C05犬種・猫種別ケア

ジャーマンシェパードと暮らすなら知っておきたい、耳の汚れの話

公開日 2024年7月9日|文=mofuwa編集部

明るい自然光の草地に、大きな立ち耳の犬が落ち着いて座っている
耳の内側が上を向いて広く開いています。汚れはこの面に、薄く広がって乗っています。

ジャーマンシェパードの耳を、内側から手のひらで包んでみてください。大人の手のひら一枚では、内側の面を覆いきれません。付け根が広く、厚みがあって、先までまっすぐ立ったまま、内側がぜんぶ上を向いている。この犬種の耳の汚れを考えるときの出発点は、その面の広さです。汚れはどこか一点の奥に集まるのではなく、この広い面に薄く広がって乗っています。薄いので、量では気づけません。つまんで取り出せるような塊はどこにもなく、それでも白い布を当てると、面のあちこちが同じくらいうっすらと色を移す。ジャーマンシェパードの耳では、「奥のものを取り出す」という発想がそもそも当てはまりません。この記事では、奥にたまる耳と広い面に薄く広がる耳を並べて、この耳では何を見て、いつ手を入れるのかを書きます。

手のひら一枚では覆いきれない|ジャーマンシェパードの耳の内側にある広い面

ジャーマンシェパードの耳は、体格に見合って大きく作られています。付け根が広く、厚みがあり、先に向かってゆるやかに細くなりながら、まっすぐ上に立ちます。立っているということは、内側の面が上を向いて開いたままだということです。頭の左右にほぼ垂直な面が2枚あって、その内側が一日じゅう空気にさらされている。耳の汚れの話をするとき、多くの記事はまず「深さ」から入りますが、この犬種で先に押さえるのは面積のほうです。

面が広いと、そこに乗るものは薄くなります。同じ量の皮脂や細かなほこりでも、狭い場所に集まれば塊になり、広い面に散れば膜になります。ジャーマンシェパードの耳の汚れは、後者の形で出てきます。面のどこを触ってもざらつきはなく、指を離しても何もついてこない。それなのに白い布でひとなでしたあとの布を見ると、淡い色が均一に移っている。この「どこも薄い」という状態が、この耳の標準の姿です。

立っていることには、もうひとつ効きます。風が通るので、面は乾きやすい。雨に濡れた日でも、屋内に入って体を拭くころには、耳の面はもう指が乾いた感触に戻っていることが多い。湿った時間が長く続かないという条件は、耳の内側にとっては有利に働きます。だからこの犬種では、こもったものが濃く固まって塊になる、という道筋をたどりにくい。汚れは濃くならず、薄いまま面全体に居続けます。

では何が面に乗るのか。ひとつは皮脂です。もうひとつは、被毛から移ってくるものです。ジャーマンシェパードはダブルコートで、換毛期には全身から下毛が動きます。頭をふるったり、体をかいたりするたびに、細かな毛やほこりが立った耳の面に落ちて乗ります。上を向いた広い面は、そういうものの受け皿としても働きます。毎日のケアで見ているのは、この受け皿にどれくらい乗ったか、という量ではなく、乗り方の均一さのほうです。

Note手で扱うのは、見えている面までです

ジャーマンシェパードは耳が開いているので、内側がよく見えます。ただし、見えているからといって、その先まで手や道具を入れる理由にはなりません。家庭で扱ってよいのは、耳を軽く支えたときに目で確認できる面までです。それより内側は、見えていても触らない範囲として決めておいてください。この記事で「面」と書いているのは、すべてこの見える範囲を指しています。

奥にたまる耳と、広い面に薄く広がる耳|ジャーマンシェパードの耳の汚れの違い

耳の汚れの扱い方は、犬によって前提が二手に分かれます。片方は、汚れが一点に濃く集まるタイプ。もう片方が、ジャーマンシェパードのように広い面へ薄く広がるタイプです。この2つは、汚れの正体が違うわけではありません。同じものが、置かれる場所の形によって別の見え方をしているだけです。ただ、置かれ方が違うと、気づき方も手の動かし方も入れ替わります。

