C12Q&A・豆知識
あご座瘡とは?猫のあごに出る黒いつぶつぶ
猫のあごを指の腹でなでたときに、ごま粒のような黒いものが指先に残ることがあります。それを見つけた飼い主が、調べていて行き着く言葉があご座瘡です。あご座瘡とは、猫のあごに出る黒いつぶつぶを指す呼び名です。ざ瘡というのは、人の医学で「ニキビ」と呼ばれているものの、もとの呼び方に当たります。ただ、名前が近いだけで、猫のあご座瘡と人のニキビでは、起きている場所の事情がかなり違います。あごは、猫が自分の舌では届かない数少ない面で、しかも食べるたびに食器のふちが当たります。だからあご座瘡は、体質の話としてよりも、場所の話として説明されることが多い言葉です。この記事では、あご座瘡という言葉が何を指しているのか、なぜあごなのか、家で見て分かるのはどこまでなのかを、8つの問答に分けて開いていきます。
あご座瘡とは何を指す言葉ですか|猫のあごに出る、黒いつぶつぶの呼び名
先に答えを置きます。あご座瘡とは、猫のあごに出る黒いつぶつぶを指す呼び名です。あごの先から下唇のふちにかけて、毛の根元に黒い点が並ぶ状態を、まとめてそう呼んでいます。猫ざ瘡、猫のあごニキビ、といった言い方をされることもありますが、指しているものは同じです。
「ざ瘡」という言葉のほうも見ておきます。ざ瘡とは、毛穴の出口のまわりが変化した状態をまとめて呼ぶときの言い方とされています。人の医学では、これがふだん「ニキビ」と呼ばれています。猫のばあい、その状態があごに出ることが多いので、部位の名前をつけてあご座瘡と呼ばれる、という順番です。
- 黒い点が、毛の根元に並ぶ:毛先ではなく、地肌に近いところにあります
- 指でなでると、ざらつきを感じる:目で見えるより先に、手で気づくことがあります
- 数が少ないうちは、被毛に隠れる:毛をかき分けて初めて見えることがあります
- 毛の色で、見つけやすさが変わる:淡い色の猫では目立ち、黒い猫では見えにくくなります
- 出る範囲は、あごの下に集まりやすい:全身に散らばる形ではないとされています
この言葉を知っておくと、明日から何が違って見えるのか。黒い粒を「汚れ」として落としにかかる手が、いったん止まります。汚れなら拭けば消えます。あご座瘡と呼ばれている状態は、拭いて消える汚れとしては扱われていません。呼び名を1つ知っただけで、家での最初の一手が変わる。これが、あご座瘡という言葉を調べる値打ちです。
なぜ「ニキビ」と呼ばれるのですか|人のニキビと、猫のあご座瘡で事情が違うところ
呼び名が重なるのは、どちらも毛穴の出口まわりの話として説明されているからです。ただ、名前が同じところまでで、そこから先の事情はかなり違います。ここを混ぜたまま読むと、人のニキビでやることを、そのまま猫のあごに持ち込むことになります。並べて見ておきます。
| 見るところ | 人のニキビ | 猫のあご座瘡 |
|---|---|---|
| 出る場所 | 顔・背中・胸など、広い範囲に散らばる | あごの下と口の先に集まりやすいとされる |
| 本人が触れるか | 自分で洗える。鏡で見える | 舌が届かない。自分では見えない |
| 年齢との関係 | 思春期に多いとされる | 年齢を問わず出るとされる |
| 気づかれ方 | 赤みやふくらみで気づく | 黒い粒として、なでたときに気づく |
| 毎日の生活で触れるもの | 洗顔料・寝具・髪 | 食器のふち・水の面・撫でる人の手 |
| 家でできること | 洗い方を変えられる | 当たるものと、触る回数を変えられる |
この表でいちばん効いているのは、2行目です。人は自分の顔を洗えますが、猫は自分のあごを毛づくろいできません。人のニキビの話には「洗いすぎない」「こすらない」といった、本人の手の使い方の話が必ず入ってきます。猫のあご座瘡には、そもそも本人の手が入っていません。だから話の中身が、体の側ではなく、あごに当たっているものの側へ移ります。
「ニキビ」という言葉は分かりやすいぶん、分かった気にさせます。あご座瘡と呼ばれている状態が、人のニキビと同じ理由で起きているとは限りません。猫の皮膚は人より薄いとされ、被毛の密度も、あごの毛の生え方も違います。呼び名が同じでも、条件が同じではない。用語を調べるときは、その言葉が「何をまとめて呼んでいるか」までにとどめて、原因の説明までを引き受けさせないほうが、読み違えずに済みます。
