C05犬種・猫種別ケア
ジャーマンシェパードと暮らすなら知っておきたい、耳の汚れの話
ジャーマンシェパードの耳を、内側から手のひらで包んでみてください。大人の手のひら一枚では、内側の面を覆いきれません。付け根が広く、厚みがあって、先までまっすぐ立ったまま、内側がぜんぶ上を向いている。この犬種の耳の汚れを考えるときの出発点は、その面の広さです。汚れはどこか一点の奥に集まるのではなく、この広い面に薄く広がって乗っています。薄いので、量では気づけません。つまんで取り出せるような塊はどこにもなく、それでも白い布を当てると、面のあちこちが同じくらいうっすらと色を移す。ジャーマンシェパードの耳では、「奥のものを取り出す」という発想がそもそも当てはまりません。この記事では、奥にたまる耳と広い面に薄く広がる耳を並べて、この耳では何を見て、いつ手を入れるのかを書きます。
手のひら一枚では覆いきれない|ジャーマンシェパードの耳の内側にある広い面
ジャーマンシェパードの耳は、体格に見合って大きく作られています。付け根が広く、厚みがあり、先に向かってゆるやかに細くなりながら、まっすぐ上に立ちます。立っているということは、内側の面が上を向いて開いたままだということです。頭の左右にほぼ垂直な面が2枚あって、その内側が一日じゅう空気にさらされている。耳の汚れの話をするとき、多くの記事はまず「深さ」から入りますが、この犬種で先に押さえるのは面積のほうです。
面が広いと、そこに乗るものは薄くなります。同じ量の皮脂や細かなほこりでも、狭い場所に集まれば塊になり、広い面に散れば膜になります。ジャーマンシェパードの耳の汚れは、後者の形で出てきます。面のどこを触ってもざらつきはなく、指を離しても何もついてこない。それなのに白い布でひとなでしたあとの布を見ると、淡い色が均一に移っている。この「どこも薄い」という状態が、この耳の標準の姿です。
立っていることには、もうひとつ効きます。風が通るので、面は乾きやすい。雨に濡れた日でも、屋内に入って体を拭くころには、耳の面はもう指が乾いた感触に戻っていることが多い。湿った時間が長く続かないという条件は、耳の内側にとっては有利に働きます。だからこの犬種では、こもったものが濃く固まって塊になる、という道筋をたどりにくい。汚れは濃くならず、薄いまま面全体に居続けます。
では何が面に乗るのか。ひとつは皮脂です。もうひとつは、被毛から移ってくるものです。ジャーマンシェパードはダブルコートで、換毛期には全身から下毛が動きます。頭をふるったり、体をかいたりするたびに、細かな毛やほこりが立った耳の面に落ちて乗ります。上を向いた広い面は、そういうものの受け皿としても働きます。毎日のケアで見ているのは、この受け皿にどれくらい乗ったか、という量ではなく、乗り方の均一さのほうです。
- 耳が大きく、内側の面が広い:同じ量の汚れが薄く延びて、濃さで気づけません
- まっすぐ立っている:風が通り、面は短時間で乾きます
- 内側が上を向いている:被毛から落ちたものが面に乗ります
- 体格が大きい:片手で耳を支えながら、もう片手で面を扱えます
- 換毛期に被毛が動く:面に乗るものの量が、年に2回まとまって増えます
ジャーマンシェパードは耳が開いているので、内側がよく見えます。ただし、見えているからといって、その先まで手や道具を入れる理由にはなりません。家庭で扱ってよいのは、耳を軽く支えたときに目で確認できる面までです。それより内側は、見えていても触らない範囲として決めておいてください。この記事で「面」と書いているのは、すべてこの見える範囲を指しています。
奥にたまる耳と、広い面に薄く広がる耳|ジャーマンシェパードの耳の汚れの違い
耳の汚れの扱い方は、犬によって前提が二手に分かれます。片方は、汚れが一点に濃く集まるタイプ。もう片方が、ジャーマンシェパードのように広い面へ薄く広がるタイプです。この2つは、汚れの正体が違うわけではありません。同じものが、置かれる場所の形によって別の見え方をしているだけです。ただ、置かれ方が違うと、気づき方も手の動かし方も入れ替わります。
一点に濃く集まる耳では、汚れは「量」として現れます。溜まれば見えるし、においも立ちます。だから飼い主は量で気づき、溜まったものを外へ出すという手を取ります。取り切れば、いったんゼロに戻るという感覚があります。次に溜まるまでの間隔が、ケアの周期になります。
