C09シーン別・暮らし

水が苦手な猫と暮らす人が賃貸で暮らすで困ること、その手当て

公開日 2024年6月22日|文=mofuwa編集部

明るく片づいた部屋で、木の戸枠のそばに落ち着いてすわっている淡い色の猫
猫のにおいは部屋じゅうに広がるのではなく、その子が顔を当てた場所に点で残ります。写真:Tamara Martina/Pexels

賃貸の1LDKで、柱の角の一か所だけが、ほかより濃くにおうことに気づきました。床から30センチくらいの高さで、そこだけ木の色がわずかに変わっています。うちの子は水が嫌いで、洗ったことは一度もありません。だから体からにおっているのだと思い込んでいて、洗えないことをずっと引け目に感じていました。ところが、ペットのにおいの出どころは体ではなく、その子が毎日顔を当てている場所のほうでした。猫が頬や額のあたりを家具の角へこすりつけるのは、ふだんからするしぐさです。水を使えない家でも、そこには手が届きます。この記事は、水が嫌いな猫と賃貸で暮らす人からよく出る7つの問いに、順番に答える形で書きました。

洗えない猫のにおいは体から出ているのですか。賃貸で気になる出どころとはどこですか

答えから書きます。多くの場合、出どころは体ではなく、その子が顔を当てている数か所の点です。猫は歩きながら、家具の角や柱、戸のふちに頬や額のあたりをこすりつけます。ふだんから見ているしぐさだと思います。そこには皮脂が少しずつ移り、同じ場所に何百回と重なります。賃貸の部屋でペットのにおいが気になるとき、たいていは部屋じゅうに薄く広がっているのではなく、こういう点に厚く残っています。

水が嫌いな猫と暮らしていると、洗えないこと自体が原因のように思えてきます。ただ、猫は自分で毛づくろいをするので、体そのものからのにおいは、犬と比べるとおとなしいことが多いです。洗っていないことと、部屋がにおうことは、直接はつながっていません。むしろ、洗えないから何もできないと考えてしまうことのほうが、手をつける場所を見えなくします。水を使わずに届く場所が、部屋の側にはっきりあります。

賃貸で手が出しにくい理由も、ここにあります。点がついているのは、柱の角、戸のふち、壁の出角、作りつけの棚の縁。どれも家具のように動かしたり買い替えたりできない面です。敷物やクッションなら洗って替えられますが、建具そのものは替えられません。だから「においが残っている場所には手が出せない」と感じます。実際には、替えられなくても拭くことはできます。手が出しにくいのは、面が固定されているからであって、においが取れないからではありません。

猫の家で、ペットのにおいが残っている場所と手の届き方
場所何が移っているか水が嫌いな猫の家でできること
柱の角、壁の出角顔を当てたときの皮脂布を折って角に沿わせ、上から下へ一方向
戸のふち、引き戸の枠通るたびに当たる皮脂縦の面を、床から高いほうへ向けて一度
家具の角、棚の縁頬と額のあたりが当たる角の2面を、布の面を変えて別々に
寝床の布体が長く触れている面週に1回洗って、完全に乾かす
食器と水の器食べたあとの残りと湿り毎日洗って、水を入れ替える
トイレのまわりの床砂と、足の裏から落ちるもの毎日、砂の飛ぶ範囲だけを拭く

犬の家との違いも書いておきます。犬は散歩から帰ってくるので、外から持ち帰ったものが床の全面へ運ばれます。猫は外から持ち帰るものがないぶん、においの残り方が「面」ではなく「点」になります。だから、床をどれだけ丁寧に拭いても、点の側は減りません。賃貸でペットのにおいが気になっているのに、掃除をしても手ごたえがないときは、拭いている場所と、においが残っている場所がずれています。

猫が顔をこすりつけた場所を、拭いてしまってもいいのでしょうか

拭いてかまいません。ただし、全部を同じ日にやらないでください。その点は、その子にとって毎日の目印になっている場所です。家じゅうの点を一度に消すと、その子は付け直しに回ります。付け直す量が増えれば、数日後には元より濃く戻ります。こちらの手数も増えて、水が嫌いな猫と暮らす家では、いちばん割に合わない循環に入ります。

現実的なやり方は、1回に1か所まで、日を分けるという形です。うちは4か所を4日に分けています。拭いた直後に、その子が同じ場所へ来て、もう一度頬を当てていくことがあります。止める必要はありません。付け直すのは自然な反応で、1か所ぶんなら量も知れています。全部を消したときのように、家じゅうを回ることにはなりません。

