C14トリマー/獣医師視点
水を嫌がる子への近づき方
蛇口をひねる前に、その子はもう後ろ足の向きを出口へ変えています。まだ水は出ていません。音もしていません。それでも体の向きだけが先に動いているので、現場では水を嫌がる子の近づき方を、蛇口に手をかける30秒前から組み立てます。この30秒のあいだに何が起きているかを見ないまま近づくと、水に触れた瞬間の反応だけが記憶に残ります。そして次の週、その反応に備えて手が早くなり、30秒はもっと短くなります。水を嫌がる子への近づき方が年々きつくなっていくのは、たいていこの順路をたどります。ここでは、現場で見てきた場面から、嫌がる理由の出どころ、近づき方を分ける考え方、濡らす向きを変えたあとの変化までを並べます。
後ろ足の向きが先に変わる|水を嫌がる理由が体の側に出てくるところ
水を嫌がる子を何頭も見ていると、反応が出る順番がだいたい同じであることに気づきます。最初に動くのは耳ではなく、後ろ足です。前足は床についたまま、後ろ足だけが出口の方向へ半歩ずれる。次に重心が後ろへ移り、それから耳が伏せられます。水の音が鳴るのは、この3つが終わったあとです。つまりその子は、水を感じて嫌がっているのではなく、水が出るまでの手順を覚えていて、その手順の途中で先に動いています。
| 時点 | その子の側で動くもの | 人の側で起きていること |
|---|---|---|
| 30秒前 | 後ろ足が出口へ半歩 | 道具を並べる音がしている |
| 20秒前 | 重心が後ろへ移る | その子を抱え上げようと腰を落とす |
| 10秒前 | 耳が伏せられる | 首や胴に手をかける |
| 5秒前 | 全身が固くなる | 台や洗い場へ運ぶ |
| 0秒 | 逃げるか、固まるか | 蛇口に手をかける |
この表の右側が、水を嫌がる理由の出どころです。その子が覚えているのは水ではなく、水に至るまでの手順のほうです。道具が並ぶ音、腰を落とす気配、胴に回る手。どれも水ではありませんが、毎回同じ順番で並んでいるので、その並び全体が1つの合図になります。水を嫌がる、という言い方でひとまとめにしているものの中身は、この並びのどこかにあります。
だから現場では、いちばん最初に手順の並べ替えをします。道具を並べるのを前日にする、抱え上げずに自分で歩いて入れる、蛇口をひねる前に水を汲んで置いておく。順番を入れ替えただけで後ろ足が動かなくなる子は、それほど珍しくありません。水そのものが苦手な子もいますが、その判定は、並びを崩したあとにしか下せません。並びが残っているうちは、何に反応しているのかを切り分けられないからです。
飼い主への説明で伝えたいのも、この順番のことです。家では、シャンプーの前に浴室の扉を開ける音が合図になっていることが多くあります。音と場所と時刻がいつも同じだと、その3つが水と同じ意味を持ちます。水を嫌がる子への近づき方を変えるというのは、この3つのうち1つを毎回違うものにしておく、という意味でもあります。
逃げるのか固まるのか|水を嫌がる子への近づき方を二つに分ける考え方
0秒の時点で出る反応は、大きく二つに分かれます。逃げる子と、固まる子です。同じ「嫌がる」に見えますが、この二つに同じ近づき方をすると行き先が逆になります。逃げる子は動ける場所を探しているので、逃げ道を1つ残すと動きが止まります。固まる子は動けなくなっているので、逃げ道を残しても使いません。こちらは、体を支える面を増やすほうに手を使います。
見分けの手がかりは、反応の強さではありません。動いているかどうかです。暴れる子のほうが負担が大きいと見えますが、現場でより気をつけるのは、声も出さず足も動かさない子のほうです。動かない子は、どこまでが平気でどこからが限界なのかを外から読めません。逃げる子は、動きが止まった時点が目安になります。固まる子には、その目安が出てきません。
- 逃げる子への手:正面に立たず、体の横に並びます。前は開けたままにして、後ろ足の側だけを壁に近づけます。動きが止まったら、その位置で30秒何もしません
- 固まる子への手:胸の下と後ろ足の付け根に手のひらを入れて、面で支えます。持ち上げず、体重を人の手に預けられる形にします。呼吸が1度深くなるまで動かしません
- どちらにも共通する手:頭から先に触りません。肩か胸のどちらかから始めて、顔と足先はいちばん最後に回します
- やめておく手:後ろから抱え上げる、上から覆いかぶさる、逃げ道を体でふさぐ。この3つは、逃げる子では力を増やし、固まる子では固さを長引かせます
水を嫌がる子への近づき方をこの二つに分けておくと、その日の組み立てが変わります。逃げる子には時間をかけ、固まる子には工程を削ります。逃げる子は待てば落ち着きますが、固まる子は待っても固さが抜けません。固まっている時間そのものが負担になるので、その日にやることを減らして、全体を短くするほうへ倒します。同じシャンプーでも、前者では所要時間が延び、後者では縮みます。
濡らす向きを足先から変えた3週間|水を嫌がる子に起きた変化
