C09シーン別・暮らし
犬と猫の同居を楽にする、シニア猫と暮らす人の毎日の習慣
帰宅後の居間で、犬が老猫の腰のあたりに鼻をつけたまま、10秒ほど離れませんでした。それまでは、横を通るときに一度嗅いで、そのまま自分の場所へ行くだけでした。猫のほうは動かず、しばらくしてから立ち上がって、少し離れた窓辺へ移りました。同じことが3日続いて、ようやくこちらが「猫の側で何か変わったのかもしれない」と考えました。犬と猫の同居では、人が先に気づくとは限らない場面があります。とくに老猫と暮らしていると、変わり方がゆっくりで、毎日見ている人ほど差が分かりません。この記事は、同居している犬の態度を、老猫の変化を知る最初の手がかりとして読む、という話です。
帰宅後の10秒、犬が老猫の腰から離れなくなった|犬と猫の同居で最初に変わるものの背景
順番に書きます。玄関を上がって居間に入ると、犬が先に来て、そのあと床で寝ている老猫のところへ回ります。ここまでは毎日同じでした。変わったのは、猫の横で止まっている時間のほうです。以前は鼻先を一度近づけて終わりだったのが、腰から尾のつけ根のあたりに鼻をつけたまま、10秒ほど動かなくなりました。
老猫は逃げませんでした。目を細めたまま、そのままの姿勢でいて、犬が離れてから立ち上がり、窓辺へ移りました。こちらが見ていたのは犬のほうで、猫の体は見ていません。同じことが3日続いて、4日目に初めて猫の腰に手を当てました。指の腹で毛の流れに沿ってなでると、背中の前半分と後ろ半分で、手ざわりが違っていました。
犬と猫の同居を何年か続けていると、この2頭のあいだの決まりごとは、こちらが決めたものではなくなっています。どちらが先に居間へ入るか、どのくらいの距離まで近づくか、どこで止まるか。その決まりが崩れた日は、たいてい理由があります。老猫と暮らしていると、その理由は猫の側にあることが多い、というのが3日間で分かったことでした。
| 以前 | この3日 | |
|---|---|---|
| 猫の横で止まる時間 | 1秒ほど。すぐ自分の場所へ | 10秒前後、動かない |
| 鼻を近づける場所 | 顔まわりと肩 | 腰から尾のつけ根 |
| 猫の反応 | 顔を上げてまた寝る | そのまま動かず、あとで移動する |
| そのあとの犬 | 水を飲みに行く | 少し離れて座り、猫を見ている |
| 人が気づいたこと | とくになし | 犬の動きが変わったこと |
書いておきたいのは、これが何かの知らせだと決めつけない、ということです。犬が長く嗅いだからといって、猫の体に何かが起きていると言い切ることはできません。分かるのは「前と違う」というところまでです。ただ、老猫と暮らしていると、その「前と違う」を人が自分で見つけるのは、思っているより難しくなります。
毛づくろいは、体の後ろ半分から先に減る|老猫との同居で、犬のほうが早く気づく理由
猫の毛づくろいは、体の場所ごとに使う姿勢が違います。顔まわりと前足は、前足をなめてから顔にこすりつける動きで届きます。肩と胸は、首を曲げれば口が届きます。ところが腰・尾のつけ根・後ろ足のつけ根は、体をひねって口を持っていく必要があります。この姿勢が取りにくくなってくると、届く回数から減っていきます。年齢を重ねた猫で、後ろ半分から先に変わることがあるのは、ここが理由です。
毛づくろいが減った面では、毛の寝方が変わります。舌が通っていた向きにそろっていた毛が、少しずつ立ち、指を入れたときの引っかかり方が変わります。手ざわりと、においの出方が、体の前半分と後ろ半分で分かれてくる。これが、犬の鼻に届いている差です。犬にとっては、毎日嗅いでいる相手の一部分だけが、少しずつ別のにおいになっていくことになります。
犬の側の条件も書いておきます。犬の鼻の高さは、床から30〜50センチほどです。老猫が床で横になっているとき、その高さはちょうど背中から腰にあたります。同居している犬は、居間を横切るたびにその高さを通り、毎日同じ猫のにおいを嗅いでいます。1日に何度も、同じ相手の同じ場所を確かめている状態です。
| 人の側 | 同居している犬の側 | |
|---|---|---|
| 猫との距離 | 抱いたときだけ近い | 1日に何度も、床の高さで近づく |
