C09シーン別・暮らし

車でのおでかけ、シニア猫と暮らす人はどうしている?

公開日 2024年5月18日|文=mofuwa編集部

明るい部屋で、淡いクリーム色の敷き布の上に落ち着いてすわっている猫
動かせるのは走っている時間ではなく、キャリーを置く場所のほうです。写真:Yori H/Pexels

5月の午後、後席の窓側にキャリーを置いて40分走り、降りてから座面に手を当てると、日が当たっていた側だけが人肌より温かくなっていました。同じ車の中でも、運転席の足元と後席の窓側では、手のひらで分かるほど温度が違います。暑くなった場所に居あわせたとき、犬なら自分で立って涼しい面へ移ります。けれどキャリーに入った老猫は、車での移動のあいだ、置かれた場所から動けません。老猫は自分でできることが減っていて、そのぶん人が代わっている範囲が広がっています。その範囲に、車の中の「どこに置くか」が入っています。この記事では、走り出す前・走っているあいだ・降りたあとに分けて、キャリーの置き場所を決める5つの手順を書きます。

日かげへ歩いていけるのは犬のほうです|車の中で老猫が場所を選べない前提

車でのおでかけを考えるとき、まず気になるのは走っている時間の長さです。片道30分なのか、2時間なのか。ただ、老猫と暮らしている家で先に見ておきたいのは、時間ではなく車の中の温度が場所によって違うということのほうです。エンジンをかけて走り出すと、車内はどこも同じようには変わりません。日が当たっている側のガラスの近くは早く温まり、運転席の足元は送風の向きで冷えます。後席の中央は、その両方の影響がいちばん小さい場所になります。

犬を車に乗せたことのある方は、走っているあいだに犬が座る場所を変えるのを見たことがあると思います。暑くなれば足元へ降り、寒ければ座面へ戻る。犬は、車の中でも自分の体に合う面をさがして移動できます。老猫はそこが違います。老猫を車で移動させるとき、その子はキャリーの中にいます。キャリーの中は50センチもありません。人が置いた場所が、そのまま数十分ぶんの居場所になります。

そのうえ、老猫は自分でできることが減っています。毛づくろいで届く範囲が狭くなり、届かない場所を人が代わりに触っている。体温の調節も、若いころのように場所を変えることで済ませられません。若い猫であれば、キャリーの中でも向きを変えたり、涼しい面に体を寄せたりして自分でしのぎます。老猫では、その小さな動きの回数そのものが減っています。だから、車での移動で人が代われるのは、キャリーの「置き場所」なのです。

Note涼しくすればいい、という話ではありません

老猫でこたえるのは、暑いか寒いかそのものより短い時間で温度が動くことのほうです。送風を強くして車内を冷やすと、今度はその風が当たる面だけが急に冷えます。目指すのは、いちばん涼しい場所ではなく、走っているあいだに変化がいちばん小さい場所です。だから手順の1つ目は、温度を下げることではなく、どこがいちばん動かないかを確かめることになります。

走り出す前に、手のひらで3か所さわる|老猫を車で移動させる日の、置き場所を決める順番

ここからが手順です。道具は要りません。使うのは手のひらだけです。老猫を乗せる前に車のドアを開け、5分ほど空気を入れ替えてから始めてください。順番を守ることに意味があるので、飛ばさずに上から進めてください。車での移動が決まった日の、出発の15分前から取りかかるやり方です。

  1. 1. 走り出す前に、後席の3か所を手のひらでさわる

    窓側・中央・足元の座面に、それぞれ手のひらを5秒ずつ置きます。指先ではなく手のひら全体です。指先だと差が分かりにくく、面で当てるとどこが温かいかがはっきりします。晴れた日の午後なら、窓側だけがはっきり温かいはずです。曇りの日や夜なら、足元だけが冷たく感じます。ここで温度を測るのが目的ではなく、今日のこの車で、どこがいちばん動いているかを知るのが目的です。

  2. 2. 変化がいちばん小さかった場所に、キャリーを置く

    3か所さわって、いちばん「何も感じなかった」場所を選びます。多くの場合は後席の中央になりますが、駐めていた向きや時間帯で入れ替わります。日によって答えが変わるので、毎回さわり直してください。キャリーは座面に直接置かず、滑らないように厚手の敷き布を1枚はさみます。老猫は踏ん張りが利きにくいので、キャリーそのものが動かないことが先です。

  3. 3. 日が当たる面に、布を1枚かける

    置き場所が決まっても、走っているあいだに日の向きは変わります。曲がるたびに、さっきまで日かげだった面に日が入ります。そこで、キャリーの側面のうち、窓に向いている1面だけに薄い布をかけます。全体をおおうと、こんどは中の空気が動かなくなります。かけるのは1面だけ、上面は開けたままです。家で使っている布を使うと、においの面でもその子にとって知っているものが1つ増えます。

