C04悩み解決

シニア期の耳垢の多さ|若い頃と同じケアでは追いつかない

公開日 2024年2月12日|文=mofuwa編集部

明るい窓辺の白いラグの上に、静かに立っているシニア犬
立ち上がる回数が減ると、頭を振る回数も一緒に減っていきます。

雨の日に帰ってきて、玄関マットの上で全身をぶるぶるっと震わせる。あの動作を、最近いつ見たか思い出せるでしょうか。10歳を過ぎたあたりから、体をひとゆすりして終わる子が増えます。耳垢が急に多くなったように見えるのは、この動作が減っていることと重なっていることがあります。シニア期に細くなるのは、耳垢が作られる側ではなく、外へ出ていく側の道のほうです。ここを取り違えると、掃除の回数だけが増えていきます。

最近ぶるぶるっとやらなくなった、という経験

シニア期の変化は、増えたことより減ったことのほうが気づきにくいという性質があります。歩くのが遅くなった、階段を上らなくなった。こういう変化は目に入ります。ところが「頭を振らなくなった」は、そもそも数えていない動作なので、記憶に残りません。

思い当たる場面を並べてみます。どれも、以前は当たり前にやっていたはずの場面です。

これらが減ったころに、耳垢のほうは反対の動きをします。週に1回めくって見ていた耳が、同じ曜日なのに前より多く見える。拭いても、次の週にはまた同じくらい戻っている。ここで多くの飼い主が「シニアになって耳垢が増えた」と考えます。

ただ、耳の中で起きていることは、それほど単純ではありません。耳垢が増えたのか、出ていかなくなったのかは、見た目だけでは区別がつきません。どちらも「めくると多い」という同じ形で目に入るからです。この記事では、後者のほうを見ていきます。シニア期に実際に動いているのは、たいてい後者だからです。

先に断っておくと、これは後ろ足で耳をかく動作の話とは別です。かく動作は、かゆさの出口の話。振る動作は、耳の中のものを外へ運び出す話です。同じ耳の動きでも、役割がまったく違います。混ぜて考えると、どちらの変化も見えなくなります。

耳垢が出ていく理由と、その背景にある動作

前提として、耳垢はあって当たり前のものです。耳の中に入ってきたほこりや毛を絡めとって、外へ運び出すための仕組みだからです。ゼロを目指すものではありません。問題になるのは、作られたものが出口まで届かないときだけです。

耳垢が外へ向かう理由は、大きく2つあります。ひとつは、耳の中の表面そのものが、ごくゆっくり出口の方向へ動いていること。これは体の側の仕組みで、こちらでは触れません。もうひとつが、頭を振ったときに加わる、外向きの勢いです。こちらは動作なので、条件が変わります。

耳垢が外へ出るまでの流れと、どこが止まるか
段階そこで起きていることシニア期に止まりやすいか
作られる耳の中で分泌され、ほこりや毛が絡む止まらない。量はあまり変わらない
運ばれる耳の中の表面が、出口の方向へゆっくり動く少し遅くなる程度
押し出される頭を振る勢いで、出口の側へ動くここが大きく落ちる
外へ出る入り口まで出たものが、こすれや毛づくろいで落ちる接触が減るぶん落ちにくい

表のとおり、シニア期にいちばん大きく変わるのは3段目です。作られる量が同じでも、押し出す回数が半分になれば、耳の中に残る量は増えます。これは、掃除の回数を増やして解決する種類の話ではありません。出口へ運ぶ動作が減っているのだから、入り口を拭いても中の分は動きません。

垂れ耳の子は、この影響をより強く受けます。耳がふたのようにかぶさっているぶん、通気がもともと少なく、湿気も残りやすい。そこに、押し出す動作が減るという条件が重なります。立ち耳の子でも、入り口に毛が密に生えていれば同じことが起きます。耳の形の話というより、出口までの道が細いかどうかの話です。

Note頭を振る動作は、耳だけの仕事ではありません

頭を振るには、首を左右に速く回して、そこで止める必要があります。首、肩、そして体を支える前足まで使う動作です。耳の中がどうであっても、この一式のどこかが痛ければ振れません。耳垢の話をしているつもりが、実は首の話だった、ということが起こります。

シニア期の変化は、耳垢の量ではなく振る勢い

では、なぜ振らなくなるのか。シニア期に重なってくる条件は、だいたい3つです。どれも耳とは関係のないところから始まります。

頭を振る回数と勢いが落ちる、3つの背景
背景何が起きているか家で気づくきっかけ
首や肩が痛い振る動作そのものが痛みにつながる顔を上げる高さが下がった。呼んでも顔だけ向けない
振るとふらつく振ったあとに体勢が崩れるので、途中でやめる振りはじめて止める。一度に短く終わる
寝ている時間が長い起き上がる回数が減り、振る機会そのものが減る1日のうち、立っている時間が短くなった

3つのうち、いちばん見落とされやすいのが2つ目です。振らなくなったのではなく、振りはじめて途中でやめている。これは注意して見ていないと、振っていないのと区別がつきません。以前は頭が左右に大きく往復していたのが、いまは一往復で終わる。この差が、押し出す勢いの差になります。

