C05犬種・猫種別ケア

ニューファンドランドはなぜ毛玉が起きやすいのか。ダブルコートから考える

公開日 2024年6月25日|文=mofuwa編集部

明るい自然光の草地で、厚い毛の大きな黒い犬が落ち着いて座っている
毛玉は毛の量ではなく、体の折れる場所にできます。首から胸は、いちばんよく折れる場所です。

水皿から顔を上げたニューファンドランドの胸に、いま折れたばかりの毛の筋がそのまま残っていました。頭は上がっているのに、胸の毛だけが下を向いていたときの形をしています。指で起こすと戻りますが、そのままにしておくと、次に水を飲むときにまた同じ線で折れます。ニューファンドランドの毛玉は、この折れ目から始まります。厚い被毛があるからでも、ブラッシングを忘れたからでもありません。毛玉は体の折れる場所にできるもので、この犬種でいちばんよく折れるのが、首から胸にかけての一帯だというだけの話です。だから見るべきなのは毛の量ではなく、その子が一日のうち、どれだけ下を向いていたかのほうになります。

水を飲んだあと、胸の毛が戻らない|ニューファンドランドと暮らす人の経験

ニューファンドランドと暮らしていると、しばらくして気づくことがあります。毛玉ができる場所が、いつもだいたい決まっている。背中でも腰でもなく、首の下から胸にかけての一帯です。ブラッシングをした翌日でも、そこだけまた指に引っかかる。全身に同じだけ手を入れているのに、そこだけが戻ってきます。

きっかけは、たいてい何気ない場面で見えます。水皿に顔を突っ込んで飲んでいるあいだ、首は深く曲がっています。飲み終えて顔を上げると、胸の毛は下を向いていたときの形のまま、束になって残っています。頭は戻ったのに、毛は戻っていません。指で起こせば直りますが、起こさなければそのまま何時間も残ります。

同じことが、床に置いた器から食べているあいだにも起きています。散歩でにおいを嗅いでいるあいだにも、階段を降りるあいだにも、伏せて眠っているあいだにも。ニューファンドランドが下を向いている場面は、一日のうちに何度もあります。そのたびに、首の前面の毛と胸の毛が押し合って、同じ線で折れています。

折れた毛は、まっすぐな毛より絡みやすくなります。折れ目のところで毛が交差し、その一点が支点のようになるからです。支点ができると、その周りの毛が寄って集まります。寄った毛のあいだに抜けた下毛が入り込み、皮脂が回って、指で押すと弾力のある面になります。ニューファンドランドの毛玉が、いつも同じ場所に戻ってくる理由はここにあります。

Note「毛が多いから」で止めると、答えが増えません

被毛の量を理由にすると、対処は「もっと長くブラッシングする」しかなくなります。ところがニューファンドランドの毛玉は、背中や腰には同じようには出ません。背中の毛も十分に厚いのに、そこは折れないからです。量ではなく、折れているかどうか。この見方に切り替えると、手を入れる場所も、変えられる条件も、まったく別のものが見えてきます。

首から胸へ、毛がいちばん厚くなる|ニューファンドランドに毛玉が集まる理由

ニューファンドランドの被毛は二層です。外側に、水を弾く油分を含んだ上毛。その内側に、細かく密な下毛。この作りは、カナダ東岸の冷たい海で仕事をするためのものです。漁師とともに船に乗り、網や綱を引き、水に落ちたものを回収する。冷たい水の中で長く動けるように、外で水をはじき、内で空気をためる二層になりました。

そのうえで、この犬種は首から胸にかけての被毛がとくに厚くなっています。前から見ると、胸のあたりで毛が一段ふくらんで見えます。水に入る仕事では、いちばん先に水を受けるのが胸だからです。そこに厚みがあることは、この犬種の背景から見ればまったく理にかなっています。ただ、その厚みが、陸の上では別の意味を持ちます。

