C09シーン別・暮らし
水が苦手な猫と暮らす人のための在宅ワークの日|5分で終わらせるケア
在宅ワークの日、机の下を通ってソファへ、ソファから窓辺へ。午前中だけで、その子が椅子の横を通ったのは11回でした。同じ部屋に一日いると、猫のほうから人の近くへ来る回数が、出社していた日とは比べものになりません。ところが、水が苦手な子のケアだけは、在宅ワークの日でも同じところで止まります。触れる機会は増えているのに、濡らす手だけが最初から選べないからです。水が嫌いな猫に、水を使わないケアを一度で終わらせようとすると、その1回だけが長くなります。この記事では、ペットが同じ部屋にいて手を伸ばせる回数が多い、という在宅ワークの日だけの条件を、1回を短くして回数へ寄せる形でどう使うかを書きます。
午前中だけで11回、椅子の横を通っていた|水が苦手な猫と在宅ワークが重なった日の経験
在宅ワークの日は、9時に机に向かってから12時までのあいだに、その子が椅子の横を11回通りました。棚の上から降りて足元を横切り、床の上でいちど伸びをして、また窓辺へ戻る。そのうち、私の手が届く距離で止まったのは6回です。止まったといっても、長い子で20秒ほど。あとは通り過ぎるだけでした。
出社していた日は、こうはなりません。朝は玄関を出るまでの数分、夜は帰宅後の30分。触れる時間はその2回にまとまっていました。在宅ワークに切り替えて最初に変わったのは、ケアに使える合計時間ではなく、手を伸ばせる回数のほうです。1日の合計で見れば、同じ部屋にいるぶん、機会は何倍にもなっています。
それなのに、その11回のうち実際に体へ手をかけたのは2回でした。機会が増えたぶんだけケアが進むかというと、水が苦手な猫では、そうならないことがあります。この子は、濡れた手で触られるのを避けます。濡らしたタオルを持って近づくと、その時点で立ち上がって離れます。水を使う手は、在宅ワークの日でも、やはり選べません。
水が嫌いな猫と暮らしていると、ケアの選択肢が最初から一段減っています。洗う日を作れない、濡らして拭くこともしにくい。そのぶん、水を使わない手にかかる重さが増えます。そして、水を使わない手ほど、一度で終わらせようとすると長くなります。汚れを流して落とすのではなく、ゆるめて運び出す手だからです。ペットのケアの中でも、ここは時間の性質が違います。
- 近くへ来る回数は増えている:在宅ワークの日は、同じ部屋にいるだけで機会が積み上がります
- 1回あたりの滞在は短い:通り過ぎるまでの数秒から、長くて20秒ほどです
- 水を使う手が選べない:濡れた手も、濡らした布も、近づいた時点で避けられます
- まとまった時間は作れる:在宅ワークなので、30分の枠は理屈のうえでは取れます
- 猫の側の条件は変わっていない:人の働き方が変わっても、その子の許容は同じままです
一日じゅう家にいるのだから時間はある、という前提で組むと、答えは「まとまった30分を取る」になります。ところが水が嫌いな猫では、その30分に付き合ってもらえません。足りていないのは時間ではなく、その子が黙って手を預けてくれる長さのほうです。在宅ワークとペットの関係を考えるとき、増えた資源が何なのかを取り違えると、手の組み方が丸ごとずれます。
嫌いなのは水そのものより、終わりが見えない時間|在宅ワークで猫のケアが止まる背景
水が嫌いな猫を見ていると、避けているものがひとつではないことが分かります。濡れる感触そのもの、毛が濡れてから乾くまでの時間、水の音、そして押さえられているあいだ、自分で終わりを決められないこと。この4つは、まとめて「水が嫌い」と呼ばれていますが、性質が違います。
手を入れられるのは、このうちの後ろ2つです。音は道具の使い方で変えられますし、拘束の長さは人の側で決められます。逆に、濡れる感触と乾くまでの時間は、水を使う限り短くできません。水を使わない手を選ぶというのは、この2つを最初から外すという意味です。そのうえで、残りの2つをどう扱うかが、在宅ワークの日の組み立てになります。
問題は、在宅ワークの日には時間の枠が取れてしまうことです。次の会議まで40分ある。今のうちに終わらせよう。そう考えて、その子を膝に乗せて、背中から始めて、脇まで進めて、耳のうしろまで行こうとする。猫の側は、始まった時点でいつ終わるのかが分かりません。3分を過ぎたあたりで身をよじり、抜けていきます。次の日、同じように近づくと、今度は2分で立ち上がります。
| 出社していた日 | 在宅ワークの日 | |
|---|---|---|
| 手を伸ばせる回数 | 朝と帰宅後の2回 | 近くへ来るたび。1日に何度も |
| 1回に取れる時間 | 数分から30分 | 枠としては30分以上も取れる |
| その子が止まっている長さ | 数秒から20秒 | 数秒から20秒。変わらない |
| 水を使う手が選べるか | 選べない | 選べない。ここも変わらない |
| 人が組みたくなる形 | 帰宅後にまとめて1回 | 時間があるので、やはりまとめて1回 |
| 猫の側で先に切れるもの | 許容の長さ | 許容の長さ。同じところで切れる |