一点に濃く集まる耳では、汚れは「量」として現れます。溜まれば見えるし、においも立ちます。だから飼い主は量で気づき、溜まったものを外へ出すという手を取ります。取り切れば、いったんゼロに戻るという感覚があります。次に溜まるまでの間隔が、ケアの周期になります。

ジャーマンシェパードの耳には、この「ゼロに戻る」という状態がありません。面のどこも薄いので、拭いても、拭いた直後からまた薄く乗り始めます。量では判断できないので、判断材料を「濃さの差」に置き換える必要があります。面のこことあそこで、布に移る色が同じか違うか。同じなら普段どおり、どこか一区画だけ濃ければ、そこで何かが起きている。ジャーマンシェパードの耳の汚れは、絶対量ではなく面の中の偏りで読みます。

汚れが置かれる場所の形が違うと、扱い方が入れ替わります
奥にたまる耳広い面に薄く広がる耳(ジャーマンシェパード)
汚れの分布一点に濃く集まる面の全体に、どこも同じくらい薄く
気づき方量とにおいで気づく白い布に移る色の、区画ごとの差で気づく
扱う範囲見える入口まで。その先は触れない支えたときに見える面の、ほぼ全部
手の動き溜まったものを外へ出す面を一方向になでて、布へ移す
乾き方風が通りにくく、湿った時間が延びる立っていて風が通り、短時間で乾く
ケアの区切り取り切れば、いったんゼロに戻るゼロに戻る状態がない。差だけを見る
起きやすい失敗その先まで道具を入れてしまう目立つ一区画だけ拭いて終わりにする
手を入れる間隔溜まってから薄いうちに、決めた曜日に
奥にたまる耳と、広い面に薄く広がる耳 ジャーマンシェパードの耳は大きく立ち、内側の面が広く開いています。同じ量の汚れが薄く延びるので、量では気づけません。読むのは面の中の濃さの差です。 耳の汚れは、深さの話と面の話に分かれます 奥にたまる耳 一点に濃く集まる 量とにおいで気づく 溜まったものを外へ出す 取り切ればゼロに戻る 広い面に薄く広がる耳 面の全体に薄く乗る 布に移る色の差で気づく 面を一方向になでて移す ゼロに戻る状態がない この耳では「奥を取る」という発想が合いません
汚れの正体は同じでも、置かれる場所の形が変わると、見方も手も入れ替わります。

この違いは、道具の選び方にもそのまま出ます。一点に集まったものを扱う道具は、先が細く、狭い場所に届くように作られています。広い面を扱うのに必要なのは、細さではなく面積です。指の腹に布をかぶせたときの面が、いちばん扱いやすい大きさになります。ジャーマンシェパードの耳で、細い道具を持ち出す場面はありません。

点で取るか、面でなでるか|ジャーマンシェパードの耳の汚れに当てる手の使い分け

面で読むと決めたら、面を分けます。ジャーマンシェパードの耳の内側を、4つの区画として扱ってください。付け根に近い側、その上の中ほど、先端に近い側、そして縁に沿った細い帯。4つに分けるのは、拭き分けるためではなく、比べるためです。比べる相手がないと、薄い汚れは「こんなものかな」で流れてしまいます。

  1. 白い布を1枚用意して、指の腹にかぶせる

    色の付いた布では、移った色が読めません。白いガーゼか、白い柔らかい布を1枚。指の腹にかぶせて、面としてあたるようにします。ジャーマンシェパードは耳が大きいので、指1本ぶんの面でちょうど1区画をなでられます。乾いたままでは滑りが悪いので、軽く湿らせてから固く絞ってください。

  2. 耳を片手で支え、付け根側から先端側へ一方向になでる

    頭を押さえつけず、耳の外側に手を添えて軽く支えます。動かす向きは、付け根から先端へ。往復させないでください。往復させると、いったん布へ移ったものを面へ戻すことになります。1区画につき1回、すっと通すだけです。力はほとんど要りません。

