C05犬種・猫種別ケア

セントバーナードのダブルコート|脇や内股の蒸れを毎日のケアで防ぐ

公開日 2024年6月18日|文=mofuwa編集部

明るい部屋の淡い色の床で、茶と白の大きな犬が落ち着いて休んでいる
同じ一頭でも、立っているときと伏せているときでは、重なっている面が入れ替わります。

立っているセントバーナードの脇に手を入れたら生ぬるかったので、その日は脇を開いて風を通しました。翌日、床に伏せている同じ子の脇に手を入れると、そこは外の空気と変わらない温度でした。かわりに、後ろ脚のあいだが湿っていました。同じ体の、同じ場所です。セントバーナードの蒸れは、体の場所ではなく姿勢で決まっています。皮膚が骨格より少し余っているので、余った皮膚の行き先が姿勢ごとに変わり、そのたびに重なる面が入れ替わるからです。この記事では、立っているときに閉じる場所と、伏せたときに閉じる場所を並べて比べます。見るのは体の地図ではなく、その子が今日どの姿勢で長くいたか、のほうです。

立つと伸びて、伏せると重なる|セントバーナードの蒸れが姿勢で動く条件

セントバーナードの体を横から見ると、首の下から胸にかけて、皮膚がゆるやかに垂れています。口のまわりも、頬から下へたるんでいます。この犬種は、皮膚が骨格より少し余っている作りを持っています。アルプスの峠で人を探し、雪の中を進む仕事のなかで、体を大きく使えることに意味があった作りです。

余っている皮膚は、いつも同じところにあるわけではありません。立っているときは重力で下へ引かれ、たるみは縦に伸びます。伏せると、伸びていた皮膚が行き場を失って横へつぶれ、面と面が重なります。同じ皮膚が、姿勢によって伸びたり重なったりします。セントバーナードの蒸れは、この「重なった側」にだけ残ります。

ここが、たるみの少ない犬種との違いです。皮膚が骨格にぴったり沿っている犬なら、閉じる場所は脇と内股でおおむね固定です。セントバーナードでは、閉じる面そのものが姿勢で入れ替わります。昨日ぬるかった場所が今日は乾いていて、昨日乾いていた場所が今日はぬるい。これは見落としではなく、そういう作りだということです。

被毛の条件も重なります。セントバーナードはダブルコートで、上毛の下に細かい下毛があります。重なった面のあいだに下毛が挟まると、そこは空気の通り道がほとんどなくなります。皮膚が重なる、そのあいだに毛が挟まる、この2つがそろった場所が、その日の蒸れの場所です。どちらか片方だけでは、ここまで長く湿りが残りません。

Note体の地図を覚えても、当たりません

「セントバーナードは脇と内股が蒸れやすい」という覚え方をすると、触る場所が固定されます。ところが実際には、その子が今日どんな姿勢で長くいたかによって、閉じていた面が変わります。覚えるのは場所ではなく、姿勢と場所の対応のほうです。対応さえ分かっていれば、その日の一日を思い出すだけで、触る場所が決まります。

立っているときの脇と、伏せたときの内股|セントバーナードの蒸れを姿勢で比較する

3つの姿勢を、同じ項目で並べます。比べるのは毛の量でも部位の名前でもなく、その姿勢で面と面がどこで向かい合うかです。セントバーナードは体が大きいので、姿勢ごとの差がはっきり出ます。同じ日の中で姿勢が入れ替われば、閉じている面も入れ替わります。

立っているとき。前脚は体側に沿うので、脇が閉じます。首の下のたるみは重力で前へ落ち、胸の上に乗ります。この2か所が、立っている時間の長い日に湿る場所です。いっぽう後ろ脚は左右に離れているので、内股はよく開いています。散歩と食事が長かった日は、内股に手を入れても何も出てきません。

伏せているとき。前脚は前へ投げ出されるので、脇はむしろ開きます。かわりに後ろ脚が体の下に折り込まれ、内股とおなかが向かい合います。首のたるみは前脚の付け根へ落ちて、そこで溜まります。脇が開いて、内股が閉じる。立っているときとちょうど入れ替わります。床に接したおなかも、この姿勢のあいだは空気が入りません。

