C05犬種・猫種別ケア

紀州犬と暮らすなら知っておきたい、フケの話

公開日 2024年4月16日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、淡い色の犬が柔らかい敷物の上に落ち着いて座っている
床に落ちていないことは、地肌に何も残っていないことを意味しません。

紀州犬の背中をひととおりとかしても、ブラシの根元についてくるのは抜けた毛だけでした。床にも、寝床にも、白い粉のようなものはほとんど落ちていません。ところが同じ日、同じ場所の毛を左右に分けて地肌を出してみると、根元のあたりに細かい白いものが点々と残っていました。紀州犬のフケは、出ていないのではなく、外へ出てこられないことがあります。密に生えた下毛が層をつくっていて、はがれた皮膚のかけらは、その層に引っかかったまま留まります。目に入るのは、層を抜けて上毛の上まで乗ったぶんだけです。この記事では、上毛に乗るフケと下毛に留まるフケを分けて、いまどちらが動いているのかを見分けるところから書きます。

見えているフケは、上毛に乗ったぶんだけ|紀州犬の下毛が持つ条件

フケとは、皮膚の表面がはがれ落ちたものです。どの犬にも毎日少しずつ出ていて、多くは毛のあいだを抜けて外へ落ちていきます。ここで前提になるのが、抜けて外へ出るまでに、どれだけの層を通らなければならないかです。紀州犬はこの通り道が長い犬です。フケの量の話に入る前に、まず出口の話をしておきます。

紀州犬の被毛は二層です。外側の上毛は硬くまっすぐで、内側の下毛は細く、密に詰まっています。紀伊半島の山あいで、藪の中を進んでイノシシを追う犬として使われてきた作りです。硬い上毛が枝と雨を受け止め、密な下毛が空気をためて体温を保つ。外から入ってくるものを止めるための層は、内側から出ていくものも同じように止めます。この二方向性が、紀州犬のフケを考えるときの条件になります。

地肌ではがれた皮膚のかけらは、まず下毛の層に入ります。層が密なので、細かいものほど途中で引っかかります。上毛の上まで出てこられるのは、かけらが大きくまとまったときか、層がゆるんでいるときだけです。床に落ちるのは、さらにそのあとです。つまり紀州犬では、フケが出てから目に入るまでに、二段階の関門があります。

ここから何が起きるかというと、フケの量と、見えるフケの量が、同じように動かなくなります。地肌ではがれる量が増えても、層に留まっているうちは外に出てきません。逆に、ブラッシングで層がゆるんだ日には、留まっていたぶんがまとめて上がってくるので、急に増えたように見えます。どちらも、地肌で起きていることの説明にはなっていません。だから、見えるフケだけを数えていると判断がずれます。

Note「フケが少ない子」と「出口が長い子」は区別してください

紀州犬と暮らしていて、フケがほとんど落ちてこないという話をよく聞きます。ただ、それは地肌で何も起きていないという意味ではありません。層が長いほど、外に出てくるまでの時間が延びます。この記事で比べるのは、フケの多い少ないではなく、いまフケがどこにあるかです。上に乗っているのか、層に留まっているのか。手の入れ方が変わるのは、そこからです。

上毛に乗るフケと、下毛に留まるフケ|紀州犬で2つを比較する

2つを、同じ項目で並べます。比べるのは量ではなく、どこにあるか、どうやって見つかるか、そして手を入れたときにどう動くかです。紀州犬のフケでは、この2つが別ものとして扱えます。片方の手をもう片方に当てはめると、うまくいかないだけでなく、地肌のほうを削ることになります。

1つ目は、上毛に乗るフケです。層を抜けて、硬い上毛の根元側や毛の途中に乗っています。乾いていて、指で払うと粉のように舞います。床や服に落ちるのはこちらだけです。被毛を分けなくても見えるので、気づくのも早い。ただし、上に乗っているぶんは地肌からいちばん遠い場所にあるので、これを取り切っても地肌の状態は変わりません。

2つ目は、下毛に留まるフケです。密な層の中で毛にはさまれていて、皮脂と混ざるとそのまま毛にくっつきます。指を沈めて層を開かないと出てきません。払っても落ちず、指の腹でこすると毛から離れます。紀州犬で見落とされるのはこちらです。落ちてこないので、床を見ているかぎり存在しないことになっています。時間がたつほど、まとまって面のようになります。

紀州犬で、2つのフケがどう違うか
上毛に乗るフケ下毛に留まるフケ
どこにあるか上毛の根元側から毛の途中下毛の層の中。地肌のすぐ上
見つかり方分けなくても目に入る指を沈めて層を開いてから
手ざわり乾いて粉っぽい。指で舞う毛にくっつく。こすると離れる
落ちるか床や服に落ちる落ちない。層に残り続ける
時間が経つと落ちて減っていく皮脂と混ざり、まとまって面になる
何を映しているか少し前に地肌で起きたこといま地肌で起きていること
手の入れ方表面を通す。払う層を開く。1枚ずつ出す
上に乗ったフケと、層に留まったフケ 紀州犬は下毛が密なので、はがれた皮膚のかけらは層の中で止まります。上毛まで出てこられたぶんだけが目に入るため、見えている量と地肌の状態がずれます。 同じフケでも、居場所が違えば別の手になります 上毛に乗るフケ 分けなくても目に入る 乾いて粉っぽい 床や服に落ちていく 映すのは少し前の地肌 下毛に留まるフケ 層を開くまで見えない 毛にくっついて落ちない 皮脂と混ざり面になる 映すのはいまの地肌 見えている量だけでは、地肌の状態は分かりません
紀州犬のフケでは、量を数えるより、どこにあるかを分けるほうが先です。