ジャーマンシェパードの耳には、この「ゼロに戻る」という状態がありません。面のどこも薄いので、拭いても、拭いた直後からまた薄く乗り始めます。量では判断できないので、判断材料を「濃さの差」に置き換える必要があります。面のこことあそこで、布に移る色が同じか違うか。同じなら普段どおり、どこか一区画だけ濃ければ、そこで何かが起きている。ジャーマンシェパードの耳の汚れは、絶対量ではなく面の中の偏りで読みます。
| 奥にたまる耳 | 広い面に薄く広がる耳(ジャーマンシェパード) | |
|---|---|---|
| 汚れの分布 | 一点に濃く集まる | 面の全体に、どこも同じくらい薄く |
| 気づき方 | 量とにおいで気づく | 白い布に移る色の、区画ごとの差で気づく |
| 扱う範囲 | 見える入口まで。その先は触れない | 支えたときに見える面の、ほぼ全部 |
| 手の動き | 溜まったものを外へ出す | 面を一方向になでて、布へ移す |
| 乾き方 | 風が通りにくく、湿った時間が延びる | 立っていて風が通り、短時間で乾く |
| ケアの区切り | 取り切れば、いったんゼロに戻る | ゼロに戻る状態がない。差だけを見る |
| 起きやすい失敗 | その先まで道具を入れてしまう | 目立つ一区画だけ拭いて終わりにする |
| 手を入れる間隔 | 溜まってから | 薄いうちに、決めた曜日に |
この違いは、道具の選び方にもそのまま出ます。一点に集まったものを扱う道具は、先が細く、狭い場所に届くように作られています。広い面を扱うのに必要なのは、細さではなく面積です。指の腹に布をかぶせたときの面が、いちばん扱いやすい大きさになります。ジャーマンシェパードの耳で、細い道具を持ち出す場面はありません。
点で取るか、面でなでるか|ジャーマンシェパードの耳の汚れに当てる手の使い分け
面で読むと決めたら、面を分けます。ジャーマンシェパードの耳の内側を、4つの区画として扱ってください。付け根に近い側、その上の中ほど、先端に近い側、そして縁に沿った細い帯。4つに分けるのは、拭き分けるためではなく、比べるためです。比べる相手がないと、薄い汚れは「こんなものかな」で流れてしまいます。
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白い布を1枚用意して、指の腹にかぶせる
色の付いた布では、移った色が読めません。白いガーゼか、白い柔らかい布を1枚。指の腹にかぶせて、面としてあたるようにします。ジャーマンシェパードは耳が大きいので、指1本ぶんの面でちょうど1区画をなでられます。乾いたままでは滑りが悪いので、軽く湿らせてから固く絞ってください。
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耳を片手で支え、付け根側から先端側へ一方向になでる
頭を押さえつけず、耳の外側に手を添えて軽く支えます。動かす向きは、付け根から先端へ。往復させないでください。往復させると、いったん布へ移ったものを面へ戻すことになります。1区画につき1回、すっと通すだけです。力はほとんど要りません。
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1区画なでるごとに、布の面を変える
同じ布の同じ場所を使い回すと、区画ごとの差が消えます。布をずらして、4区画それぞれに新しい面を当ててください。終わったあと、布に並んだ4つの跡を見比べます。ここが判断のすべてです。4つが同じくらいの色なら、その日は普段どおりです。
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一区画だけ濃かったら、その区画を日付とともに書き留める
その場でこすり足さないでください。濃かったという事実だけを残します。翌日と翌々日、同じ手順を回して、同じ区画が濃いままかどうかを見ます。3日続けて同じ区画なら、面の話ではなくなっている可能性が出てきます。日によって場所が動くなら、その日の行動——どこを歩いたか、体をかいていたか——のほうを疑います。
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左右で同じ手順を回して、左右差を見る
