半日で戻る、と感じるとき、拭き方が弱かったわけではありません。手を入れる相手が、まだ変わっていないというだけです。

流れる涙と、溜まる涙。同じ涙やけでも前提が違う
流れる涙ヒマラヤンの溜まる涙
顔の作り鼻すじに傾きがある鼻が低く、目の下がくぼんでいる
涙の行き先下へ落ちて、毛を伝って移動するくぼみに集まり、その場に留まる
色づき方細い線として、下へ伸びる鼻の脇の一点が、面ではなく塊で濃くなる
どこにあるか毛の表面。外から見える毛の下、くぼみの底。上から毛がふたをする
拭いたあと拭いた場所は、しばらく乾いたまま押すと、底から湿りが戻ってくる
先にやること通り道をたどって拭く底の溜まりを、吸わせて抜く
Note毛の色が濃いことと、涙の量が多いことは別の話です

ヒマラヤンは顔の先の毛が濃い色をしています。濃い毛の上では、変色が起きていても外から見えにくくなります。白い毛の子で目立つ色が、この猫種では目立たないというだけで、溜まっている量が少ないという意味ではありません。見た目で判断せず、指の腹で鼻の脇を軽く押して、湿りが戻るかどうかで確かめてください。目のまわりを見るときは、色よりも手ざわりのほうが確かです。

拭くより先に、溜まりを吸わせて抜く|ヒマラヤンの涙やけに入る順番

手順の中心は、こするのではなく、当てて待つことです。くぼみの底にあるものは、拭き取りでは動きません。乾いた面を底へ届かせて、そこへ吸い上げてもらう。抜けたことを確かめてから、はじめて表面の拭き取りに移ります。順番を逆にすると、色は薄くなっても、底の溜まりは残ります。

  1. 触る前に、横から光を当てて、底に溜まりがあるかを見る

    正面からではなく、顔の横から光が入る向きに座らせます。くぼみの底に液体があると、その上の毛だけが束になって寝ています。周りの毛は立っているのに、そこだけ寝ている。この差が、底に溜まりがある合図です。何もなければ、その日は拭き取りをしなくて構いません。

  2. 乾いたコットンの角を立てて、毛の下へ届かせる

    面で当てるのではなく、角を作って、毛のあいだへ差し入れます。目標は毛の表面ではなく、くぼみの底の皮膚のすぐ上です。目のふちには触れないでください。角が底に届いたら、そこで止めます。ここまでは、拭く動作をまったくしていません。

  3. 動かさずに5秒、そのまま待つ

    角を当てたまま、5つ数えます。乾いた繊維が、底の水分を自分から吸い上げます。この5秒が、こすらずに溜まりを抜くための時間です。動かすと繊維が水を離してしまいますし、毛がこすれて折れます。待つだけなので、その子も嫌がりません。

  4. 角を替えて、2〜3回くり返す

    湿った角は、それ以上吸いません。指の中でコットンを回して、乾いた角を新しく作ってから、もう一度当てます。当てた角が湿らなくなったら、底の溜まりは抜けています。ここが、この手順の終点です。何回で終わるかはその日によって変わるので、回数ではなく「湿らなくなるまで」で判断してください。

  5. そこではじめて、湿らせた布で表面の毛の色を拭く

    底が抜けたあとなら、表面の拭き取りが意味を持ちます。目のふち側から鼻の脇へ、毛の流れに沿って一方向に動かします。往復させず、1回ごとに布の面を替えてください。ここでも力は要りません。落とすというより、浮いたものを運び出す動きです。

  6. 最後にもう一度、乾いた面を当てて残りを抜く

    拭き取りで足した水分が、そのままくぼみに残ります。仕上げは乾かすことではなく、足した水分を抜くことです。乾いたコットンの角を、同じ場所へ5秒当てる。これを省くと、拭いたあとのほうが底に水が増えた状態になります。ここまでで、片側1分ほどで終わります。

同じ場所に手を入れても、順番が違うと残るものが変わる
順番何をしているか底の溜まり
拭いてから、乾かす表面の毛の色を落とし、風で乾かすそのまま残る。押すと戻ってくる
吸わせてから、拭く底を抜いてから、浮いた色を運び出す抜けている。押しても戻らない
拭くだけで終わる水分を足したまま置く拭く前より増えることがある
Caution液体を顔へ直接吹きかけないでください

ヒマラヤンは顔が平らなぶん、鼻の脇から目までの距離がほとんどありません。スプレー状のものを顔へ向けると、霧がそのまま目に届きます。使うときは、目から離れた場所で布に含ませてから、目のふちを避けて鼻の脇へ持っていってください。綿棒を目のふちに沿わせるのも避けます。角度が少しずれただけで、先が目に当たります。指で押さえられる大きさの布かコットンのほうが、扱いを間違えません。

1日に何回さわるか|猫のヒマラヤンで拭き取りの頻度を決める

手順が決まると、次は回数です。ここでいちばん多いつまずきが、心配なぶん回数を増やしてしまうことです。拭き取りは、こするたびに毛が折れます。折れた毛はその場に寝たまま残り、次の涙をより溜めやすい向きにそろってしまいます。回数は多いほどよい、という種類の手入れではありません。

決め方は簡単です。朝に底を抜いたあと、夕方に同じ場所を指の腹で押して、湿りが戻っているかを見ます。戻っていなければ1日1回で足ります。戻っていれば、その時間帯にもう1回。これで、その子に必要な回数がそのまま出ます。カレンダーで決めるのではなく、戻るまでの時間で決めるということです。

