C14トリマー/獣医師視点

大型犬を1人でケアするときの順番

公開日 2024年1月14日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の木の床に、落ち着いて立っている毛色の薄い大型犬
一人で見るときの順番は、手を離さずに続けられるかどうかで決まります。写真:Leohoho/Pexels

35kgの子の腰に片手を置いたまま、ブラシを取るために反対の手を伸ばした瞬間、体重が右の後ろ足に寄りました。置いていた手を離したのは2秒ほどです。その2秒で姿勢が変わり、戻すのに15秒かかりました。大型犬を一人でケアするときに崩れるのは、力の足りなさではなく、この手が離れた瞬間です。だから一人で組むときの順番は、工程の合理性ではなく、片手を体に置いたまま続けられるかどうかで決めます。現場で二人がかりでやっている工程のうち、何が二人ぶんの手を必要としていたのかを分けておくと、一人で回せる範囲がはっきりします。

片手を離した回数を、最初の5分で数える|大型犬を一人で見るときのチェック

一人でケアを始めて最初の5分、片手がその子の体から離れた回数を数えてください。数えるのは秒数ではなく回数です。大型犬では、置いていた手が離れると体重の乗る足が変わります。20kgを超えたあたりから、この乗せかえを人の手で戻すのに数秒かかるようになります。5分で3回なら、そのまま最後まで通せます。8回を超えていれば、その日の順番はどこかで組み替えたほうが早く終わります。

力の話と混ざりやすいので、分けておきます。大型犬のケアで人が疲れるのは、支える力ではなく、離してしまった姿勢を戻す動作のほうです。支えているあいだは、体重はその子の4本の足に乗っています。人の手は方向を決めているだけです。ところが離した2秒で体重が一方に寄ると、そこから先は人が持ち上げて戻す動きになります。ここだけが本当に力の仕事です。

この4つを分けて数えるのは、あとで打つ手が違うからです。最初の2つは家の側で減らせます。3つめはその子の体の側の話です。4つめは、その日の予定そのものを変える合図です。一人で大型犬を見るときのチェックは、この4つの内訳を取るところから始まります。合計だけ数えても、どこを直せばいいのかは出てきません。

現場でトリミングを二人で担当するのは、力が2倍要るからではありません。片方が手を置いたままにしておける、という一点のためです。その役割を一人でやるには、置いたままの手を前提にして工程を並べ直すしかありません。飼い主への説明でも、二人でやってくださいと言うより、この並べ替えを1枚渡したほうが家で続きます。

手が離れる場所は3つに分かれる|大型犬を一人で続けられるかの目安

数えた回数の内訳は、原因ごとに3つに分かれます。道具の置き場所が遠い、工程そのものが両手を要求している、その子が動いたから離した。この3つは、それぞれ直す場所が違います。まとめて「一人では無理だった」と片づけると、次の回も同じところで崩れます。

片手を離した回数の内訳と、そこから読める目安
いちばん多かったもの何が起きているか一人で続けられるかの目安
道具を取るために離した置き場所が、手の届く弧の外にある並べ替えだけで済む。回数は半分まで落ちる
工程が両手を求めた毛をかき分ける・泡を広げるなど、両手前提の工程が入っている工程の中身を替える。順番だけでは減らない
その子が動いたので離した同じ姿勢でいられる時間が短くなっている1回を短く切る。全身を1日で通さない
床の滑りで足がずれた体重の乗せかえが、人の手より先に起きている床を替えるまで、立ち姿勢の工程を組まない
3つが同じくらい出たその日の体調のほうが動いている部分だけにして、残りは日を分ける

表の1行めと2行めは、家の側で変えられます。3行めと4行めは、その子や床の側です。一人で続くかどうかの目安は、離した回数の合計ではなく、この表のどこに偏っているかで決まります。道具に偏っているなら、今日から一人で通せます。工程に偏っているなら、工程の中身を替えるまで回数は減りません。

Point届く弧の内側とは、手を置いたまま指先が触れる範囲

その子の体に片手を置いた姿勢で、もう一方の手を伸ばして届くところまでが弧の内側です。大型犬では体が大きいぶん、人の立つ位置が体から遠くなり、この弧が思っているより狭くなります。床に座って測ると、だいたい半径60cmほどです。そこに入っていない道具は、取るたびに両手が離れます。数える前に、この弧の内側に何が入っているかを見ておくと、内訳を取る手間がそのまま減ります。

