C12Q&A・豆知識

掃除機で取れる毛と取れない毛

公開日 2023年12月22日|文=mofuwa編集部

明るく片付いたリビングで、淡いグレーのラグの上に横になっているクリーム色の猫
同じ面に見えても、毛が浮いているか、繊維に入り込んでいるかで、掃除機の届く先が変わります。写真:Daniel Radovskis/Pexels

掃除機をかけ終えた床に、翌朝また同じ場所だけ毛が寄っていました。取れるのは、面の上に浮いている毛です。ペットの毛のうち、繊維に絡んだ毛と、立ち上がって刺さった毛は、同じ場所を何度たどっても出てきません。そして、取れなかった分は無くなったのではなく、その場に残って次に落ちた毛の土台になります。だから同じ場所ばかりに毛が集まります。この記事では、取れる毛と取れない毛が物としてどう違うのかを、吸う力の話に寄せずに、8つの問いに分けて書きます。

掃除機で取れるペットの毛は、どんな状態の毛ですか

取れるのは1種類だけです。面の上に、ただ乗っているだけの毛です。床に落ちたばかりの毛、ラグの毛足の上に乗っている毛、フローリングの上を風で転がっている毛。これらは掃除機の空気の流れに乗るので、そのまま持っていかれます。掃除機がやっているのは、空気を動かして、動かせる物を運ぶことです。

ここから、掃除機の得意な条件が決まります。毛が何にも引っかかっておらず、空気が毛の全体に当たること。この2つがそろっていれば、吸口をゆっくり動かすだけで取れます。フローリングでペットの毛がよく取れるのは、面が平らで、毛が引っかかる相手がいないからです。

この記事では、取れる割合の数字を書きません。何を分母にするかで、数字がいくらでも動くからです。落ちた毛の総量を数える方法が家にない以上、「何%取れる」という言い方には根拠が置けません。代わりに書けるのは、取れる側と取れない側が物としてどう違うか、という構造のほうです。そこが分かれば、家の中の数字は自分で出せるようになります。

取れないペットの毛は、2種類に分かれます

取れない毛は、ひとくくりにできません。繊維に絡んだ毛と、立ち上がって刺さった毛の2種類があります。この2つは、残り方も、出てくる条件も違います。同じ「取れない毛」として扱っているうちは、どちらにも手が届きません。

掃除機で取れる毛と、取れない毛の違い 面の上に乗っているだけの毛と、繊維に絡んだ毛・立ち上がって刺さった毛を、空気の当たり方の違いで左右に分けた対比図です。 分かれ目は毛の量ではなく、毛の全体に空気が当たっているかどうかです 取れる毛 面の上に乗っているだけ 毛の全体に空気が当たる 何にも引っかかっていない 吸口が通れば運ばれる 落ちてから日が浅い 取れない毛 繊維のあいだに絡んでいる 根元まで沈んで刺さっている 毛の一部しか空気に触れない 繊維との摩擦で止まっている その場に長く置かれている 右側は、繊維の向きを変えないかぎり左側に移りません
右側は、吸口が通ったあともその場に残り、次に落ちた毛の土台になります。

1つめの、繊維に絡んだ毛です。ラグやカーペット、布のソファのように、細い糸が編まれている面で起きます。毛が糸のあいだに入り込み、そこで曲がって引っかかります。掃除機の空気は面の上を流れるので、糸の下に入った毛には十分に当たりません。引っかかっている一点が外れないかぎり、いくら空気を強くしても動きません。

2つめの、立ち上がって刺さった毛です。毛足のある面や、目の詰まった布で起きます。毛が縦向きになり、先端から繊維のあいだに入り込んで、そのまま垂直に立ちます。上から見ると面が毛羽立っているだけに見えますが、実際は毛が刺さっている状態です。この毛は、吸口が真上を通っても、空気の流れが横向きなので抜けません。