あごは、猫の舌が届かない数少ない面です|毛づくろいの地図から外れている場所
猫は、体のほとんどを自分で毛づくろいできる動物とされています。背中も、腹も、後ろ足の先も、体を折りたたんで舌を通します。前足を舐めてから顔をなでる動作もあって、目のまわりや耳の外側は、その方法で手入れされています。それでも、あごの下だけは、舌が直接届きません。前足でなでる動作も、あごの下には回りにくい形をしています。
右側の面は、猫が自分で管理していない面です。あご座瘡の話が「場所の問題」として語られるのは、ここが出発点になっています。体質や年齢だけの話であれば、体のどこに出てもおかしくありません。ところが黒い粒が集まるのは、たいていあごの下です。全身の条件では説明がつきにくく、その面だけの条件を見にいくことになります。
もう1つ、被毛の側の条件もあります。あごの下の毛は、背中の毛より短く、まばらに生えていることが多いとされます。毛が受け止めてくれないぶん、当たったものが地肌にそのまま届きます。届かない面であることと、毛のクッションが薄いこと。この2つが重なっているのが、猫のあごです。
食器のふちが当たる、という条件|あご座瘡が場所の話だと言われる理由
届かない面である、というだけなら、首の後ろも頭のてっぺんも同じです。あごにだけ物が集まる理由は、当たるものの回数にあります。猫が1日に何回食べて、何回水を飲むかを数えてみてください。そのたびに、あごは器のふちか、水の面に触れています。
| 当たるもの | 1日に当たる回数の目安 | 見ておくところ |
|---|---|---|
| フードの器のふち | 食べる回数のぶん | 深さ・ふちの傷・洗った頻度 |
| 水の器のふち・水の面 | 飲む回数のぶん | 水を替えた回数・器の材質 |
| 床やマットの面 | 伏せて休むたび | 掃除の間隔・敷いているものの素材 |
| 撫でる人の手 | その家の触り方しだい | 触る前に手が乾いているか |
| 家具や段ボールの角 | こすりつける癖があれば毎日 | 同じ角にくり返し当てていないか |
こう並べると、あごが体のなかでどれだけ特殊な面か分かります。猫の手が入らず、毛のクッションが薄く、しかも1日に何度も物が当たる。あご座瘡が場所の問題として語られるのは、この3つが同じ面で重なっているからです。体の側を変えるのは簡単ではありませんが、当たっているものの側は、家で動かせます。
- 器を洗う間隔:毎食後に洗って乾かしているか、まとめて夜に洗っているか
- 器のふちの状態:細かい傷が入っていないか。傷は汚れが残る場所になります
- 器の深さ:深いほど、あごがふちに当たる時間が長くなります
- 水の器の位置:フードの器と離れているか。飲む姿勢が変わります
- 敷いているもの:伏せたときに、あごが乗る面がどれくらいの間隔で洗われているか
器を替え、置き場所を変え、洗う回数も増やす。同じ週にまとめてやると、あとで何が効いたのかが分かりません。2週間に1つだけ動かして、その前後を見比べてください。あご座瘡は、見た目の変わり方がゆっくりだと言われています。1週間では差が出ないことのほうが多いので、記録の間隔も、それに合わせて長めに取ります。
黒いつぶつぶを見つけました、そのままで大丈夫ですか|家で知りたいことと、決められないこと
ここは、はっきり書いておきます。それがあご座瘡なのかどうかを、家で決めることはできません。黒い粒に見えるものが何なのか、どこまで進んでいるのか、別の見方をしたほうがよいものなのか。その判断は動物病院の領域です。この記事も、そこには立ち入りません。
そのうえで、家でできることはあります。判断ではなく、記録です。受診するかどうかを迷っている時間を短くしてくれるのは、いつからどう変わったかという記録のほうです。何を書き留めればよいかを、決められることと決められないことに分けて並べます。
| 内容 | 書き留め方 | |
|---|---|---|
| 記録できる | いつから見えているか | 気づいた日を1行。あいまいなら「◯月の後半」でも足ります |