  4. 4. 停まるたびに、キャリーの中へ手を入れて確かめる

    信号待ち、コンビニ、サービスエリア。停まるたびに、キャリーの扉を少し開けて手を入れ、その子の背中と、床になっている面を手のひらでさわります。背中が温かくなっていたら日が回っています。床が冷たくなっていたら送風が当たっています。どちらかが起きていたら、そのときに置き場所を10センチずらすか、布をかける面を変えます。老猫を出す必要はありません。手だけを入れます。

  5. 5. 降りたら、すぐ室内に入れない

    目的地に着いたら、キャリーを持って車から降り、そのまま部屋へ運ばずに、玄関の外か風の当たらない場所で2〜3分そのまま待ちます。夏なら車内と室内で温度が違い、冬は逆の差が出ます。老猫は、その差を体で受け止める側の調節が遅くなっています。2〜3分はさむだけで、変化が1段になります。待っているあいだも、扉は開けずに手だけ入れておきます。

走り出す前にさわる3か所と、そこで分かること
さわる場所温かく感じたら冷たく感じたら
後席の窓側日が当たっている時間が長い。この面に布を1枚曇りか夜。窓側でも置ける日です
後席の中央車内全体が温まっている。空気を入れ替えてから乗せる変化がいちばん小さい。ここが置き場所の第一候補
後席の足元床下からの熱が上がっている。この日は足元を避ける送風が回っている。長い移動では冷えが続きます
キャリーの床面(走行中)座面の熱がキャリーに移っている。敷き布を足す送風が直接当たっている。向きを10センチずらす
その子の背中(走行中)日が回ってきた。布をかける面を変える風が当たっている。上面の開きを半分にする

5つ全部をやる時間がない日もあります。1つだけ選ぶなら、手順1です。走り出す前の30秒で3か所さわるだけで、その日の車内でどこを避けるかが決まります。逆に、いちばん後回しにしていいのが手順3の布です。置き場所さえ合っていれば、布は無くてもかまいません。順番としては、置き場所が先、布があと、という考え方でそろえておくと、急いでいる日にも迷いません。

置き場所は、停まるたびにずれます|車での移動の頻度が上がるほど手を入れる回数が増える理由

手順のとおりに置いたのに、降りてみるとキャリーの片側だけが温かい。これは失敗ではありません。走っている車の中では、置き場所の条件が15分ごとに変わっています。進む向きが変われば日の入る面が変わり、渋滞で止まれば送風の当たり方が変わります。出発時に決めた場所は、出発時点での最適でしかありません。ここが、老猫を車で移動させるときにいちばんつまずくところです。

出発時に決めた置き場所が、走っているあいだにずれる原因
何が起きるかキャリーの中で変わること手の入れ方
進行方向が変わった日かげだった面に日が入る布をかける面を、日が当たる側へ移す
渋滞で止まった走行風がなくなり、車内の空気が動かなくなる上面の開きを広げ、送風を弱くする
高速に入った送風が強まり、床面が冷える敷き布を1枚足して、床からの冷えを切る
同乗者が窓を開けた外気が一気に入り、片側だけ温度が動く開いている窓と反対側へ10センチずらす
1時間を超えたキャリーの中に、その子の体温がこもってくる停まったときに上面を開けて、空気を入れ替える

だから、決めるのは置き場所そのものではなく手を入れる頻度のほうです。目安は、15分に1回、または停まるたび。どちらか早いほうで手を入れます。30分の移動なら2回、2時間なら8回前後になります。回数を決めておくと、走っているあいだに「そろそろ気になる」と考えなくて済みます。運転している人と同乗者がいるなら、この係を同乗者に渡してしまうのがいちばん確実です。車での移動の頻度が月に何回かある家では、この15分の区切りを毎回同じにしておくと、その子の側にも順番が読めるようになります。

手を入れたときに見るのは、温度だけではありません。背中の毛が湿っていないか、床になっている面の被毛が寝ていないか。老猫は毛づくろいで自分の被毛を起こす力が落ちているので、移動のあいだに寝てしまった毛は、降りたあとも自分では戻せません。これは皮膚に何かが起きているという話ではなく、単に接触していた面がつぶれているという話です。戻すのは家に帰ってからで足ります。移動中にブラシを入れる必要はありません。

Point頻度を決めると、長い移動が短い移動の積み重ねになります

15分で区切ると、2時間の移動は「15分の移動が8回」になります。老猫にとって負担なのは総時間よりも、だれも様子を見ないまま過ぎる時間の長さのほうです。8回手を入れれば、置き場所のずれは最大でも15分ぶんで止まります。停車できないときは、後席へ手を伸ばして背中に手のひらを当てるだけでかまいません。扉を全部開ける必要はありません。

