C12Q&A・豆知識
毛球症とは?毛が胃に溜まった状態
床に落ちていたものを片づけながら、毛球症という言葉を初めて検索したのは、その日の夜でした。毛球症とは、毛づくろいで飲み込んだ毛が胃の中で固まった状態を指す言葉です。腸へ抜けていかずに胃に残った毛が、少しずつ寄り集まって塊になったもの、と説明されています。ただ、この言葉を調べているときにいちばん知りたいのは、たぶん定義そのものではありません。うちの子が吐いたあれは毛球症なのか、というところです。ここで先に一つだけ書いておきます。毛球は吐くものとして知られていますが、吐けているあいだは、体の中を通っている状態です。この記事は、毛球症とは何を指す言葉なのかを置いたうえで、家でできることがブラッシングに戻ってくるまでを、毎日のケアの側から書いた読みものです。
吐いたあとで言葉を調べた|毛球症とは何かを知らないまま過ぎていた数年の経験
その日、床にあったのは細長い塊でした。長さは指の第一関節くらいで、色はその子の背中の毛と同じでした。掃除をしながら、はじめて「毛球症」という言葉を検索しました。それまで何度も同じものを片づけていたのに、言葉として調べたのはその日が最初でした。片づける対象としては知っていて、名前としては知らなかった、という状態が数年続いていたことになります。
検索して出てきた説明は、どれもだいたい同じでした。毛球症とは、毛づくろいで飲み込んだ毛が胃の中で固まった状態を指す言葉です、と書かれています。読んだ瞬間に思ったのは、では自分がいま片づけたこれは毛球症なのかどうか、という一点でした。言葉の意味は分かっても、目の前のものがそれに当てはまるのかどうかは、その説明からは決まりません。定義が分かったのに、知りたかったことは何も決まらない。用語を調べたときに起きることは、たいていこれです。
犬と暮らしている人にとっても、他人事の言葉ではありません。猫の言葉だと思われがちですが、毛球症とは種を限定した呼び名ではなく、毛づくろいをして毛を飲み込む動物に共通して使われる言葉とされています。長い毛の犬や、体をよくなめる犬でも同じ話が出てきます。ただ、犬と暮らしている人からは「吐く場面を見た記憶があまりない」という話のほうをよく聞きます。見えないだけで、口へ入る道すじは同じです。気づく順番が変わるだけです。
- 片づけたもの:細長い塊。色はその子の被毛と同じで、においはほとんどありませんでした
- 数えていなかったこと:前に同じものを見たのが、いつだったか
- その日の食事:いつもと同じ量を、いつもの時間に食べていました
- そのあとの数時間:水を飲んで、いつもの場所で寝ていました
- 見ていなかったこと:その週、毛づくろいにどれだけ時間を使っていたか
- 思い出せなかったこと:ブラシをかけたのが、何日前だったか
毛球症とは何かを知らなくても、床の掃除はできます。だから、言葉を調べる動機がなかなか生まれません。片づけが終わってしまうので、そこで一件落着になります。ただ、名前のないままにしておくと、回数も、間隔も、その前の週の暮らしも、記録の対象になりません。記録がないと、増えているのか減っているのかも決められません。言葉をひとつ持つことの実用的な意味は、たぶんここにあります。数えられるようになる、ということです。
飲み込んだ毛には行き先が三つある|毛球症とはどこで起きている言葉なのかという背景
毛づくろいをすると、抜けかけた毛が舌に絡んで口の中へ入ります。猫の舌の表面には後ろを向いた細かい突起が並んでいて、いったん絡んだ毛は外へ出しにくく、そのまま飲み込む形になるとされています。犬の舌は作りが違いますが、体をなめる時間が長ければ、同じように毛は入っていきます。毛づくろいは、被毛を整える動作であると同時に、毛を口の中へ運ぶ動作でもあります。ここが、この言葉の出発点です。
飲み込まれた毛は、胃に落ちます。ここから先の行き先は、大きく三つに分かれると説明されています。三つを同じ表に並べると、毛球症とはそのうちのどれを指した言葉なのかが、はっきりします。
| 行き先 | 体の側で起きているとされること | 家から見えること |
|---|---|---|