| 記録できる | どこまで広がっているか | あごの先だけか、下唇のふちまでか。範囲で書きます |
| 記録できる | 触ったときの手ざわり | ざらつくだけか、ふくらみを感じるか |
| 記録できる | 本人が気にしているか | あごを家具にこすりつける回数が増えていないか |
| 決められない | それがあご座瘡かどうか | 見た目だけでは分けられないものがあります |
| 決められない | そのままにしてよいかどうか | 経過の見通しは、実際に見てもらって決まります |
記録のコツを1つだけ。写真は、毎回同じ明るさで、同じ距離から撮ってください。窓ぎわの昼、正面から。これを決めておくだけで、2週間後の写真と比べられるようになります。夜に照明の下で撮った写真と、昼に窓ぎわで撮った写真は、色も粒の見え方も変わってしまい、比べる材料になりません。
もう1つ、猫の側の条件も見ておきます。あごを触られるのが苦手な猫は少なくありません。記録のために毎日押さえつけていると、そのうち近づいただけで逃げるようになります。そうなると、あとで本当に見たいときに見られません。週に1回でかまいません。ケアのついでに、機嫌のよい時間だけにしてください。
あご座瘡で、飼い主がやってはいけないことは何ですか|取ろうとしない
この記事でいちばん強く書いておきたいところです。黒い粒を、つまんで取ろうとしたり、押し出したりしないでください。調べていると、家でどうにかする方法が並んでいるのを見かけます。あご座瘡と呼ばれている状態に対して、家でやることではありません。
- つまむ・押し出す:猫の皮膚は人より薄いとされます。指の力の加減が、そのまま届きます
- ごしごしこする:あごの毛は短く、地肌が近い面です。こすった刺激が地肌に直接残ります
- 爪や器具で削り取る:削れているのが粒だけとは限りません
- 人用のものを持ち込む:人の皮膚に合わせて作られたものは、猫の皮膚を想定していません
- 毎日、長く触り続ける:あごを触られること自体を嫌がるようになると、見る機会がなくなります
調べているときに、こういう言い方に出会うことがあります。
黒い粒は毛穴に詰まった汚れなので、押し出せばきれいになります これを塗っておけば、あご座瘡はすぐ治ります
どちらも、読むと分かりやすい形をしています。ただ、猫のあごで何が起きているかを、家で確かめた人はいません。粒を出したあとに何が残るのか、そこが猫にとってどうなのか。確かめられないことを前提にした手順は、うまくいったときだけ正しく見えます。あご座瘡について家で決めていいのは、当たっているものの側と、触る回数の側までです。
無理に取ろうとした日から、あごを触らせなくなる猫がいます。そうなると、家で見ることも、動物病院で見てもらうことも、どちらも難しくなります。あご座瘡は、経過を見ていくことになりやすい話だと言われています。見る機会を自分から減らしてしまうのが、家でいちばん取り返しのつかない失敗です。今日きれいにすることより、来月も触らせてくれることを取ってください。
毎日のケアで動かせるのはどこですか|あごへ手が入る形をつくる
動かせるのは2つです。あごに当たっているものと、人の手があごに入る回数。猫は水を使ったケアがしにくい動物なので、洗う日を増やすという方向は現実的ではありません。毎日の順番のなかに、あごの面を1つ足しておくほうが続きます。
-
食べた器を、その日のうちに洗って乾かす
あごに毎日いちばん多く当たっているのが器のふちです。洗ったあと、乾かすところまでを1組にしてください。濡れたまま伏せておいた器は、次の食事までのあいだが長くなります。
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食べたあと、あごの下を乾いた面で一度なでる
こするのではなく、当てて離すだけです。3秒で終わります。毎日の食後に1回と決めておくと、忘れません。この3秒が、週に1回の観察の代わりになります。
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週に1回、明るいところで毛をかき分けて見る