| 嗅いでいる場所 | 顔まわりが多い | 背中から腰。低い位置 |
| 変化の捉え方 | 同じ部屋にいて順応する | 前回との差として受け取る |
| 気づくきっかけ | 見た目が変わってから | においが変わった時点 |
| 伝わり方 | 自分で探しにいく必要がある | 態度として外から見える |
人の側が不利なのは、順応するからです。同じ室内で毎日暮らしていると、その部屋のにおいは背景になって、意識に上がらなくなります。老猫の変化はゆっくり進むので、なおさら差として感じられません。鼻が悪いという話ではなく、ずっとそばにいる人ほど気づきにくい、というだけのことです。犬は同じ室内にいながら、そのつど差として受け取っています。犬と猫の同居には、この非対称があります。
もう一つ、猫の側の事情もあります。猫は、届かなくなった場所を人に見せません。毛づくろいの回数が減っても、それを痛がる様子として出すことは多くありません。老猫と暮らしていると、変化が「見えるようになった時点」で、そこそこ進んでいることがあります。だから、外から見える手がかりが1つでも多いほうがいい。同居している犬の態度は、その数少ない手がかりの1つです。
犬の態度を3段階の目盛りにして、人が代わる範囲を決める|犬と猫の同居を楽にする毎日の考え方
ここからが、毎日の習慣の話です。犬の態度を、そのまま「人がどこまで代わるか」の目盛りとして使います。老猫と暮らしていると、人が代わる範囲は、いつかは広げることになります。難しいのは、いつ、どこまで広げるかです。早すぎると、その子が自分でできることまで取り上げることになり、遅すぎると、届かない面がそのまま残ります。犬の態度は、その判断を外から見える形にしてくれます。
| 犬の態度 | 見えていること | 人が代わる範囲 |
|---|---|---|
| 通りすがりに一度嗅いで終わる | 前と変わっていない | いまのままで足ります |
| 立ち止まって、同じ場所を長く嗅ぐ | その面のにおいが変わった | その場所だけ、1日1回指で確かめる |
| 舐めようとする/前足で触ろうとする | 犬の側が手を出す段階に入っている | 後ろ半分を毎日、人が代わります |
| 近づかなくなる/距離を取る | においが以前と違う方向に変わった | 後ろ半分に加えて、寝床の布も替えます |
| 猫のほうが犬を避ける | 触られること自体を避けている | 触る回数を戻し、動物病院に相談します |
犬に舐めさせるのは、やめておいてください。理由は3つあります。1つめは、猫がその場から動けなくなること。犬が舐めているあいだ、老猫は逃げる場所を持ちません。2つめは、濡れた毛が乾くまでに時間がかかること。自分で整え直す力が落ちている場所ほど、濡れたままの時間が延びます。3つめは、犬の口のにおいがその面に乗ることです。においが乗れば、猫はそこをまた自分で舐めようとします。届かないから減っている場所に、やり直しの用事を足すことになります。
-
帰宅後は、先に犬の足を拭く
順番を犬から始めるのは、外から持ち帰ったものを室内へ広げないためです。犬と猫の同居では、床に近い高さを共有しているので、犬の足の裏に乗ったものは、そのまま猫が寝ている面へ運ばれます。1分で足ります。ここを先にやっておくと、猫のほうに時間を残せます。
-
老猫の後ろ半分を、乾いた指で一往復する
腰から尾のつけ根まで、毛の流れに沿って指の腹で一往復。道具はまだ使いません。見るのは3つだけです。指が途中で止まるか、手のひらがぬるつくか、毛が寝ずに立っているか。10秒ほどで分かります。毎日同じ手順にしておくと、前日との差が出ます。
-
水を使わない日のケアで、その面だけを整える
猫用のグルーミングウォーターを布に含ませて、腰から尾のつけ根を一往復させます。噴射音が出にくいタイプを選ぶと、老猫が動かずにいられます。体全体をやろうとしないでください。届かなくなっている面だけを人が代わる、という範囲の決め方にします。
-
犬が近づく時間を、猫が食べている時間から外す
犬が嗅ぎに来るのは、猫が床に落ち着いているときです。食事の時間と重なると、老猫は食べるのをやめて移動します。食べる量が減った理由が、体調なのか犬なのか分からなくなります。猫の食事のあいだは、犬を別の部屋か、こちらのそばに置いてください。