近づき方を変えたあと、次に変えるのは濡らす向きです。水をその子のほうへ運ぶ、という順番にします。その子を水のところへ連れていくと、逃げ場のない場所で水が始まります。水を汲んで持っていくと、水が届く範囲をこちらで決められます。足先から始めて、膝、おなか、背中の順に上げていく。頭と顔は最後まで濡らしません。
| 週 | 変えたこと | その子の側に出た変化 |
|---|---|---|
| 1週目 | 水を汲んで足先だけ濡らす | 後ろ足は動くが、出口までは行かない |
| 2週目 | 膝の高さまで、時間は同じ | 30秒で重心が前に戻る |
| 3週目 | おなかと背中まで上げる | 耳が伏せられるのが1回だけになる |
| 3週目の終わり | 蛇口の音を先に鳴らしておく | 音では動かなくなる |
| 翌月 | 台に乗る前に自分で歩いて入る | 抱え上げる工程がなくなる |
この変化で大きいのは、最後の行です。抱え上げる工程が1つ消えると、そこにあった反応もまとめて消えます。水を嫌がる子の手順は、部品の数だけ反応の起点を持っています。部品を減らすほうが、同じ部品を上手にこなすより早く進みます。近づき方を見直す作業は、技術を足す作業ではなく、手順の部品を数える作業に近いところがあります。
そのうえで、洗う日と洗う日のあいだにやっておくことがあります。水を嫌がる子では、洗う回数そのものを増やせません。だから間の日に、地肌へ届くものを1本置きます。乾かしたあとの毛を分けて、mofuwa スキンケアミストを10センチ離して吹きかけ、指の腹でなじませます。高機能性電解酸化水100%なので、毛の上で止まらずに地肌まで落ちていきます。精製水と浸透のしやすさを比べた自社の検証では、35倍という数字が出ています。
スキンケアミストを間の日に置いている理由は、水を嫌がる子に特有の事情と重なります。舐めても差し支えのない基準でつくられているので、顔のまわりまで同じ手つきで通せます。水が苦手な子は、濡れた場所を舐めて自分で乾かそうとします。届かせたい場所と舐める場所が同じなので、場所を選ばずに使えることが条件になります。拭き取りに戻る必要もないため、タオルを持ち出す工程を増やさずに終われます。タオルが出てくること自体が合図になっている子では、これが効いてきます。
先月まで平気だった足先で急に体をひねる/触ると同じ場所だけ避ける/固まる時間が週ごとに長くなる/濡らしていない日でも同じ姿勢を嫌がる。こうした変わり方は、近づき方を直しても戻りません。痛みがあると、水よりも触られることのほうが先に苦手になります。いつ・どこを触ったときに何が起きたかを1行ずつ書いた紙を持って、動物病院で診てもらってください。そのうえで、間の日のケアは続けられます。
現場からは、この線で病院へつなぎます。近づき方を3週かけて変えたのに、反応が同じ場所だけで強くなる場合は、手順の問題ではありません。全身で嫌がるのは手順の話、1か所だけで嫌がるのは体の話。この分け方は、飼い主への説明でもそのまま使えます。
何十頭ぶんの近づき方が残したもの|水を嫌がる子と積み上げる経験の使い方
水を嫌がる子を長く見てきて手元に残るのは、うまくいった手つきではありません。どの部品を抜いたら反応が消えたか、という記録のほうです。手つきは人によって違うので、そのまま渡せません。抜いた部品の記録は、誰の手でも同じように使えます。経験として積み上がるのは、こちら側です。
| 記録するもの | 書き方 | 次に使うところ |
|---|---|---|
| 抜いた部品 | 抱え上げ・道具の音・場所 | 次の子でも先に抜いてみる |
| 逃げるか固まるか | その日の0秒の反応 | 時間をかけるか、工程を削るか |
| 濡らし始めた場所 | 足先・膝・おなか | 同じ高さから再開する |
| 間の日にやったこと | 乾かしたあとに何を置いたか | 洗う回数を増やさずに続ける |
経験を渡す相手は、飼い主です。サロンでできるようになった子が、家でも同じとは限りません。家と現場では、音も床も人の手も違います。渡せるのは手つきではなく、順番と、抜いてよい部品の名前です。
水を嫌がる子への近づき方で、最初に手をつけるところは1つです。蛇口に手をかける30秒前に、自分の手が何をしているかを見ておく。道具を並べているのか、腰を落としているのか。その30秒を書き出せたら、次の1回でどれを抜くかが決まります。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
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商品ページを見る本記事は商品の情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。掲載している検証データは特定条件下での試験結果であり、すべての環境で同じ結果を保証するものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