3行めが多い子では、順番の話にする前に姿勢の持ち時間を測ります。立たせて、体をなでながら1分。後ろ足の踏みかえが5回を超えるなら、その日に全身を通す組み立ては入りません。一人で見るという条件と、全身を1日で終えるという条件は、両立しないことがあります。どちらを外すかは、その子の側から決まります。

片手を置いたまま届く並びに変える|大型犬のケアが一人で続く条件

並べ替えの原則は、片手を置いたまま片手で終わる工程だけを並べることです。両手を要求する工程は、並べ替えでは減りません。中身を分解して、片手でできる形に落とすか、工程そのものを別の日へ回します。一人でケアが続いている家は、この分解を先にやっています。

  1. 床に座り、道具を弧の内側に全部並べる

    台には乗せません。大型犬を一人で扱うときは、人が立っているほうが不利になります。床に座れば、片手を体に置いたまま指先が届く範囲に道具を置けます。並べる順番は、使う順です。使う順に並べておくと、探す時間ぶんの離れが消えます。

  2. 置く手を先に決めて、動かさない

    腰のあたりに左手を置くと決めたら、そこから終わりまで動かしません。置く場所を毎回変えると、その子が次にどちらへ体重を預けるかを読めなくなります。置いた手は支えではなく、方向の合図です。

  3. 両手が要る工程を、片手2回に割る

    毛をかき分けて地肌に届かせる、というのは典型的な両手の工程です。これを片手2回に割ると、1回めで表面を動かし、2回めで地肌に触る形になります。同じ場所を2回通ることになりますが、離れる回数はゼロになります。

  4. 終わらなかったぶんを、その場で紙に書く

    一人で回すときは、どこまで終わったかを覚えていられません。左の後ろ足まで、と書いておけば次の日はそこから始められます。書く1行が、翌日に同じ場所を探し直す時間を消します。

この4段で、両手が離れる回数はゼロに近づきます。残るのは、その子が動いたときの離れだけです。そこは人の側では消せません。消せないぶんは、1回を短く切ることで受けます。大型犬を一人でケアする組み立ては、この「消せる離れ」と「消せない離れ」を分けたところから動き出します。

続くかどうかは、意気込みではなく、この並びが紙に残っているかどうかで決まります。頭の中の順番は、2週間あけると消えます。道具の並び順と、置く手の位置と、終わった場所。この3行だけで、次の回に同じ組み立てへ戻れます。一人で続いている家に共通しているのは、この3行が箱の中に入っていることです。

湯に溶かして、擦る工程そのものをなくす|大型犬を一人で洗う日の組み立て

両手が要る工程のうち、いちばん残りやすいのが洗う工程です。被毛の上にのせた泡を地肌まで届かせるには、かき分けて擦ることになります。毛の厚い大型犬では、これが両手の仕事になります。片手2回に割ってもいいのですが、同じ場所を何度も通るうちに、その子が立っている時間のほうが伸びます。

ここで工程の中身を替えます。mofuwa 入浴シャンプーは、湯に溶かして使う形です。湯そのものが洗浄液になるので、被毛をかき分けて届かせる動作が要りません。浸かっているあいだに全身が均一に浸るため、擦って地肌へ届かせるより、むらが出にくくなります。一人でケアする条件では、この点がそのまま効いてきます。両手でかき分ける工程が消えると、残るのは片手で湯をかける動きだけになります。

すすぎが軽く済むのも、一人で回すときには大きい違いです。泡を落としきるまで押さえておく時間がないぶん、浴室にいる時間そのものが短くなります。立っていられる時間が限られている子では、工程の速さより、立たせている合計時間のほうを見ます。保湿成分が入っているので仕上げに別のものを重ねる工程も減り、その1回ぶんの離れも消えます。抗炎症作用のある天然成分が配合されていて、地肌が荒れやすい子でも使う場所を選び直さずに済みます。

全身に入れるのが重い日は、桶に溶かして足だけという使い方ができます。散歩から帰って、家に入る前に玄関先の桶で足先を洗う。大型犬では足先の面積が広く、一人でタオルを広げながら4本を扱うのは難しい工程です。桶に足を入れてもらうだけなら、片手を背中に置いたまま終わります。入浴シャンプーを桶で使う形は、全身を洗う日の練習にもなります。足先で湯に慣れている子は、浴室でも立っている時間が短くなります。