| 腸へ抜けて便に出る | 食べたものと一緒に、そのまま運ばれていきます | 見えません。ふだんはこの経路です |
| 胃から吐き出される | たまった毛が塊になって、口から戻ってきます | 床に細長い塊が落ちます |
| 胃に残る | 出ていかなかった分が、少しずつ寄り集まります | 何も見えません |
| どれになるかを決めるもの | 飲み込んだ量、食べているものの量、その子の体の側の条件 | 家では決められません |
| 毛球症と呼ばれるのは | 残ったものが塊としてとどまった状態とされます | この判断は、家ではできません |
この表でいちばん大事なのは、上の二つです。腸へ抜けるか、吐き出されるか。どちらも「出ていっている」経路です。毛球症という言葉が指しているのは、三つめの、出ていかなかった分のほうです。だから、吐いたものを見て毛球症だと決めるのは、順番として逆になります。吐けているということは、その分は胃から出ていったということだからです。
ここが、この言葉を調べた人がいちばん取り違えやすいところだと思います。毛球は「吐くもの」として知られていますが、吐けているあいだは通っている状態です。気にかけたいのは、吐いた回数そのものよりも、吐こうとしているのに何も出てこない、という場面のほうだと言われています。そのときは、家で様子を見る話ではありません。動物病院にご相談ください。
もうひとつ、表の四行目にも触れておきます。三つの行き先のどれになるかは、飲み込んだ量だけで決まるわけではないとされています。食べているものの量、水を飲んでいる量、その子の体の側の条件。家で数えられるのは、このうち量の入口だけです。ほかは、家の側からは触れません。だから、毛球症とは何かを知ったあとで飼い主にできることは、思っているより狭い範囲に絞られます。狭いぶん、はっきりしているとも言えます。
吐いた回数より、飲み込む量のほうが先に動く|犬と猫で毛球症の変化の出かたが違って見える理由
口へ入る量は、季節と暮らし方で動きます。抜け毛が増える時期には、同じ時間だけ毛づくろいをしていても、入る量が増えます。逆に、毛づくろいの時間そのものが延びる時期もあります。量が動く入口は二つあって、毛の側と、時間の側です。毛球症の変化を家から見るときは、この二つのどちらが動いた週なのかを分けておくと、話が整理できます。
- 換毛の時期:抜けかけた毛が被毛の中に残っているので、同じ動作で入る量が増えます
- 気温が下がる時期:室内で過ごす時間が延びると、毛づくろいに使う時間も一緒に延びます
- 暮らしが変わった週:引っ越し、来客、家族の生活時間が変わった時期は、体をなめる回数が増えることがあります
- 皮膚がかゆいとき:同じ場所をなめ続けるので、その部分の毛が集中して口へ入ります
- ブラッシングの間隔:間隔が空くほど、抜けた毛が被毛の中に残ったままになります
- 多頭のおうち:おたがいをなめ合うと、自分以外の毛も一緒に入っていきます
犬と猫で違って見えるのは、この入口のうち、どれが強く効くかが違うからです。猫は起きている時間のかなりの部分を毛づくろいに使うとされていて、時間の側がもともと大きい。犬は、体をなめる時間そのものは猫ほど長くない代わりに、皮膚にかゆみがあるときの「同じ場所をなめ続ける」という形で、局所的に量が跳ね上がります。犬の毛球症の話が皮膚の話とつながりやすいのは、この経路があるためです。同じ言葉でも、どこを見ればいいかが変わります。
図の真ん中だけが、家から見えている部分です。床に落ちているものを数えても、胃に残っている分は数えられません。だから、家での観察は「出たもの」ではなく「入る量」の側に置くほうが、実際に動かせます。毛づくろいに使っている時間と、ブラシをかけた日付。この二つなら、毎日のケアの中で数えられます。どちらも道具が要りません。
ここははっきりさせておきたいところです。床に落ちていた塊を見て、毛球症だと決めることは家ではできません。吐いたものが毛の塊に見えても、そこから胃の中の状態は分かりません。逆に、何も吐いていないから大丈夫、ということでもありません。判断は動物病院の側にあります。家の側にあるのは、いつ・何回・どのくらいの間隔だったかという記録と、口へ入る量を動かすことの二つだけです。