横向きに寝ているとき。ここは単純で、床に接している側の面が、まとめて閉じます。下側の脇も、下側の内股も、下側の頬も。上を向いている側は、逆にいちばんよく開きます。左右で温度やにおいが違うときは、寝る向きが偏っていることを疑ってください。

セントバーナードの3つの姿勢で、どこが閉じてどこが開くかを比較する
立っている伏せている横向きに寝ている
脇閉じる。前脚が体側に沿う開く。前脚が前へ出る下側だけ閉じる
内股開く。後ろ脚が離れる閉じる。脚が体の下に入る下側だけ閉じる
首の下のたるみ胸の上に乗って重なる前脚の付け根に溜まる床と頬のあいだで折れる
おなか開いている床に接して閉じる半分が床に接する
長くなりやすい場面散歩・食事・来客室内でくつろぐ時間夜と、暑い日の昼
湿りが残る面脇と胸の上内股とおなか床に接した側すべて
立っているときに閉じる面と、伏せたときに閉じる面 セントバーナードは皮膚が骨格より余っているため、姿勢によって重なる面が入れ替わります。立っているときは脇と胸の上、伏せているときは内股とおなかが閉じます。触る場所は、その日の姿勢の時間で決まります。 場所が固定ではなく、姿勢と対になっています 立っているときに閉じる 脇(前脚が体側に沿う) 胸の上(首のたるみが乗る) 内股は開いている 散歩と食事の長い日 伏せたときに閉じる 内股(脚が体の下に入る) おなか(床に接する) 脇は開いている 室内で過ごす長い日 横向きに寝た日は、床に接した側がまとめて閉じます
同じ体でも、姿勢が変われば閉じている面が入れ替わります。

この比較の使いどころは、触る前にあります。その日どの姿勢が長かったかを思い出せば、触る場所は2か所に絞れます。セントバーナードは体格が大きく、全身に手を入れようとすると時間も体力も要ります。姿勢から絞れば、実際に手を入れるのは体のごく一部で済みます。

もうひとつ大事なのは、確かめるときに姿勢を変えないことです。伏せている子を立たせてから内股に手を入れると、その時点で面が開いてしまい、閉じていたときの状態が分かりません。伏せているならそのまま、横になっているならそのまま、手だけを入れてください。姿勢を崩した瞬間に、その日の情報は消えます。

今日はどっちの姿勢が長かったか|セントバーナードの一日を姿勢で数える

手順は、体を探すところからは始まりません。その日の一日を、姿勢の時間で分けるところから始めます。正確な分数は要りません。散歩と室内と夜、この3つのどれが長かったかが分かれば足ります。数えるのは体ではなく時間だ、というのがセントバーナードでの入り口です。

  1. 夜寝る前に、今日いちばん長かった姿勢を一つ選ぶ

    散歩と外出が長かった日は「立っている」、家でくつろいでいた日は「伏せている」、暑くて床に伸びていた日は「横向き」。どれか一つで構いません。迷ったら、その子が同じ場所に長くいた時間のほうを取ってください。セントバーナードは体重があるので、長くいた姿勢ほど面の閉じ方が深くなります。

  2. 選んだ姿勢に対応する2か所だけを、頭に置く

    立っているなら脇と胸の上、伏せているなら内股とおなか、横向きなら床に接していた側です。この時点で、触る場所は全身から2か所に減っています。他の面は開いていた時間が長いので、その日は確かめなくて構いません。

  3. 姿勢を崩さないまま、手の甲を差し込む

    手のひらではなく手の甲を使います。手のひらは自分の汗で温度が読みにくくなります。犬を動かさず、体の横から甲だけを滑り込ませてください。奥まで入れる必要はありません。皮膚の重なりの入り口で、温度と湿り気が分かります。

  4. 開いていた面にも、一度だけ甲を入れて基準を取る

    たとえば伏せている日なら、開いていた脇に甲を入れます。ここが、その日の基準の温度です。基準がないと、ぬるいかどうかを判断できません。部屋の温度で基準そのものが上下するので、毎回その日の中で取り直してください。