ジャーマンシェパードは耳が2枚とも同じ形なので、左右は互いのものさしになります。片方だけ濃い、片方だけ嫌がる、というときは、比べる相手がすぐそこにあるということです。左右差は、面の中の偏りより気づきやすい変化です。両耳を続けて回すのを、手順として固定してください。
| 布に移った色 | その日にすること |
|---|---|
| 4区画とも同じくらい薄い | 普段どおり。ここで終わりにします |
| 1区画だけ濃い | こすり足さず、区画と日付を書き留めます |
| 3日続けて同じ区画が濃い | 拭く回数ではなく、相談の側を考えます |
| 左右で明らかに差がある | 濃いほうを触られるときの反応も見ておきます |
| どの区画も色が移らない | 拭く間隔をあけて構いません |
この面に週に一度手を入れるのは、汚れを取り切るためではなく、区画ごとの差を読むためです。差は、布へ移してみるまで出てきません。だから、布を湿らせるものが何であるかが、そのまま判断の質に関わります。布を湿らせるのに使っているのは mofuwa スキンケアミストで、中身は電解水だけです。油分も、面に残って膜になるものも足していないので、なでたあとに残るのは水分だけになります。使うのは、白い布を指の腹にかぶせて固く絞る、あの湿らせ方のところです。耳へ直接吹きかけず、布に含ませてから絞ってください。4区画を付け根から先端へ一方向に通したら、乾いた布の面でもう一度だけ同じ向きに通して、水気を持ち帰らせます。液体を面に残したまま置くと、風が通って乾きやすいという、この耳のいちばんの条件を自分で打ち消すことになります。耳の中には入れないでください。
広い面を扱えるということは、手が届いてしまうということでもあります。ジャーマンシェパードの耳では、支えたときに目で見える面まで、と範囲を先に決めておくほうが安全です。範囲を決めずに始めると、薄い汚れが取り切れないもどかしさから、少しずつ内側へ入っていきます。取り切るものではない、と最初に決めてしまえば、そこへ向かう理由がなくなります。
面が濡れて、乾くまでの時間|ジャーマンシェパードの耳の汚れが動く時期
薄く広がる汚れは、一年を通じて同じではありません。動くのは量ではなく、面が濡れてから乾くまでの時間です。ジャーマンシェパードの耳は立っていて風が通るので、乾くのは基本的に早い。ところがその「早い」の中身は、季節によって数十分単位で変わります。乾くまでの時間が延びた時期は、面に乗ったものが留まる時間も延びます。
湿度が高い月は、そもそも空気が水分を持ち帰ってくれません。同じ雨でも、6月と11月では、耳の面が乾いた感触に戻るまでの時間が違います。雨に濡れた日は、体を拭いたあとに耳の面へ指を当てて、乾いているかどうかを確かめてください。湿っていれば、乾いた布の面で一方向に一度だけ通します。ここでスプレーやローションを足す必要はありません。足すのは水分ではなく、持ち帰る側です。
換毛期は、別の理由で面が動きます。春と秋、下毛がまとまって抜ける時期には、体をかく回数も頭をふるう回数も増えます。そのたびに、細かな毛やほこりが立った耳の面に落ちて乗ります。この時期だけは、布に移る色がふだんより濃く出ることがあります。それ自体は面の話なので、拭く回数を1週間に1回ぶん増やして、換毛が落ち着いたら元に戻してください。増やしたままにしないことのほうが大事です。
| 時期・場面 | 何が変わるか | その時期の手 |
|---|---|---|
| 春・秋の換毛期 | 被毛から面に落ちるものが増える | 拭く回数を週1回ぶんだけ増やす |
| 梅雨から夏 | 湿度が高く、乾くまでの時間が延びる | 濡れた日は乾いた布で一方向に一度通す |
| 水辺や川で遊んだ日 | 面が短時間にまとめて濡れる | 帰宅後、体より先に耳の面を確かめる |
| 冬の乾いた時期 | 乾くのは早いが、面の皮脂が動きやすい | 回数を増やさず、布の湿らせ方を少し強める |
| 長い散歩のあと | ほこりが面に乗る量が増える | その日の1回を、帰宅後に回す |