言葉を知ると、ブラッシングの置き場所が変わる|毛球症とは家で何ができるかまで含んだ話
毛球症という言葉を知る前と後で、いちばん変わったのはブラッシングの意味でした。それまでブラシは、床に落ちる毛を減らすための道具でした。掃除の前倒しです。言葉を知ってからは、被毛の中に残っている抜け毛を、その子が飲み込む前に外へ出しておく、という意味に変わりました。同じ動作なのに、目的地が床から口へ移ったことになります。
この置き換えは、実際にやることの中身も変えます。床の毛を減らすのが目的なら、換毛の時期にまとめてやれば足ります。口へ入る量を減らすのが目的なら、まとめてやることに意味がなくなります。飲み込むのは毎日だからです。一回に長くやるより、短くても毎日のケアとして続けるほうが、入る量の側には届きます。
-
ブラシをかけた日付だけを記録する
かけた時間も、取れた量も書かなくて構いません。日付だけあれば、間隔が分かります。間隔が空いた週のあとに毛づくろいが長くなっていたら、その二つはつながっているかもしれません。毎日のケアの記録として、いちばん軽い形です。カレンダーに丸を付けるだけで足ります。
-
毛の流れに沿って、一往復だけにする
逆立てて何度もかけると、皮膚の側に負担が寄ります。背中から尾のつけ根まで、流れに沿って一往復。それだけで、被毛の表面に浮いている抜け毛はかなり外へ出ます。時間ではなく、通す回数を決めておくほうが続きます。続くことのほうが、一回の丁寧さより効いてきます。
-
乾いた毛が舞う日は、先に湿らせてからかける
空気が乾く時期は、ブラシで外へ出た毛が舞い上がって、また被毛の中に戻ります。細かい霧で湿らせてからかけると、外へ出た毛がそのまま下に落ちます。湿らせるのは被毛ではなく、ブラシの歯の側で足ります。この一手間があるかないかで、かけ終わったあとの床の様子が変わります。
-
なめている場所を、週に一度だけ見る
同じ場所をなめ続けているなら、そこの毛が集中して口へ入っています。皮膚が赤い、毛が薄くなっている、においが出ている。この三つのどれかがあるときは、ブラシの回数の話ではありません。動物病院にご相談ください。
三つめで何を使って湿らせるか、という話をします。ブラシを通したそばから毛づくろいが始まる相手なので、湿らせるものは口へ入る前提で選ぶことになります。mofuwa スキンケアミストが清涼飲料水の規格基準をクリアしているというのは、飲みものと同じ物差しで測られた水だ、ということです。使うのは被毛の上ではなく、ブラシの歯の側です。柔らかい布へ薄く移して歯を一度なでてから、背中から尾のつけ根まで一往復させる。それだけで、外へ出た毛が舞い上がらずに下へ落ちます。ブラシを持つ前の動作として順番に組み込んでしまうと、乾く時期でも思い出さずに済みます。
吐く動作を繰り返しているのに何も出てこない、食欲が落ちている、便が出ていない、元気がない、お腹に触られるのを嫌がる。こうした変化が重なっているときは、ブラッシングの回数を増やして様子を見る場面ではありません。毛球症とは、家で判断できる言葉ではなく、体の中の状態を指す言葉です。自己判断せず、動物病院にご相談ください。相談するときは、いつから、何回、どのくらいの間隔で起きているかを言えるようにしておくと話が早くなります。ブラシをかけた日付の記録が、そのまま材料になります。
毛球症とは、毛づくろいで飲み込んだ毛が胃の中で固まった状態を指す言葉でした。言葉を知る前は、床に落ちていたものを片づけるだけで一日が終わっていました。知ったあとに変わったのは、掃除の仕方ではなく、ブラシをかける理由のほうです。床に落ちる毛を減らすためではなく、その子が飲み込む量を減らすため。家の側で動かせるのは、結局そこだけでした。毎日のケアの位置がひとつ手前に移ると、被毛にも皮膚にも触る回数が増えます。触る回数が増えると、数えられるものも増えます。言葉をひとつ覚えた見返りとしては、じゅうぶんだと思っています。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