厚い毛が首の前面と胸の上で向かい合っている状態で、頭を下げるとどうなるか。首の前側は縮み、胸の上側は押し上げられます。縮んだ側と押された側の毛が、真ん中で行き場をなくして折り重なります。紙を二つ折りにするのと同じで、折れる線はいつも同じところに来ます。ニューファンドランドの毛玉が一帯に集まるのは、折れ線が固定されているからです。

だから、この犬種の毛玉は「体の折れる場所にできる」と言い換えられます。首の付け根の前、前脚の付け根、後ろ脚の付け根、耳の付け根、尾の付け根。関節や、体が曲がるところの内側です。そのなかで、首から胸だけが飛び抜けて条件がそろっています。折れる回数が多く、しかもそこの毛がいちばん厚い。この2つが重なる場所は、体の中でここだけです。

ニューファンドランドの体で、折れる場所ごとの条件を並べる
折れる場所折れる回数そこの被毛の厚み毛玉になりやすさ
首の下から胸非常に多い。下を向くたび体の中でいちばん厚いいちばん集まる
前脚の付け根歩くたび厚いが、胸ほどではない次に多い
後ろ脚の付け根座る・立つたび飾り毛が長い座る時間の長い子で増える
耳の付け根耳を動かすたび耳の裏側の毛が細い細い毛どうしが絡む
尾の付け根尾を下ろすたび飾り毛が長く重い寝る時間が長いと出る
背中・腰ほとんど折れない厚い同じ厚みでも出にくい
折れる場所と、折れない場所 ニューファンドランドの背中は被毛が厚くても折れないため毛玉になりにくく、首から胸は下を向くたびに折れるため毛玉が集まります。毛の量ではなく、折れる回数と厚みの重なりで決まります。 毛玉を決めているのは、量ではなく折れる回数です 折れない場所(背中・腰) 被毛は十分に厚い 姿勢が変わっても折れない 毛先どうしが交差しない ブラッシングは流れに沿うだけ 折れる場所(首から胸) 被毛がいちばん厚い 下を向くたびに折れる 折れ目が支点になり毛が寄る 折れ目に対して手を入れる 同じ道具でも、当てる向きが変わります
同じ厚みの被毛でも、折れる場所とそうでない場所で結果が変わります。

換毛期には、この構造がそのまま効いてきます。抜けた下毛は、外へ出るために上毛のあいだを通らなければなりません。折れている場所では、その通り道が閉じています。抜けた下毛は折れ目の内側に留まり、留まったまま毛玉の芯になります。春と秋に胸の毛玉が急に増えるのは、折れ線が変わったからではなく、そこを通ろうとする毛が増えたからです。

空気の乾く季節には、静電気も加わります。乾いた毛先どうしは互いに反発したり寄り付いたりして、まっすぐな状態を保ちにくくなります。折れ目のある場所では、この乱れがそのまま絡みに変わります。根元にうるおいが残っているうちは毛が素直に流れますが、毛先だけが乾いて跳ねている状態だと、折れ目の周りで毛が集まりやすくなります。

頭を下げるたびに、毛が折り重なる|一日のなかで起きるニューファンドランドの変化

ここからは、一日を追ってみます。毛玉の量を決めているのは、ブラッシングの回数ではなく、下を向いていた時間の合計です。朝から夜まで、その子が首を曲げていた場面を並べると、胸の毛がどれだけ折られたかが見えてきます。数え始めると、思っていたより多いことに気づくはずです。

朝、床の器から食べます。大型犬は一度の食事にそれなりの時間をかけるので、そのあいだずっと首は深く曲がっています。食後に水を飲みます。散歩に出れば、草地や電柱の根元で鼻を下げます。においを嗅いでいる時間は、飼い主が思っているより長く、そして首の角度がいちばん深くなります。帰宅してまた水を飲み、床に伏せて顎を前脚に乗せます。

この一つひとつは、どれも数分か数十秒の話です。けれど回数が積み上がると、一日のうち首から胸が折れていた時間は、かなりの長さになります。そして折れている時間が長いほど、頭を上げたときに毛が戻りにくくなります。折れたまま長く置かれた毛は、癖がついて自分では起き上がれません。夕方に胸を触ると、朝より手が引っかかるのはそのためです。