ここで起きているのは、機会が増えたぶんを、1回の長さに足そうとしているということです。回数が増えたのだから回数に足せばいいのに、人の側は「時間ができた」と受け取ります。在宅ワークとペットの組み合わせでいちばん取りこぼしやすいのが、この受け取り方です。そして、長い1回を嫌がられた記憶が積み上がると、その子は人が座っている椅子の近くを通らなくなります。増えたはずの回数まで、そこで減っていきます。
嫌がられた翌日に短くするのは、順番が逆です。その子の側では、前回が長かったという記憶が先にあります。短くするのは、嫌がられる前からです。まだ余裕があるうちに終わると、次に近づいたときの反応が変わりません。水が嫌いな猫のケアで人が持てる手は、強さでも道具でもなく、終わるタイミングのほうにあります。
1回15秒、通りかかったときだけ|水が嫌いな猫に、在宅ワークの日の回数を使う理由
ここからが、増えた回数の使い方です。やることは単純で、1回を15秒で切り上げ、その代わりに一日のうちで何度も来る、という形に組み替えます。15秒というのは、その子が椅子の横で止まっている時間より短い、という意味の数字です。20秒止まる子なら15秒、10秒しか止まらない子なら7秒。先に終わるのは、いつも人の側です。
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手を出す場所を、部屋の中で1か所だけ決める
机の横のカーペット、窓辺の台、椅子の足元。その子が在宅ワークの日に必ず通る場所を1つ選びます。そこへその子が自分で来たときだけ手を出し、それ以外の場所では追いません。場所を決めておくと、道具を近くに置いておけるので、取りに立つ数秒が消えます。この数秒が、実際にはいちばんよく失敗の原因になります。
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1回で触る場所を、体の1か所に絞る
背中なら背中だけ、後ろ脚のつけ根ならそこだけ。15秒で全身は回りません。1回1か所と決めておくと、途中で欲が出て伸びることがなくなります。猫の体で人の手が入りにくいのは、あごの下、脇、後ろ脚のつけ根、しっぽの根元です。この4か所を1回ずつ、別々の機会に割り当てます。
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顔まわりを最後に回し、後ろから前へ進める
水を使わないケアで最初に嫌われるのは、たいてい顔まわりです。しっぽの根元から始めて、背中、脇、最後にあごの下。その日のうちに顔まで届かなくても構いません。届かなかった場所は翌日の1回目に回します。順番を固定しておくと、どこまで進んだかを覚えていなくても、次に触る場所が決まります。
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その子が動いたら、途中でもそこで終わる
身をよじる、耳が動く、しっぽの先が床を打つ。この合図が出たら、やりかけでも手を離します。終わりを決めるのは猫のほうだ、という形をくずさないでください。これを守っていると、次に椅子の横を通るときの歩き方が変わりません。追いかけて続けた日は、その日の残りの機会がまとめて消えます。
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一日の終わりに、触った場所だけ思い出す
何回やったかは数えなくて構いません。見るのは回数ではなく、体のどこに手が入っていないかです。「今日はあごの下に一度も届いていない」と分かれば、翌日の1回目がそこになります。毎日この確認を1分だけ入れておくと、同じ場所ばかりに手が集まるのを避けられます。
| まとめて1回(30分) | 15秒を何度も | |
|---|---|---|
| 猫の側の姿勢 | 押さえられている | 自分で来て、自分で去る |
| 途中で抜けたとき | その日は終わり | 次の機会がその日のうちに来る |
| 1回で進む範囲 | 全身をひととおり、のはずが途中で止まる | 体の1か所だけ、確実に |
| 翌日の近づき方 | 椅子の近くを避けることがある | 変わらない |
| 人の側の負担 | 枠を取る必要がある | 枠を取らない。作業の合間に入る |
| 向いている日 | その子が長く預けてくれる日 | 在宅ワークで、同じ部屋にいる日 |
机の端に置いておくものを1つに絞るなら、猫用 mofuwa グルーミングウォーターになります。水が苦手な猫の家にこれがある理由は、中身ではなく容器のほうにあります。犬猫用のグルーミングスプレーに「プシュッという音を嫌がる」という声が集まり、押し出して出すボトルへ形だけを変えたものです。猫が離れていたのは水ではなく音のほうだった、という話です。音が出ないので、椅子の横で止まった15秒のうちに、その子が立ち上がるきっかけをひとつ減らせます。手か布に出して、決めた1か所を毛の流れに沿ってなでる。電解水と余分な皮脂が乳化するので、床や窓辺で毛に乗った脂は、なでる動作のまま毛から離れます。グルーミングウォーターは、口のまわりや手足のように、その子が自分で舐めてしまう場所にもそのまま使えます。ヒゲのまわりやおしりまわりも含みます。猫は一日のうちに何度も毛づくろいをするので、清涼飲料水の規格基準をクリアした水でできていることが、ここでは前提になります。これも15秒で終わる範囲だけです。