-
寝床の布は、週に1回替えて完全に乾かす
毛づくろいが減っている面は、いちばん長く布に接している面でもあります。老猫は同じ場所で寝るので、においは布の側にたまります。猫の体を洗う回数を増やす前に、布のほうを替える。手間としても、猫にかかる負担としても、こちらのほうが軽く済みます。
この目盛りの利点は、人が「気のせいかどうか」を悩まなくて済むところです。老猫の変化は、日ごとに見ていると分かりません。犬の態度は、こちらが探さなくても目に入ります。犬と猫の同居を続けていると、この2頭のあいだの距離感が毎日の景色になっているので、崩れた日はすぐ分かります。景色として持っているものを、そのまま目盛りに使う、という考え方です。
目盛りとして使えるのは、「変わった」「変わっていない」の2つと、その場所がどのあたりかまでです。犬が長く嗅いだからといって、そこに何かが起きていると決めることはできませんし、犬が素通りしたからといって、何も起きていないとも言えません。分かる範囲を超えて読まないでください。犬と猫の同居で使えるのは、人が見る場所を1か所に絞れる、というところまでです。
2週間で、犬が嗅ぐ時間が短くなりました|老猫と暮らす室内に起きた変化と、相談する線
記録として残していたのは、1日1行だけです。日付と、犬が猫の横で止まっていた時間の3段階(短い/前と同じ/長い)。これだけを2週間続けました。人が代わる範囲を後ろ半分に広げてから、5日目あたりで「前と同じ」が混じりはじめ、2週間めには「長い」がほとんど出なくなりました。犬が猫の横を素通りする日が戻ってきた、ということです。
| 日 | 犬の態度 | その日に人がやったこと |
|---|---|---|
| 1〜3日目 | 長い(10秒前後) | 指で一往復するだけ。道具は使わない |
| 4〜5日目 | 長い | 腰から尾のつけ根を、布で一往復 |
| 6〜8日目 | 前と同じ | 同じ手順を毎日。寝床の布を1回替えた |
| 9〜11日目 | 短い日が出はじめる | 手順は変えない。食事の時間だけ犬を離した |
| 12〜14日目 | ほぼ短い | 同じまま。週1回の布替えを続けた |
この記録の読み方は、2つに分かれます。犬の態度が戻ったなら、人が代わった範囲が足りていた、ということです。戻らないなら、範囲が足りていないか、においの変化がケアで動く種類のものではないか、のどちらかです。犬と猫の同居では、この切り分けが早くできます。人の鼻だけでやろうとすると、変わったのかどうかの判断からして揺れます。
毎日の習慣として残ったのは、結局3つでした。帰宅後に犬の足を拭くこと、老猫の後ろ半分を指で一往復すること、週に1回、寝床の布を替えること。時間にすると、犬と猫を合わせて5分ほどです。老猫と暮らしていると、やることを増やす方向へ気持ちが向きますが、増やしたぶんは続きません。続いたのは、犬の態度が目盛りになっていて、やめどきと広げどきが分かるものだけでした。
最後に、犬と猫の同居という条件そのものについて書いておきます。手入れの前提が違う2種が同じ室内にいるのは、たしかに手間が2種類になるということです。ただ、老猫と暮らす期間に限って言えば、同居している犬が、こちらの目の代わりをしてくれる場面があります。犬の側に何かをさせるわけではありません。ふだんどおり同じ部屋で暮らしてもらって、その態度を見ているだけです。
犬の態度が2週間たっても戻らない、老猫が触られること自体を避けるようになった、同じ場所をなめ続けている、地肌が赤い、毛が一か所だけ薄くなった、体重や食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに変わった、動き方や姿勢が変わった。こうした変化があるときは、拭き取りや布替えの回数を増やす前に動物病院にご相談ください。毛づくろいの量が減る背景には、家のケアでは動かないものも含まれます。いつから、体のどのあたりで、犬がどう反応しているかを1行ずつ書いて持っていくと、その場で切り分けてもらえます。老猫と暮らす毎日で、家でできるのはここまでです。
Product
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
