C05犬種・猫種別ケア
グレートピレニーズと暮らすなら知っておきたい、脇や内股の蒸れの話
夏の夕方、グレートピレニーズの首まわりに手を差し込んだら、部屋の空気とほとんど変わらない温度でした。あれだけ厚いたてがみなのに、指のあいだを風が通っていきます。ところがそのまま手を下ろして前脚の付け根に入れると、そこだけが生ぬるい。同じ一頭の、同じ日の、同じ時間の話です。グレートピレニーズの蒸れは、毛が厚いから起きているのではありません。熱が抜けている場所と、閉じたまま抜けない場所が、一頭の体の中で分かれているだけです。この記事では、その2つを並べて比べます。抜けている場所を先に数えると、残った面がそのまま、手を入れる場所になります。
たてがみからは熱が抜けている|グレートピレニーズの蒸れが起きない場所の条件
グレートピレニーズの首まわりには、たてがみと呼ばれる厚い毛があります。肩から前へ回り込むように毛が長く伸びて、正面から見ると首が二回りほど太く見えます。この見た目から、いちばん熱がこもるのは首だろう、と考えるのが自然です。けれど実際に手を差し込むと、首は思ったほど熱くありません。
理由は毛の並び方にあります。たてがみの毛は長く、そして一本一本が太めで張りがあります。張りのある毛は倒れずに立ったまま隣の毛と離れているので、毛と毛のあいだに空気の入る隙間が残ります。体の熱はその隙間を伝って上へ抜け、外の空気と入れ替わります。厚みがあることと、閉じていることは、別の話です。
この作りは、ピレネー山脈で家畜を守る仕事から来ています。雪と風の中で一日じゅう外にいるには、体の表面に空気の層をためておく必要がありました。空気の層は、たまるだけでなく入れ替わります。入れ替わるからこそ、夏に体温が上がったときにも、そこが熱の逃げ道になります。たてがみは、断熱と放熱の両方を担っている場所です。
では、どこで蒸れが起きるのか。答えは、毛の厚さではなく面と面が向かい合っている場所です。前脚の付け根、つまり脇。後ろ脚の内側、つまり内股。ここは毛の量ではむしろ首より少ないのに、皮膚どうしが向かい合って距離が近く、空気の入り口も出口もありません。グレートピレニーズの蒸れは、この閉じた面のほうに集まります。
- たてがみ:毛が長く、張りがある/隣の毛と離れているので、隙間に空気が通ります
- 背中:面が上を向いている/熱は上へ逃げるので、いちばん抜けやすい場所です
- 脇:前脚と胴が向かい合う/毛の量にかかわらず、上下から閉じられます
- 内股:後ろ脚とおなかが向かい合う/立っていても、歩いていても、開ききりません
- 耳の下:耳が垂れてふたになる/面が1枚かぶさっているだけで、条件が変わります
- 尾の付け根:飾り毛が体側へ寝る/毛そのものが、ふたの役をすることがあります
毛の量を理由にすると、対処は「短く刈る」か「洗う回数を増やす」の二択になります。どちらもグレートピレニーズの蒸れの中心には届きません。閉じている面は、毛を短くしても向かい合ったままだからです。見るのは量ではなく、そこに空気の入り口があるかどうか。入り口のない面だけが、湿ったまま時間を過ごします。
熱が抜ける場所と、抜けない場所|グレートピレニーズの蒸れを比較する
2つの面を、同じ項目で並べます。比べるのは毛の長さでも量でもなく、空気が出入りしているかどうかです。グレートピレニーズは体が大きく、面積が広いぶん、この差が場所ごとにはっきり出ます。「全身が同じように蒸れている」ということは、まず起きません。
抜ける側の代表がたてがみと背中です。毛が上に向かって立ち、面が空へ向いています。体温で温められた空気は軽くなって上へ動くので、放っておいても入れ替わります。手を入れると、外の空気に近い温度が返ってきます。湿り気も指に残りません。ここは、手を入れなくてよい場所です。
抜けない側の代表が脇と内股です。面が横または下を向いていて、上に動こうとする空気の行き先がありません。しかも前脚と後ろ脚が動くたびに、面と面が押し合います。押し合うたびに残っていた空気が押し出され、新しい空気は入ってきません。その状態が続いた場所に、湿りとぬるさが残ります。
| 熱が抜ける場所(たてがみ・背中) | 熱が抜けない場所(脇・内股) | |
|---|---|---|
| 面の向き | 上を向いている | 横または下を向いている |
| 向かい合う相手 | なし。外の空気に開いている | 前脚と胴、後ろ脚とおなか |
| 毛の並び | 長く、張りがあり、立っている | 短めだが、上から押さえられて寝る |