取りに立った数秒のあいだに、その子はもう次の場所へ移動しています。15秒で終える組み方は、道具が手の届くところにあることが前提です。机の端に、布を1枚とケア用のものを1つ。それだけ置いておけば、通りかかったときに座ったまま手が出せます。ペットのケアが習慣として残るかどうかは、思い出すかどうかより、こういう置き場所で決まることがあります。
回数へ寄せると決めると、1日に何度手が入ったかは自然と揺れます。会議が続いた日は2回、原稿を書いていた日は7回。揺れても構いません。1回が短いので、少ない日の取りこぼしも小さくなります。まとめて1回の形では、その1回が流れると丸ごとゼロになりました。在宅ワークの日にペットのケアを崩さないための考え方としては、こちらのほうが折れにくい形です。
2週間ぶんを並べたときに出てくるもの|在宅ワークとペットのあいだで拾える猫の変化
この形で2週間続けると、記録がなくても分かることが出てきます。ひとつは、その子が椅子の横で止まる長さが、日によって違うということ。いつもは20秒止まるのに、今日は通り過ぎるだけだった。前は7秒で離れていた場所を、今日は最後まで預けてくれた。1回が短いぶん、こうした差が回数を重ねるほどはっきり見えてきます。
もうひとつは、体の場所ごとの偏りです。1回1か所と決めていると、あごの下だけが2週間で3回しか来ていない、といったことが分かります。手が入っていない場所は、その子が触らせたくない場所であることが多いです。そこは無理に回数を増やさず、前後の場所から少しずつ寄せていきます。水が嫌いな猫では、この寄せ方に時間がかかることを前提にしておくと、こちらが焦りません。
12月に入ると、室内の条件も動きます。暖房を入れると空気が乾き、毛が立ちやすくなります。その子が居る場所も変わります。窓辺から暖房の吹き出し口の近くへ、床から高い場所へ。前の節で決めた「手を出す1か所」は、季節ごとに置き直してください。冬に猫が通らなくなった場所で待っていると、増えたはずの機会がそこだけ消えます。
| 動くもの | 手の入れ方をどう変えるか |
|---|---|
| 暖房で空気が乾く | 静電気が起きやすくなるので、乾いた手でいきなり触らない |
| その子の居場所が高い所へ移る | 手を出す1か所を、床から台の上へ置き直す |
| 日の当たる時間が短い | 窓辺で止まる回数が減る。通り道のほうで待つ |
| 人が同じ部屋に長くいる | においの変化に気づきにくいので、換気の時刻だけ決めておく |
| 外に出る用事が減る | 手を伸ばせる回数は増える。1回はやはり短いままにする |
そのうえで、毎日の手の中で拾える変化と、拾ってはいけない変化があります。次のような変わり方は、ケアの回数を増やして様子を見る話ではありません。在宅ワークで一日じゅう見ていると、少しずつの変化には気づきにくくなります。手が触れている場所については、むしろ気づきやすい。その差を意識して見てください。
- いつも預けてくれた場所を、急に触らせなくなった:その場所そのものの変化かもしれません
- 同じところをなめ続けている:手が入る前に、なめる時間のほうが増えていないか見てください
- 毛が根元から抜けて、地肌が見えている:触った手ざわりで先に分かることがあります
- 地肌が赤い、じくじくしている、においがある:15秒のケアで扱う範囲を超えています
- 触ると声を出す、体をこわばらせる:痛みがあるときは、その場で手を止めてください
- 近くへ来る回数そのものが、2週間で目に見えて減った:体調の側から起きていることもあります
地肌の赤み、じくじく、におい、痛がるそぶり、同じ場所をなめ続ける、毛が根元から抜けている、食べる量や水を飲む量が変わった。いずれかに当てはまるときは、家でのケアの回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。水が嫌いな猫は診察台の上でも動きが大きくなりがちなので、いつからか、どの場所か、家で何をしていたかの3つをメモして持っていくと、短い時間で見てもらえます。
在宅ワークの日にペットと同じ部屋で過ごしていると、機会だけが静かに増えていきます。増えたことに気づかないまま、以前と同じ「まとめて1回」の形を続けると、水が嫌いな猫では、その1回のほうが先に嫌われます。使えるのは長さではなく回数だ、と決めてしまえば、あとは終わるタイミングを人の側が握るだけです。15秒で切り上げて、その子が自分から次に来るのを待つ。水を使えない条件のもとで、在宅ワークがいちばん噛み合うのは、この組み方だと思います。
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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