人の介護の現場で使われている例もあります。擦らずに洗うという形が、動けない相手を洗う場面と重なるためです。大型犬を一人で洗う条件も、そこに近いところがあります。力で押さえるのではなく、湯のほうを洗浄液にして、人は方向だけを決める。一人で続く組み立ては、工程を速くしたものではなく、両手を要求しない形に替えたものです。洗う日と洗う日のあいだに足先だけ桶で通しておくと、洗う日の浴室に残る用事も減ります。

Caution立ち上がるまでの秒数が、週ごとに伸びているとき

伏せから立ち上がるまでの秒数が、先週の倍になっている/体重を預ける側が左右のどちらかに固定されてきた/洗う日でない日でも、途中で座り込む回数が増えた/置いた手を離していないのに姿勢が崩れる。この4つは、道具の並べ替えや工程の分解では追いつきません。片手を離した回数の内訳と、立ち上がるまでの秒数を書いた紙を持って、動物病院で診察の枠を取ってください。左右のどちらに偏っていたかは、そのとき最初に伝えると話が早く進みます。

立ち上がるまでの秒数が伸びたとき|大型犬を一人で見ていて気づくサイン

一人でケアしている人は、二人でやっている人より早くサインに気づきます。置いた手に、その子の体重がどう乗ってきたかを毎回感じているからです。二人でやると、支える役と作業する役に分かれて、この感触が分散します。一人で見ることの不利は手の数ですが、有利なのはここです。

一人でケアしていると先に気づく、手ざわりと秒数の変化
気づくところ先月まで変わってきたとき
置いた手にかかる重み方向を決めるだけで済む押し返してくる力が弱く、寄りかかってくる
立ち上がるまでの秒数2〜3秒6秒を超える日が週に何度も出る
体重を預ける側日によって左右が変わるいつも同じ側に寄る
座り込む回数5分に1回もない洗う日でなくても3回以上
終わったあとの様子すぐ歩いて水を飲む同じ場所で長く伏せたまま

右の列が3つ以上そろってきたときは、順番の組み替えで追いつく話ではありません。記録の形は、分数ではなく秒数と回数にしてください。立ち上がるまでの秒数、片手を離した回数、座り込んだ回数。この3つは、家で毎回そのまま数えられます。数えた紙がそろっていると、獣医師に伝えるときに言葉を探さずに済みます。

家で続けるのは、その3つを1行ずつ書き足していくことだけです。道具の並び順と置く手の位置が決まっていれば、書くのは数字の3つで足ります。大型犬を一人でケアする組み立ては、毎回うまくやることではなく、変わってきたときに気づける形を残すことです。置いた手が覚えていることを、そのまま数字にしておいてください。

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よくある質問

体重が30kgを超える子でも、床に座って一人で回せますか。
床に座る形にすると、体重の大きさよりも床の滑りのほうが先に問題になります。フローリングの上で後ろ足が滑る子では、片手を置いていても体重の乗せかえが人の手より先に起きます。滑り止めのマットを1枚敷いてから数え直すと、離した回数の内訳が変わります。体重そのものは、置く手を動かさなければ人が持つ量にはなりません。持つことになるのは、崩れた姿勢を戻すときだけです。
途中で終わってしまうと、洗い残しが気になります。どこを優先しますか。
優先するのは、その子が次に舐める場所です。足先と、お尻まわり、それから内ももです。ここが残ると翌日に舐めるので、残した場所がそのまま次の悩みになります。背中側は1日置いても状態が変わりにくいので、後ろへ回せます。日を分けるときは、舐める場所から先に片づけて、背中側を翌日に置く並びにしてください。
二人でやれる日は、二人でやったほうがいいですか。
二人でやれる日は、一人では組めなかった工程を先に入れてください。爪のまわりや、耳の入り口のような、両手が要る場所です。全身を通すために二人になるのではなく、一人では残していた場所を埋めるために二人になる、という使い方にします。そうすると、一人で回す日の順番を毎回作り直さずに済みます。二人の日を全身の日にしてしまうと、一人の日の組み立てが毎回崩れます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。