3つ目も、じわじわ効いてきます。頭を振るのは、たいてい姿勢が変わった直後です。起き上がったとき、体を伸ばしたあと、外から帰ったとき。寝ている時間が長くなると、この「姿勢が変わる瞬間」の回数そのものが減ります。振る意思の問題ではなく、振るきっかけが1日のなかから減っていきます。

ここまでを合わせると、耳垢が多く見える理由は次のようになります。作られる量は変わっていない。運ぶ表面の動きも大きくは変わっていない。減ったのは、押し出す回数と、一度あたりの勢いの2つだけ。それでも、めくって見える量は確実に増えます。掛け算だからです。

同時に、耳の中の条件も少しずつ変わります。横になっている時間が長くなれば、耳がかぶさっている時間も延びます。通気の回数が減れば、湿気は残ります。出ていかない耳垢が、湿ったまま同じ場所に留まる時間が長くなる。シニア期に耳のにおいが気になりはじめる子が多いのは、この重なりのためです。

Point数えるなら、回数より「一往復か、二往復か」

振った回数を毎日数える必要はありません。見るのは、一度振ったときに頭が何往復するかです。以前は二、三往復していた子が一往復で止まるようになったら、勢いが落ちています。回数が同じでも、押し出す力は半分以下になっています。週に一度、思い出したときに見るだけで足ります。

掃除を増やす前に、振れる姿勢と機会をつくる

手当ての向きが、ここで変わります。やることは、掃除の回数を増やすことではありません。耳の入り口を触る回数を増やすと、刺激で分泌がかえって増えることがあります。増やすのは、頭を振れる姿勢と、振るきっかけのほうです。

  1. 声をかけて、顔を上げてもらう

    名前を呼んで、こちらを見上げる高さまで顔を上げてもらいます。頭を振る動作は、顔が下を向いたままでは出ません。1日に何度か、顔が上がる場面をつくってください。上げにくそうなら、そこが首の話です。

  2. 立ち上がる回数を、1日1回だけ増やす

    散歩を長くする必要はありません。水を飲む場所を少し遠くする、寝床を朝と夜で変える。姿勢が変わる回数が増えれば、振るきっかけも増えます。1日1回でも、1週間で7回の差になります。

  3. 寝る向きを、意図的に変える

    いつも同じ側を下にして寝る子は、その側の耳だけ閉じている時間が長くなります。寝床の位置を90度動かすと、向きが変わることがあります。下になっている側の耳のほうが、こすれと湿気の両方を受けています。

  4. ふらつくときは、足元を先に直す

    滑る床の上では、振ったあとに踏ん張れないので途中でやめます。寝床のまわりだけでもマットを敷くと、振り切れるようになることがあります。耳の話をする前に、床の話です。

  5. 週に1回、めくって見るだけの日をつくる

    拭かずに、量・色・湿りの3つを見ます。同じ曜日、同じ明るさで。比べる相手は、他の子ではなく、その子の先週です。

Caution振らなくなったことを、年齢だけで片づけないでください

頭を振らなくなった背景に、首の痛み、耳の痛み、平衡感覚の変化が隠れていることがあります。頭が傾いている、まっすぐ歩けない、振ったあとにふらつく、耳を触ると嫌がる。このいずれかがあるときは、時間を置かずに動物病院へご相談ください。耳垢の話として様子を見る段階ではありません。耳の中の変化は、気になってから48時間を目安にしてください。

相談するときは、耳垢の量だけでなく、「以前は帰宅後に必ず振っていたのが、この2か月出ていない」という言い方で伝えてください。耳垢が多いという情報だけだと、耳の中の話として扱われます。振る動作が減っていることを伝えると、首や足のほうも一緒に見てもらえます。シニア期は、ひとつの症状がひとつの場所から来ているとはかぎりません。

もうひとつ。受診の前日に、耳を掃除しないでください。その日の耳垢の量と色と湿り方が、いちばんの材料になります。きれいにしてから行くと、何が起きているかを伝える手がかりが消えます。気になったそのままの状態で連れて行ってください。

毎日の拭き取りは、耳の外側と、めくって見える範囲までです。若いころは頭を振って自分で外へ出していた分を、振る回数が減ったぶんだけ人が引き受けることになります。ここは、その子が自分では手を届かせられない場所です。mofuwa スキンケアミストは、水そのものでできています。電解水100%で、清涼飲料水の規格基準をクリアしているミストです。拭くのは、その日に下になっていた側から。寝ている時間が長い子ほど、下側の耳のふちに、湿りとこすれが同時にかかっています。口のすぐそばの場所なので、口に入っても差し支えない基準でつくられているものを、布やコットンに取ってから使ってください。耳の中には入れないでください。赤くなっている部分やじゅくじゅくしている部分には使わないでください。

振った回数は、こちらが数えはじめた日から記録になります。朝いちばんの一往復が二往復に戻る日もあれば、雨の日だけ出ない週もあります。耳垢の量ではなく、その往復の数を毎日1行だけ残していくと、来年の同じ季節に、その子の勢いがどこまで変わったのかを量で比べられます。シニア期に効いてくるのは、増やしたケアの数ではなく、続けて数えた日数のほうです。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。