C02技術・エビデンス

毛が絡まる物理的なしくみ

公開日 2024年2月25日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡いラグの上で、淡い色の犬のそばに寄り添って休んでいる長毛のクリーム色の猫
絡まりは毛の量で決まらず、毛の表面がどちらを向いているかで決まります。写真:Lara/Pexels

脇の下の毛を指で挟んで根元へ滑らせると、2センチほど進んだところで指が止まる日があります。そこだけ毛が絡まっているのですが、毛が何本か交差しているだけなら、指はそのまま抜けます。止まるのは、毛の表面にある段差どうしが噛み合っているからです。毛が絡まるしくみを決めているのは、毛の太さや量よりも、表面がどちらを向いているかです。この記事では、その段差が起きているかどうかという軸と、毛の向きがばらけているかどうかという軸の2つに分けて、どっちを家で動かせるのかを並べます。扱うのは絡まりの物理だけで、においや汚れの話は混ぜません。

鱗片が噛み合った点を数える|毛が絡まる条件を、洗濯したウールと並べる

毛の表面は、根元から毛先へ向かって、うろこのような鱗片が瓦のように重なっています。指を根元から毛先へ滑らせると抵抗がないのに、逆から戻すとざらつくのは、この段差に指が当たっているからです。毛が絡まるとは、2本以上の毛が、この鱗片を互いに逆向きで噛み合わせた状態のことをいいます。ただ交差しているだけなら、指を入れれば毛はそのまま抜けていきます。噛み合った点ができていると、そこで指が止まります。絡まる条件を1行で書くと、段差が起きている毛どうしが、向きを揃えずに触れたときです。

同じことが、洗濯機から出したウールのセーターで起きています。ウールも動物の毛なので、表面に鱗片があります。お湯と摩擦が加わると鱗片が起きて、繊維どうしが噛み合い、縮んで板のように固まります。ほどこうとしても、噛み合った点が多すぎて指が入りません。洗濯機の中では1時間で進むことが、その子の毛の上では数日かけて同じように進みます。速さが違うだけで、起きているしくみは同じです。だから絡まりを見るときは、毛質という変えられないものを疑う前に、表面の段差が起きる条件を見ます。

Note鱗片という言葉を、指の感触に置き換えると

鱗片は、毛の表面をおおっている薄い板のことです。屋根瓦と同じように根元から毛先へ重なっていて、その継ぎ目が段差になります。段差が寝ている毛は、隣の毛と触れても滑って離れます。起きている毛は、触れたところで引っかかります。指を毛先から根元へ戻したときのざらつきが、そのまま段差の起き方の目安になります。道具はいりません。

軸1・鱗片が起きているか|毛が絡まるしくみを、表面のざらつきの側から見る

1本の毛だけを見ると、絡まる条件のうち半分が分かります。鱗片が寝ていれば、表面はなめらかで、隣の毛が当たっても滑って離れていきます。起きていれば、当たったところで引っかかります。つまり毛が絡まるしくみの半分は、その毛の表面が今どちらの状態にあるかという1点に収まります。そしてこの半分は、家で動かせる側です。

鱗片が起きる3つの条件と、家で見えるかたち
起きる条件家で見えるかたち家で動かせるか
水分が抜けた指を戻すとざらつく。毛先が軽くなって散る動かせる。表面へ水分を置き直せる
濡れて、乾ききる前にこすれた乾いたあとに毛束が寄っている動かせる。乾かす順番を変えられる
毛先から根元へ向かって梳かした梳かした直後に引っかかりが増える動かせる。入れる向きを変えるだけ
外から強くこすれた首輪や服が当たる面だけ荒れている半分動かせる。当たる時間を短くできる

表の右の列を見ると、4つのうち3つはその日のうちに変えられます。毛が絡まる条件のうち、表面の側は毎日入れ替わっているということです。同じ子で、絡まる週と絡まらない週があるのは、体質が動いたからというより、この表の左の列がその週にいくつ重なったかの差です。ここを数えられるようになると、絡まりは体質の話から離れます。