| 空気の入れ替わり | 温まると勝手に上へ抜ける | 動くたびに押し出され、戻らない |
| 手を入れたときの温度 | 外の空気とほぼ同じ | 手のひらより少しぬるい |
| 乾く順番 | いちばん早い | いちばん遅い。数十分の差が出る |
| 蒸れとの関係 | 起きにくい。手を入れなくてよい | 残りやすい。ここだけを見る |
この比較には、そのまま使える意味があります。全身に同じ手をかける必要がない、ということです。グレートピレニーズは体格が大きく、全身を毎日きちんと回そうとすると、たいてい途中で止まります。抜ける面を「やらない場所」と決めてしまえば、手をかける面積は一気に減ります。減ったぶんを、閉じている面へ回してください。
もうひとつ。抜ける面と抜けない面は、季節でも入れ替わりません。体の作りで決まっているので、夏も冬も同じ場所が閉じています。変わるのは、そこに湿りが残る時間の長さのほうです。梅雨と真夏は乾くまでが長くなり、冬は室内の暖房で床に近い面が温められます。場所は固定、時間は季節で動く、と覚えておくと迷いません。
抜けている面から先に数える|グレートピレニーズの蒸れの見分け方
ここからが実際の手順です。探すのは蒸れている場所ではなく、蒸れていない場所のほうです。閉じている面を最初から探そうとすると、どこも同じに感じてしまいます。開いている面を先に触って、その温度を基準にしてください。基準ができてはじめて、ずれている場所が指に引っかかります。
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手の甲を、肩の上のたてがみに差し込む
手のひらではなく手の甲を使ってください。手のひらは自分の汗で温度が分かりにくくなります。甲を毛の中へ入れて、地肌の手前で止めます。ここで感じた温度が、その日の基準です。部屋の温度によって基準そのものが上下するので、毎回この順で始めます。
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同じ手の甲で、背中の真ん中と腰の上をたどる
たてがみと同じくらいの温度なら、その面も抜けています。ここまでで、抜けている面が2つ数えられました。グレートピレニーズは背中が広いので、前・中・後ろの3か所に分けて触ると差が見えます。腰の上だけ温度が高いときは、寝床の敷物が熱をためていることがあります。
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前脚を持ち上げず、脇の外側から甲を滑り込ませる
脚を持ち上げると面が開いてしまい、閉じていたときの状態が分かりません。立ったまま、体側から甲を差し込みます。基準よりはっきりぬるい、指を抜いたときに湿り気が残る。どちらかが当てはまれば、そこが今日の蒸れです。
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内股は、横に立って後ろから甲を入れる
正面から手を入れると身をよじる子が多いので、体の横に並んで立ち、後ろ脚のあいだへ甲だけを入れます。奥まで入れる必要はありません。入り口の温度だけで足ります。グレートピレニーズは体高があるので、飼い主が膝を落として目線を下げると、犬の側も身構えません。
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数えた結果を、口に出して確かめる
「たてがみ、背中、腰は抜けている。脇と内股が残った」。この一言まで言い切ると、今日どこに手を入れるかが決まります。逆に、脇と内股まで基準と同じ温度なら、その日は何もしなくて構いません。毎日やる作業ではなく、毎日は要らないことを確かめる作業です。
| 手の甲で感じたこと | その面の状態 |
|---|---|
| たてがみと同じ温度。指に湿り気なし | 抜けています。手を入れなくて構いません |
| 少しぬるいが、指は乾いている | 空気は止まりかけ。風を通せば戻ります |
| ぬるく、抜いた指に湿り気が残る | 今日の蒸れはここ。開いて乾かす面です |
| 熱く、においが指に残る | 湿った時間が長かった面。翌日も同じ順で確かめます |
| 左右で温度が違う | 寝る向きや、体を寄せている面を思い出してください |
グレートピレニーズは被毛が白いので、湿っていても見た目には出ません。毛先が乾いていれば、根元も乾いているように見えます。目で見て分かる状態になっているときは、すでに時間がたっています。抱き寄せたついでに肩へ甲を入れる、と決めてしまうと、数えるほうは十数秒で終わります。順番さえ固定すれば、道具は要りません。
