C12Q&A・豆知識
肛門腺とは?においの元になる分泌腺
散歩から帰ったあと、床に座ったまま後ろ足で進むしぐさをして、そのあとで部屋に強いにおいが残りました。肛門腺とは、肛門の両脇にある、においの強い分泌液をためる小さな袋のことです。時計の文字盤でいうと4時と8時のあたりに1つずつあるとされています。においの元、という呼ばれ方をしますが、役割は「その子を見分けるための署名」に近いとされています。においが強いのは、そこに情報が詰まっているからです。この記事では、肛門腺という言葉を、位置・役割・個体差・家から分かる合図の順に、8つの問いに分けて開いていきます。
肛門腺とは、どこにある何ですか
肛門腺とは、肛門の両脇にある、においの強い分泌液をためる小さな袋のことです。正確には、液を作る腺と、それをためる袋の2つを合わせた呼び名として使われています。袋のほうを指して肛門嚢(こうもんのう)と呼ぶこともあります。犬にも猫にもあります。
位置は、肛門を時計の文字盤に見立てたときの4時と8時のあたりに1つずつとされています。皮膚の下にあるので、外から見ても分かりません。中にたまった液は、細い管を通って肛門のふちに出るようになっています。この管が細いこと自体が、あとで出てくる個体差の元になります。
| 言葉 | 指しているもの |
|---|---|
| 肛門腺 | 液を作る腺と、ためる袋をまとめた呼び名として使われます |
| 肛門嚢 | 液をためておく袋のほうを指す言い方です |
| 肛門腺液 | 袋の中にたまっている、においの強い液そのものです |
液の見た目は、色も濃さも幅があるとされています。さらっとしたものから、ペースト状のものまで。色も薄い茶から濃い茶まで幅があります。皮脂に似たにおいとも、魚が傷んだようなにおいとも言われますが、その子ごとに違うので、言葉で言い当てられるものではありません。ここが、この言葉のいちばん面白いところだと思います。
肛門腺は、何のためにあるとされているのですか
この記事の核はここです。肛門腺の液は、その子を見分けるための署名のようなものだとされています。においの成分の組み合わせが個体ごとに違い、その違いが情報になります。においの元、という言い方をすると邪魔なものに聞こえますが、本来は捨てるための液ではなく、伝えるための液です。
犬や猫が出会ったときに、おしりのあたりのにおいを嗅ぎ合う場面を見たことがあると思います。あれは、名刺を交換しているのに近い行動だとされています。相手が誰か、どういう状態かを、におい1つで受け取っている。人が顔と名前で覚えるところを、においで覚えていると考えると分かりやすいです。
液は、ふだんは便が通るときの圧で少しずつ外に出るとされています。つまり、排便のたびに署名を置いていることになります。散歩コースの同じ場所を犬が念入りに嗅ぐのは、そこに前の子の署名が残っているからだと考えられています。マーキングと聞くと尿を思い浮かべますが、においの経路はそれだけではありません。
肛門腺を「においの元」として覚えると、家の中では消したいものとしてだけ扱うことになります。けれど、においが強いのは、そこに情報が詰まっているからです。署名として見ると、急ににおいが変わった、急に強く残るようになった、という変化のほうが意味を持ちます。肛門腺のにおいは異常のサインですという覚え方ではなく、「ふだんのにおいを知っておくと、変化に気づける」という覚え方のほうが、家では役に立ちます。
においが強いことに、どういう意味があるとされているのですか
においが強いのには理由があります。遠くまで届き、長く残るからです。署名として使うなら、置いた瞬間しか残らないにおいでは役に立ちません。空気より重い成分が布や地面に残り、時間がたっても読める。この性質が、家の中では困りごとに見えるだけで、本来は仕組みとして意味を持っています。
そして、この性質がそのまま家の中での扱いにつながります。強く残るということは、拭いても空気の入れ替えだけでは薄まりにくい、ということです。ソファ、寝床の布、キャリーの底、車のシート。液が付いた面は、時間ではほとんど戻りません。においが「消えたように感じる」ときは、多くの場合、人の鼻のほうが慣れています。
- 布に残りやすい:寝床のカバー、クッション、ラグ。繊維の奥に入ります
- 皮脂と混ざる:皮膚から出る皮脂と一緒になると、面に貼り付きます
- 時間で薄まりにくい:換気で動くのは空気の側だけです
- 雑菌が増える条件と重なる:湿った布に残ると、においが別の形で戻ります
4つ目について補足します。においの成分そのものと、そこに湿気が加わって雑菌が増えたときのにおいは、別のものです。寝床の布が湿ったまま置かれていると、後者が重なります。だから、においが強い日に人ができるのは、におい消しを足すことよりも、まずその布を乾いた状態に戻すことのほうになります。換気は、その手助けとして効きます。
たまり方に個体差が出るのは、なぜですか