  5. 基準との差を、そのまま翌日へ持ち越す

    差がなければ、その日は何もしません。差があった面は、開いて風を通します。そして翌日、姿勢が変わったのに同じ面が残るかどうかを見てください。姿勢と一緒に湿りの場所が動くなら、たるみと姿勢で説明がつきます。動かないなら、別の見方が要ります。

その日の姿勢と、手を入れる2か所
いちばん長かった姿勢確かめる面基準にする面
立っていた(散歩・外出・来客)脇と、胸の上のたるみ内股
伏せていた(室内でくつろぐ)内股と、床に接したおなか脇
横向きに寝ていた(暑い日・夜)床に接していた側の脇と内股上を向いていた側
どれも同じくらい内股から。次に脇背中の真ん中
Pointセントバーナードは、見た目では湿りが分かりません

被毛に厚みがあるうえ、皮膚が重なっている場所は外から見えません。毛先が乾いていても、重なりの内側は別です。目で見て分かる状態になっているときは、すでに時間がたっています。寝ている子のそばに座ったついでに甲を入れる、と決めてしまえば、数えるほうは十数秒で終わります。姿勢を思い出す習慣のほうが、道具より先に要ります。

伏せている時間が延びる時期|セントバーナードのたるみに手を入れる順番

姿勢の配分は、時期によって変わります。暑い時期は、床の冷たいところを探して伏せる時間と横になる時間が延びます。散歩は短くなり、立っている時間は減ります。つまり夏のセントバーナードでは、脇よりも内股とおなかのほうが、閉じている合計時間が長くなります。時期で触る場所を組み替える、という発想がここで要ります。

逆に、涼しい時期は散歩が長くなり、立っている時間が増えます。冬は暖房の前で丸まるので、また床に接する面が閉じます。季節そのものではなく、季節によって変わる姿勢の配分が、閉じる面を決めています。湿度が高い時期は、開いたあとに乾くまでの時間も延びます。同じ姿勢でも、梅雨と秋では残り方が違います。

  1. 時期ごとに、先に確かめる面を入れ替える

    梅雨から真夏は内股とおなかから、秋から春は脇と胸の上から。順番を先に決めておくと、その日に考えることが減ります。体格の大きいセントバーナードでは、考える手数が増えるほど続きません。時期で1回だけ組み替えて、そのあとは同じ順で回してください。

  2. 重なりを開いたら、1分は風を通すだけにする

    開いてすぐ何かを当てるのではなく、まず外の空気を入れます。閉じていた面にとっては、それだけで条件が変わります。扇風機を弱で、ななめ下から。強い風を近くから当てると身をよじるので、部屋の空気が動く程度で足ります。

  3. 毛の流れに沿って、指で通してからブラッシングへ移る

    重なりに挟まれていた下毛は、押されて寝たまま絡んでいることがあります。そこへ道具をいきなり当てると、絡んだ束ごと引っぱることになります。先に指で通して、目の粗い道具で毛の流れに沿って数往復。地肌を強くこすらないでください。

  4. 寝床の沈み方を、時期に合わせて見直す

    柔らかいベッドはセントバーナードの体重で深く沈み、内股とおなかが敷物へ押し付けられます。沈むほど、面と面のあいだの空気は押し出されます。夏は通気のある硬めの敷物へ替えるだけで、閉じている時間そのものが短くなります。手を入れる回数を増やすより、こちらのほうが効きます。

時期によって、姿勢の配分と手を入れる順番が変わります
時期長くなる姿勢先に確かめる面
梅雨(6〜7月)伏せる・横向き内股とおなか。乾くまでが長い
真夏(7〜9月)横向き。床の冷たい場所床に接していた側すべて
秋(10〜11月)立つ時間が戻る脇と、胸の上のたるみ
冬(12〜2月)暖房の前で丸まる床に接した側と、おなか
春(3〜5月)散歩が延びる。換毛が重なる脇。抜けた下毛が挟まりやすい