  1. 朝いちばんに、胸の毛の向きを見ておく

    寝起きの状態が、その日の出発点です。前脚に顎を乗せて寝る子なら、この時点ですでに折れ目が入っています。指を4本そろえて、首の下から胸へ向かって毛を起こしてください。道具を使う必要はありません。ここで一度起こしておくと、その日の折れ目が積み重なりません。

  2. 食事と水のあと、顔を上げた直後に手を入れる

    折れた直後の毛は、まだ癖がついていません。起こすなら、いちばん軽い力で済むのがこの瞬間です。顔を上げたついでに胸をなでる、という形にしてしまえば、犬の側も作業として構えません。ニューファンドランドは体が大きいので、飼い主が座って目線を下げると受け入れられやすくなります。

  3. 散歩から戻ったら、折れ目の向きを確かめる

    においを嗅ぐ時間が長かった日ほど、折れ目ははっきり出ます。毛の流れに沿ってなでるのではなく、折れ目に対して直角に指を入れてください。流れに沿ってなでるだけだと、折れ目の上を滑って通り過ぎます。折れているのは根元の側なので、そこまで指を届かせます。

  4. 夜、寝る前に一度だけ道具を入れる

    一日ぶんの折れ目がいちばん溜まっているのが、この時間です。目の粗い道具を、折れ目に対して直角に、短く動かします。長く引くと、折れ目の先で毛が寄ってしまいます。首の下から胸へ向かって、幅を少しずつずらしながら。全身を回そうとせず、この一帯だけで構いません。

  5. 翌朝、同じ場所を触って、戻り方を比べる

    前の晩に起こしておいた場所が、朝どうなっているか。すぐに指が通るなら、その手順は足りています。朝の時点で引っかかるなら、寝ている姿勢のほうを見てください。前脚に顎を乗せる時間が長い子では、夜のあいだの折れ方がいちばん深くなります。

一日のなかで、首から胸が折れる場面と、そのあとの変化
場面首の角度折れたあとの毛の状態
水を飲むいちばん深く曲がる束のまま残る。指で起こせばすぐ戻る
床の器から食べる深いまま数分続く癖がつき始める。起こす力が少し要る
においを嗅ぐ深く、時間が長い毛先どうしが絡む。根元まで指を入れる
段差を降りる一瞬だが体重が前へ乗る折れ目が深く入る。回数が多いと残る
伏せて眠る浅いが、数時間続くいちばん癖がつく。朝に引っかかる
立って歩く曲がらない折れ目は増えない
Point起こす向きは、毛の流れではなく折れ目に直角です

毛の流れに沿ってブラシを引くのは、背中や腰では正しい動かし方です。けれど首から胸の折れ目に対しては、流れに沿った動きは折れ目の上を滑って通り過ぎます。折れている線を横切るように、短く手を入れてください。ニューファンドランドの胸は面積があるので、一度に広く動かさず、幅を少しずつずらしていくほうが根元まで届きます。

毛玉のある場所に、その子の一日が写っている|ニューファンドランドの背景を読む

ここまで来ると、毛玉の見え方が変わってきます。できている場所は、その子が何をして過ごしているかの記録です。胸の真ん中に集まっているなら、下を向く回数が多い一日。前脚の付け根なら、歩いている時間が長い一日。後ろ脚の付け根なら、座っている時間が長い一日。毛玉は、その子の背景を映しています。

そして記録だとわかれば、変えられるものが見えてきます。手を入れる回数を増やすのではなく、折れる回数のほうを減らす。ニューファンドランドの毛玉で、いちばん大きく動くのはここです。器の高さを胸の位置に近づけるだけで、食事のあいだの首の角度が浅くなります。角度が浅ければ、折れ目も浅くなります。