自然に出ていく子と、たまりやすい子がいます。差を作っているのは、袋の中身ではなく、出口と、押し出す力のほうだとされています。どちらも家では見えませんが、条件としては整理できます。
| 条件 | 出やすい側 | たまりやすい側 |
|---|---|---|
| 管の太さ | 太めで通りやすいとされる | 細めで通りにくいとされる |
| 便のかたさ | 程よいかたさで圧がかかる | やわらかく圧がかかりにくい |
| 液の濃さ | さらっとしていて動きやすい | 濃くて動きにくい |
| 体格と運動量 | よく動き、筋肉で押し出される | 動きが少なく圧がかかりにくい |
| 年齢 | 若く、筋肉の張りがある | 高齢で、張りが落ちてくる |
この表で分かるのは、たまりやすいかどうかは、その子の体の作りと暮らし方の組み合わせで決まるということです。同じ犬種でも、同じ家の2頭でも変わります。「うちの子は必要か」という問いに、一般論で答えが出ない理由がここにあります。猫では、犬ほど話題になりませんが、袋そのものはあります。
年齢で変わる、という点も覚えておいてください。若いころは自然に出ていた子が、シニアになってから出にくくなることがあります。運動量が減り、便のかたさも変わるからです。逆に、子犬のころにたまりやすかった子が、体ができてから落ち着くこともあります。肛門腺とは、一度決まったら変わらない体質ではなく、その時期の暮らし方で変わっていく条件だと考えてください。
家から分かるのは、どこまでですか
ここは線をはっきり引いておきます。家から分かるのは、外に出てきた合図までです。袋の中がどうなっているかは、外からは見えません。触って分かると書いてある情報もありますが、皮膚の下の小さな袋を指で判断するのは、家ではまず無理だと考えておいたほうが安全です。
左側の3つを、もう少し具体的に書いておきます。1つめは、床に座ったまま後ろ足で前へ進むしぐさです。おしりを床にこすりつける形になるので、フローリングでもラグでも見て分かります。ただし、このしぐさは肛門腺だけが理由とはかぎりません。皮膚のかゆみでも、便が付いていても同じ動きになります。しぐさは合図であって、原因の名前ではありません。
2つめは、急に強いにおいがした日です。驚いたとき、抱き上げたとき、寝ていて起きたときに、それまでと違うにおいがすることがあります。液が一度に出ると、そのにおいが部屋に残ります。3つめは、おしりのまわりを気にしてなめ続けることです。床のしぐさが出ない子でも、なめる行動だけ出ることがあります。皮膚を気にしているのか、内側を気にしているのかは、家では分けられません。
分かるのはここまでです。ここから先、袋の中がどうなっているか、何かをする必要があるかは、家では決められません。そのかわり、上の3つを日付つきで書き留めておくと、それがそのまま次の相談の材料になります。いつから、週に何回、どの場面で。この3つだけで十分です。
家で絞ってもいいですか
この記事では、絞り方の手順は書きません。やり方を覚えれば家でできる、という形で伝えられることが多い作業ですが、判断の材料が家に足りていないからです。理由を、体の側の条件として3つ書きます。
- 袋の位置と向きが、外から見えません:皮膚の下にあり、指で当てている場所が本当にそこかを確かめられません
- 力をかける向きが決められません:管の通り道が見えないので、押す方向が合っているか分かりません
- いまの状態が分かりません:たまっているのか、そうでないのか、皮膚に別のことが起きていないかを、外から判断できません
この3つは、練習で埋められる種類の情報ではありません。見えないものを、手ざわりだけで判断することになります。だからこの記事では、家でやるかどうかを飼い主が決める、という形にはしていません。トリミングサロンでシャンプーのときに一緒にお願いする、あるいは動物病院で見てもらう。どちらも、必要かどうかの判断を含めて任せられるのが利点です。
「必要かどうか」も、家では決めなくて大丈夫です。自然に出ている子に何かをする必要はないとされていますし、その子がどちらなのかも、外からは分かりません。床のしぐさが増えた、においの出方が変わったという記録を持っていけば、そこから先は見てもらえます。肛門腺とは、家で管理する部位ではなく、家では合図を拾い、判断は外に渡す部位だと考えておくのが、いちばん無理がありません。
においが寝床や床に移った日は、家で何をしますか
ここは家でできることが多い場所です。手順は、乾かす・洗う・拭くの3つだけです。においを別のにおいで覆う方向に行くと、元の面はそのまま残ります。順番として、面のほうを先に片づけます。
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まず換気して、空気の側を入れ替える
窓を2か所開けて、空気の通り道を作ります。これで動くのは空気に浮いている分だけですが、鼻が慣れて判断できなくなるのを防げます。5分で十分です。