水が嫌いな猫にとって、部屋の面を拭かれることは何の負担にもなりません。体に触らないので、濡らすかどうかの問題がそもそも起きないからです。だから、体に手が出せない家でも、点のほうは今日から扱えます。体は嫌いなことを増やせませんが、面のほうは何回でも扱えます。上げてよい頻度と、上げてはいけない頻度が、その子に触るかどうかできれいに分かれています。

Noteこすりつけるのをやめさせる、という方向には行かないでください

点を減らしたくて、その子がこすりつける場所へ物を置いたり、近づけないようにしたりすると、別の場所に新しい点ができるだけです。しかも、次にできる場所はこちらが選べません。今ある点は、少なくとも場所が分かっていて、手も届きます。水が嫌いな猫と賃貸で暮らすうえでは、点の場所が固定されていることのほうが、こちらにとって有利です。減らすのではなく、濃さだけを下げると考えてください。

拭く順番は場所で決めるのですか。それとも高さで決めるのですか

高さで決めます。床から20センチから35センチのあたり。歩いている猫の頬が、ちょうど当たる高さです。賃貸の部屋を見渡して、この高さにある角と縁だけを拾ってください。膝より低く、腰より下です。人の目線は自然と高いところへ行くので、この帯は掃除のときにいちばん飛ばされます。においが濃く残っているのに、こちらの手がずっと通っていない、という場所がここに集まります。

高さで拾うと、対象は4種類くらいに落ち着きます。戸のふち、柱の角、家具の角、壁の出角。1LDKなら、全部合わせても6か所から8か所です。数えてみると、思っていたより少ないはずです。これを1日1か所ずつ回せば、1週間で一巡します。床の全面を毎日拭くより、こちらのほうが手数はずっと少なくて済みます。水が嫌いな猫の家では、体に使えない手を、この帯に回すのが合理的です。

床から20センチから35センチの帯にある、4種類の場所
場所の種類高さの目安手の入れ方回す頻度
戸のふち・引き戸の枠床から25センチ前後縦の面を、下から上へ一方向に一度週に1回
柱の角床から30センチ前後布を折って角に当て、上から下へ週に1回
家具の角(棚・台)床から20センチから40センチ2面を別々に。布の面を変える週に1回
壁の出角床から30センチ前後壁紙は強くこすらず、軽く一方向2週に1回
床(点の真下)床点の下は皮脂が落ちています。ここだけ広めに週に1回
その子の通り道の床床帯状に一直線。全面はやりません2日に1回

使うものは、床にも家具にも使えて、その子が舐めても差し支えのないものにしてください。猫は拭いた面に、そのあと顔を当てにきます。香りでにおいを覆うタイプだと、においが2つ重なるだけになり、その子が付け直す回数も増えます。香りを足さない瞬間消臭スプレーを布に吹いてから面へ当てる形なら、こすらずに済み、木の面を毛羽立たせません。賃貸の建具は、力の入れ方のほうが跡になりやすいので、道具より当て方に気をつけてください。

対角に窓を開けても柱のあたりだけにおいが戻ります。換気だけで大丈夫ですか

換気は必要ですが、それだけでは足りません。換気が担当しているのは、立ちのぼって空気に混ざったぶんを外へ出すことです。面に残っている点そのものは、風では動きません。だから、窓を閉めるとまた同じ場所からにおいが立ち上がってきます。柱のあたりだけ戻る、という感じ方は正確で、点が残っている場所を鼻が拾っています。換気と拭き取りは、別々の担当だと考えてください。

そのうえで、換気のやり方は見直す価値があります。同じ壁にある窓を2つ開けても、空気は入れ替わりません。部屋の対角になる2か所を開けて、5分。賃貸で窓が1面にしかない部屋なら、浴室や台所の換気扇を回して、部屋の扉を開けておくと経路ができます。玄関のドアは開けられないので、扉と換気扇で代わりの出口を作る形です。猫がいる部屋で窓を開けるときは、網戸とストッパーを先に確かめてください。

換気が担当すること、担当しないこと
内容そう分ける理由
担当する空気に混ざったにおいを外へ出す5分の対角換気で入れ替わります
担当する湿度を下げて、面が乾いた時間を作る湿っている面ほど、においが立ちやすくなります
担当するトイレのまわりの空気を動かす低い位置にたまりやすいためです
担当しない柱や戸のふちに残っている点面についているものは、風では減りません
担当しない寝床の布に移った皮脂布は洗って乾かす担当です
担当しない食器と水の器の湿り毎日洗う担当です

6月のように湿度が上がる時期は、同じ点でもにおいの立ち方が変わります。面が湿っていると、においは立ちやすく、雑菌も増えやすい条件になります。だから、この時期だけは換気の回数を上げてかまいません。朝と帰宅後の2回、5分ずつ。水が嫌いな猫の家では、体に対して手数を増やせないぶん、こういう「その子に何も起きない作業」の頻度を上げるのが、いちばん安全な増やし方です。