この2つには、時間の前後があります。地肌ではがれたものは、まず層に留まり、そのあと上へ出てきます。つまり上毛に乗っているフケは、少し前に地肌で起きたことの記録です。いま地肌で何が起きているかは、層の中を見ないと分かりません。紀州犬で「急にフケが増えた」と感じる日があるとしたら、それは地肌が急に変わったのではなく、層から出てくるタイミングが揃っただけ、ということがあります。

どちらか一方だけを扱う、という選び方もありません。上に乗ったぶんを払わずに層を開こうとすると、開いた層の中へ上のフケが落ちて混ざります。上を先に通してから、層を開く。紀州犬のフケでは、どっちが大事かという比較ではなく、順番に並べて両方を見る、というのが答えになります。

濃い色の布と、分けた層|紀州犬のフケの見分け方

2つあると決まったら、次はいまどちらが多いかです。見分け方の中心は、比べる場所を2つ用意することです。用意するのは、濃い色の布か紙を1枚だけ。あとは指を使います。紀州犬を立たせたまま、次の順で確かめてください。座らせると背中の毛が寄って、層の厚みが変わります。

  1. 濃い色の布を体の下に敷いて、背中を10回だけとかす

    布は膝に広げても、床に置いてもかまいません。回数を10回と決めるのは、日によって差が出ないようにするためです。布に落ちたぶんが、上毛に乗っていたフケです。粉のように細かく散るか、それとも何も落ちてこないか。多い少ないの基準はここでは要りません。落ちたかどうかだけ見てください。

  2. とかした同じ場所で、毛の流れと直角に指を2本沈める

    かき分けるのではなく、差し込むように入れます。指の腹が地肌に当たったら、そのまま1センチだけ横へ滑らせてください。抜いた指の腹に、白い細かいものがついてくるか。ついてくるなら、それが下毛に留まっていたフケです。布には落ちなかったのに指にはつく、という結果がいちばん多く出ます。

  3. 指についたものを、親指の腹でこすってみる

    乾いて粉のまま散るのか、指のあいだで少し伸びるのか。伸びるときは皮脂と混ざっています。混ざっているぶんは毛にくっついているので、払っても落ちません。乾いたまま散るなら、層の中にあってもまだ毛から離れやすい状態です。ここまで見ておくと、次のセクションでどっちに手を入れるかが決まります。

  4. 首の後ろ・背中の真ん中・腰・内股の4か所で、同じ2つを比べる

    紀州犬は場所によって下毛の厚みが違います。首の後ろと腰は層が厚く、内股や脇は薄い。薄い場所は布にも落ちますが、厚い場所は指にしかつきません。1日で4か所を回さなくて構いません。今日は首と背中、明日は腰と内股。同じ場所を続けて見るほうが、条件の差に気づけます。

布と指、2つの結果の読み方
布に落ちる指につくいま起きていること
落ちるつかない上に乗ったぶんが出ている途中。層は通っています
落ちないつく層に留まったまま。紀州犬でいちばん多い形です
落ちるつく両方。上を通してから、層を開く順番で進めます
落ちないつかないその場所は今日はやらなくて構いません
Point量ではなく、居場所の変化を記録してください

毎日の量をノートに書こうとすると、たいてい続きません。書くのは「布か、指か」だけで足ります。先週は指だけだったのに今週は布にも落ちるようになった、という変わり方は、層がゆるんできたということです。逆に、布に落ちていたのに落ちなくなったのなら、地肌で起きる量が減ったのか、層が詰まったのか、どちらかです。二択の記録でも、向きは分かります。

上と下、どっちから手を入れるか|紀州犬のフケで変わる順番

見分けがついたら、手の入れ方を選びます。結論から書くと、どっちが多くても、通す順番は上からです。ただし、上で止めるのか、そのまま層まで進むのかが変わります。紀州犬のフケでうまくいかないときは、この選び方が入れ替わっていることがあります。

布に落ちるほうが多いとき。上毛に乗ったぶんが動いているので、まず表面を通します。歯の間隔が広い道具で、毛の流れに沿って長く。ここで層まで踏み込まないでください。上のぶんが残っている状態で層を開くと、開いた隙間へ落ちて混ざります。上を通し終えてから、指で層を確かめる。多くの日はそこで終わりです。