  3. 1区画なでるごとに、布の面を変える

    同じ布の同じ場所を使い回すと、区画ごとの差が消えます。布をずらして、4区画それぞれに新しい面を当ててください。終わったあと、布に並んだ4つの跡を見比べます。ここが判断のすべてです。4つが同じくらいの色なら、その日は普段どおりです。

  4. 一区画だけ濃かったら、その区画を日付とともに書き留める

    その場でこすり足さないでください。濃かったという事実だけを残します。翌日と翌々日、同じ手順を回して、同じ区画が濃いままかどうかを見ます。3日続けて同じ区画なら、面の話ではなくなっている可能性が出てきます。日によって場所が動くなら、その日の行動——どこを歩いたか、体をかいていたか——のほうを疑います。

  5. 左右で同じ手順を回して、左右差を見る

    ジャーマンシェパードは耳が2枚とも同じ形なので、左右は互いのものさしになります。片方だけ濃い、片方だけ嫌がる、というときは、比べる相手がすぐそこにあるということです。左右差は、面の中の偏りより気づきやすい変化です。両耳を続けて回すのを、手順として固定してください。

布に移った色の出方と、その日の扱い
布に移った色その日にすること
4区画とも同じくらい薄い普段どおり。ここで終わりにします
1区画だけ濃いこすり足さず、区画と日付を書き留めます
3日続けて同じ区画が濃い拭く回数ではなく、相談の側を考えます
左右で明らかに差がある濃いほうを触られるときの反応も見ておきます
どの区画も色が移らない拭く間隔をあけて構いません

この面に週に一度手を入れるのは、汚れを取り切るためではなく、区画ごとの差を読むためです。差は、布へ移してみるまで出てきません。だから、布を湿らせるものが何であるかが、そのまま判断の質に関わります。布を湿らせるのに使っているのは mofuwa スキンケアミストで、中身は電解水だけです。油分も、面に残って膜になるものも足していないので、なでたあとに残るのは水分だけになります。使うのは、白い布を指の腹にかぶせて固く絞る、あの湿らせ方のところです。耳へ直接吹きかけず、布に含ませてから絞ってください。4区画を付け根から先端へ一方向に通したら、乾いた布の面でもう一度だけ同じ向きに通して、水気を持ち帰らせます。液体を面に残したまま置くと、風が通って乾きやすいという、この耳のいちばんの条件を自分で打ち消すことになります。耳の中には入れないでください。

Point拭く道具より、拭かない範囲を先に決めてください

広い面を扱えるということは、手が届いてしまうということでもあります。ジャーマンシェパードの耳では、支えたときに目で見える面まで、と範囲を先に決めておくほうが安全です。範囲を決めずに始めると、薄い汚れが取り切れないもどかしさから、少しずつ内側へ入っていきます。取り切るものではない、と最初に決めてしまえば、そこへ向かう理由がなくなります。

面が濡れて、乾くまでの時間|ジャーマンシェパードの耳の汚れが動く時期

薄く広がる汚れは、一年を通じて同じではありません。動くのは量ではなく、面が濡れてから乾くまでの時間です。ジャーマンシェパードの耳は立っていて風が通るので、乾くのは基本的に早い。ところがその「早い」の中身は、季節によって数十分単位で変わります。乾くまでの時間が延びた時期は、面に乗ったものが留まる時間も延びます。

湿度が高い月は、そもそも空気が水分を持ち帰ってくれません。同じ雨でも、6月と11月では、耳の面が乾いた感触に戻るまでの時間が違います。雨に濡れた日は、体を拭いたあとに耳の面へ指を当てて、乾いているかどうかを確かめてください。湿っていれば、乾いた布の面で一方向に一度だけ通します。ここでスプレーやローションを足す必要はありません。足すのは水分ではなく、持ち帰る側です。

換毛期は、別の理由で面が動きます。春と秋、下毛がまとまって抜ける時期には、体をかく回数も頭をふるう回数も増えます。そのたびに、細かな毛やほこりが立った耳の面に落ちて乗ります。この時期だけは、布に移る色がふだんより濃く出ることがあります。それ自体は面の話なので、拭く回数を1週間に1回ぶん増やして、換毛が落ち着いたら元に戻してください。増やしたままにしないことのほうが大事です。