トイレのにおいと、それ以外は分けて考えたほうがいいですか

分けてください。手を入れる周期がまったく違うからです。トイレのまわりは1日単位で動きますが、こすりつけた点は週単位でしか動きません。この2つを1つの「猫のにおい」としてまとめてしまうと、毎日トイレを掃除しているのに部屋のにおいが変わらない、という結論になります。そこで手が止まる方が多いのですが、止まっているのは点のほうに一度も手が入っていないからです。

見分け方は簡単です。部屋に入った瞬間に来るものは、トイレまわりか空気の側。顔を近づけて初めて分かるものは、点の側です。賃貸の部屋でペットのにおいが気になるとき、来客が玄関で気づくようなものは前者、自分だけが気になり続けるものは後者であることが多いです。どちらなのかを先に決めると、その日にやることが変わります。両方をいっぺんにやろうとすると、どちらも中途半端になります。

賃貸の猫の家で、ペットのにおいを3つの系統に分ける
系統手を入れる周期やること
トイレとそのまわり毎日砂の飛ぶ範囲の床を拭く。空気を動かす
こすりつけた点週に1回、1日1か所ずつ床から20センチから35センチの帯を回す
食器と水の器毎日洗って、水を入れ替える。夏は朝晩2回
寝床の布週に1回洗って、完全に乾かしてから戻す
通り道の床2日に1回帯状に一直線。全面はやりません
その子の体いつもの時刻に、いつもの手数で濡らさない範囲だけ。回数は増やしません

食器と水の器を別の系統にしているのには理由があります。猫は水の器の位置とにおいに敏感で、器が汚れていると飲む量が減ることがあります。水が嫌いな猫という言い方をしますが、嫌いなのは体が濡れることであって、飲む水とは話が別です。器はぬめりが出る前に毎日洗って、置き場所は動かさない。においの話であると同時に、その子が水を飲む量の話でもあるので、ここだけは頻度を落とさないでください。

水が嫌いな猫の体に、濡らさずどこまで手を入れていいのか知りたいです

体に手を入れられないわけではありません。入れられないのは、濡らす手だけです。水が嫌いな猫が反応しているのは、水そのものというより、噴射の音、冷たさ、そして体を押さえられることのほうです。この3つを外せば、届く範囲は思っているより広く残っています。あごの下、口のまわり、尾のつけ根、背中。どれも皮脂がたまりやすく、においの出どころにもなる場所です。

やり方は3つの条件で決まります。その子に直接吹きかけないこと、布に含ませてから当てること、押さえないこと。布は、部屋の面に使ったものとは別に用意します。当てる向きは毛の流れに沿って一往復だけ。嫌がったらその日はそこで終わりにします。水が嫌いな猫では、途中でやめられることのほうが、最後まで終わらせることより効きます。次に手を出したときの反応が変わるからです。

濡らさずに手が届く場所と、当て方
場所そこににおいが出る理由当て方
あごの下皮脂がたまりやすく、器に当たる場所コットンに含ませて、当てるだけ
口のまわり食後の残りが乾いて残ります食後に、毛の流れに沿って一度
尾のつけ根自分の口が届きにくい面です上から下へ一往復。押さえない
背中の真ん中毛づくろいが減ると流れが寝たままに布で一往復。ブラシは別の日に
前足の内側毛づくろいで使う場所ですその子が自分から出したときだけ
耳のまわり触ると頭を振ることが多い場所外側だけ。奥には入れません

道具は、猫向けに作られたものを選ぶと手数が減ります。猫用 mofuwa グルーミングウォーターは、さきほどの3つのうち噴射の音だけを、容器の側で先に外してある1本です。中身はスプレー式のものと変わらず、押し出して出すボトルに替えてあります。音で逃げてしまうと、そこから先の手はすべて使えなくなるので、水が嫌いな猫では容器の側がそのまま成否になります。舐めても問題のない基準でつくられているので、布に含ませて毛の流れに一往復させたあと、その子が同じ場所に顔を当てにきても止めなくて構いません。自分で毛づくろいをする猫では、ここがそのまま使えるかどうかの分かれ目になります。あごの下は、拭き取りのいらない猫あごクリーナーをコットンにとって当てるだけで済みます。グルーミングウォーターもあごクリーナーも、においが強くなった週だけ持ち出すものではなく、いつもの時刻の一往復に置いておくものです。

そして、体に対する頻度は上げないでください。賃貸でにおいが気になる時期でも、増やしていいのは部屋の側だけです。体を触る回数を増やすと、水が嫌いな猫では、こちらの手そのものが嫌なものとして記憶されます。1年かけて作った距離が、1週間で戻ることがあります。においの話で急いでいるときほど、体は据え置いて、点と床と空気に回してください。