指につくほうが多いとき。層の中に留まっているので、上を通しただけでは何も動きません。指で毛を分けて層を1枚だけ出し、出したぶんだけ道具を通す。終わったら分ける線を少し上へ移して、また1枚。これを3〜4回くり返せば、その一帯に届きます。深さを先に決めておくと、道具が地肌に当たりません。上から一気に入れると、深さが道具まかせになります。

どっちが多いかで、その日にやることが変わります
いまの状態その日にやることやらないこと
布に落ちるほうが多い表面を通す。長く、流れに沿って層を開くのは、上を通したあとに回します
指につくほうが多い層を1枚ずつ出して、出したぶんだけ通す上から一気に押し込まないでください
指につき、こすると伸びる層を開いて空気を通す。回数は増やさない洗う頻度を先に上げないでください
どちらもほとんどないその場所は触らない念のためのブラッシングは足しません

洗う頻度についても書いておきます。層に留まったぶんが気になると、洗う回数を増やしたくなります。ただ紀州犬は下毛が厚いので、表面が乾いてからも内側には水分が残ります。乾かしきる時間が取れない週に洗う予定を入れると、湿った層がそのまま時間を過ごすことになります。洗う頻度を動かすのは、上の2つを回したあとにしてください。順番としては最後です。

層は、指で分けているあいだだけ開いています。指を戻せば、硬い上毛が元の向きに立って、地肌はまたふさがります。紀州犬のフケが層の中で時間を過ごすということは、そこへ当てたものも同じだけ留まるということです。開いた数秒に何を置くかは、その前提で決めることになります。

mofuwa スキンケアミストは、アルコール・香料・界面活性剤・防腐剤・鉱物油・オイル・着色料・添加物の8つを入れずにつくった電解水のミストです。層に残っても困らないものだけで組まれている、というのが、この場所で選べる条件になります。使うのは、上を通し終えたあとです。布に含ませてから、指で分けた線の内側だけに当ててください。指を戻すのは、当てた場所が乾いてからです。湿ったまま上毛を寝かせると、開く前より通り道が短くなります。紀州犬では、上を通す順番と同じくらい大事なところです。地肌が赤い場所や、かさぶたのある場所には使わないでください。

Caution面になった場所へ、力で道具を入れないでください

皮脂と混ざったフケがまとまって、指が押し返される場所ができることがあります。ここへ上から強く道具を入れると、留まっていたものではなく、生えている毛と地肌を一緒に引っぱることになります。面は1回でほどききらなくて構いません。層を1枚出して、出せたぶんだけ外へ運ぶ。嫌がる、声を出すというときは、その日はそこで止めてください。

層を開いても出てこないフケは、被毛の作りでは説明がつきません

ここまでは、密な下毛という条件で説明のつくフケの話でした。上を通して層も開いているのに、同じ場所が短い間隔で戻ってくるときは、別の見方をしてください。次のような変わり方は、ブラッシングの回数や道具の話として片づけないほうが安全です。

Caution早めの受診をおすすめするサイン

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、かさぶたができている、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、家でのケアを足す前に動物病院にご相談ください。紀州犬は層が厚いぶん、地肌の変化が外に出てくるまでに時間がかかります。迷ったときは、早いほうを選んでください。

相談に行くときは、布に落ちたか指についたか、それがどの場所か、いつからかの3つをメモしてください。この3つがあると、被毛の作りで説明のつくフケなのかどうかを、その場で切り分けてもらいやすくなります。前の晩に念入りにとかさないでください。層に留まっていたぶんが落ちてしまうと、もとの状態が分からなくなります。

紀州犬と暮らすうえで、下毛が密であることは変わりません。藪の中を進む犬としてそなえた作りだからです。動かせるのは、はがれた皮膚のかけらが層に留まっている時間のほうです。見えている量で判断しない。布と指で、上と下を分ける。上を通してから層を開く。紀州犬のフケで手をつけられるのは、そこです。

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よくある質問

紀州犬はフケがほとんど落ちてきません。手を入れなくていいですか?
落ちてこないことと、地肌に何も残っていないことは別です。密な下毛が層をつくっているので、はがれた皮膚のかけらは層に引っかかったまま留まります。濃い色の布に落ちるかどうかだけでなく、毛の流れと直角に指を2本沈めて、抜いた指の腹に細かい白いものがつくかどうかで見てください。
ブラッシングをした日だけ、急にフケが増えるのはなぜですか?
地肌で起きる量が急に増えたのではなく、層に留まっていたぶんが、とかしたことでまとめて上へ上がってきたと考えるほうが自然です。とかした直後だけ多く見えて、翌日には戻るという出方をします。増えたかどうかは、とかす前の指の状態で見るほうがぶれません。
フケが気になるとき、シャンプーの回数を増やしたほうがいいですか?
順番としては最後です。紀州犬は下毛が厚いので、表面が乾いてからも内側に水分が残ります。乾かしきる時間が取れないまま回数だけ増えると、湿った層がそのまま時間を過ごすことになります。先に、上を通す手と、層を1枚ずつ開く手を回してください。どちらも元に戻せます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。