一年の中で、耳の面の条件が動く場面
時期・場面何が変わるかその時期の手
春・秋の換毛期被毛から面に落ちるものが増える拭く回数を週1回ぶんだけ増やす
梅雨から夏湿度が高く、乾くまでの時間が延びる濡れた日は乾いた布で一方向に一度通す
水辺や川で遊んだ日面が短時間にまとめて濡れる帰宅後、体より先に耳の面を確かめる
冬の乾いた時期乾くのは早いが、面の皮脂が動きやすい回数を増やさず、布の湿らせ方を少し強める
長い散歩のあとほこりが面に乗る量が増えるその日の1回を、帰宅後に回す

季節ごとに回数を変えるとき、変えたことを覚えておいてください。換毛期に増やした回数をそのまま続けると、乾いた季節に入ってから拭きすぎになります。耳の面にも皮脂はあって、それがうるおいを保っています。拭く回数だけが積み上がると、面が乾いて、かえって薄い汚れの出方が変わることがあります。増やしたら、終わったら戻す。この対で覚えておくと、一年を通して同じ状態を保てます。

薄いはずの面に濃い一点が出たとき

ここまでは、面に薄く広がるという前提で説明のつく話でした。その前提から外れる出方が、いちばん分かりやすいサインになります。どこも同じくらい薄い、という状態を毎週見ていると、そうでない日はすぐに分かります。次のような変わり方に気づいたときは、拭く回数を増やす方向へ進まないでください。

Caution早めの受診をおすすめするサイン

においがある、面が赤い、じくじくしている、触ると痛がる、頭を傾ける、同じ側ばかりかき続けている、聞こえ方が変わったように見える、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、家庭で拭く回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。ジャーマンシェパードの耳は面が広く見やすいぶん、変化に早く気づけます。気づけたことをそのまま持っていくのが、いちばん役に立ちます。

相談する日をいつにするかにも、選び方があります。行く前の晩に念入りに拭かないでください。薄く広がっている状態こそが、いま見てもらいたいものです。拭いてしまうと、面がリセットされた状態で診てもらうことになります。書き留めてきた記録——どの区画が、いつから、何日続けて濃かったか、左右差はあるか——を持って、拭かないまま連れて行くのが、いちばん情報量の多い行き方です。

ジャーマンシェパードと暮らしていると、耳が大きくてよく見えるぶん、何かしてあげたくなる場面が増えます。けれどこの耳では、手を入れる量を増やすことと、状態が良くなることが、そのままつながっていません。広い面に薄く広がる汚れは、取り切る対象ではなく、毎週の差を読むための材料です。面を4つに分けて、白い布に移る色を比べる。濃くなった区画を書き留めて、3日追う。ジャーマンシェパードの耳の汚れで毎日のケアがやっているのは、そこまでです。その先は、動物病院と分け合う仕事になります。

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よくある質問

ジャーマンシェパードの耳は立っているので、汚れにくいのではないですか?
こもりにくいという点では、立っていることは有利に働きます。風が通るので、面は短時間で乾きます。ただし内側の面が上を向いて広く開いているので、被毛から落ちた細かなものや皮脂が、その面に薄く乗り続けます。汚れないのではなく、濃くならないので気づきにくい、という形になります。
耳の汚れが少ししか取れません。もっとしっかり拭いたほうがいいですか?
少ししか取れないのが、この耳の普通の状態です。取り切るという到達点がないので、しっかり拭こうとするほど、範囲が内側へ広がっていきます。見えている面まで、と範囲を先に決めて、区画ごとに一方向へ一度通すだけにしてください。判断は取れた量ではなく、区画ごとの色の差で行います。
ジャーマンシェパードの耳の掃除は、どれくらいの間隔がよいですか?
曜日を決めて週に1回から始め、換毛期だけ1回ぶん足す形をおすすめします。汚れが溜まってからではなく、薄いうちに決まった日で回すほうが、区画ごとの差を比べられます。換毛期に増やした回数は、落ち着いたら元に戻してください。回数だけが積み上がると、面が乾く側に振れます。

本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。