消臭剤を置き足すのはやめました。ほかにやらなくていいことはどれですか

ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。賃貸でペットのにおいに手を入れるとき、やることを足すより、やめるものを決めるほうが早く楽になります。水が嫌いな猫の家では、できることが最初から限られているぶん、無駄な手が残っていると全体が回りません。下の6つは、うちでやめたものです。やめても、においの側は悪くなりませんでした。

やめたぶんの時間は、どこにも足さなくてかまいません。賃貸でにおいが気になっている人ほど、手を増やす方向にしか動けなくなります。実際には、点の位置が分かって、週に一巡する形ができていれば、それ以上やることはありません。水が嫌いな猫と暮らしていると、洗えないことをどこかで埋め合わせようとしてしまいますが、埋め合わせは要りません。届く場所に手が通っていれば、それで足りています。

Pointやめるものは、紙に書いて貼っておきます

やめると決めたことは、頭の中だけだと2週間で戻ります。「毎日は拭かない」「消臭剤は足さない」「洗おうとしない」の3行を、掃除道具をしまっている場所に貼ってください。においが気になった日に、こちらの手はいちばん動きます。その日に読み返せる場所へ置いておくのがいちばん確実です。水が嫌いな猫の家では、やらないと決めたことを守れているかどうかが、そのまま部屋の状態に出ます。

7つの疑問を、床から30センチの線に沿って1週間に並べ直す

最後に、ここまでの答えを1週間の形にします。賃貸でペットのにおいに手を入れる作業は、毎日やるものと、週に1回でいいものが混ざっています。混ざったままだと、毎日やるべきものが週1回になり、週1回でいいものが毎日になります。水が嫌いな猫の家では、体に回せる手がないぶん、部屋の側の割り当てだけがきれいに決まります。

水が嫌いな猫と暮らす賃貸の、ペットのにおいの1週間の割り当て
いつやることかかる時間
毎日・朝食器と水の器を洗って、水を入れ替える2分
毎日・朝対角に2か所、5分の換気5分
毎日・帰宅後トイレのまわりの床を、砂の飛ぶ範囲だけ3分
月曜戸のふちと引き戸の枠(床から25センチ)3分
水曜柱の角(床から30センチ)3分
金曜家具の角。2面を別々に3分
土曜寝床の布を洗って、完全に乾かす洗濯機まかせ
日曜壁の出角。2週に1回でも構いません3分
いつもの時刻体は、いつもの手数で一往復だけ1分

1日あたりにすると10分ほどです。点を1日1か所に割ったことで、家じゅうを回る日がなくなりました。その子が付け直しに走る量も、1か所ぶんに収まります。賃貸でペットのにおいが気になり始めた最初の月は、どうしても週末にまとめてやりたくなりますが、まとめた翌週にいちばん濃く戻ってきます。水が嫌いな猫の家では、少しずつ、日をずらして回すほうが結果が安定します。

この形にして1か月ほどで、柱の角のにおいは顔を近づけないと分からない程度になりました。木の色が変わっているところは、そのままです。色は皮脂が長い時間で染みたものなので、拭いて戻るものではありません。においと見た目は別の話として扱ってください。見た目のほうを追いかけ始めると、強くこすることになり、面が毛羽立って、次から皮脂が入りやすくなります。賃貸の建具では、そこがいちばん避けたいところです。

Caution点ではなく、その子の体のほうからにおうようになったとき

部屋の点ではなく、その子の体のほうからにおうようになったときは、扱いが変わります。口のまわりのにおいが強くなった、よだれが増えた、あごの下が黒くなったり赤くなったりしている、毛づくろいの回数が減った、同じ場所をなめ続けている、トイレの回数や量が変わった、水を飲む量が急に増えた。こうした変化が重なっているときは、拭き取りを増やす前に動物病院にご相談ください。水が嫌いな猫では、体に触る機会が少ないぶん、気づくのが遅れやすくなります。いつから、どこが、という2つをメモして持っていくと、その場で切り分けてもらえます。4か所の点を一巡させてもにおいが変わらないときは、もう部屋の側の話ではありません。

水が嫌いな猫と賃貸で暮らしていると、洗えないことが引け目になりがちです。ただ、においの出どころが体ではなく点にあるなら、洗えるかどうかは最初から論点ではありません。床から20センチから35センチの帯に、週に一巡の手を通す。トイレと器は毎日、体はいつもの時刻にいつもの手数で。ペットのにおいに対してできることは、水を1滴も使わなくても、これだけあります。手が届かないと思っていた場所のほとんどは、単に手が通っていなかっただけでした。

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本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。