今日は脇と内股のどっちか|グレートピレニーズの蒸れに手を入れる順番
残った面が2つあるとき、両方を同じようには扱いません。脇と内股では、閉じている理由が違うからです。脇は前脚が体に沿っているために閉じ、内股は後ろ脚とおなかが向かい合っているために閉じます。開き方も、風の通し方も、そこで変わります。どっちを先にするかは、その日の温度差で決めてください。
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ぬるさが強いほうから、先に開く
手の甲で感じた差が大きかった面が先です。両方が同じくらいなら、脇から始めてください。脇は前脚を少し前へ出すだけで開くので、犬の側の負担が軽く、そのあとの内股を受け入れてもらいやすくなります。逆の順にすると、内股で身をよじった時点でその日が終わることがあります。
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開いた面に、風だけを通す時間をつくる
開いてすぐ何かを当てるのではなく、まず1分ほどそのままにします。閉じていた面にとっては、外の空気が入ること自体が変化です。扇風機を弱でななめ下から当てても構いません。強い風を近くから当てると嫌がるので、部屋の空気が動く程度で足ります。グレートピレニーズは体が大きく、面積があるぶん、この1分がよく効きます。
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毛の流れに沿って、根元から指を通す
ブラシを入れる前に指で通します。閉じていた面の毛は、押されて寝たまま絡んでいることがあります。そこへ道具をいきなり当てると、絡んだ束ごと引っぱることになります。指で通してから、目の粗い道具で毛の流れに沿って数往復。地肌を強くこすらないでください。
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最後に、もう一度手の甲を入れて温度を確かめる
開いて、風を通して、毛を起こしたあとです。基準の温度に近づいていれば、その面は今日の役目を終えています。まだぬるいときは、面が閉じたのが最近ではない可能性があります。翌日も同じ順で数えて、2日続けて同じ場所が残るかどうかを見てください。
| 脇 | 内股 | |
|---|---|---|
| 閉じる理由 | 前脚が体側に沿っている | 後ろ脚とおなかが向かい合う |
| 開き方 | 前脚をわずかに前へ出す | 横向きに寝かせて、上側の脚を少し前へ |
| 犬の受け入れやすさ | 受け入れられやすい。先に回す | 身をよじりやすい。あとに回す |
| 風の通し方 | 体側から前へ抜ける向きに | 床から離して、下から抜ける向きに |
| 長引きやすい条件 | ハーネスや首輪の当たる位置と重なる | 寝床が沈んで、床に接する時間が長い |
| 確かめる間隔 | 毎日でなくてよい。数えて残ったときだけ | 同じ。ただし梅雨と真夏は毎日 |
寝床の側も見ておいてください。グレートピレニーズは体重があるので、柔らかいベッドだと体が沈み、内股とおなかが敷物に押し付けられます。沈むほど、面と面のあいだの空気は押し出されます。寝床を硬めのものに替える、あるいは通気のある素材にするだけで、閉じている時間そのものが短くなります。開いて乾かすより、閉じている時間を減らすほうが、結果として手数が少なくなります。
湿りが残ると、まず頭に浮かぶのは洗うことです。ただグレートピレニーズは被毛の量が多く、体格も大きいので、洗ったあとに乾ききるまでの時間が、閉じている面ではさらに長くなります。洗うこと自体が悪いのではなく、乾かしきれないまま終わると条件が前より悪くなる、という順序の問題です。回数を増やす前に、閉じている面が開いているかどうかを先に見てください。
開いた面が外の空気に触れているのは、脚を前へ出しているあいだだけです。手を離せば、面はまた向かい合います。グレートピレニーズの蒸れで人の側が持っている時間は、その1分ほどしかありません。1分たてば、面はまた閉じます。そこへ当てたものは、閉じた側に残ったまま夜まで続きます。