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布は外して洗い、しっかり乾かす
寝床のカバー、クッション、キャリーの中のマット。湿ったまま戻すと、雑菌が増える条件が重なって、においが別の形で戻ります。洗えないものは、日の当たる場所で乾かします。
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洗えない面は、拭き取りで済ませる
フローリング、ソファの表面、車のシート。面を濡らしすぎず、拭き取りのあとに乾いた布でもう一度たどります。皮脂と混ざった分は、時間がたつほど落ちにくくなります。
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食器と水入れは、においとは別に毎日洗う
におい対策とは関係なく、食器は毎日洗ってください。においの話をしているときほど、いつもの手入れが後回しになります。ここが崩れると、家全体のにおいの出どころが分からなくなります。
拭き取りに使うものを、香りで選ばないというのも1つの考え方です。香りを重ねると、その日その子がどんなにおいだったのかが分からなくなります。床や寝床のまわりのように水で洗えない面は、香りを足さないもので拭いて、そのあと乾いた布でたどります。署名としてのにおいを読みたいなら、上から別のにおいをかぶせないほうが都合がいい、という理屈です。においが強い日ほど覆いたくなりますが、覆った分だけ翌日の材料が減ります。
体のほうは、面とは分けて考えます。おしりのまわりは、その子が気にしたときに真っ先に口を持っていく場所です。拭いたものが、数秒後に舌に触れる面だということです。ここだけは、何が落ちるかより先に、何で拭いたかのほうが問われます。
mofuwa スキンケアミストは、電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしています。被毛に付いた分は、やわらかい布に取ってから、毛の流れに沿ってなでるだけで落ちることが多いです。おしりのまわりだけを狙って洗おうとすると、皮膚を触りすぎることになります。床のしぐさが出た日は、寝床の布を片づけたあと、体はこの一往復で終わりにしてください。においが日ごとに強くなる、同じ場所をなめ続ける、といった変化が続くときは、拭き取りの回数を増やす前に相談してください。
肛門腺という言葉を、3つの合図に畳む
ここまでを畳みます。肛門腺とは何かを知ったあと、家に持ち帰るのは3つの合図だけです。
| 合図 | 見えること | 書き留めること |
|---|---|---|
| 床に座って前へ進む | フローリングでもラグでも見えます | いつから、週に何回 |
| 急に強いにおいがした | 抱いたとき、起きたときに多いです | その日の場面と回数 |
| おしりを気にしてなめる | 床のしぐさが出ない子にも出ます | 続いている日数 |
この3つを日付つきで書いておけば、それ以上のことを家でやる必要はありません。肛門腺とは、位置も中身も外から見えない部位です。見えないものを見えることにしようとするより、外に出てきた合図だけを正確に拾うほうが、結果として早く手が打てます。署名は読むもので、家で操作するものではない、という距離感がちょうどいいです。
肛門腺とは、肛門の両脇にある、においの強い分泌液をためる小さな袋のことです。においの元というより、その子を見分けるための署名に近い役割があるとされていて、においが強いのは情報が濃いからです。たまり方には個体差があり、自然に出る子と出にくい子がいます。家から分かるのは床でのしぐさ・においの変化・なめる行動の3つまでで、そこから先は動物病院やトリミングサロンに渡してください。
床に座って前へ進むしぐさが毎日のように続く、おしりのまわりが赤い、腫れている、しこりのように盛り上がっている、なめ続けて毛が薄くなってきた、便のときに痛がる様子がある、においの出方が急に変わった。こうしたときは、家で何かをする前に動物病院にご相談ください。いつから、週に何回、どの場面で起きているかをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。家では袋の中が見えないので、原因の切り分けまではできません。
最後に、家で続けることを1つだけ決めておきます。寝床の布を替える曜日を、週に1日決めてください。毎週同じ曜日に替えていれば、6日目でにおいが立つのか、替えた翌日から強いのかが分かります。3つの合図を日付で拾うのと同じで、これも「いつもと違う日」を見つけるための仕掛けです。肛門腺のにおいは消す対象ではなく、その子のふだんを覚えておくための手がかりです。ふだんを知っている人だけが、変わった日に気づけます。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見る本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