毛が繊維に絡んだり刺さったりするのは、毛の何が原因ですか

毛の側にも理由があります。ペットの毛は、片方の端が太く、もう片方が細くなっている形をしています。細いほうの先端は、繊維のすきまに入りやすい。入ったあと、太いほうが残るので、抜けにくくなります。釘のような形をしていると考えると、刺さるほうの説明がつきます。

もう1つ、毛の表面はつるりとした円柱ではなく、うろこ状のものが根元から先へ向かって重なっているとされています。この重なりに向きがあるので、ある方向へは動きやすく、逆方向へは戻りにくくなります。繊維のあいだで一度奥へ進んだ毛が、同じ道を戻ってきにくいのは、この向きが効いていると考えられています。

毛の側の条件と、それが残り方に与える影響
毛の条件起きること残る側
先が細く、根元が太い先端から繊維に入り込む刺さった毛
表面に向きがある奥へは進み、手前へは戻りにくい刺さった毛
細くて長い(下毛や長毛)糸のあいだで曲がって引っかかる絡んだ毛
太くて短い(短毛の上毛)面に対して垂直に刺さりやすい刺さった毛
乾いていて静電気を帯びる繊維に貼り付いて動かない絡んだ毛

静電気については、季節で変わります。空気が乾く時期は、毛が繊維に貼り付いて、空気の流れだけでは離れません。同じ家、同じ掃除機、同じ床でも、取れ方が季節で変わるのはこのためです。被毛のケアを毎日していても、落ちた毛が床でどうなるかは、部屋の側の条件で決まります。

犬と猫でも、残る側の毛が変わります。下毛が多い子では細い毛が大量に落ちるので、絡んだ毛が増えます。短毛で毛が太い子では、刺さった毛のほうが目立ちます。どちらが取りにくいかではなく、どちらの残り方をしているかで、あとで打つ手が変わるという見方をしてください。

取れなかったペットの毛は、そのあとどこへ行くのですか

ここがこの記事の核です。取れなかった毛は、無くなったのではありません。その場に残っています。掃除機をかけたあとの床は、見た目には毛がなくなったように見えます。けれど、繊維に絡んだ毛と刺さった毛は、吸口が通る前と同じ場所に、同じ姿勢で残っています。減ったのは、面の上に乗っていた分だけです。

そして、残った毛は次の毛の土台になります。繊維から少しだけ顔を出している毛は、新しく落ちてきた毛にとって引っかかる相手です。面がつるりとしていれば毛は転がって動きますが、そこに毛が立っていれば、そこで止まります。止まった毛は、また次の毛の相手になります。

  1. 1回目:落ちた毛の一部が繊維に入る

    面の上に乗った分は掃除機で取れます。入り込んだ分だけが残ります。この時点では、目で見ても分かりません。

  2. 2回目:残った毛に、新しい毛が引っかかる

    繊維から出ている毛先が、落ちてきた毛を止めます。同じ場所に集まりはじめるのは、この段階です。

  3. 3回目以降:毛どうしが絡んで面になる

    毛が毛を捕まえるので、たまる速さが上がっていきます。掃除の回数を変えていないのに、毛が目立つようになった、と感じるのはここです。

  4. そのまま置くと、繊維の奥で締まる

    踏まれるたびに奥へ押し込まれます。ここまで来ると、面の上からの掃除では出てきません。

この積み上がり方があるので、同じ部屋でも、毛が集まる場所は毎回だいたい同じになります。風で寄るからだと説明されることが多いのですが、それだけではありません。前に残った毛が、次の毛を止めているからです。場所が固定されているなら、そこは風の通り道ではなく、土台ができている場所だと考えてください。

だから、掃除機の後に「取れた量」を見ても、その場所の状態は分かりません。取れた量が多かった日は、面の上に乗っていた分が多かった、というだけです。残っている側は、ダストカップの中には出てきません。ペットの毛の掃除で判断を誤りやすいのは、手元に見える量が、取れた側だけだからです。