軸2・毛の向きがばらけているか|毛が絡まる時期が年に2回寄るわけ

もうひとつの軸は、毛どうしが同じ向きを向いているかどうかです。段差が起きていても、全部の毛が根元から毛先へ同じ向きに並んでいれば、段差は段差と平行に触れるので噛み合いません。逆向きに交わったところだけが噛み合います。だから毛が絡まる条件は、表面の状態と向きのばらけ方が同じ場所で重なったときに揃います。

向きがばらけるきっかけは、押さえつけられることと、抜けかけた毛が層の中に残ることの2つです。前者は寝ているあいだに起きます。体重がかかった面は何時間も同じ向きに倒されたままで、起き上がる余地がありません。後者は毛が生え替わる時期に起きます。抜けかけた下毛は、根から離れているので向きを保てず、上毛の下で横向きに残ります。換毛期に毛が絡まる時期が寄るのは、抜けた毛が外に落ちるまでのあいだ、向きのばらけた毛が層の中に増えるからです。春と秋の2回に経験が集中するのは、そのためです。

この軸は、家で動かせる幅が狭いところが厄介です。寝る姿勢は変えられませんし、抜けかけた毛を今日ぜんぶ外へ出すこともできません。向きのばらけ方は、減らすより、ばらけたままでも噛み合わないようにするほうが早く手が届きます。2つの軸のうち、片方だけを動かせば絡まりが成立しなくなる、という見方です。

2つの軸を同じ表に並べる|毛が絡まるとき、どっちを先に動かせるか

2つの軸は、揃わないと絡まりになりません。段差が起きていても向きが揃っていれば滑りますし、向きがばらけていても段差が寝ていれば、触れたところで離れます。ここが、毛が絡まるしくみをそのままケアの順番に変えられる場所です。両方を消す必要はなく、どちらか片方を崩せば足ります。

2つの軸を、動かせるかどうかで並べる
見るところ軸1・鱗片の向き軸2・毛どうしの向き
何が起きているか表面の段差が起きている毛が逆向きに交わっている
家で確かめる手指を毛先から根元へ戻す指を根元まで差し込んでみる
動くまでの時間その日のうちに変わる寝ているあいだに戻ってしまう
変えられる幅水分と梳かす向きで動く姿勢と換毛の進みに縛られる
先に手を入れる側こちらばらけたままでも成立させない

先に動かせるのは、軸1の側です。毛の表面の段差を埋めてしまえば、向きがばらけたまま触れても、引っかかる点ができません。mofuwa 毛玉予防ジェルを平時から毛に塗っておくのは、この段差を埋めておくためです。トリートメント成分が毛を1本ずつ包むので、隣の毛と当たっても滑って離れます。毛玉ができにくい状態が続くというのは、絡まりのしくみの側から言い直すと、噛み合う点がそれ以上増えない状態が続くという意味です。

すでに噛み合ってしまったところには、同じ毛玉予防ジェルをその場所にもみこみます。もみこむとジェルが毛束のあいだへ浸透して、潤滑剤として働き、噛み合った点がずれてゆるみます。ゆるんでこないときは、そこへ mofuwa グルーミングスプレーを足してもみこむと、よりほぐれやすくなります。こちらは高機能性電解還元水を原料の水に使ったもので、電解水が余分な脂となじんで動くぶん、毛束のあいだで指が滑ります。はさみを入れると、そこだけ毛の長さが変わりますし、噛み合った毛は皮膚を巻き込んでいることがあるので、皮膚まで切ってしまうことがあります。切る前にゆるめる手が残っているなら、そちらが先です。