「防ぐ」という言い方をするなら、それは重なりをなくすことではありません。皮膚が余っている作りは変わらないので、重なる面をゼロにはできません。できるのは、重なっている時間を短くすることと、開いたあとに乾くまでの時間を縮めることの2つです。日中に一度、その子が立ち上がって水を飲む場面をつくるだけでも、閉じ続ける時間は途切れます。

Caution洗いすぎの方向へ寄せないでください

湿りが残ると、まず洗うことが頭に浮かびます。ただセントバーナードは被毛の量が多く体格も大きいので、洗ったあとに乾ききるまでの時間が、重なっている面ではさらに長くなります。洗いすぎると地肌のうるおいまで減り、そこへ生乾きの時間が重なります。回数を増やす前に、その日の姿勢で閉じていた面が開いているかどうかを先に見てください。

重なっている面は、その子が体を起こすまで開きません。開いているあいだの数分をどう使うかは、姿勢を戻さないでいられる人の側にしか決められないところです。開いた面へ当てるものとして、mofuwa スキンケアミストを置いています。入っているのは電解水だけなので、脇でも内股でもおなかでも、面ごとに持ち替えずに同じ1本で足ります。使える面がこれだけ広いのは、口に入っても差し支えのない中身だからです。順番は、開いて1分風を通したあと、指で毛を通す前。布に含ませて、開いた面の毛を流れに沿ってなでてください。重なったままの面へ直接吹きかけて、そのまま伏せさせないでください。閉じた面に水分だけが残ると、その日いちばん乾きにくい場所を自分でつくることになります。

姿勢を変えても場所が動かない湿りは、たるみの話ではありません

ここまでは、皮膚のたるみと姿勢で説明のつく蒸れの話でした。この見方が当たっているなら、姿勢が変われば湿りの場所も動きます。立っていた日は脇、伏せていた日は内股。日によって場所が入れ替わるのが、たるみで説明できる状態です。逆に、姿勢が変わっても同じ面だけが残るときは、別の見方をしてください。

Caution早めの受診をおすすめするサイン

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が見えている、伏せたまま立ちたがらない、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、開いて乾かす回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。セントバーナードは被毛が厚く、重なりの内側が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。迷ったら早いほうを選んでください。

相談の前には、その日いちばん長かった姿勢、湿っていた面、何日続いたかの3つをメモしてください。「3日とも姿勢が違うのに、右の内股だけがぬるい」と伝えられれば、体の作りで説明のつく蒸れなのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に念入りに洗って連れて行くと、もとの状態が分からなくなります。そのまま行ってください。

セントバーナードと暮らすうえで、皮膚が余っている作りは変わりません。立てば伸び、伏せれば重なる。変えられるのは重なりの有無ではなく、同じ面が重なり続けている時間の長さのほうです。今日どの姿勢が長かったかを一つ思い出して、対応する2か所だけを確かめる。時期で順番を入れ替えて、寝床が沈まないようにする。セントバーナードの蒸れで動かせるのは、そこです。

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よくある質問

セントバーナードの蒸れやすい場所は、結局どこですか?
一つには決まりません。皮膚が骨格より余っているぶん、姿勢によって重なる面が入れ替わるからです。立っている時間が長い日は脇と胸の上、伏せている時間が長い日は内股とおなか、横になっていた日は床に接していた側。場所を覚えるより、姿勢と場所の対応を覚えるほうが、その日の当たりが早くなります。
確かめるとき、立たせてから触ったほうが見やすいのでは?
立たせた時点で、伏せていたときに閉じていた面が開いてしまいます。開いた面に手を入れても、閉じていたときの温度や湿り気は分かりません。伏せているならそのまま、横になっているならそのまま、体の横から手の甲だけを滑り込ませてください。姿勢を崩した瞬間に、その日の情報は消えます。
長毛のセントバーナードと短毛では、見方が変わりますか?
重なる面が姿勢で入れ替わるという点は同じです。違うのは、開いたあとに乾くまでの時間です。毛の長い子は重なりのあいだに挟まる毛の量が多く、そのぶん空気が通り始めるまでに時間がかかります。手順は変えず、風を通す時間を長めに取り、ブラッシングで毛の流れをそろえるところまでを一続きにしてください。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。