ブラッシングそのものについても、一つだけ足しておきます。折れている場所へ、いきなり細かい歯の道具を入れないでください。折れ目の内側では毛が交差しているので、細かい歯は交差した束ごとつかみます。先に指で、次に目の粗い道具で、根元の側から。それでほどけない面は、その日は無理に触らないほうが結果として早く終わります。

毛玉が戻るからといって、洗う回数のほうを増やさないでください。ニューファンドランドの被毛は油分を含んだ上毛と密な下毛でできていて、胸の一帯はとくに厚みがあります。洗ったあと、そこが乾ききるまでの時間はほかの場所よりずっと長くなります。洗いすぎると地肌のうるおいまで減り、そこへ生乾きの時間が重なります。毛玉を減らしたいときに動かすのは、洗う回数ではなく、折れる回数のほうです。

折れた毛を起こす手順に合わせて使えるのが、グルーミングスプレーです。布に含ませて、胸の毛を折れ目に対して直角になでていってください。毛先の流れがそろうので、根元まで指が通る状態をつくってから目の粗い道具を入れられます。グルーミングスプレーは舐めても問題のない基準でつくられているため、胸に口が届く犬でも、この面積に必要なだけ足せます。すでに固まっている面に直接吹きかけて、そのまま置かないでください。

洗う日と、その間の日では、手に持つものが変わります。洗う日はモイストシャンプーで胸の厚みの内側まで湿らせて汚れを動かし、乾かす時間をきちんと取る。間の日はグルーミングスプレーで折れ目の毛先をそろえて、顔を上げた直後に短く手を入れる。下を向く回数が毎日あるのだから、起こす側も毎日の形にしておくほうが釣り合います。この分け方にすると、生乾きの時間を増やさずに、折れ目が残っている時間だけを短くできます。

mofuwaグルーミングスプレーを日常のケアとして使用してもらうことにより、毛玉予防や被毛を清潔に保つことができます。スプレーしてブラッシングするだけなので、体力低下によりなかなかシャンプーができないシニア犬やシャンプーが苦手な猫ちゃんなどにもおすすめです。清涼飲料水の基準をクリアしているという安全性も高く評価できるポイントです。

近藤 竜太 先生/白金高輪動物病院 院長・獣医師(麻布大学卒/比較眼科学会所属)
東京都港区白金1-2-2 白金ザ・スカイ西棟1階
※実際にお使いいただいている獣医師のご感想です。本記事の監修を受けたものではありません。
Caution折れ目とは関係のないところが変わっているとき

地肌が赤い、じくじくしている、においがある、触ると痛がる、同じ場所をなめ続けている、毛が根元から抜けて地肌が広く見えている、折れ目とは関係のない場所に急に毛玉が増えた、元気や食欲が落ちている。どれか1つでも当てはまるなら、胸に入れる回数を増やすより先に、動物病院で見てもらってください。ニューファンドランドは被毛が厚く、胸の内側が外から見えないぶん、変化が進んでから気づくことがあります。折れ目で説明のつく毛玉なのかどうかは、家で見分けなくて構いません。

相談やトリミングの前には、毛玉のある場所、いつからか、その子が一日のうち長く取っている姿勢の3つをメモしてください。「胸の真ん中だけ、2週間、床の器で食べている」と伝えられれば、被毛の条件で説明のつく毛玉なのかどうかを、その場で切り分けてもらえます。前の晩に頑張ってほどこうとすると、もとの状態が分からなくなります。ほどききれていない面は、触らずに連れて行ってください。

ニューファンドランドと暮らすうえで、首から胸の毛が厚いことは変えられません。冷たい水の中で仕事をしてきた犬種の、いちばん大事な部分だからです。頭を下げれば、そこは必ず折れます。変えられるのは折れるかどうかではなく、折れている時間と、折れる回数のほうです。器の高さを上げ、水を飲む場所を分け、顔を上げた直後に手を入れる。毛玉の場所がその子の一日を写しているなら、一日のほうを少し動かせば、写るものも変わります。ニューファンドランドの毛玉で動かせるのは、そこです。

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