降りてすぐ室内に入れない|車と部屋のあいだに1段はさむコツ

帰り着いて、車から降りて、そのまま玄関を上がってキャリーを開ける。これがいちばんやりがちな終わり方です。けれど、この数十秒のあいだに、その子は3つの変化を続けて受け取っています。車内の温度から外気へ、外気から室内へ、そしてキャリーの中から部屋へ。老猫は変化を1つずつしか受け取れないので、3つがまとまって来ると、どれに反応しているのかが本人にも周りにも分からなくなります。はさむ1段は、この3つを2つに減らすためのものです。

翌日から戻すケアも、水を通すところからは始めません。老猫は乾くまでの時間が長く、洗ったあとの数日は被毛の表面がそろわないからです。移動でつぶれた面を起こすだけなら、猫用 mofuwa グルーミングウォーターを布に含ませて、背中とあごの下を毛の流れに沿って一往復させるくらいで足ります。汚れを落としきることが目的ではなく、寝てしまった被毛を起こすのが目的です。布のほうへ先に含ませるのは、車から降りたばかりのその子の耳もとで、押し出す音すら鳴らさないためです。触る場所は、移動中に床になっていた面から選びます。手のひらを当てて毛が寝ていた側です。

この1本を置いている理由は、中身ではなく容器のほうにあります。猫が手を引くきっかけになっていたのは、押したときのプシュッという音でした。犬猫向けのグルーミングスプレーと同じ水に、猫向けの少しのイオン調整を加えて、押し出すだけのボトルに替えたものが猫用グルーミングウォーターです。車から降りた直後のその子は、走行音と振動を数十分ぶん受けてきたところにいます。そこへ音を1つ足さずに済むというだけで、翌日の一往復が受け入れられる回数が変わりました。中身は電解水で、毛づくろいで口に入ることを前提に作られているので、あごの下に当てたあとにその子が舐めても、量を気にしなくて済みます。老猫は自分で被毛を起こす力が落ちているぶん、人が代われる範囲がここにも1つあります。

Caution翌日になっても戻らないときは、動物病院にご相談ください

車での移動の翌日になっても、食べる量が戻らない、水を飲む量が明らかに変わった、いつもの寝る場所へ行かない、触ると声を出す、同じ場所をなめ続けている、地肌に赤みやかさつきが見える、呼吸の速さが落ち着かない。ここに挙げた形が翌日も残っているなら、布で毛を起こす回数を足すより先に、動物病院にご相談ください。老猫では、移動そのものよりも、そのあとに出てくる変化のほうが読み取りにくいことがあります。出発した時刻・かかった時間・車内の温度をどうしていたかをメモにして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。予約の電話は、答えが出ていない段階で入れてしまってかまいません。

車でのおでかけは、老猫と暮らしていても取り上げなくていい選択肢です。動物病院へ行く日も、家族の用事で連れて行く日もあります。ただ、走っているあいだに人ができることは、思っているより多くありません。動かせるのは、走り出す前の30秒と、停まるたびの手のひらと、降りたあとの2〜3分です。手のひらで3か所さわって置き場所を決め、日が当たる面に布を1枚かけ、15分ごとに手を入れ、降りたら1段はさむ。犬のように自分で移れないぶんを、この4つで代わる。老猫にとって楽なのは、そちらの形です。

Product

猫用 mofuwa グルーミングウォーター

猫用 mofuwa グルーミングウォーター

300ml / 2,970円(税込)

猫のために容器から見直したケアウォーター。拭き取りが要らず、噴射音が出にくいタイプです。

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よくある質問

同居の犬と一緒に車へ乗せるとき、老猫のキャリーはどこに置けばいいですか。
犬が座る場所を先に決めて、そこから離れた面にキャリーを置いてください。犬は走っているあいだに場所を変えるので、キャリーが押される位置だと置き場所が固定できません。犬が窓側に座るなら老猫は中央、犬が足元に伏せるなら老猫は座面、というように面で分けます。頭数が増えても、さわって温度を確かめる手順は同じです。
キャリー全体に布をかけて暗くしたほうが、落ち着くと聞きました。
落ち着く子はいますが、全面をおおうと中の空気が動かなくなります。老猫では、暗さより温度が動かないことのほうが先です。かけるのは日が当たっている1面だけにして、上面は開けたままにしてください。それでも落ち着かないときは、正面の1面を足して2面までにとどめます。
30分程度の移動でも、停まるたびに手を入れる必要がありますか。
30分なら、走り出す前の確認と、途中で1回で足ります。15分に1回という目安なので、30分の移動では中間で1回入れる計算です。短い移動でいちばん差が出るのは、出発前に3か所さわって置き場所を決めるところなので、途中の回数より、そちらを毎回やるほうを優先してください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。