mofuwa スキンケアミストの中身は、高機能性電解酸化水です。もとは医療の現場で洗浄に使われてきた水で、そこから創傷治癒の分野で検証が始まった経緯を持っています(2002年の創傷治癒世界会議などで発表)。湿ったまま時間を過ごした面に当てるものとして、水そのものの出どころをたどれることが、選ぶ理由になります。使うのは、風を1分通したあとです。20〜30cm離して、開いた脇や内股へひと吹きし、毛の流れに沿って手でなでる。当てた面は開いたまま置いて、乾いてから脚を戻してください。閉じたままの面に直接吹きかけないでください。
数えた面の並びが変わったとき
ここまでは、体の作りで説明のつく蒸れの話でした。数えている面の並びが、いつもと違ってくるときは、別の見方をしてください。抜けているはずの場所が抜けていない、閉じているはずのない場所が湿っている。この2つは、毎日のケアの話として片づけないほうが安全です。
- 背中やたてがみが、基準より明らかに熱い:抜けるはずの面が抜けていません。部屋の条件を先に確かめてください
- いつも同じ一か所だけが、翌日も翌々日も残る:首輪、ハーネス、寝床の縁など、毎日そこを押さえているものを思い出してください
- 左右で温度もにおいもはっきり違う:寝る向きが偏っている、あるいは片側をかばっていることがあります
- 開いた面の地肌が赤い、じくじくしている:湿った時間が長く続いた結果として起こることがあります
- その場所をなめる、かく、床にこすりつける:蒸れより先に、皮膚のほうを見てください
- 触ると嫌がる、声を出す:痛みがあるときは、その場で手を止めてください
地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、水を飲む量や元気・食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、開いて乾かす回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。グレートピレニーズは被毛が厚く、外から地肌が見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。迷ったら早いほうを選んでください。
相談やトリミングの前には、基準にした場所、残った面、いつからその面が残るようになったかの3つをメモしてください。「肩を基準にして、脇だけが4日続けてぬるい」と伝えられれば、体の条件で説明のつく蒸れなのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に念入りに洗って連れて行くと、もとの状態が分からなくなります。そのまま行ってください。
グレートピレニーズと暮らすうえで、閉じている面がなくなることはありません。脇も内股も、脚が体についているかぎり向かい合ったままです。変えられるのは面の数ではなく、その面が閉じている時間の長さのほうです。抜けている場所を先に数えて、残った面だけを開く。寝床が沈まないようにして、閉じている時間そのものを短くする。グレートピレニーズの蒸れで動かせるのは、そこです。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見るよくある質問
- グレートピレニーズの毛を短く刈れば、蒸れは減りますか?
- 閉じている面は、毛を短くしても向かい合ったままです。脇も内股も、前脚と後ろ脚が体についているかぎり面と面の距離は変わりません。むしろたてがみや背中は、毛が立って隙間をつくることで熱を逃がしている面なので、そこを短くすると抜けていた場所の条件まで変わります。刈るかどうかは、蒸れとは別の判断として考えてください。
- 夏だけ気をつければよいでしょうか。冬は蒸れませんか?
- 閉じている面は体の作りで決まっているので、季節では変わりません。変わるのは、そこに湿りが残る時間の長さです。冬は暖房で床に近い面が温められ、寝ている時間も長くなるので、内股やおなかが閉じたままの時間はむしろ延びることがあります。手の甲で数える手順は、季節を問わず同じで構いません。
- どのくらいの頻度で確かめればいいですか?
- 毎日、肩に手の甲を入れて基準を取るところまでは十数秒で終わります。そのうえで脇と内股が基準と同じなら、その日は何もしません。実際に開いて風を通すのは、差が出た日だけです。梅雨から真夏にかけては差が出る日が増えるので結果的に毎日になりますが、それ以外の時期は数日に一度で足りることが多くなります。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