取れないのは力の問題ですか、向きの問題ですか

向きの問題です。吸う力が効くのは、毛の全体に空気が当たっているときだけだからです。繊維の奥にある毛は、毛の一部しか空気に触れていません。触れていない部分には、どれだけ流れを強くしても力がかかりません。力を上げると取れるようになるのは、面の上に乗っていて、これまでぎりぎり運ばれなかった毛です。

この記事では、掃除機のメーカーや機種、吸い込む力の数値を比べません。比べたところで、残る側の毛が変わらないからです。同じ機種でも、面が変われば取れ方は変わります。道具の性能ではなく、毛がどの状態でそこにあるかで決まります。

取れない毛に対して、何が効いて何が効かないか
やること面の上の毛絡んだ毛・刺さった毛
吸う力を上げる取れる量が少し増えます空気が当たらないので変わりません
同じ場所を何度も通るほぼ変わりません変わりません
ゆっくり動かす取れる量が増えます少しだけ変わることがあります
繊維の向きを変える関係ありません毛が面の上に戻り、取れる側になります
面を乾かす・静電気を抑える少し取れやすくなります貼り付きがゆるみます

表のいちばん下から2つめが、この記事の答えです。取れない毛を取れる毛に変える唯一の手は、繊維の向きを変えることです。毛が繊維の奥にあるうちは、掃除機の側でできることがありません。向きを変えて、毛を面の上に戻してやれば、そこから先はふつうに取れます。判断は、吸う力ではなく、繊維を起こしたかどうかで決まります。

向きを変える方法は、道具でなくても構いません。ゴム手袋をはめた手で一方向に撫でる、ブラシで毛足を逆からたどる、乾いたスポンジで軽くこする。どれも、繊維のあいだに入った毛を面の上へ押し出すという点では同じことをしています。そのあとで掃除機をかければ、取れる側の毛として運ばれます。

床材や布の種類で、残る側の毛はどう変わりますか

面の作りで、2種類の残り方の比率が変わります。糸が編まれている面ほど絡んだ毛が増え、毛足が立っている面ほど刺さった毛が増えます。平らでかたい面には、そもそも入り込む先がないので、ほとんど残りません。

面の作りと、残りやすいペットの毛の種類
面残りやすい毛家でやると変わること
フローリング・フロアタイルほとんど残りません隅と幅木の際だけ別に見ます
毛足の短いラグ絡んだ毛手で一方向に撫でてから吸います
毛足の長いラグ刺さった毛毛足を逆からたどって起こします
布のソファ絡んだ毛縫い目と座面の折り返しを先に見ます
寝具・クッション絡んだ毛洗えるものは洗うほうが早いです
車のシート刺さった毛面が立っているので、起こしてから吸います

この表は、掃除の順番を決めるのにも使えます。フローリングは掃除機だけで終わります。ラグとソファは、掃除機の前に一手を足す面です。全部の面に同じ手間をかけようとすると続かないので、面ごとにやることを変えてしまうほうが、毎日の負担が下がります。

毛が集まる場所も、面によって決まっています。壁ぎわ、家具の脚もと、ドアの開く弧の内側、ラグの端。いずれも空気が止まる場所か、人が踏み込まない場所です。ここは土台ができやすいので、掃除機をかける前に手で撫でておく場所として、最初から決めておくといいです。

掃除機をかける前後に、家で足す一手はありますか

足すのは1つだけです。掃除機をかける前に、面を撫でて毛を起こすこと。これだけで、取れない側にいた毛の一部が、取れる側に移ります。順番を逆にすると効きません。起こした毛を面の上に置いたまま吸うので、前でなければ意味がなくなります。