この時間は、同じ猫でも一年のうちで動きます。空気が乾く時期は、表面が早く乾くぶん底に残る量が目立ちます。暖房の風が顔に当たる位置で寝ている日も変わります。春や秋に顔まわりの毛が入れ替わる時期は、毛の向きが乱れて溜まりを抱えやすくなります。季節の変わり目に一度、押して確かめる日をつくっておくと、回数を決め直せます。

拭くときに使う水分についても、決めておくと迷いません。ヒマラヤンは前足を舐めてから顔をなでるので、目のまわりは自分で手入れできている場所に見えます。ただ、前足が届くのは毛の表面までで、くぼみの底には入りません。底に何を残すかを決められるのは、人のほうだけです。

mofuwa スキンケアミストは、水以外のものを入れていません。電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。顔をなでた前足を、その子はそのあと必ず舐めます。顔に置いたものは口に入るものと同じだと考えると、選ぶ条件はそこで決まります。使うのは5つ目の手順、底を抜いたあとに表面の色を運び出すところです。目から離れた場所で布に含ませ、目のふちを避けて、鼻の脇へ毛の流れに沿って一方向。顔へ向けて吹きかけないでください。

Point顔をさわる時間は、短いほうが続きます

片側1分、両側で2分。この長さを超えると、次の日から顔を背けるようになる子が多いです。1回で完璧に色を落とそうとせず、底を抜くところまでで終える。表面の色は、底が抜けている日が続けば、少しずつ薄くなっていきます。顔をさわらせてくれること自体が、毎日のケアで一番大事な条件です。そこを失うと、手順の良し悪しは関係がなくなります。

色の濃さより、溜まりが戻るまでの時間|ヒマラヤンの涙やけで見ておくコツ

毎日の記録で見るものを、1つだけ決めておきます。毛の色ではなく、底を抜いてから湿りが戻るまでの時間です。色は光の当たり方でも変わりますし、濃い毛の上では変化そのものが見えません。戻るまでの時間なら、指で押すだけで、その子の中で比べられます。

先週まで夕方まで乾いていたのに、今週は昼に戻る。同じ手順を続けているのに戻りが早くなったなら、涙の量そのものが動いています。これは拭き取りのやり方で追いつく種類の変化ではありません。手をかける回数を増やす前に、いつからそうなったのかを書き留めてください。

戻るまでの時間で、何を見るか
先週までの戻り今週の戻り見ておくこと
夕方まで乾いている変わらないそのままの回数で構いません
夕方に戻る昼に戻るいつからかを記録。数日続くか見ます
昼に戻る抜いた直後に戻る回数を増やさず、相談を検討してください
左右とも同じ片側だけ早くなったその日のうちに、動物病院にご相談ください
Caution早めの受診をおすすめするサイン

片側だけ涙が増えた、目を細めている、まばたきが増えた、目やにの色や粘りが変わった、目のまわりの地肌が赤い、においがある、前足でこすり続けている、食欲や元気が落ちている。いずれかに当てはまるときは、拭き取りの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。ヒマラヤンは顔まわりの毛が長く、毛の色も濃いので、変化が外から見えにくい顔です。迷ったときは早いほうを選んでください。

相談の前には、戻るまでの時間、いつから変わったか、左右のどちらかの3つをメモしてください。この3つがあると、家でできる拭き取りの範囲かどうかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に念入りに拭いてから連れて行くと、もとの状態が分からなくなります。当日は、いつもどおりの顔のまま行ってください。

ヒマラヤンと暮らすうえで、鼻の低い顔の作りは変わりません。涙が下へ落ちていかず、目のすぐ下に溜まるという条件も、この子たちが持って生まれたものです。動かせるのは、涙の量ではなく、溜まったものがそこに留まっている時間のほうです。横から光を当てて、底にあるかどうかを見る。こすらずに、乾いた角を当てて5秒待つ。抜けてから、表面の色を運び出す。ヒマラヤンの涙やけで、毎日の側から手が届くのはそこまでです。そこから先は、動物病院と分担してください。

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よくある質問

ヒマラヤンの涙やけは、毎日拭いたほうがいいですか?
毎日「拭く」必要はありませんが、毎日「見る」ほうがよいです。横から光を当てて、鼻の脇の毛だけが束になって寝ていなければ、その日は何もしなくて構いません。溜まりがある日だけ、乾いたコットンの角を当てて5秒待つ。拭き取りは、底が抜けたあとに必要な日だけで足ります。回数を増やすほど毛が折れて、次の涙を抱えやすい向きにそろってしまいます。
市販の涙やけ用の布で強くこすっても、色が落ちません。
色が落ちないのは力が足りないからではなく、色のもとが毛の下に残っているからです。くぼみの底に溜まった涙は、表面をこすっても動きません。先に乾いた面を底へ当てて吸わせ、抜けてから表面を拭いてください。強くこするほど毛が短く折れて、その毛がまた溜まりを抱えます。落とす力より、当てて待つ時間のほうが効きめの差になります。
顔をさわらせてくれないのですが、どうすればいいですか?
一度に全部やろうとせず、その日は横から光を当てて見るだけで終えてください。次の日は、乾いたコットンを鼻の脇へ当てるところまで。5秒待つ手順は、こすらないぶん嫌がられにくいので、慣れるまでの入口として向いています。顔をさわらせてくれる状態を保つことが、拭き取りの精度より優先されます。抵抗が強い日は無理をせず、その日は見送ってください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。