Caution鱗片の向きでは説明がつかない絡まり

同じ場所が2週間おきに戻ってくる/絡まりをほどいた下の地肌が赤い/触ると痛がって体をひねる/毛が抜けたまま生えてこない面がある。こうした残り方は、表面の段差と毛の向きという2つの軸では説明がつきません。ほどいた日付と、その場所を書いた紙を持って、動物病院で診てもらってください。家でできるのは、ほどく前にどこがどう止まったかを覚えておくところまでです。

点が増えて面になるまで|絡まりと毛玉の違いを、ほどける段階で分ける

絡まりと毛玉の違いは、大きさというより、噛み合った点が何個あるかです。点が1つか2つなら、毛束を左右にずらすだけで外れます。点が増えて隣どうしがつながり、面になると、毛束が1つの塊として動くようになります。ここから先は、指で引いても点が同時にずれないので、ほどくのに時間がかかります。毛玉という言葉が指しているのは、この面になった段階です。

噛み合った点が、面になる前と後 点が2つまでなら毛束を横へずらせば外れます。点がつながって面になると、毛束がひとつの塊として動くので、ずらす向きがなくなります。 同じ場所を指で確かめるだけで、どちらの段階かは分かります 点の段階(絡まり) 指が根元まで入っていく 毛束を横へずらすと外れる 噛み合った点が1つか2つ 梳かす向きを変えれば戻る 面の段階(毛玉) 指が途中で止まる 毛束がひとつの塊で動く 点がつながって面になった ゆるめてから少しずつほぐす 段階が変わるのは点の数で、毛の長さや量ではありません
指が根元まで入るうちは、まだ点の段階です。

この見分けがつくと、毛が絡まる時期に何を数えればいいかが決まります。回数ではなく、指が止まった場所の数です。今日できるのは、指を根元へ1回滑らせて、止まった場所を1か所だけ覚えておくことです。そこが明日も同じなら軸1の話、場所が毎回動くなら軸2の話です。毛の表面がどちらを向いているかを見る目は、この1か所から育ちます。

Product

mofuwa 毛玉予防ジェル

mofuwa 毛玉予防ジェル

50g / 2,970円(税込)

被毛をコーティングして、もつれと静電気を起きにくくするジェル。香料無添加です。

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よくある質問

短毛の子でも、毛が絡まるしくみは同じですか。
鱗片は毛の長さと関係なく、どの毛の表面にもあります。だから短毛の子でも、段差が起きて向きがばらければ噛み合います。違うのは、その先に進む余地です。長い毛は噛み合った点のまわりにまだ毛が残っているので、点が増えて面になれます。短い毛は、点がいくつかできた段階で毛が終わるので、面になる前に抜けていきます。ただし首輪の下や脇の下のように、短毛でも毛の向きがばらけ続ける場所はあります。そこだけは、長毛の子と同じ順番で進みます。
洗ったあとに絡まりが増えるのは、どういうことが起きているのですか。
毛が濡れると、表面の鱗片が起きます。ここまでは元に戻る変化です。問題は、起きたまま乾いていく途中に摩擦が加わったときで、噛み合った状態のまま水分が抜けて、その形で固定されます。乾いたあとに毛束が寄っているのは、乾く前に噛み合った跡です。乾かす順番を、根元から先に風を通して、毛先を最後に整える形にすると、噛み合ったまま固まる時間が短くなります。乾ききる前に梳かし切ろうとするほど、点は増えます。
静電気で毛が広がるのと、毛が絡まるのは同じことですか。
別のしくみです。静電気は同じ符号の電気を帯びた毛どうしが反発して離れるので、毛は広がります。絡まりは表面の段差が噛み合って離れなくなるので、毛は寄ります。向きが逆です。ただ、どちらも水分が抜けた時期に増えるので、同じ日に両方が起きます。広がっている毛を無理に押さえつけて梳かすと、そのあいだに向きがばらけて、噛み合う点が増えます。先に水分を置いてから梳かすほうが、どちらにも同じ順番で届きます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。