季節ごとに回数を変えるとき、変えたことを覚えておいてください。換毛期に増やした回数をそのまま続けると、乾いた季節に入ってから拭きすぎになります。耳の面にも皮脂はあって、それがうるおいを保っています。拭く回数だけが積み上がると、面が乾いて、かえって薄い汚れの出方が変わることがあります。増やしたら、終わったら戻す。この対で覚えておくと、一年を通して同じ状態を保てます。
薄いはずの面に濃い一点が出たとき
ここまでは、面に薄く広がるという前提で説明のつく話でした。その前提から外れる出方が、いちばん分かりやすいサインになります。どこも同じくらい薄い、という状態を毎週見ていると、そうでない日はすぐに分かります。次のような変わり方に気づいたときは、拭く回数を増やす方向へ進まないでください。
- 一区画だけが、3日続けて濃い:面全体に広がるという説明から外れています
- 面に、指で触ってざらつく場所ができた:薄い膜ではなく厚みが出ているということです
- においが立つ:風が通って乾く耳で、においが残るのは条件が変わったしるしです
- 左右差がはっきりしている:もう片方が、そのままものさしになります
- 耳を触られるのを急に嫌がる:これまで平気だった動作を避けるようになったとき
- 頭を片側に傾ける、同じ側の耳ばかりかく:面の汚れの話としては扱わないでください
においがある、面が赤い、じくじくしている、触ると痛がる、頭を傾ける、同じ側ばかりかき続けている、聞こえ方が変わったように見える、元気や食欲が落ちている。いずれかに当てはまるときは、家庭で拭く回数を増やす前に、動物病院にご相談ください。ジャーマンシェパードの耳は面が広く見やすいぶん、変化に早く気づけます。気づけたことをそのまま持っていくのが、いちばん役に立ちます。
相談する日をいつにするかにも、選び方があります。行く前の晩に念入りに拭かないでください。薄く広がっている状態こそが、いま見てもらいたいものです。拭いてしまうと、面がリセットされた状態で診てもらうことになります。書き留めてきた記録——どの区画が、いつから、何日続けて濃かったか、左右差はあるか——を持って、拭かないまま連れて行くのが、いちばん情報量の多い行き方です。
ジャーマンシェパードと暮らしていると、耳が大きくてよく見えるぶん、何かしてあげたくなる場面が増えます。けれどこの耳では、手を入れる量を増やすことと、状態が良くなることが、そのままつながっていません。広い面に薄く広がる汚れは、取り切る対象ではなく、毎週の差を読むための材料です。面を4つに分けて、白い布に移る色を比べる。濃くなった区画を書き留めて、3日追う。ジャーマンシェパードの耳の汚れで毎日のケアがやっているのは、そこまでです。その先は、動物病院と分け合う仕事になります。
Product
mofuwa スキンケアミスト
200ml / 3,300円(税込)
アルコール・添加物・香料・界面活性剤・鉱物油・オイル・着色料・防腐剤の8つがフリー。気になる部分に直接なじませて、肌のコンディションを整えます。
商品ページを見るよくある質問
- ジャーマンシェパードの耳は立っているので、汚れにくいのではないですか?
- こもりにくいという点では、立っていることは有利に働きます。風が通るので、面は短時間で乾きます。ただし内側の面が上を向いて広く開いているので、被毛から落ちた細かなものや皮脂が、その面に薄く乗り続けます。汚れないのではなく、濃くならないので気づきにくい、という形になります。
- 耳の汚れが少ししか取れません。もっとしっかり拭いたほうがいいですか?
- 少ししか取れないのが、この耳の普通の状態です。取り切るという到達点がないので、しっかり拭こうとするほど、範囲が内側へ広がっていきます。見えている面まで、と範囲を先に決めて、区画ごとに一方向へ一度通すだけにしてください。判断は取れた量ではなく、区画ごとの色の差で行います。
- ジャーマンシェパードの耳の掃除は、どれくらいの間隔がよいですか?
- 曜日を決めて週に1回から始め、換毛期だけ1回ぶん足す形をおすすめします。汚れが溜まってからではなく、薄いうちに決まった日で回すほうが、区画ごとの差を比べられます。換毛期に増やした回数は、落ち着いたら元に戻してください。回数だけが積み上がると、面が乾く側に振れます。
本記事は日常のお手入れに関する情報提供を目的としており、疾病の診断・治療・予防を目的とするものではありません。皮膚や体調に異常が見られる場合は、自己判断せず動物病院にご相談ください。