  1. 毛が集まる場所を、3か所だけ決める

    家じゅうをやろうとすると続きません。壁ぎわ、ラグの上、ソファの座面のように、毎回同じ場所を3つだけ決めます。そこが土台のできている場所です。

  2. 掃除機の前に、面を一方向に撫でる

    ゴム手袋でも、乾いたブラシでも構いません。繊維の向きに逆らう方向へ、1回だけたどります。強くこする必要はありません。毛が面の上に浮けば終わりです。

  3. 浮いた毛を、ゆっくり吸う

    同じ場所を速く何度も通すより、一度をゆっくり通すほうが取れます。浮いた毛は、空気の流れに乗るだけの状態になっています。

  4. 落ちる側の量を、体のケアで減らす

    床に落ちてからの手当てには限りがあります。ブラッシングで先に抜けた毛を外へ出しておくと、部屋に落ちる分が減ります。毎日のケアのほうが、掃除の回数より効きます。

4つ目について補足します。落ちた毛をどう取るかより、落ちる前にどれだけ回収できたかのほうが、家じゅうの毛の量を大きく動かします。ブラッシングの前に被毛を少し湿らせておくと、毛が舞いにくくなり、ブラシに残ります。mofuwa グルーミングスプレーは、そのままブラッシングスプレーとして使えるようにつくられています。布に取って毛の流れに沿って一往復させてから、ブラシを入れる。すすぎも乾かす時間もいらないので、掃除機をかける前の数分にそのまま入ります。抜けかけた毛を先に外へ出しておけば、床とラグに土台ができません。毎日続けられることが、この手順の条件です。中身は特許電解水だけで、香りも界面活性剤も足していないので、ラグやソファのそばで使っても、部屋に香りが積み上がりません。

皮膚が乾いている時期は、静電気で毛が繊維に貼り付きやすくなります。体の側と部屋の側の両方が乾いていると、取れない毛が増えます。グルーミングスプレーを一度通してから梳かすと、静電気の起きにくい状態で毛を集められます。加湿と、被毛のケアの両方を少しずつ足すほうが、掃除機を強くするより結果が変わります。

取れる毛と取れない毛を、1枚に畳む|決めるのは吸う力ではなく、面のほう

ここまでを畳みます。掃除機とペットの毛の関係は、3行で言い切れます。

掃除機とペットの毛、3行のまとめ
言えることそこから決まること
取れるのは、面の上に浮いている毛だけ面が平らならそれで足ります
絡んだ毛と刺さった毛には、空気が当たらない吸う力を上げても変わりません
取れなかった毛は残り、次の毛の土台になる掃除機の前に、面を撫でて起こします

この3行があれば、掃除機を買い替えるかどうかを迷う時間が減ります。迷うところは道具ではなく、面のほうにあります。そして、面の状態は、手で一度撫でれば分かります。撫でて毛が出てくるなら土台があり、出てこないならその面は終わっています。道具の数字ではなく、手のひらで決められる、というのがこの話のいちばん実用的なところです。

Caution抜ける量そのものが変わったときは、動物病院にご相談ください

掃除の頻度を変えていないのに、床に落ちる毛の量が急に増えた、決まった場所だけ毛が薄くなってきた、地肌が赤い、フケが増えた、同じところをなめ続けている、皮膚に触れると嫌がる。こうした変化が続くときは、掃除の仕方を変える前に動物病院にご相談ください。いつから、どのあたりの毛が、どれくらい変わったかをメモして持っていくと、その場で見てもらえます。部屋に落ちる量は、体の側の変化がいちばん先に出る場所でもあります。

Point3行で言うと、分かれ目は吸う力ではありません

掃除機で取れるペットの毛は、面の上に浮いている毛だけです。繊維に絡んだ毛と、立ち上がって刺さった毛には空気が当たらないので、吸う力を上げても取れません。そして、取れなかった毛はその場に残って、次に落ちた毛の土台になります。だから、掃除機をかける前に面を一方向に撫でて毛を起こす。判断するのは吸う力ではなく、繊維の向きを変えたかどうかです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。