昼の窓ぎわで、正面から。範囲が広がっていないか、ふくらみが出ていないかだけを見ます。数を数える必要はありません。
-
体のケアの順番に、あごの面を1か所として入れる
体のケアの順番のなかに、あごを1か所として入れておきます。ついでにやる形にしておくと、あごだけを特別に触られる感じが薄れて、嫌がられにくくなります。
使うものの話も、少しだけしておきます。あごは口に近い面なので、においの強いものは猫が嫌がります。mofuwa 猫あごクリーナーは、あごに留まるようジェルにしたアルカリ電解水で、香料・アルコール・界面活性剤など9つを入れていません。ぬるま湯であごを軽く湿らせてから、コットンにとって、くるくるとなでるだけで、拭き直しも水で流す工程も入りません。無香料で、50g・3,520円です。当てたコットンを離して、面に何が移ったかを見てください。あご座瘡という呼び名からは分からない「今日ぶんの量」が、そこにだけ残ります。あご以外では、耳のまわりや、尾の付け根が脂っぽくなる猫にも同じ使い方ができます。炎症や出血がある場合は使用せず、獣医師にご相談ください。
コットンに当てて移ってくるのは、器のふちから来たものと、皮脂に混ざったほこりです。あご座瘡と呼ばれている状態そのものをどう見るかは、実際に見てもらって決まります。だから順番は、家で当ててから様子を見るのではなく、先に動物病院で見てもらい、そのうえで毎日の順番にあごの面を1か所足す、です。ここを逆にすると、最初にどう見えていたかが分からなくなります。
あご座瘡は、くり返しますか|家で答えの出ない3つの疑問
最後に、家で答えの出ない疑問を並べておきます。増えていくのか。ほかの猫にうつるのか。一度おさまってもまたくり返すのか。あご座瘡について検索する人が最後に知りたいのは、たいていこの3つです。そして、この3つはどれも、その子を見ないと答えが出ません。一般論としての説明は読めますが、うちの子の答えにはなりません。
| 見るところ | 記録しながら様子を見てよい | 早めに相談したい |
|---|---|---|
| 範囲 | あごの一部で、2週間変わらない | 下唇のふちや口のまわりへ広がってきた |
| 手ざわり | なでるとざらつくだけ | ふくらみや、熱を感じる |
| 本人の様子 | 触っても嫌がらない | 触ると避ける。あごをこすりつける回数が増えた |
| 毛 | 抜けていない | その部分の毛が減ってきた |
| 食事 | いつもどおり食べている | 食べる量が減った、食べ方が変わった |
| 期間 | 気づいてから日が浅い | 1か月以上、同じ状態が続いている |
受診を決めたら、持っていくものを用意しておくと話が早く進みます。気づいた日、範囲の写真を2枚以上、使っている器の材質、器を洗う間隔、家でやったこと。この5つをメモにして渡してください。とくに「家でやったこと」は大事です。触ったのか、何かを塗ったのか、そのままにしていたのか。そこが分かると、いま見えている状態の読み方が変わります。
ここまでを、もう一度まとめておきます。あご座瘡とは、猫のあごに出る黒いつぶつぶを指す呼び名です。人のニキビと名前は近くても、あごが猫の舌の届かない面であること、毛のクッションが薄いこと、1日に何度も器のふちが当たること。この3つが重なった場所の話として語られています。だから家で動かせるのは、当たっているものと、手が入る回数のほうです。
あごの範囲が広がってきた、ふくらみや熱を感じる、その部分の毛が減った、触ると強く嫌がる、食べる量や食べ方が変わった、あごをくり返し家具にこすりつけている、1か月以上おなじ状態が続いている。こうした変化があるときは、家でケアを足す前に動物病院にご相談ください。あご座瘡という呼び名は、見えているものをまとめて指しているだけで、そこから先の見立ては、実際に見てもらって決まります。気づいた日と写真を持っていくと、その場で経過を追ってもらえます。
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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
